武術大会に向けて 6 だ.....誰?
――前回の後書きより――
刀を『打つ』なのか『作る』なのか、調べてみましたがどちらでも良さそうですね。
「っし、刀作るどー」
「はい先生!」
「はいソル君」
「先生は刀の打ち方はご存知なのでしょうか!」
「......痛いところを突かないで下さい。少しは理解しているので多分大丈夫です」
理解していますから。......覚えている範囲は。
「じゃあまず、火からだな。今回は細かい調整がいるからアウラはお休みだ。『イグニスアロー』」
実は、鍛冶に魔法を使う時の裏技を発見したのだ。俺の場合、火にイグニスアローの火を使っているのだが、イグニスアロー自体を『発射しない』事で、MPの消費が抑えられることに気付いた。
要約すると、イグニスアローを『作って放置』する訳だな。『飛ばさない』なら発動したという判定が無いらしく、消費MPが魔法作成分の8しか減らない。
......これ、修正されそう。
「ほい、玉鋼投入〜」
炉に玉鋼を入れた。今回取り出すタイミングは、少し赤くなった、くらいの時だな。
低温で馴染ませながら打つ必要があるらしい。じゃないと玉鋼がバラバラに砕け散るそうだ。
「はい回収〜! そして延ばしていく、と」
『魔力打ち』で玉鋼を打って延ばしていく。
最初は低温で熱して叩いて馴染ませたら、少しづつイグニスアローにMPを注いで温度を上げていく。
そして厚さが5mm程になった時に気付いた。
「はい、また忘れもの〜」
インベントリに打った玉鋼を仕舞った。
「何を忘れたの?」
「水だ。熱された鋼を急激に冷やし、炭素量を減らす工程があるんだけど、その為の水を忘れた」
「へぇ〜。ならお水持ってこようか?」
「いや、作る」
「......また魔法を作るの?」
「ん。マサキも『水属性魔法』の習得を頑張ってるようだし、俺も便乗だ。......少しズルをするけど」
『自然魔法』先輩ちーっす! いつも感謝してます!
「魔法作成」
と言った所で気付いた。『器』が無いことに。
......俺、忘れ物多いな。
さて、どんな魔法にしたものか......
そうだ! 水をその場で固定するような魔法にしよう。それなら見ていても綺麗だし、鋼をぶち込みやすいだろう。
そうしてできた魔法がこれだ。
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『自然魔法:アクアスフィア(消費MP:500〜5000)』
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大きさを最大にするのに5000もMPが必要になってしまったが、最大って多分、普通の二階建ての一軒家が丸々入るくらいの大きさだと思うんだよな。
「出来た!......攻撃にも使える魔法が」
「え? 攻撃にも使えるの?」
「使えるぞ。水を出すだけだけど、イグニスアローと合わせる事で水蒸気爆発を起こせるからな。あと、窒息だな」
それを聞いたソルの反応は――
「うわぁ......それ絶対に大会で使っちゃダメだよ?」
「えっなんで?」
「だってそれ、ルナ君も吹き飛んじゃうでしょ? だからダメ。自分に影響が無いような位置取りなら良いと思うけどね」
なるほど。自爆の可能性を忘れてたな。ダイヤゴーレム戦の二の舞になるところだった。
って窒息はいいんですね! タイミングがあれば大会で使いまーす!
「理解した。ありがとうな、自爆することを忘れていた」
「分かれば良いのです。大好きな人が吹き飛ぶのは嫌だから」
「ははっ、ありがとう。死なないように気をつけるよ」
やっぱり優しいな、ソルは。心配してくれて嬉しいよ。
「あの〜父様? 刀を作らなくていいのですか?」
「......はっ! も、戻るであります!」
話が脱線しまくりだったな。
「んじゃとりあえず、『アクアスフィア』」
600MP使って、バランスボールくらいの大きさの水を出した。
「「「おぉ〜!!」」」
インテリアにしても良い、そう思えるほど綺麗な水の球体だ。
「ま、そこにコイツをぶち込むんですけどね」
そう言ってからインベントリに仕舞ってある、延ばした玉鋼を水につけた。
ジュー! っと音を立てながら、玉鋼からポリゴンが散る。
「凝ってますな〜」
そして冷ました玉鋼を2cmくらいになるように叩き割っていく。
「えっ? 割っちゃうの?」
「あぁ。この断面を見て、硬い玉鋼と柔らかい玉鋼に分ける。硬い方が刃になるんだっけな、確か」
「へぇ〜よく覚えてるね〜」
そして小さく割った玉鋼を、鍛冶場に置いてあった梃子皿に乗せ、蔦で固定する。
「ほい、『蔦よ』」
ごめんよ蔦ちゃん......君は玉鋼を固定するだけの役割なんだ..........すまない。
そして次、本来は泥を塗って空気を遮断して、玉鋼が燃えるのを防止し、均等に熱する必要があるのだが、泥がないので魔法を使う。
「『サーキュレーション』」
コイツで外部の空気を遮断する。便利!
