武術大会に向けて 7 お喋りな刀
前回のあらすじ〜
時間をかけて刀を作ったと思ったら謎の美少女巫女がでてきた!君の名前は.....?
「だ......誰?」
目の前の水色の巫女さんに言う。
......そういえばリルをテイムした時も、こんな感じだったっけ。
「私は『布都御魂』です。先程貴方が作られた刀と、貴方が今まで使われた剣の付喪神です!」
お、お〜ん? 付喪神って長い年月を経た道具とかに宿る神様とかの事だよな? 俺、刀は今さっき作ったとこなんだが......
「あ、付喪神とは言いましたけど、それは貴方の剣の方ですね。具体的に実体化に必要なのは『想い』と『愛着』ですので、貴方の心が私を呼んだんですよ」
......いや呼んだ覚えはありませんが。それに愛着って、もしかしてアイアンソード君かな? 後で見ておこっと。
「は、はぁ。とりあえず自己紹介でもしますか?」
「えぇ、お願いします」
理知的な人だな、きっと。
「俺はルナと言います。語り人で......特に何もやってないですね」
「やはり貴方が噂の方だったんですね! いや〜良かった〜皆が『アイツやべー』って言ってたんで気になってたんですよ〜!」
「あ、次行っていいですか?」
「あ、すみません! お願いします!」
理知的では無さそうだ。この人、これからどうするんだろ。消えるのか?
「私はソルです。ルナ君の彼女です! ルナ君はあげませんからね!」
「ソルさんですね。それにルナさんの恋人さんでしたか......なるほど」
何が『なるほど』なのか、気になるな......少しだけ。
「リルです。父様の娘です」
「貴女は.....フェンリルですか! テイムされてる個体は初めて見ましたね!」
「あれ? 分かるんですか?」
「勿論です。私はリルさんと戦った時の、あのアイアンソードですよ? あの子から戦いの記憶は全て受け継いでますからね!」
アイアンソード君、何してんの!? ってかどうなってるの!?
「そ、そっすか」
それしか言えないよ。布都御魂さん? にもアイアンソード君にも驚きだわ!
「えっと、あなたはこれからどうするんですか? 神様のようですし、神様らしく見守るんですか?」
あ、なんか言葉に棘があったかな。申し訳ない。
「そうですね、どうしましょうか?」
「知らんがな」
はい棘出た〜! 思わずツッコんでしまったよ! なんでこの人は目的も無しに来てんだよ!
「あ〜、では刀に戻っときましょうかね?」
「そんな事もできるんですね。では今度、何か用があったらお呼びしますね、では」
「ちょちょちょちょっと待ってください!」
「「「え〜」」」
フェンリル時代のリルと同じく、かなりのお喋りさんなのかな?
「なんで『え〜』なんですか! 一応これでも神ですよ!」
「付喪神って下級神みたいな扱いをよく受けますけどね」
「んな分けないでしょう! 基本的に付喪神って、強さ的には中級神と上級神の間ですよ!?」
「「「へぇ〜」」」
適当な事を言ったら、詳しく返ってきた。
「それで? なんでここにいたいんですか? 理由は?」
ソルとリルの分の刀を作りたいんだけど......
「な、なんて事を......私は貴方に呼ばれて来たのに......」
「いや、呼んでませんから」
「え?」
「え?」
本当に呼んだ覚えは無い。ただ楽しく刀を作ってただけだ。
「じゃ、じゃあ私、どうすればいいんでしょう? 前に気になってた人を諦めて、ルナさんのところに来たんですが......」
「いや知りませんって。......それじゃあ、前に気になって人はどんな人ですか? そこまで送りますよ」
「あ、それはいいです。皆さん知ってる人ですし、ルナさんに負けてますから。なんか可哀想じゃないですか」
「「「負けてる?」」」
俺、人と戦ったのって、スパーダさんやカレンさんくらいなんだけど。
「はい。名前は『カレン』って人でして。なんか刀を使う人で1番強いらしいじゃないですか? それで、そんな人が戦うってなったら毎回見てたんですよ、私」
「そうですか」
「はい。それで、いつものように『あ〜また舐めプして勝つのかな〜』って思ってたら、負けたんですよ、彼女」
「......そうですか」
うわ〜、凄く身に覚えがあるな〜、なんでだろ?
