戦果とドン引き
「お、いたいた! スライム! 今回こそ斬らせてもらうぞ!」
俺はスパーダさんから教えてもらった剣術スキルを身につけ、インフィルスライムと対峙している。
朝の時のように叩きつける結果にならない事を祈りながら、刃を意識して、小指に力を入れて真っ直ぐに剣を振り下ろした。すると
ザンッ!
斬れた。
「斬れた !よっしゃ! これで剣が使え「グボッ」......る」
スライムに突進された。HPが5、減っていた。
忘れてた。斬れただけでスライムはまだ生きている。
一旦距離を取って剣を構え直す。
「やってしまった、初めての被弾が自分の油断だなんて......もう同じミスはしたくないぞ。集中しろ、俺」
敢えて口に出すことで耳と脳できちんと覚える。
油断大敵とは言ったもんだ。戦闘中に他の事を考えるなんて1番やってはいけないことをしたと思う。
「いや、知らんがな!! リアルでは戦闘なんて道場ぐらいでしかしたことがない斬り!」
そんな技とは言えない普通の斬撃を放ち、それを受けたスライムはポリゴンとなって消えた。
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『インフィルスライム』を討伐しました。
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「およ? レベルが上がらないのは予想してたけどドロップ品も無いのか。ってかドロップ品ってどこに入るんだ?」
困った時の『ヘルプさーん!』
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ドロップ品はインベントリに収納されます。
インベントリの開き方は『インベントリ』と念じることで開けます。
また、インベントリはLv×10種類のアイテムが入ります。
1種類につき、99個まで収納できます。
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なるほど! 色々なものを買わない限り、インベントリがいっぱいになることは無さそうだ。
だが俺は色々な事をしてみたいのだ。弓術や槍術はもちろん、生産系の錬金術や鍛治とかもしてみたい。だから早めにレベルは上げるようにしようか。
「よし、そうとなればやることは1つ。『スライム狩り』じゃあ!!!」
━━━━━━━━━━この時の俺は馬鹿だった。
いつ、誰がこの草原にはスライムしか居ないと言ったのだ? アウルさんからインフィルボアの事を聞いていたのに、剣術を取ったことで頭からすっぽ抜けていた。
「ぶふっ」
HPが30も減った上に、4m程吹っ飛ばされた。吹っ飛ばされる前の位置を見てみると、1匹の猪がいた。
「忘れてた、インフィルボアのこと」
とりあえずインフィルボアを倒してから反省しよう。
そこから俺は静かに突進をサイドステップで避け、隣を通り抜けざまに剣で斬り裂く、というのを繰り返した。
そして10数回目の斬りつけをした時、インフィルボアはポリゴンとなって消えた。
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インフィルボアを討伐しました。
インフィルボアの皮×1を入手しました。
インフィルボアの肉×2を入手しました。
レベルが1上がりました。10SP入手しました。
『回避』スキルを獲得しました。
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「よし、反省タイム!」
まずは油断。同じミスはしたくないと言ったのに同じミスをしてしまった。
ではどのようにして油断しなくなるか考えよう。
「こればっかりは経験で覚えるかぁ」
考えた結果は『体で覚える』だった。
リアルでは猪と戦った事なんてないからな。
自然が少ない街で生きてきたんだ。動物の気配とか分からないのだ。
次は、『回避』スキルについて。
これは初めて、自分で開発したスキルということになるな。インフィルボアの突進を避けただけだが、それだけで取得できるなら安いもんだ。
詳しい情報をステータス欄から見ると、このようなスキルだそうだ。
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(その他)
『回避』
・認識した相手からの攻撃を避ける時に補正がかかる。
・AGIの値が高いほど、避けられる攻撃が増加する。
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これ、1つ目はスキルの説明で、2つ目は回避に関する情報か。2つ目の情報に関しては、『当たり前じゃないか』とも思うけど、まだどんな攻撃が避けられて、どんな攻撃が避けられないか分からないからな。要検証だろう。
「よし、反省タイムを終わりにしてスライム狩りを始めるか」
6時間後──
「ふぅ、こんなもんでしょ。結果を確認するか」
街の近くまで来たので結果を見ることにした。
スライム狩りの初めの方に戦闘結果を任意のタイミングで確認する設定があったのでオンにしたのだ。
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『インフィルスライム』×352体討伐しました。
『スライムの核』×170を入手しました。
レベルが9上がりました。90SP入手しました。
『剣術』スキルのレベルが15上がりました。
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「おっほぉ! めっちゃ倒したな! レベルがそこまで上がってないのはスライムよりレベルが高くなったからかな? んでもって『スライムの核』は何に使えるんだろう。後でレイナさんに聞くか」
剣術スキルも伸びてくれて嬉しいぞ!
