武術大会に向けて 12 魔法のお勉強と大量のスキル
長くなってしまいました!
初依頼を達成した日から、現実時間で翌日――
「経験値を稼ぎたい」
「おぉ、いつものだね」
「いつものですね」
2人にとって俺の言動は、居酒屋に来る常連の客と同じなのか?
「今、レベルよりスキルレベルを上げたい」
「具体的には? また全部?」
「拳と刀でござる。他はカンストした」
「......あれ? 魔法は?」
「え?」
魔法、まほう......マホウ......
「......忘れてた。やばい」
「属性魔法が無いとか、魔法部門と総合部門で敗北決定かな?」
「それはやだぁぁぁ!!」
「なら魔導書読まないとダメだよ?」
「くっ......い、嫌ぁ」
「なら魔法は諦めるんだね?」
「いや......自然魔法に頼って......」
「自然魔法にできて、属性魔法に出来ないこととその逆があるって、前に教わってたでしょ? 勝ちたいならちゃんと勉強しないと」
えぇ......ここに来て魔法の勉強......つ、つらい。けど、やるしかない。
「お、お勉強......しま......す」
「はい。ちゃんと魔法を覚えてから稼ぎに行こうね」
「......はい」
『夏休みの宿題やってない息子とそれを叱る母親の図ですね〜』
「......ママ?」
「ぐふっ......る、ルナ君......それは刺さる」
何に刺さってんのか知らんけど、嬉しそうだからいいや。
「それではお勉強タイムに入ります。馬車でマサキに言ったこと、全部自分に返ってきました。もうこれからは人をからかいません」
「お勉強タイムってより反省タイムだね」
「リル〜! ママが冷たい〜!」
「ぐふぅ!」
「父様、魔法は使えて損はありません。ちゃんとお勉強しましょう?」
俺に味方はいなかった。
『賑やかですね〜私も混ざっていいですか?』
「ダメだ。フーには火、水、風、氷属性魔法を教えてもらうぞ」
『雷以外全部じゃないですか! それに嫌ですよ! めんどくさいじゃないですか!』
「え〜。ケチだなぁ」
『なんで私がルナさんのお姉ちゃんみたいにならないといけないのか......』
「姉がいたら、こんな感じなのか?」
「どうなんだろうね?」
「分かりませんね」
『一瞬で団結しますね、皆さん』
連携、大事だからなぁ......基本ソロだったけど。
「よし、ここで話してても何も進まないし、魔法士ギルドに行くか。今日はずっとお勉強タイムだな」
「おっけー! なら私はご飯を作ろうかな」
「ん? ソルはしないのか?」
「うん。だって、全属性コンプリートしたから」
え?
「い、いつの間に!?」
「ルナ君が武器を作ってる間に、かな」
「時間の有効活用、ですね〜!」
上手いな。空き時間に魔法を習得するとか、良くやるぜ。そういうところ、凄く尊敬してる。
「じゃあ今回の空き時間はどうするんだ?」
「ふっふっふ、もう決めてあるの......魔法を作るんだよ!」
「なるほど......ん? でもスキルレベルは足りるのか?」
「......1です」
「それはキツイな。リルと一緒に狩りに行くか?」
リルなら丁度暇だろう?
「父様と離れたくありません」
「っ! ストレートに嬉しい事を言うじゃないか。でも、護衛的な面なら大丈夫だぞ? フーがいるからな」
「スライムに負けかけたフーさんが、ですか?」
『ちょっと? ナチュラルにディスりますね、リルさん』
「まぁ、大丈夫だろ。きっと、多分」
『私、全然信用されてませんね! まぁ、弱いのが事実だからどうしようも無いんですけどね!』
「......気持ちの面では納得できませんが、母様の為です。行ってきます」
あぁ! めっちゃションボリしてる! こ、これはアフターケアも用意しないと。
「帰ってきたら、いっぱい遊ばないか? 良い息抜きにもなるし、ダメか?」
「そ、それならいいでしょう」
「リルちゃんはルナ君が大好きだね〜」
「はい。もっと一緒にいたいです」
ひゃあ! そう言って貰えたら嬉しいな。モチベーションが爆上がりだ!