ってこの人、舐めプ知ってんのか。
「そうなんですよ。全力の『魔刀術』を使っても、相手の魔法で一瞬にして封じられたんですよ。それを見て、相手の人に思いましたね。『うわ、今のうま〜! この人の付喪神になりて〜!』と」
「なんでやねん」
なんで『この人の付喪神になりて〜!』って思うんだよ。思考回路に異常を来たしてるのでは? キアラさ〜ん!
「だって、あんな鮮やかな拘束あります!? ねぇ、ソルさん、リルさん! お2人もそう思いませんでした?『すげ〜』って」
「そりゃ思いましたよ。ルナ君の全てがカッコよく見えますからね」
ダメじゃん! 嬉しいけど......嬉しいんだけどそれはダメでしょ!
「私も凄いとは思いましたね。それと同時に『あ〜やっぱり父様の子で良かった〜』とも思いましたね」
ブルータス、お前もか。
「ありりぇ? 2人だけベクトルがおかしい気がするな〜? 私、ビックリしてますよ?」
「まぁ、真面目な事を言うと戦慄しましたね。ルナ君は『戦う前から賭けていた』と言ってましたからね。それはもう、試合前の時点で決着が決まってるようなものですから」
ソルさん、真面目なコメントありがとうございます。それと戦慄させてごめんなさい。
「そうですね、母様の言う通りです。父様の強さ......というより戦闘における思考能力ですかね? それは他の人とは比べ物にならない精度を持っていると思いました」
幻獣であるリルさんも、真面目なコメントありがとうございます。高く評価していただいたようで嬉しいです。ちょっと予防線を張った感じです、アレ。
「お、温度差が凄い......お、 お二人もそう思いましたよね! なら、『付喪神になりて〜』とは思いませんでした?」
「「思いませんでした」」
布都御魂、撃沈!
「ど、どうして......」
「だって、ルナ君の彼女になれたんですもん。それに付喪神になる意味も理由も分かりません」
「母様と同じような理由ですね。娘でいられるなら、それでいいですから」
あら嬉しい。でもリルさん、あなたは(仮)が付きますからね?
「くっ! 付喪神より上のポジションに居ると言うのか......!」
「そりゃそうでしょ。ここでは家族みたいなもんですからね」
あ〜早く話終わらね〜かな〜。刀作りたいよ〜
「なら私も家族にしてください!」
「「「嫌」」」
「えぇ............」
何言うとんねんこの人。
「はぁ......では改めて。あなたは何が目的なんですか?」
「......ルナさんの刀になる事、です」
まさかの武器志望かよ。やる事無かったんじゃないのかよ。
「ソル、どうすればいい? この状況。俺としては別に、迷惑をかけずに普段は刀に居るならそれで良いと思うんだが」
「う〜ん......ルナ君の意見に賛成かな。リルちゃんは?」
「私は何でもいいですよ? 家族とは言わなくても、人が増えると楽しそうですし」
楽しい、か。
そうか、もっとこのゲームを楽しむのに、布都御魂も必要になるかもしれないな。
武器として、仲間として。
「じゃあ、布都御魂さん、いいですか?」
「なんでしょう?」
「家族にはなれませんが、一緒に居ていいですよ? なりたかったんですよね? 付喪神に」
話してて思うけど、この人は前から付喪神じゃなかったのかな? ま、今度聞くか。
「ほ、本当に良いんですか? 嘘ついてません? 私、知ってますよ?『ずっと一緒にいような』って言って浮気する人を......」
「は?」
なんだコイツ。人が真剣に決めたところに冷水ぶっかけやがって。
「すみません何でもありません許してください!」
「はぁ......で、答えはどうするんです?」
扱いに困るな〜この人。どんな役割の人なんだ? 結局さ。
「もちろん、貴方の付喪神になります! これからよろしくお願いします!」
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『布都御魂』があなたの付喪神になりました。
『テイム』スキルレベルが1上がりました。
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んん????? なんでテイムが??