ここまで来て、ようやく鍛造の作業に入る。やはり日本刀は作るのが大変なんだな。
そうして硬い玉鋼を炉に入れ、熱していく。
玉鋼を取り出し、ハンマーで叩いて長方形に延ばす。
そして採掘用の万能ツルハシを鏨に変形させ、玉鋼に切り込みを入れ、半分に折り、また叩いていく。
この作業を15回、繰り返した。
柔らかい玉鋼の方は、9回繰り返した。
そう、この鍛錬の作業、硬い方と柔らかい方で別々にやるのだ。だから時間がものすごくかかる。
そして次は『造り込み』と言われる作業だ。
これは硬い玉鋼と柔らかい玉鋼を組み合わせる事だな。
でも今回、俺はまたズルをする。
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『玉鋼(皮鉄)』と『玉鋼(心鉄)』を合金化しますか?
消費MP:200
成功率:100%
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錬金術による合金化で、玉鋼を一体化させる。
そして一体化させた玉鋼を今度は棒状に打ち延ばしていく。
この時に魔力打ちと思いを込めるのを忘れない。
そして玉鋼を打っていると、変化が起きた。
「およ? 君も光るんだね。しかも綺麗な水色か」
玉鋼が超クリアな水色に変化した。ガラスみたいだな。
変化した玉鋼の名前を見てみた。
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『斬鋼ノ御魂』Rare:――
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はいこれ神器になりますね、ありがとうございます。
レア度が表示されない上に、御魂って付いてるもん。
御魂だよ御魂! 神様ですわよ!?
「凄く綺麗になったね! でもそれ、本当に玉鋼なんだよね?」
「そうだぞ。俺の中では、コイツは確実に神器になると思ってる」
「と、父様......そちらは本当に玉鋼なのですか?」
「ん? そうだけど、どうした?」
「い、いえ。母様の指輪を超える力を......神気を感じましたので。もしこれが武器になれば、神獣でも耐えられないでしょうね......」
およよ? まさかの幻獣に特効あるの? 楽しみだな。
「それは楽しみだ。いずれフェンリル以外の幻獣とも戦いたかったからな」
まだ棒状の玉鋼なのに、『ヘラの指輪』を超えるとか、刀になった時が超楽しみだ!
そうして次に、棒状から日本刀の形に打ち出していく。
時間かけ、丁寧に丁寧に魔力打ちで叩いた。
そして荒仕上げで、フェルさんから貰ったヤスリで表面を削り、整えた。
次に、炭の粉と水を混ぜ合わせた、『焼刃土』というのを塗っていく。
刃の部分には薄く、他の部分には厚く塗っていき、塗り終わったらしっかり乾燥させる。
これと次の作業で、刃文が表われるようだ。
......ガラスに泥を塗る感じで、少し心が痛むな。でも、これは刀作りなので割り切っていく。
そうして乾燥させたら、炉に入れて全体を加熱する。
そして温度が大体800度ほどになったらアクアスフィアに入れて一気に冷却する。
こうして急激に冷却する事によって玉鋼は伸縮し、刃文や反りが生まれるのだ。
......俺、よくあの短時間で覚えたな。誇れそう。
そして仕上げだ。刀身を焼いて微調整し、鍛冶場に備え付けられている荒砥石で研ぎ、刃文がきちんと出ているか確認する。
「うん、美しい」
透き通る水色の刀身に、波のような刃文の刀だ。
こうして俺の刀が完成した。
完成した途端、刀と同じように透き通る水色の鞘に収まった。
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『霊剣:布都御魂剣』Rare:―― 製作者:ルナ
攻撃力:3000
耐久値:∞
付与効果『不壊』『斬』『魔力刃』『透明化』『生命力増強:1000』『魔力増強:1500』『全ステータス補正:大』『全戦闘系スキル補正:特大』『刀術補正:特大』『STR補正:大』『顕現』『降臨』『専用装備:ルナ』
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『降臨』
・布都御魂を実体化させる事が出来る。信頼関係が必要。
・装備者に『刀術補正:小』を付与する。
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「は、ははは......クソゲーかな?」
効果が多すぎて覚えられない。それに攻撃力が高すぎる!......あと、実体化ってなに!?
「貴方が噂のルナさんですか?」
「「「え?」」」
目の前に現れた、透き通るような水色の髪に明るい赤色の瞳の巫女服を来た女の人に話しかけられた。
「だ......誰?」
ようやく.....ようやく出したいキャラが来ました!!
謎の水色の巫女さんは一体.....?
ソルとのキャラ被りは防げるのか、楽しみですね〜
今回で生産編は終わる.....はずです。これからバリバリ戦闘していきますよ〜!.....ついでに冒険者も始めます。
お楽しみに!です。
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