「妬けちゃうよ、全く。じゃ、お昼ご飯を楽しみにする事だね、ルナ君」
「これは......悲しむべきなのか、喜ぶべきなのか......まぁ、とりあえず俺とフーは魔法士ギルドに行ってくる。ソルとリルは、狩りに行くなら気を付けてな」
「うん! 怪我しないようにするよ!」
「母様は守りますので、ご安心ください」
『私に拒否権が存在しない事を知りました』
「では、しゅっぱーつ!」
宿を出てソル達と別れた俺は、フーを出す。
「フー、メイド服で王都を歩く気か?」
「えぇ。最大限の抵抗です」
「......それ、俺の評判が死ぬ気がするんだけど」
「知りません。そんなことより有難く思ってくださいよ? 元・魔法の神でもある私に魔法を教えられるんですから」
「ありがとうございます!」
そう言えば、リアルで寝る前にイシスについて調べたんだが、どうやらイシスは魔法の女神でもあるらしい。
本当に助かるよ。フー。
魔法士ギルドにて――
「こんにちは、アミーさん」
「あ、ルナさん......でしたよね? あれ? そちらの方は?」
俺は魔法士ギルドの受付嬢、アミーさんに声をかけた。
あぁ、フーの説明しないといけないのか。
「私はタダのメイドモドキです」
「え?」
「え?」
何言ってんだ? フーは。
「フー? ちゃんと挨拶しないとダメだろ? 常識が無いのかな?」
「めっちゃ煽りますね。教えませんよ? 魔法」
「すんませんした」
「え、えっと......ではフーさん、ですか?」
「はい。私はフーです」
俺は『私はフーです』に可能性を感じた。
「えっと、今回はフーさんの登録ですか?」
「あ、別にフーはギルドに所属する訳じゃないです。ただの付き添いです」
「あら、そうだったんですね。では、ご用件は?」
「魔導書を借りに来ました」
「分かりました。どの属性の魔導書にしますか?」
「えっと、土と聖と闇と、あと雷以外の属性をお願いします」
「分かりました。少々お待ちください!」
そう言ってアミーさんはカウンターの奥に行った。
「そういえばフーはどうして5属性だけしか覚えていないんだ? 魔法の神だったんだろ? おかしくないか?」
アミーさんと話してたら、前にステータスを見た時に土、聖、闇属性を持っていなかったのを思い出した。
「あぁ、それは付喪神になった時に剥がされたんですよ。上級以上の魔法と支援系魔法が、軒並みぜ〜んぶ消えました」
「えぇ......それってどれくらいの数?」
「50〜60くらいですかね? まぁ、付喪神でそれだけ魔法を使えてたら他の神に殺されますよ、私」
「そうなのか。怖いな」
それは多分、『ゲームバランスが崩れる』から剥がされたんだろうな。
「お待たせしました! コチラ、魔導書になります!」
アミーさんが、1冊が辞書の半分くらいのページ数の本を、4冊抱えてやってきた。
「......あ、ありがとうございます」
きっと今の俺、眉がピクピクとしてるだろうな。
だってこんなページ数だなんて聞いてないもん。
「はい! では頑張ってくださいね!」
「頑張れ〜ルナさん」
「はい......それとフー、お前は道連れだ」
「......はぁ。仕方ありません、潔く教えるとしましょうか」
「じゃあ、帰るか」
俺は魔導書をインベントリに仕舞った。
「あ、アルカナさんには伝えておきますね!」
「えっ......まぁいいや。お願いします」
もうあの人に何言われてもいいや。多分、意味深なことを言って終わりだろう。
宿屋にて――
「え? 火の熱って魔力の振動なの? 分子じゃないの?」
「えぇ。魔法の火は全て、魔力の振動です。別に言い換えるなら、『魔力分子』の振動です」
「ほぇ〜面白いな、魔法って」
「そうでしょう? では次、炎の維持ですね」
「これは魔力を注ぎ続けるだけじゃないのか?」
「そうですけど、それはとあるスキルが無いとできませんよ」
「え? 出来るけど、俺」
「え? 出来ちゃうんですか?」
俺ァ昔からやってるぞ(職人の目)
「ってか何のスキルが必要なんだ?」
「『手加減』ですね。これがないと、魔力の出力を弱めたり、逆に強めたりする事は出来ませんから」
「そう......だったのか」
手加減スキル君、マジ? 衝撃なんだけど。
前にルヴィさんが魔法にMPを多く使えなかったのって、もしかして手加減スキルを持ってないからなのか?
