武術大会に向けて 9 こんなテンプレは嫌だ!
〜前回のあらすじ〜
刀作りが終わったルナ君、初めての依頼を受けるために冒険者ギルドに来た!するとテンプレの如く、ガラの悪いプレイヤーに絡まれるが.....ひょんな事から死刑執行人になっちゃった!
「あ、ランザ。ちょっと待ってもらっていい?」
「いいよ。ガレスは僕が見とくから」
「さんきゅ」
ちょ〜っとやりたい事があったんだよな。
「どうしたの? ルナ君」
「いやな、一応マサキに連絡しておこうかなって。これから起きる事、特殊クエストになっていて全プレイヤーに放送されるらしいんだ。だから一応、な」
「なるほど〜」
って事で秘技、高速タイピング!
『マサキ、今からokる放送nんだ』
はいしゅーりょー! 真面目に打ちます!
『マサキちゃん? 元気かナ? ルナおぢさんは元気ダヨ! おぢさんね、ある人物に絡まれたんだけどネ、その人が、実は大罪人なノ。それで、おぢさんが処刑(笑)をする事になったんだけド、それが放送されるんだっテ! だから、それを見ても引かないでネ!』
「っし。これでいいかな? ソル、どうだ?」
これなら大丈夫だろう。うん......うん。
「これは......まぁ、良いんじゃない?」
なんでソルに見せたんだろうと、今思った。
「じゃ、送信っと」
すると直ぐに返事が来た。
『お前、頭大丈夫?』
「はぁ? どこからどう見ても大丈夫だろうが」
「いや、ルナ君......遊びすぎだと思うよ? あの文は」
「そうか?......あっ、また返事来た」
『もう一度言う。頭、大丈夫か? それと用件は分かった。パテ面にも言っとく』
『ありがとう。あと、頭は大丈夫だ。文がおかしかったのは、昨日付喪神がやってきたのが原因だろう。知らんけど』
よ〜し、これで準備オッケー!
「お待たせ。やる事は終わった」
「分かった。なら行こうか。ギルドの奥にアルカナさんを待たせてる」
「うわ、俺暫くアルカナさんに会ってないんだけど、なんか言われるかな?」
「言われるね、絶対に」
「言われるよ、ルナ君」
「言われるでしょうね、きっと」
「......はぁ」
俺がアルカナさんに最後に会ったの、魔法士ギルドに入って、数日後に話した時以来か......
「アルカナさん、お待たせしました」
「うむ。待ったぞ」
「こっちが例の冒険者ですね。転移をお願いします」
「面倒臭いけど、まぁいい。私を使ったこと、高くつくからな?」
「はいはい。今度のワイバーンの親玉の肉でいいですか?」
「いいぞ! では、『転移』!」
あ〜なんか面白そうな情報出てきてたのに、もう転移しちゃったよ!
ワイバーンの親玉、超気になる〜!!......今の俺じゃ倒せなさそうだけど。
そうして転移させられたのは、闘技場だった。円形に広がる場所で、観客席もある、とても大きな場所だ。
「じゃ、ルナ。頑張って!」
「適当にな。ルナ」
あれ? アルカナさん、何も言わないのかな? ラッキー
「はい、行ってきます」
「ほれ、嫁と娘はこっちだ」
「「は〜い」」
あぁ、俺の人生の癒しが.....
「頑張ってルナ君!」
「父様なら負けません!」
「俺、頑張る」
現金です、俺は。
さて、いつ放送は始まるのかな?
それと闘技場の中心で縛られているガレス君、めっちゃシュールだな。
今のガレス君は目も口も布で覆われている。これ、マジの処刑感があって嫌だな。
「ル〜ナ〜くん!」
「ん? あ、キアラさん」
「ハロハロ! 今回はごめんね? 結構嫌な立場になると思うんだけど......」
「気にしないでください。アイツ、35人もPKしてるんでしょ?」
「いや、違うよ。アイツは本当の意味で、この世界の住人を殺してるよ。王都に住む一般人を、ね。それにPKの人数だったら、アイツは76人も殺ってるよ」
へぇ、アイツ、マジで殺ってた人だったのか。ゲームだからって、はしゃいだのかな?
