狂気の化身
今日の14時くらいに大幅に修正します。
「お、おい!何なんだよこの能力は!」
身なりだけは清潔感のあるオタク風な青年男性が壇上の天使に向かって叫ぶ。天使はギロっと、敵視するような目でその男性を睨みつけた。中年男性はその視線にびびってたじろいでいる。天使は「なんだ。」と重圧で押しつぶすような低音で返答した。青年はたじろぎながらも、文句を続ける。
「こんな、『蛙になる能力』なんて、異世界でどうやって生き抜けってんだ!他の奴らはどんな能力なんて知らねぇけど!普通はこう……、もっとチートみたいな能力だろ!」
どうやら、自分をドラマやアニメの主人公だと思っているらしい。その言葉で学生服の少年たちは若干軽蔑した。一方、天使は呆れ顔でそれを聞いていた。
「何だお前は、くだらないことで時間を使わせるな。そもそも恩寵とは神が人間に与える無償の賜物。下賤な人間どもが文句を言っていい代物ではない。」
天使はそう言って意見を一蹴した。男はそれでも、意地汚く反論した。
「ふざけんな!異世界に行かせるんだったら、即戦力になるくらいの強い能力を用意するのが筋ってもんだろ!無責任なんじゃないのか!?なぁ!お前らもそう思うだろ!?」
文句を言った中年男性は、他の人たちに同意を求めた。
周りの人間はただただ傍観していた。 絶望の表情を浮かべていた人たちは、「そうだそうだ!」と賛同する姿勢を示した者もいたが、それ以外に食い下がる男に加勢しようとはしなかった。これは日本の武士道精神からか、多少気に食わなくても、自分の中で頑張って納得させようとしていた。俯いて、特にどうこう言うことはなかった。あまり同意得られていない状況を見て、文句を言っていた中年男性はさらにヒートアップする。
「何だよ!俺に賛成しないやつは良い能力だったのかよ!ふざけんな!何で俺はダメで、お前らは良いんだよ!俺はそこらへんの無能よりかは絶対に貢献できると思うのに!特に学生!お前らは絶対足手まといになるだろ!俺と交換しろ!おい!ゴミどm」
オタク風な男は汚いつばを飛ばしながら、学生を口汚く罵っていた。しかし、ヒートアップのしすぎで、一線を越えようとした瞬間。
バシュウウウウゥウウウウゥゥゥウ
炎を纏った球体が、その男を吹き飛ばした。辺りは肺を焦すほどの灼熱になる。炎を放ったのは紫色に髪を染めている女子学生だった。女性らしさの欠片もない「カカカッw」という狂気じみた笑顔を浮かべ、地べたに楽な体勢で座っている。
人が目の前で残酷に殺された惨状を見て、周囲は悲鳴、絶叫、発狂、さまざまな恐怖が入り混じった阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がった。その状況を見かねた天使は「静粛にしろ!!!」と叫ぶ。地面が揺れ動くほどの威力だった。天使の顔は表情筋が死んでいるのかと疑うほど、ピクリとも動いていなかったが、言葉には微妙に怒気を孕んでいた。
天使の声により、一転静かになった。天使は静かになったのを確認して続ける。
「五月蝿いのを消しとばしてくれたことに感謝する。一条魅火」
天使は紫髪の女学生に感謝した。彩火は片手をあげ、ヒラヒラとする。礼はいらないとでも言いたげな高慢な態度をとっている。天使は何事もなかったかのように、異世界に関することを話し始めた。周囲の人間はこんな状況で話すのかと思い、引いていたが、怒らせると痛い目に会うと思い、静かに聞いている。
「貴様らが行く異世界と現世での相違点を挙げるとキリがない。大きな違いを挙げるとするなら、魔法という物が存在することだ。それ以外にも文明のレベルや魔法に関わる価値観といった面など、異世界での全てが貴様らにとって理解ができないものばかりだろう。さっきの人を魔法で殺すという行為も、あちらでは戦争や犯罪などでよくあることであり、魔物も魔法を使って殺すこともあるのだから、この程度で騒がれても困る。あの男くらい冷静でいろ。」
そう言って意識のない康之を指さした。周囲からは驚きの声が上がる。
「すげぇ…こんな状況でこんな静かでいられるなんて…。」「太ってるけどこいつは多分すげぇやつだ。」「あぁ、頼もしい。」「怖すぎて気絶したんじゃね?」「冷静すぎて逆にきもいわ…。」
そんな感嘆な声を無視して天使は続ける。
「我々は最低限のサポートをするつもりだ。先程の《恩寵》はもちろん、《言語を翻訳する魔法》などもすでに付与してある。魔物がひしめき合う世界では必要となる知識も備えてある。」
天使は淡々と話し続ける。最低限のサポートはするという文言を聞いた瞬間、少しばかり場の緊張は綻んだ。天使は続ける。
「最終的には、人類の敵である魔物がやってくる時に現れる魔界の門を全て封鎖させることを目標とする。基本的な説明は以上だ、さらに詳しいことが聞きたかったら牧師やシスターに聞いてくれ。最初に教会に行き、その後に王のいる城に行ってもらう。では…。」
天使がある程度話すと、淡い光が発される巨大な扉ができ、天使がその場所の上に立つように先導して案内する。康之がまだ動いていないことには、誰も気づいていない。
「結局こんな雑魚どもと行くのかよ、つまんねぇ………。」
魅火は最初はボソッと話したが、急に啖呵を切ったように叫び始める。
「こんな雑魚どもと一緒に連れて行かれて、協力するなんて、あたし嫌なんだけどwwwあたし一人でいけるんじゃねwww?雑魚どもはさっさと天に召されなwww?あのキモいおっさんみたいに直々に殺してやっからw」
不意打ちだった。異世界に飛び出して、今から新しい人生を歩もうとする人間たちを火の海に巻き込んだのだ。悲鳴が起きる間もなく死んだ者もいるが、ギリギリ範囲に入らなかった人間が次次に悲鳴をあげる。
そして、今に至る。
修正する時が非常に多いことをお許しください。
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大変申し訳ございません。