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プレイヤー『ルナ』が付喪神を入手しました。
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わぁるどあなうんす。つくもがみ、にゅうしゅ。
「......はっ!」
「アナウンス来たね〜」
「びっくりだ。『テイム』スキルレベルが上がった」
「え? テイムが?」
「あ〜それは多分、私が実体化してるからじゃないですかね〜?」
「どういうことです?」
「あ、私に対して敬語は使わないでください! 私の方が話しかけづらいです!......それでは話を戻しますが、本来の付喪神は『実体化』しません」
うん、その『本来の付喪神』を知らないんですけどね。
それと敬語は辞めるか。一応、神なのにフレンドリーに接していいものか少し考えたんだがな。
「本来の付喪神とは、言わば思念体のような物です。武器の付喪神ならば、会話をして共に作戦を立て、その武器で戦ったりするのです。ですが私は、ルナさんの強い『愛着』と『想い』によって、実体化しています」
ほんほん、なるほど? 2割くらいしか理解してないけど。
「そして実体化した思念体とは、ぶっちゃけ『ゴースト』みたいな物なんですよ。悪意があったら私、普通にモンスターになってますよ。ふふふ」
ふふふじゃねぇよ。浄化するぞ?......ソルの魔法で。
「それで、ここでテイムの話が出るんです。先程私は、自分はゴーストのような物と言いました。では、ゴーストとはなんでしょう?」
「モンブランだな」
「え?」
「......モンスター、だよな」
何も言うまい。
「そ、そうですね! モンスターです。では一旦、私をモンスターと捉えるとどうなりますか?
先程、ルナさんは私に一緒にいてもいいと仰いました。これは、モンスターと友好関係を築いたと言えませんか?」
読めたな。
「なるほど。それでテイム君が上がった訳か。でも、酷いもんだな」
「だね、少し心に引っかかるね」
「そうですね。扱いが酷いです」
付喪神って、そこまで悪いイメージ無いんだけどな。モンスター扱いするのは気が引けるな。
「......温かいですね、皆さん」
「そうか?」
「そうかな?」
「そうなんですか?」
気の利いた事を言わないならば、ここは鍛冶場だからな。温かいというより、熱いぞ。
「えぇ。心が温かいです。今、私は心からルナさんの付喪神になれた事を喜んでいます」
「さいですか。......それで、刀作っていい?」
次はソルの分を作りたいんだけど、どんどん時間が無くなってきてるんだよな。
「はい! 勿論です。あ、宜しければ私もお手伝いしましょうか? これでも昔、刀鍛冶の作業風景を見てきましたから」
おっと? まさかの助手か? それとも師匠?
「ならお願いしようかな。布都御魂......呼びにくいな。名前変えていい?」
「はい、勿論です!」
なら変えよう。
そういや俺達って皆、名前が2文字なんだよな。『ルナ』『ソル』『リル』ってな。あ、『ル』も共通してんのか、凄いな。
まぁ、『ル』は入れなくていいか。でもどうせだし、2文字にはしたいな。
う〜ん......何かいい案は.........あっ!
「『フー』とかどうだ? 安直だが、分かりやすいし呼びやすいだろ」
布都御魂の『ふ』を取って、『フー』だ。あぁ......『スー』と『チー』が欲しくなるのは俺の病気かな?
「ではこれからは『フー』とお呼びください!」
「よろしくね? フーちゃん!」
「よろしくお願いします。フーさん」
リルのその呼び方、なんか危ない気がするな。
「じゃ、これかもよろしくな、フー」
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名前:ルナ Lv70
所持金:515,540L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E)
HP:790
MP:1,290<500>
STR:2,710(200SP)
INT: 710
VIT: 1,210(50SP)
DEX: 2,210(150SP)
AGI: 910(20SP)
LUC:355
CRT:49
残りSP:260
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv97
『王弓』Lv98
『武闘術』Lv1
『刀王』Lv1
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
魔法
『雷属性魔法』Lv85
『自然魔法』Lv82
『龍魔法』Lv1
『古代魔法』Lv1
生産系
『神匠:鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv98
『調薬』Lv1
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv15
『錬金術』Lv72
その他
『テイム』Lv2→3
『不死鳥化』Lv1
<>内アクセサリーの固定増加値
━━━━━━━━━━━━━━━
名前:フー(布都御魂)
性別:無し
レベル:1
種族:上位付喪神(霊剣:布都御魂)
HP:79
MP:79
STR:271
INT:71
VIT:121
DEX:221
AGI:91
LUC:355
CRT:49
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv99
『魔剣術』Lv99
『刀王』Lv99
『魔刀術』Lv99
魔法
『火属性魔法』Lv50
『水属性魔法』Lv99
『風属性魔法』Lv50
『雷属性魔法』Lv50
『氷属性魔法』Lv99
生産系
『鍛冶』Lv99
その他
『降臨』Lv0
━━━━━━━━━━━━━━━
ここまで.....長かった。89話ですよ89話!フーの本来の登場話、イニティの生産シーンなんですよ。まぁ、色々あって没になったんですけどね、それは。
スーとチーの所が分かった方は、きっと同じ道を歩んだ人ですね。えぇ。
では次回から準備編の最終章に行ける.....かな?お楽しみに!
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