「その一般人ってリスポーンするんですか?」
「一応、全員しておいたよ。でもね、今回の件が終わったらもうしないと思うよ」
「......なるほど」
って事は、ここで相当痛い目に合わせて、二度と住人を殺せないようにしろって事......だよな?
「う〜ん、でも、あの布と紐は取ってあげません? やってる側も見てる側も不快ですよ、アレは」
「......やっぱり? カズキがそうしろ! ってうるさかったんだけど、流石に炎上しちゃうよね?」
「えぇ。あれはキツいです」
「じゃあ、外すね」
そう言ったキアラさんがパチン! と指を鳴らすと、ガレス君を縛っている紐と布が消えた。
今の、カッコイイな。
「じゃあ、ここから放送しよっか。どうする? 武器を持たせて決闘風にやるか、アイツに何も持たせずにやるか」
「決闘風で。リルの教育に悪いので」
「......ははは! 分かった。カズキには私が怒られておくから、ルナくんは安心してね! じゃあ、ポチッとな」
キアラさんが自分の前に出していたウィンドウの触ると、俺はガレス君の前に転移した。
「さぁさぁプレイヤー諸君! 見えてるかな? キアラちゃんだよ!」
いつものキアラさんの挨拶が始まった。
「今回、テンプレの如くルナ君が冒険者ギルドで絡まれたんだけどね?なんと絡んだ人が大罪人だったの!
プレイヤー名は『ガレス』だよ! 王都の住人を35人も殺し、プレイヤーは76人も殺しているんだ! それに、窃盗も10回してるんだ!」
放送っていつもの生放送のノリで行くんだな。
「で、今回は殺人後、初めての通報と言うのと、たまたまルナくんが相手だったと言うことと、ガレスとのレベル差が相まって、今回の処刑人になって貰ったんだ!」
早く依頼を受けてスキルレベルを上げたいです。
「でね、ルナくんには少し損な立ち回りをして貰うから、報酬として今回の決闘風処刑の後に10万Lを渡すからね!」
......こう言ったらなんだが、絶妙に要らないな。出来れば物か経験値が良かった。
って言うか決闘風処刑って字面が面白いな。
「それと、今度うちの住民に手を出したら、これ以上の罰が下るよ。今回はタダの運営公認のPKで終わる。けれど、次はアカウント停止だからね? そこの所、よろしくね」
怖いなぁ。ゲームで運営公認の、ユーザーからユーザーへの罰ってなんなんだろうな。おかしいよ。
「じゃ、ルナくん! よろしくね!」
「はいは〜い。一瞬で終わらせるのと、じわじわとやるの、どっちがいいですか?」
「じわじわで!」
「了解です」
注文入りました〜『じわじわ』一丁!
「じゃあガレス君、武器を持つんだ」
「え......?」
「あれ? 武器、ないの?」
「ない......」
う〜ん、困ったなぁ。ガレス君のやる気のない精神と、武器がないのは非常に困る。
「キアラさん! ガレス君が勝った時の報酬は何ですか? それと、ガレス君に適当な武器をあげてくださ〜い!」
「今回の件の帳消しだよ! 武器は適当なアイアンソードにしとくね!」
キアラさんが答えると、ガレス君の前に剣が転がる。
......グダグダだけど、まぁいいか。
よし、これは武術大会の練習としよう。対人戦の経験を積むチャンスだ。そう捉えよう。
「じゃあガレス君、やる気出たかい?」
「クソ......」
「一応言っておくと、俺は同レベル帯なら最弱だからな? 君にも勝機はある。頑張れ」
「クソがぁぁ!!!」
「おっと」
ガレス君が急に斬りかかってきたので避けた。
俺、まだ武器を出していないのに......