「じゃあ出来るなら飛ばしますか。次は――」
こんな感じで、魔導書を読む......と言うより、フーがクイズ感覚で問題を出すので、それに答えていった。
そして火属性魔法の魔導書の最後のページを閉じた時――
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『火属性魔法』を習得しました。
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「お、覚えられた......それも超短時間で」
「ふっふっふ。私のお陰ですよ?」
「そうだな。マジで感謝してる」
「そう思うなら早めに依代を作ってくださいね?」
「はいはい」
どれだけスライムに負けかけた事を根に持ってるんだ......
「では次、私の得意魔法の1つ、水属性魔法ですね」
「よろしく頼む」
「はい。ではまず、簡単な問題から。水とはなんですか?」
は? どこが簡単な問題だ。選択肢が多すぎだろ。
「水は液体だな。水は水分子からできていて、水分子は酸素原子と水素原子からできている」
「はい。正解でもあり、不正解でもあります」
「だと思ったわ。選択肢が多すぎだろ」
「そうですけど、大切な事が抜けているので。水は『魔力の源』です。正確には、水分子に魔力が含まれているので、実質的に水は魔力の源という訳ですね」
なんでやねん。と、俺はそう言いたいが、これはゲームだ。郷に入っては郷に従えと言うように、ゲームに入ってはゲームに従うのだ。
「なるほど。それってもしかしてマナポーションと関係あるのか?」
「お! よく気付きましたね! その通りです。マナポーションはスライムの核を使って、水分子の中の魔力を増幅させているのです」
わぁ、なんか当たった〜
「それで面白いのはですね、水属性魔法で作った水をマナポーションにすると、通常のマナポーションより効果が高いんですよ。理由は分かりますよね? 魔力から作られた水ですので、増幅力が多いからです」
「それは為になるな。今後は『調薬』もしようと思ってたところだったから」
「それは良かったです。是非役立ててください!」
そんな感じで水属性魔法も――
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『水属性魔法』を習得しました。
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「覚えた」
「早かったですね!」
「それはフーが喋りまくってるからだろう」
得意な魔法と言ってたし、大好きなんだろうな、水属性魔法が。気持ちは分かる。
「では次は風ですね!」
「うぃっす」
風属性の魔導書を開いて、フーが問題を出す。
「はい、また簡単なようで難しい問題からです。風とはなんですか?」
「空気の流れ。だけどこれじゃ正解では無いんだろ? そうだな......空気中の魔力の流れ、か?」
水の時の感覚で答えてみた。
「......大正解です。花丸ですよ!」
「っしゃ! 何となくわかってきたぞ!」
めっちゃ楽しいな! これ! 魔法のクイズ大会とか無いのかな?
「では次、空気とはなんですか?」
「難しいの来たなぁ。空気とは......気体? 魔力との関係って、それこそ水分なんだろ?」
「まぁ、正解ですね。答えは『魔力を含む気体』です。逆に、魔力の無い気体は人体に毒ですので、気を付けてください」
「分かった」
それはこれからの冒険に役立つ情報だな。助かる。
そうして風属性魔法も覚えた。
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『風属性魔法』を習得しました。
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「風も覚えたな。後は氷だけだ」
「遂に、ですね! 攻撃型の属性魔法で2番目に難しい魔法ですよ! 私の得意魔法です!」
「そうなのか。1番難しいのはなんだ?」
「そりゃあもちろん、雷属性魔法ですよ。あれは魔力の状態が、不安定な状態で安定している事を理解しないといけないので」
「うん、何言ってるか分からん」
不安定で安定? 矛盾してない?
