武術大会に向けて 2 魔法を使うための魔法とお弁当
お腹痛いです...体調面と笑いすぎで。
「『イグニスアロー』『アウラ』」
俺は2つの魔法を炉にぶち込む。
周りに魔法の存在をバレたくないので小声で唱える。
ボッ!
「あ〜やっぱり」
予想として薪は一瞬で灰になると思ってたんだが、その通りになった。
ゴオォォォォ!
「あっやべ。消えろ!」
あ、危なかった!間違えてアウラに既定以上のMPを使ってしまって火力がとんでもない事になっていた。
「よ、よし。見られてないな」
周りのプレイヤーに見られてたら小声で魔法を使った意味がないじゃないか。
「父様、今のは熱すぎるんじゃ......」
「そうですよ、その通りですよ。調整ミスりました、はい。」
つ、次は失敗しないもん! 使うMPを少なくして、継続して魔法を使うようにすればいいんだもん!
「『イグニスアロー』『アウラ』」
ボォォォ
「っし! 完璧だ! リル、どうだ?」
上手いこと調整ができた。火も安定して白色だ。
確か白色の炎って6000度とかだっけ? どこかで習ったような、習わなかったような......
「あ、熱いですね。でも安定していて大丈夫そうですね」
「そこまで熱いか? 俺的にはポカポカするって感じだが」
「それは魔法の使用者だからですよ。魔法に流れる魔力と同調して、使用者にかかる魔法の負担が激減しているんです」
へ〜なるほど。それでゴーレム戦の時はあんな近くでも大丈夫だったのか。......いや大丈夫じゃなかったけど。
「ん〜、とりあえずキャンセル」
俺は魔法を消した。
魔法って消す分には意思や口頭だけでいいから楽だ。
「どうされました?」
「いや、リルが熱くてしんどいと思わないようにするにはどうすればいいか、考えようと思ってな」
パッと思いつくのは新しい魔法を『自然魔法』で作る事だ。水関係の魔法なら空間を冷やせるだろうからな。
......でも、これじゃダメな気がするんだよな。
まず、水をどうするのか、という話だ。
霧状にするのか? 薄い膜みたいにするのか?
霧状は論外だろう。余りの熱さで逆効果になる未来が見える。
そして、膜にするのはそもそも難しいのだ。
イメージが全然固まらないからな。そういう魔法を作ること自体が難しい。
それに、自分達だけだとお隣の鍛冶場のプレイヤーへの熱さがそのままだ。
そこから魔法がバレたら武術大会どころか、普通プレイにも影響が出るかもしれない。
「これは......お勉強タイム入るか?」
「お勉強、ですか?」
「そうだ。遂に『水属性魔法』を習得する時が来たのかもしれん」
いずれは覚える予定なんだが、今はいっかな〜って思ってるんだ。
だって、アルカナさんが『自然魔法は聖と闇以外の属性魔法を合わせたものだと思えばいい』って言ってたんだもん。
べ、別に時間短縮と称してサボって訳ではない!!!
ここで俺は閃いた
「あ! 水じゃなくていいじゃん!」
「?」
「風だよ、風。自然魔法で風の壁を作ればいいんじゃないか? それなら見られることも少ないだろうし、快適だろ?」
「なるほど! それは名案ですね!」
言葉が火の問題の時と逆になったな。
「では早速作るか。周りに見られてないか確認を頼む」
「はい。......誰も見てませんね。大丈夫です」
「OK、魔法作成」
鍛冶の為に、そして周りのプレイヤーの為に魔法を作るやつは俺が初めてなのでは?
そして魔法陣が出る。......25個の円で出来た魔法陣がな。
「マジか......やるしかねぇもんな」
やってやろうじゃねぇかよこの野郎!
イメージを固める。
まずは空間の把握だ。範囲を決める。範囲は俺を中心に3mの半球状だ。
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
次、風の流れだ。先程決めた範囲で循環するイメージだな。外側の涼しい空気を取り込みながら、内側の熱い空気を少しずつ出していく。そんなイメージ。
『カチッ!』
『カチッ!』
おっし! んじゃ次は速度! これは10秒かけてゆっくりで!
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
パーフェクッ! 次、MP!
『カチン!』
『カチン!』
『カチッ!』
『カチッ!』
『カチン!』
2つの円が普通の反応だった。頑張れ、MPちゃん。そんでもってスキルレベルはどうなんだ?
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
パーフェクッ! 2回目の項目全カチン頂きました。
ラスト、名前!......はどうしようか......あ、これなんてどうだろう。
「『サーキュレーション』!」
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチン!』
『カチッ!』
1つぅぅ!! 惜しい! どんな名前が良かったんだ? お前は。
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『自然魔法:サーキュレーション(消費MP:250)』の作成に大成功しました。習得しますか?
『はい』『いいえ』
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......はい。消費MP多いっすね。
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『自然魔法:サーキュレーション(消費MP:250)』を習得しました。
『自然魔法』のスキルレベルが5上がりました。
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「完成だ、リル」
「おめでとうございます!」
う〜む、消費MPが過去一で多いな。ストックしてるマナポーション、足りるかな?