「じゃあ1攻撃と言うことで、俺も攻撃するぞ」
フーは......流石に初めて斬ったのが人って、可哀想だもんな。ステラは......今は人を斬らなくていいかな、可哀想だし。
なら後はこの子だろう。
「アルテ」
左手にアルテを顕現させる。今ある武器の強さランキング的に、2位の弓だな。
今回は初めての、マルチショット魔力矢バージョンをやろう。
とりあえず全部に雷属性の魔力も流しとくか。
「じゃ、行くぞ〜? 避けれるもんなら避けるんだぞ〜?」
『必中』先生が付いてるので、避けれないんですけどね。
パシュシュシュ!!!
トリプルショットを撃ってみた。ガレス君はどうなるかな?
バチバチバチィ!!
「うがぁぁ!!!」
おうまいごっど。めちゃくちゃ痺れてるだけじゃないか。
「あれ? もしかしてVITがめっちゃ高いのかな?」
ふむふむ、そうとなれば今度は魔法で行く......前に何となく回復させとくか。じわじわコースだし。
「ステラ、癒せ」
右手にステラを出し、『癒しの光』でガレス君を回復させた。
「あ、いい事思いついた〜」
これ、アルテでステラを飛ばせないかな?
もし必中が発動しなくても、顕現で呼び戻せるし、攻撃の判定が『剣王』の判定なのか、『王弓』の判定なのか知れる。
「構え......られるな。それ行けステラ!」
ステラの刃でアルテの耐久値が減りそうな構えだったけど、多分大丈夫だろう。
ドンッ!
音が低いな。矢が大きいからかな?
「がぁ! 痛てぇ! 正々堂々やれよ!」
「え?......あぁ、確かに。ガレス君が攻撃出来てないな。それは正々堂々ではないな!」
武術大会でも、部門ごとに別れていることだし、彼が剣なのに俺が弓を使えば、一方的になってしまうな。
ま、そんなことどうでもいいけどさ。
「ステラ、アルテ、お留守番だ」
ステラを手元に顕現させて、アルテと一緒にインベントリにしまう。
「よし、ガレス君。これならいいだろう?」
俺は愛剣のアイアンソードを出した。
あ、そうだ。アイアンソード君の愛着度を見ておこう。
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アイアンソード Rare:1
攻撃力:20
耐久値:420/300
付与効果『剣の意思1/2』
愛着度1165
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「およ? 君、おかしくなってない?」
耐久値が上限超えてるし、なんか付与効果が付いてるし、愛着度が1100を超えている。
この1/2って、1つはフーに行ったって事か? なら、もう1つは......
『ルナ様、初めまして』
「だ......誰?」
またこの展開かよ! これがテンプレか!?
よし、落ち着こう。落ち着いて餅つこう。
「ガレス君、少々時間を貰えるかな?」
「死ねぇぇ!!!」
キン!
痺れから回復したガレス君が剣を振るうが、剣速が遅いので対応が間に合う。ガレス君は『剣術』のレベルは上げてないのかな?
「怖いよガレス君。落ち着こうガレス君。大丈夫? ガレス君。負けるの? ガレス君。スキルレベル上げようよガレス君」
「うるさいうるさいうるさい!!!」
煽った結果、顔を真っ赤にしたガレス君が誕生した。
真っ赤なガレス君はただ剣を振り回すだけだった。
.....ふっふっふ、狙い通りです。
「『茨よ』」
「クソ!」
「ちょっと黙っててガレス君。今それどころじゃないんだよ」
茨ちゃんでジワジワとHPを削り、拘束する。
ではでは、決闘風処刑中に失礼します。
「あ〜あ〜、もしも〜し、聞こえる?」
愛剣に話しかけた。これ、傍から見たらただのおかしい人です。
『いかがしました?』
「えっとまず、君は誰?」
『私は付喪神です。ルナ様が使っていらっしゃった剣に、宿らせて頂いた神です』
やっぱりか。ってか『神です』って面白いな。
「君は実体化しないのかな?」
渋い声の愛剣に話しかける。
『依代が無いため、実体化出来ません。霊剣、神剣クラスの武器ならば実体化できるでしょう』