SPは今後の方向性が決まったら振ることにしよう。
今はまだ、レベルアップだけのステータスでいいや。
ギルドについたので他の冒険者の対応が終わるのを待ちつつ、何を話すか考えていた。
うーんとりあえず剣術のレベルが上がったということと回避スキルのこと、あとはスライムの核について聞こう。
「次の方ー? あ、ルナさん! お疲れ様です。戦闘の方はどうでした?」
俺の番が来て、レイナさんが話しかけてきた。
「お疲れ様ですレイナさん。今日はあの後、ずっと草原でスライムを狩ってました。剣術スキルも15レベル上がったんですよ!」
そう言ったところでレイナさんが目を見開いていた。
「ルナさん...普通の人は1日で5レベル上げるのが精一杯なんですよ。差し支えなければどのようにして上げたか教えてくださいませんか?」
「そうなんですか? 自分の場合1レベルから始まったからじゃないですかね?あ、今日の戦闘についてお話しますよ」
そこから2人で話をしたがドン引きされた。
やはり1日で15もスキルのレベルを上げる人は居ないらしい。俺からしたら何故『俺だけが早いのか』が少し気になるので語り人の信用出来る友人が欲しいところだ。
そこで情報のすり合わせもできるしな。
回避スキルについても聞いたが、これは比較的簡単に取れるスキルとのこと。次ギルドに来たら比較的簡単に取れるスキルについて聞こうと思う。
もう話が終わる少し前に聞き忘れたことがあったのを思い出した。
「レイナさん。この『スライムの核』って何に使えるんですか?」
俺はそう言ってインベントリからスライムの核を20個ほど両手の上に出した。スライムの核1個がビー玉と同じような見た目とサイズだから、かなり綺麗なのだ。
「凄いですね! それはスライムのレアドロップなんですよ! 『錬金術』や『調薬』のスキルでポーションを作るのに必要なんですよ! ギルドで1つ100Lで買い取りますよ?」
「100Lですか、高いですね! カウンターの方であるだけ渡しますね?」
「ふふ、王都のギルドじゃ80Lですからね、確かに高いかもしれませんが需要がかなりあるのでこれでも利益は出るんですよ。あ、確かルナさんは買い取りは初めてですよね? その説明もしますね」
説明された内容は至って単純。『箱の中に買い取って欲しい品を入れる』というもの。だが1つ、面白い話を聞いた。
「買い取りに使う箱なんですが、インベントリからそのまま送れるんですよ。数が多いほど冒険者もギルドも大変、という理由でとある人が改良しまして。ギルド職員は箱の中の物とその数が分かるように、冒険者はインベントリから直接箱の中に送れるように改良されたんですよ」
へぇ。それは便利なこった。今回俺が買い取って貰うのは見た目ビー玉171個だからな。改良前でもそこまで苦労しないだろう。
そうして話は終わり、買い取りに移った。
「えっ......171個もですか......どんな運をしているんですか?普通、スライム30匹倒したら1つドロップするくらいのものなんですが............」
またドン引きされた。SPはまだ振ってないから素のレベルのLUCなんだがなぁ。
そうして俺は17100Lを受け取った。
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名前:ルナ Lv2→11
所持金:20700L
種族:人間
称号:剣士
所属ギルド:冒険者 (E)
HP:110→200
MP:110→200
STR:30→120
INT: 30→120
VIT: 30→120
DEX: 30→120
AGI: 30→120
LUC:15→60
CRT:11→15
残りSP:10→100
取得スキル
『剣術』Lv1→16
new『回避』Lv1
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次回、リアルでの動きがあります。
あ、あとステータスの変化を少し見やすくしました。
...見やすくなりました?