まぁ、足りなくなったら足すだけやから。
「やっほ〜! ルナ君、リルちゃん!」
「お〜ソル〜」
「ようこそ、母様」
「お弁当作ってきたよ! リルちゃんの分もあるからね!」
「ありがとう、嬉しいよ」
「ありがとうございます!」
「どういたしまして。それではお昼だし、食べますかな?」
「「いただきます」」
おぉ、珍しくリルと言葉が被った気がする。
「分かった! ちょっと待っててね、すぐ用意するから」
今思えばこの鍛冶場、1人分のスペースがかなり広いんだよな。
溶鉱炉に金床、テーブルや椅子もある、かなり充実した鍛冶場だと思う。
お弁当、楽しみだな。
午前は鍛冶自体出来なかったけど、午後からは頑張ろう。
そうリルをモフりながら考えていた。
「お〜い、お〜〜い! そこのリルちゃんと戯れてるお兄さん? 用意出来ましたよ?」
「あっ、すまん。ありがとう!」
「はいはい。ほら、こっちに座って?」
どうやって弓を作ろうかと考えていたら没頭してしまっていた。
「よっこいせ」
抱っこしてたリルを俺の隣の椅子に座らせる。
「ふふっ、本当の親子みたいだね?」
......おうまいがー、確かに今の行動をリプレイすると、99パーセント親子に見えるわな。
「確かに。まぁ、リルが可愛いからしょうがない。これからも親子に見える場面は増えるだろうな〜」
「は、はい。ありがとうございます」
「ほら見ろソル! リルは天使だぞ! 強くて可愛い最強の天使だ!」
モフモフ、可愛い、強い。それ即ち最強だと。俺はそう思う。
「確かにリルちゃんは天使だね!......じゃあそろそろ食べよっか!」
「そうだな。では、いただきます」
「「いただきます!」」
お弁当箱を見て思ったんだが、この箱、何で出来てるんだ? 見た目は金属、でも触った感じは木材なんだよな。
まぁ、いいや。ゲームですから......
ではお弁当の定番、ハンバーグから頂こう。
「お、美味しい!......いや、美味しすぎないか?」
リアルで食べるハンバーグより美味しい気がするんだけど...
「ふっふっふ。気づいたね? ではそのお肉、なんだと思う?」
「え? う〜ん、そう言うって事は普通の肉じゃないのか。なら、そうだな。オークとか?」
アイツの肉、ストックだけ大量にあって全然食べてないんだよな。
「残念! 違います。ヒントは私達がまだ倒していないモンスターだよ」
それ、難易度めっちゃ高いんだけど。
「え〜? 分かんないな。リルは分かるか?」
「はい、この味は多分、『ワイバーン』ですよね?」
「リルちゃん大正解!! このハンバーグはオーク肉とワイバーンのお肉の合い挽きだよ!」
え、えぇ? ワイバーン? ワイバーンって言えばあのドラゴン的なあれ?
くっ! 戦ってみたい気持ちがある!
「ワイバーン......どこで出るんだ?」
「ふふっ、そんなに気に入った? また作ってあげるね!......それでワイバーンなんだけどね、王都に来る前、森林と王都の間の草原があったでしょ? あそこに極々稀に出るんだって。既に掲示板で敗北報告とか、蹂躙された〜って書き込みが沢山あるよ」
「......あそこか。武器作りが終わったら行ってみようかな?」
「う〜ん、辞めといた方がいいかも。なんか相当数のプレイヤーのヘイトを買ってるみたいで、すぐに人が集まっちゃうんだって」
ワイバーン、どんなモンスターか気になるもんな。有名どこだし、レアモンスターになってるという事もある。
そう考えると確かに、武器とか魔法を見られたくない俺からしたら困るわな。
「そうか、ありがとう。なら武術大会の後にでも戦いに行くとしよう」
「それがいいよ。......出会えるか分からないけどね」
「え? そんなに確率低いのか?」
「低いですよ、父様。ワイバーンは基本、群れで行動しますから、この辺りですと群れからはぐれたワイバーンなのでしょう。ですので、そう数はいないかと」
「「へ〜、そうなんだ」」
なるほど、ゲーム的に言えば『エンカウント率が低い』と言えるが、この世界的に言えば『はぐれた個体だから珍しい』となる訳だな。納得だ。
こういう凝ってる設定、好きです。
「「「ごちそうさまでした!」」」
「ソル、ありがとう。美味しかったよ」
「お粗末様でした。ありがとね、また作るよ!」
「美味しかったです」
「リルちゃんもありがとね!」
「さぁ、午後の狩りも......じゃねぇ。鍛冶を頑張るか」
「ふふっ、戦いはリアルで2日後だね!」
戦闘狂ルナ、爆誕!!
「だな。初めての対人戦、楽しみだ」
ユアストでの対人戦は初めてだ。リアルの方では師匠や陽菜と道場で打ち合ったりしたが、ユアストではどんな感じなのだろうか。
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名前:ルナ Lv68
所持金:515,540L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E)
HP:770
MP:1,270<500>
STR:2,690(200SP)
INT: 690
VIT: 1,190(50SP)
DEX: 2,190(150SP)
AGI: 890(20SP)
LUC:345
CRT:48
残りSP:260
『取得スキル』
戦闘系
『剣王』Lv97
『王弓』Lv89
『武闘術』Lv1
『刀王』Lv1
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
魔法
『自然魔法』Lv53→58
生産系
『神匠鍛冶』Lv100
『神匠:金細工』Lv100
『裁縫』Lv93
『調薬』Lv1
『神匠:付与』Lv100
『木工』Lv1
『料理』Lv15
『錬金術』Lv1
その他
『テイム』Lv2
『不死鳥化』Lv1
<>内アクセサリーの固定増加値
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彼女の作るお弁当とか羨ましいですね(血涙)
そして魔導書、完璧に忘れ去られる。
のちにこれがどういう結果を招くのか、お楽しみに...
次回は弓とアレを作りますよ!...多分
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くだらないことやユアストのあれこれ(ネタバレ有)を呟いてます!
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