「ほぇ〜そうなんすね」
......また生産? そろそろしんどいぞ。
『あ、私は実体化させなくても構いませんよ? 私はルナ様の剣になれたことを誇りに思っていますので、今のままで満足でございます』
うわ〜、この人めっちゃ優しい。絶対に実体化させたろ。
「そうなのか。それはそれとして、フーは実体化に依代が必要とか言ってなかったな」
『あの方は元々、上位の神ですからね。感覚がおかしいのでしょう』
めっちゃ棘のある言い方をするじゃん、君。
「君はフーと仲悪いのか? 例えば、フーの方が位が上とか」
『いえ、私はあの方と同じ位の神でした。私があの方に気になっているのは、私の方が先にルナ様の剣に宿ったのに、あの方が先に実体化したことにです』
まさかの横取りだったのか、フーは。
「来い、フー」
布都御魂剣を顕現させ、帯刀する。あと、アイアンソード君も左手に持っておく。
『......実体化しませんよ?』
「別にいい。お前らで話し合っとけ。俺は魔法でガレス君を片付けるから」
この2人の事に関しては、ガレス君を放置するレベルで大切だ。
「『サンダーチャージ』『サンダーチャージ』『サンダーチャージ』『サンダーチャージ』」
400MPの最大チャージを4回発動させる。今回は放送中の為、ちゃんと4回唱える。
「じゃあ、キアラさ〜ん! 用が出来たんで終わらせますね〜!!」
「オッケー!」
「じゃあな、ガレス君。次は悪さしちゃダメだぞ?」
「うるさい! 黙れよ!」
幼児退行してるじゃん、ガレス君。大丈夫?
それから俺は、ガレス君からかなり距離を取った。
「ではさようなら。『サンダー』」
バリバリバリバリ!!! ドガガガン!!!!
すんごい轟音と共に、ガレス君に雷が落ちる。
━━━━━━━━━━━━━━━
『特殊クエスト:罪人の公開処刑』をクリアしました。
『報酬』
・100,000L
・『オリハルコンのインゴット』×10
・『アダマントのインゴット』×10
━━━━━━━━━━━━━━━
あ! 報酬に色が付いてる! この2つは特に有難い!!
「プレイヤーの皆! 今の見た? あれはちょ〜っと特殊な条件をクリアした時の『サンダー』だよ! 凄いね!」
普通に観戦してんじゃないよ、あんた。
「っとと、大事なことを忘れてた。いい? 次に住人を沢山殺したら、今の『サンダー』よりも重い、必殺の魔法、『アカウント凍結』を食らわすからね!」
.....これ、『沢山殺したら』って事は、少しの殺人なら、またこういう事が起きるって事か?
「では、今回の公開処刑は以上だよ! あと話す事は......大会の時に言うね! じゃあ、ばいば〜い!」
放送が終わった......のかな?
「へいへいルナくん! お疲れ様!」
「あ、お疲れ様です。どうやって来たんですか?」
「運営権限」
「ひどい」
魔法の4文字を使いやがったな、この人。
「じゃあルナ君も戻すね? ソルちゃん達も一緒にギルドに送るよ!」
「あ、はい」
急展開だな。まぁ、早く終わるのは助かる。これでようやく依頼が受けられるからな。
「じゃ、今回は本当にごめんね? また生放送に呼ぶから」
「えっちょ待」
ギルドに飛ばされた。
「おかえり、ルナ君」
「おかえりなさい父様」
「派手だったね〜ルナ」
「うるさかったな、ルナ」
「あ、うっす。ただいま」
もうさ〜、また生放送に出ることが決まったようなもんだよな〜、あれ。
......はぁ。
よし、切り替えよう。生放送の時は、その時の俺に任せよう!
「じゃあランザ、なんか良い依頼無い?」
展開が.....追いつかない.....
アイアンソードのおじ様も、後々出て.....くる?
愛着度のシステム、裏がいっぱいあるんですよね。だって、説明にはありませんが、半分はガチャ要素がありますから。ふへへ(ガチャ中毒者の目)
次回は初めての依頼ですね。ようやく冒険者。長かったです。80話以上もかかりました。
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