武術大会に向けて 11 帰り道の、良き出会い
大きな伏線、壊れるプロット。ユアストは独自の進化を遂げる.....なんちゃって
「ただいま戻りました!」
「おう、おかえり〜」
イニティから見て、アルトム森林を抜けてすぐ目の前のペリクロ草原の地面に俺とフーが座っているんだが、そこにリルがやって来た。
「連絡から2分か......早いな」
まだ19時57分です。3分も余裕あります。素晴らしい!
「えへへ、帰りも全力で走ってたら、何体か吹き飛ばしちゃったんですよね」
「モンスターを?」
「はい!」
「それは凄いな〜」
リルを褒めつつ、撫で撫でタイムだ。これは至福の一時である。
「父様〜オークは90体しか討伐出来ませんでした」
「そうか〜、多分俺が沢山奪っちゃってるな」
「どれくらい倒されたんです?」
「秘密だな〜」
あぁ、耳が最っ高にモフい。たまらん!
「ルナさん、好きなんですね? ケモ耳」
「さぁ? どうなんだろうな。ソルの耳を触るまでは、ケモ耳が特別好きって訳じゃ無かったんだけどなぁ。いや、好きだったぞ? 好きだったけど、ケモ耳だけでは足りないと、そう思ってたんだよ」
今でも特別に『ケモ耳っ娘が良い!』って訳では無い。
ソルやリルだから好きなんだろうな。
「そうなんですか? てっきり生来のものかと思ってましたよ」
「リル、フーがいじめてくるよ」
「ダメですよ、フーさん。父様を傷つけてはいけません」
「え? 親子の関係逆転してないですか?」
「リル、フーが変な事を言ってるぞ」
「仕方が無いのです。まだ日が浅いので、慣れていないのでしょう」
「えぇ......?」
フー、完全敗北だな。はっはっは! 俺達に勝とうなど、5ヶ月早いわ!
「おっまたせ〜!」
「お、ソル! 時間ピッタリだな」
「何とか間に合ったよ!それとね、オークは98体だった!ギリギリ2体、足りなかったよ......」
「まぁまぁ。こちらにおいでなさいな」
「うん!」
報告と、おモフりタイムだ。これら自分だけに許
された、命の浄化作業だと思っています。
「おぉ〜ルナ君、撫でスキル上達したね〜」
「モフりとは、撫でる者、撫でられる者。両者が幸せにならなければならない」
「境地に達したんだね」
「まぁ、相手が良いと思うだろうポイントを撫でてるだけなんだけど」
「もう、優しいんだから。すんごい好き」
「ありがとうございます。ワタクシも、大好きでございます」
緊張を抑えるには、自分を別人に作り変えればいい。......と、昔まで思ってたが、別に考え方や口調を変えたところで、一度認識したら口調とか関係なく緊張する事を知った。
つまり今、心臓やばいです。大好きの言葉は、俺に深くぶっ刺さるぞ?
「っとと。俺はオークを沢山狩ったよ」
「どれくらい?」
「約150体だな。ついでにフォレストウルフも50体、遊んどいた」
「凄いね! 良くそんなに出会えたね?」
「父様、どんなスピードで探し回ったんですか?」
「『サーチ』で少しズルをしたりもしたが、基本的にはブラブラと歩いてただけだな。運良くモンスターからモンスターへと出会ったんだ」
「「......ずるい」」
「いやでも毎秒10も魔力を消費するんだぞ? 高燃費すぎるだろ」
「それでも半径100メートルは分かるんでしょ? いいなぁ〜、私も欲しいな〜」
「フェンリルの感覚よりも精度が高い認識魔法。羨ましいです」
あれ? またグルになってんのか?
「......まさかのトレント連戦?」
「......ダメ?」
「......ダメですか?」
なんで上目遣いでお願いするんだよ! 落ちるだろ!
「......武術大会が終わった後になら......」
最大限の時間稼ぎを......!!
「「やったー!」」
「はぁ」
さぁ、確率数パーセントから0.数パーセント以下の戦いを、2度もすることが決定したぞ。
俺のガチャ運、波があるからな〜。出る時は沢山出るけど、出ない時はとことん出ない。
未来の俺、頑張れ。過去の俺からの応援だ!
「多分、『自然魔法』にならないとサーチは無理だぞ?」
「大丈夫。すぐに鍛え上げるから」
「ずっと父様の横で見てましたので」
「......地味に2人とも、根拠が弱いんだよな」
ソルは予定、リルは謎の経験......これは長くなりそうだ。
「じゃ、帰るどー」
「「おー!」」
「お、追いつかない話題......!」
「フー、刀モード!」
そう言うとフーが布都御魂剣になり、手元に飛んでくる。
やっぱり綺麗な刀だな。ガラスのように透き通った刀身に、最初は違和感があったが、慣れるとただただ綺麗と感じる。
そうして布都御魂剣を帯刀して草原を歩いた。
「なぁ。あれワイバーンじゃね?」
「また?」
「面倒ですね。もう夜ですし、他の語り人に任せては?」
藍色の空に、赤黒い鳥のような物を発見した。
「なぁ......あいつ、こっちに来てね?」
「いやいや。そんな事な......来てるね」
「ガッツリ来てますね」
『流石にヤバいですよ、あいつは。幻獣クラス......か、それ以上です』
うわ、どんどん近づいてきて、どんどん大きく見えてきた。
「おいおい嘘だろ? 幻獣以上ってなんだよ」
『......神龍、ですかね。今のところ最強のモンスターと言えるでしょう』
「ってことは......」
「ことは?」
ふっ
「終わったな。俺達」
ドシーーン!!!!!
