刀神vs自称最弱
戦闘シーン...難しいです
「カレンさん、準備出来ました」
「分かりました! 早速やりましょう!」
実はまだ、準備は終わっていない。
今回はきっと、今までで1番苦労する戦闘だろうから、万全の状態で戦いたい。
その為に、ウィンドウを開いて、とある設定をする。
「ルールはどうします?」
「そうですね......先に生命力の5割が削れた方の勝ち、ではどうです?」
5割、か。
今、真・ギュゲースの指輪で増えてるの、魔力だけだからなぁ。ま、やるだけやるか。
「いいですよ、それで」
「では、始めましょうか」
カレンさんがそう言うと、ウィンドウが出てきた。
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『特殊クエスト:刀神と模擬戦』を開始します。
ルール
『勝利条件』
・『カレン』のHPが50%切る。
『敗北条件』
・『ルナ』のHPが50%を切る。
・場外に出る。
・降参
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・訓練場から出ると場外判定
・同時に50%を切った場合、再戦となる
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はぁ、自分用の神器が欲しいな。
まともな効果を持ってるの、真ギュゲしかないぞ。
ま、『刀術』を覚えられると信じてやるかね。
リザルトを『スキル習得時』に設定して、と。
「はい。では始めの合図はスパーダさんが出してください」
「おう、分かった。ルナは武器を出さなくていいのか?」
「あ、今出します」
そう言って出したのは愛剣だ。そう、『アイアンソード』だ。
「ん? それは前から使ってるアイアンソードじゃないのか? 新しい剣じゃなくていいのか?」
「そうですね。あの剣は貰い物なので、最初に出すのは嫌なんですよ」
三重トラップだ。今言ったのはフェルさんから貰ったアイアンソードだ。そして次に出すのは、俺が初めてアイアンソードを打った時にできた、『魔剣』を出すんだ。
そして最後に、ステラを出す。
『戦いとは、始めの合図は無い。相手を見た時点で始まってると思え』そう師匠が言っていたので、実践してみた。
狡くていい、酷くていい。対人戦では絶対に手を抜かない。ビギナーズラックで負けたら話にならない。だから最初から本気で行く。
「そうか、では。構え!」
俺とカレンさんは武器を構える。
いや、どっちも構えてないわ。
俺は自然体でいれるように剣を降ろしてるし、カレンさんも刀は鞘に入れたままで、抜刀の構えもしていない。
「始め!」
戦闘が始まった。
ここからは思考を辞めたら死ぬ。
「では私から行きましょう」
カレンさんは態々合図を出してくれた。
カン!
「うっは!」
カレンさんが抜刀の構えを取ったと思ったら、既に目の前まで刃が来てた。それを防いだ時に声が出た。
カン! カン!
2連撃が来たが、愛剣で防いでいく。
あ〜どっちから攻めようかな〜
「攻めないのですか? 武器が壊れるまで耐えるつもりなのです?」
「そんな訳ないでしょう。今も考えてるんですよ。『あ〜どっちから攻めようかな〜』って」
「呑気な方なんですね」
そんな! ちゃんと考えて最適な行動を取ってるのに!
証拠に今、地中の中で既に動き始めている。
「余裕がある、と言ってください。大体、カレンさんの剣速、早いんですよ。防ぐのがやっとです。」
嘘ついちゃった。でも、本当でもある。防いでいて思うが、この人は隙がない。
下手に攻めに出ると、普通に首を切られそうなんだ。
「そうですか? ありがとうございます。私としては、あなたの剣を受けたいところですけど......ね!」
「おっ」
あっぶね。燕返しで来るとは思わなかった。危うく思いっきり斬られるところだ。
「おぉ! 今までこの燕返しを防いだのは4位までですよ!」
「4位?」
「はい、武術大会の総合部門の順位です。ちなみにそこにいるスパーダさんは2位ですよ」
「マジですか!? ってことは今の、スパーダさんも防いだんですか?」
「えぇ、そうですよ」
スパーダさんって2位だったのか。燕返しより驚いた!
よし、そろそろ攻めようかな。弓で。
俺はインベントリから一瞬で弓矢を取り出し、セクスタプルショットを放つ。
ガキン! キンキン!
「凄い! 凄いです! 剣士と聞いてましたが、弓術士でもあるんですか!!」
「いえいえ、職業は剣士ですよ。二つ名......というより、称号は『最弱』ですが」
『無敗』も付くけど。
さぁ、ここからどうしようか。地中の準備は出来てるから、話しながら適当にキリのいいところで仕掛けるか。
「『最弱』ですか。不思議なものですね。あなたで最弱なら、6位以下はどうなるのか、気になります」
「あれ? それなら俺、カレンさんと同等の順位になってません?」
「私の主観では、同等ですよ。あの燕返しを防いだ時点で、私の切り札の1つは無くなりましたから」
それ、言葉の裏に『まだ切り札はある』と言ってるようなもんじゃないか。
......見たいな、切り札。
『刀術』習得もそうだし、なによりこの人の戦い方は武術大会での経験に丁度いい。
「では、俺からも攻めましょう」
そう言って、両手に剣を出す。
右手に愛剣、左手にフェルさんから貰った剣。
「それが言ってた剣ですか。私の予想では、魔剣クラスが出ると思ってましたよ」
「そんな物持ってる訳ないでしょう? この街には売ってないと聞いてますし、もし売ってても買える値段じゃないですよ」
「それもそうですね。では、来てください」
じゃあ行こう。フェイントも意外性もいっぱい含んだ戦い方で行こう。絶対に切り札を出させてやる。
カン! キン、キンキン!
斬撃は全部防がれた。なら突きは?