「まぁ、そんな感じですね。では氷属性、行きましょう!」
「あぁ。ソル達が帰ってくる前に覚えたいな」
「はい! ではまず、氷とはなんですか?」
「やっぱりそれから来るのか。難しいな〜」
だってさ、氷って元々は水だろ? 俺、最初は氷属性は水属性と同じと思ってたもん。
「う〜ん......氷、か。水分子の停止? 凝固?......言い換えるなら、魔力の停止?」
魔力の停止ってなんだよ。
「おぉ! 大正解ですよ! ルナさん! 正解は『魔力の停止』です!」
「マジかよ当たっちまったよ」
で、再びこの言葉が頭に浮かぶ訳だ。
「魔力の停止って何?」
「ふっふっふ。そうでしょうそうでしょう。その事を理解した時、氷属性魔法の上級魔法がアレである理由を理解するんですよね」
「分からんな。それは教えてもらえるのか?」
「いえ、上級魔法に関しては頑張ってレベルを上げて習得して知ってください。その方が楽しめますから」
「さいですか。なら、その時を楽しみにしておこう」
氷の上か......分かんねぇ。
「では――」
それからも質疑応答が続き――
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『氷属性魔法』を習得しました。
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「覚えた!! やったー!」
「おめでとうございます! 攻撃型の初級はコンプリートですね!」
「初級?」
今更だが、魔法のランクが分かんねぇ。
「えっと、魔法には階級があるんですけど......知りませんでした?」
「細かいことは全然知らないな」
「そうですか、ではお教えします。魔法には、『初級』『中級』『上級』『超級』『魔級』の5階級あります。ルナさんが先程覚えた魔法は皆、『初級』に分類されます。
そしてルナさんの持つ『木魔法』は『中級』に、『自然魔法』は『上級』に分類されます。
他にも『龍魔法』は『上級』に、『古代魔法』は『超級』に分類されます」
「へ、へぇ〜そうだったのか。じゃあ、氷属性魔法が上級魔法に進化する時、中級を挟むのか?」
「いえ、挟みません。基本的に中級魔法は経由して進化することは出来ません。最初の段階が中級でないと中級と分類されないので、実は数が少ないのです」
「なるほどな。勉強になる。それと『古代魔法』についてなんだが、あれはどういう扱いなんだ? 進化か?」
「いえ、進化ではなく『派生』です。特定条件を満たした時に習得できる魔法ですね。これは余談ですが、『古代魔法』のように自動で派生するスキルと、『魔剣術』のように任意で派生するスキルがあります」
「え? 魔剣術って勝手には覚えられないのか?」
「はい。『剣術』スキルのレベルが30以上、各種対応した属性魔法のスキルレベルが20以上ですと、任意で派生できます」
えっ......って事は俺、既に『魔剣術』覚えられるじゃん。
「......もっと早く知りたかったな。はぁ、一応習得しておくか」
「はい、それがいいと思います。手札は多いに越したことはありません」
俺はステータスを開き、『剣王』スキルと『雷属性魔法』をタッチした。すると――
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『魔剣術』を習得しますか?
『はい』『いいえ』
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『はい』を選択した。
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『魔剣術』を習得しました。
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「なぁフー、『魔刀術』も同じ感じか?」
「はい、そうですよ」
「ならそっちも取るか」
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『魔刀術』を習得しました。
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「っていうかルナさん、よく今までそれら無しに生きてこれましたね」
「魔法だけに頼ったり、ステラの魔纏で何とかなってたからな。今は魔力矢もあるし」
「なるほど。では『魔弓術』も取るのですか?」
「......そう言えばそんなのもあったなぁ。取るか」
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『魔弓術』を習得しました。
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「今日だけでめっちゃスキル増えたな」
「育て上げるの、大変ですね〜。頑張ってください」
「しかも他の魔法達も育てなきゃだし、やることが多くて先が楽しみだ」
俺はやることが多いのも好きだ。順々に小さなことを終わらせて、最終的に大きな山が完成しているのを見ると、達成感が凄まじいからな。
「じゃ、習得系はここまでにしてソル達を待つか」
「そうしましょうか」
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名前:ルナ Lv72
所持金:820,540L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E) 魔法士
HP:810
MP:1,310<500>
STR:2,730(200SP)
INT: 730
VIT: 1,230(50SP)
DEX: 2,230(150SP)
AGI: 930(20SP)
LUC:365
CRT:50(限界値)
残りSP:300
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv100
new『魔剣術』
『王弓』Lv100
new『魔弓術』
『武闘術』Lv52
『刀王』Lv83
new『魔刀術』
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
魔法
new『火属性魔法』
new『水属性魔法』
new『風属性魔法』
『雷属性魔法』Lv85
new『氷属性魔法』
『自然魔法』Lv97
『龍魔法』Lv1
『古代魔法』Lv1
生産系
『神匠:鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv98
『調薬』Lv1
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv15
『錬金術』Lv72
その他
『テイム』Lv2
『不死鳥化』Lv1
<>内アクセサリーの固定増加値
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あぁ.....『手加減』スキルの裏設定がポロリと.....
それと『魔〇術』系を3つと属性魔法が4つも.....ルナ君、頼むからそれら全部を一気に使っちゃダメだよ?リザルト書く時、私死ぬよ?
とまぁ、そんな事は置いておいて。次回にレベル上げが出来たら準備編は終わりですね!大会までもう目の前ですよ!楽しんでくださいね!
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