『? 危ない危ない』
土煙から、なんか声が聞こえた。
およ?『危ない危ない』って事は......
「その声は我が友、李〇子ではないか?」
『む? おぉ、君達か。人の身で龍魔法を扱うのは』
ネタには乗ってくれなかった。
「あ、少し待ってもらっていいですか?」
『ん? あぁ、すまぬな。時間ならやろう』
何ですかその言い方は。まるで時間以外は奪うかのような言い方。
お兄さん、そういう言葉の裏をかくの、好きだよ。
「ありがとうございます。では」
とりあえずソル達の安全確認だ。
「ソル、リル、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ようやく土煙が晴れてきたね」
「大丈夫です、父様」
「ならよし。ついでにフーも大丈夫か?」
『はい! いつでも戦えますよ!』
いや、戦う気は無いんだけど。
「お待たせしました。それで、あなたはどちら様で?」
『む? 終わったか? 私は神龍と呼ばれる者だ』
土煙が晴れ、俺達の目の前にいたのは、赤黒い鱗を持つ、巨大なドラゴンだった。
「おおお!! カッコイイ!!」
ドラゴン......神龍は男のロマンを具現化したような姿をしている!めっちゃカッコイイ!!
『お! そうだろうそうだろう? 君はそう思ってくれるか! いや〜私、長い事生きてきてるけど初めて人間に『カッコイイ』と言われたよ』
「なんで誰もカッコイイと思わないんですかね? 俺としちゃあ、ドラゴンという存在の中で1番カッコよく見えてますよ!」
『ありがとう! 優しいな、君は』
......これ、話すだけで穏便に済む?
「あ、写真撮ってもいいですか? あなたの様なカッコイイドラゴンと写真を撮るの、夢だったんです!」
『別に良いが、写真とはなんなのだ?』
「写真は、目の前の風景を瞬時に画に収めた物です。あなたとの出会いを、記録に残すような物ですよ」
『そうかそうか! 私との出会いを記録に残すか! それも面白そうだな、良いぞ!』
「では失礼して......」
カメラを起動しつつ、リルに念話を送る。
『手を出したら死ぬよな?』
『はい。レベル的には、700は超えてるかと』
『うっは! よく着地で死ななかったな、俺達』
『多分、相当加減してくれたのでしょうね』
推定レベル、700のドラゴンか。半端なく強いな。
「では撮りますね〜」
『うむ!』
パシャッ!
「撮れました! ありがとうございます!」
『む? もう出来たのか? 私にも見せてくれ』
およよ? 見たいのですか? ふっふっふ、よろしいですわよ。
......殺さないでね?
「はい、こんな感じです」
撮った写真をウィンドウに出し、神龍さんのとこに持って行く。
『おぉ! 凄く鮮明に描かれているのだな! 中々に面白い物だ、写真とは』
「あっ、そうだ。神龍さんはどうしてこちらに来たんですか?」
『む? あぁ。たまたまここいらのワイバーンを掃除しに空を飛んでいたのだが、何やら小さな魔力に龍の力を感じてな。それ目掛けて地上に降りたら、君達がいたのだ』
「なるほど、それは多分、俺達の持つ『龍魔法』の事ですかね?」
『そうだ。どうやって会得したのだ?』
「前にワイバーンを倒したら習得出来ました」
『......そこのフェンリルも、か? それと、付喪神は持っていないのだな』
お〜リルはバレると思ったけど、フーまで気づいたか。凄いな!
「えぇ。リルも同じタイミングです」
『そうか......はっはっは! 愉快な者だな! 君達は』
「そうですか?」
『あぁ。月の狼が扱う龍の魔法。人の身で扱う龍の魔法。これ程面白い事はそうそうないぞ!』
「喜んでもらえたなら、何よりですね」
『うむ、楽しませてもらった。ではそろそろ私は行くとしよう。君、名前はなんと?』
「ルナです」
『ルナ、か。覚えておこう。次に出会ったら君の龍魔法、見せてくれ。では、さらばだ』
そう言って神龍は翼を羽ばたかせ、空に飛んで行った。
「......はぁぁぁぁ、危なかったぁ!」
「ルナ君、よくやったね......私、棒立ちしかできなかったよ」
「私達、よく生きてますね」
『いや〜神龍と出会って生きた人間、ルナさん達が初めてじゃないですか?』
「マジ? それに写真も撮れたし、俺、マジで良くやったわ」
「ほんとにね。勇者だよ」
「勇者はちょっと......でもさ、結構仲良くなれたと思わないか?」
「だね!......ってもしかしてルナ君」
「その先はストップですよ、お嬢さん」
ソルの口に人差し指を付ける。
「それはまた出会った時のお楽しみ、な?」
「う......うん。へへへ」
『わぁ、大胆ですね〜』
「うっさい。さ、今度こそ帰るぞ!」
「はい!」
「うん......ふふふ」
『ソルさんが壊れてますよ〜』
「大丈夫。いざとなったらおんぶして行く」
『強いですね、心』
「そうでもないさ。まだまだ他人からの視線は怖いからな」
こうしてまさかの出会いを果たした俺達は、無事にロークスに帰ってきたのだった。
さぁ、出発前の特殊イベントの伏線を回収し、更なる伏線を敷いて行きました。
次回、予告する事がありません!
あ、ハッピーバースデー私。(投稿日1月6日、誕生日)
評価・ブックマーク宜しくお願いします!
誤字脱字報告、とても助かってます!
作者Twitter
くだらないことやユアストのあれこれ(ネタバレ有)を呟いてます!
https://twitter.com/yuzuame_narou