「ほっ!」
避けるか。なら混ぜる。
キン! キンキン! スッ、キンキン!
捌かれるか〜。これはステラの出番は早そうだな。
「奥の手ってどういう時に使えば良いんでしょうね」
「何を言ってるのです?」
「いえ、カレンさんは予想以上だったので。少し気になったんですよ。奥の手を出すタイミングってかなり重要じゃないですか?」
「何を当たり前の事を......っ!」
カレンさんが言い終わる直前に、左手の剣を『投擲』した。
ザクッ!
「奥の手です」
「なるほど、上手いですね」
命中してくれて良かったよ。でも、カレンさんのHPがどれだけ削れたか分からないんだよなぁ。
そう思ってら、視界の端にHPバーがあった。
全然気づかなかったよ。
バーを見ると、5%程削れていた。
マジか、『剣王』の不意打ち投擲で5%って、めちゃくちゃ厳しいな。カレンさん、強いな。
「次は期待してください」
俺は魔剣を左手に出した。驚くかな?
「なっ! 魔剣じゃないですか!」
「気の所為ですよ。これはアイアンソードです」
嘘です、魔剣です。『魔剣:アイアンソード』なんです。
「いえ、それは魔剣です。今まで見た魔剣と同じ威圧感ですから」
流石に経験者は騙せないか。まぁいい、この戦いを楽しもう。
そこからは、連撃の出し合いと、不意打ちのオンパレードだった。
......やばい、魔剣の耐久値がもう無い。愛剣はなんで耐えられてるんだ?
キンキン! キキキキン!
「甘い!」
カレンさんが俺の連撃の隙を突いて、刺突を繰り出してきた。
ガン!
「なっ!」
遂に魔剣が逝ってしまった。
「はぁっ!」
カレンさんが更に斬撃を放つ。
(顕現、ステラ)
キン!
「なにっ!?」
良かった。心の中で呼びかけてもちゃんと応じてくれた。
右手の愛剣をインベントリに戻し、ステラを右手で構える。
「綺麗だな、ステラ」
右手のステラを見ると、太陽光を浴びて、薄く金色に光っていた。
「な、なんですか、その剣は......」
「カレンさんが負けたら教えます。さぁ、切り札を出してください」
もう直接言っちゃえ! その方がええやろ!
「......良いでしょう。『魔刀術:雷纏』」
カレンさんが唱えると、刀に紫電が走る。
「『魔刀術』ですか。初めて見ました」
「そうですか」
そう言ってカレンさんは抜刀術を繰り出してきた。
カン!
「ぐっ!」
なんだあの刀! 早いし重いし、何よりも痺れる!
「耐えますか」
透き通るような目で、カレンさんはこちらを見てくる。
まるで何も瞳に映ってないみたいだ。
カン! カン! ガスッ!
......痛てぇ。一撃でHPが4割削れらた。
そうだ、『癒しの光』を発動させよう。
そう思い、『癒しの光』を発動させると、5秒で全回復した。
「ほぉ、不思議な剣ですね。回復効果もあるのですか」
あ〜やばい、このまま剣で戦ったら負けるな。
この人、どんだけ強いんだよ。魔刀術使ってから強さが倍以上になってんだけど?
......よし、そろそろ決めようか。
「そろそろ終わらせましょう」
「そうですね、俺もそう思ってました」
カレンさんは納刀し、抜刀の構えを取る。
対して俺は、何も構えていない。
「『雷切』」
カレンさんの刀が超高速で抜かれた。
そして刃は俺に──
届かなかった。
「なにっ!?」
今のカレンさんは、蔦に拘束されている。
「失礼しますね」
そう言って俺は、カレンさんの腹に剣を刺し、HPを削った。
「そこまで!」
「「ありがとうございました」」
礼をして終わる。ついでにカレンさんを『癒しの光』で回復させる。
「凄い、凄いよルナ君! いつ魔法を使ったの!?」
「そうですよ! あなた、いつ使ったんですか!? 無詠唱は存在しないはずですよ!」
「だな。ルナ、お前はいつあの魔法を発動させたんだ? というかあの魔法はなんだ?」
質問攻めが始まってしまった!
「ま、待って。まず1つずつ、な?」
「そ、そうだね」
「じゃあまず、いつ使ったか、だけど。最初のカレンさんの攻撃から、ですよ」
「えっ? あの時ですか? でも、何も言ってなかった......」
「『行動詠唱』か。ルナはそこまで魔法を鍛えたのか?」
「魔法のレベルは92です。ですので、剣を防ぎながら地中で蔦の用意をしていました」
「「92!?」」
「なるほどね。ルナ君は最初からあの拘束を狙ってたの? カレンさんを捕まえた時、完璧な拘束だったけど」
「そうだ。そもそもあの作戦に全てを賭けていた。戦いが始まる前から、な」
確率2分の1の賭けだった。蔦は転移とかではない限り拘束できるように張り巡らせていたが、バレていたら終わりだ。
それに、拘束を破られても終わりだった。だからこそ、何十本もの蔦を使ったんだが、アクセサリーが無ければMPが切れてたな......
MP? ......あっ
「俺の魔剣......逝ってしまった......」
「「「「あっ」」」」
「ル、ルナ君、落ち込まないで! また一緒に作ろう?」
「そ、そうですよ父様! 魔剣をまた作りましょう!」
「ルナ。剣士たるもの、剣との別れもある」
「すみません、ルナさん......」
「あ、大丈夫です。あれ、初めて作った剣ってだけで、使ったのは数回の狩りの時でしたから」
俺としては愛剣が壊れなかったことを喜びたい。
正直、あの魔剣の『耐久値回復:魔』を超える勢いで攻撃したカレンさんに驚いている。
「そうでしたか......でも、すみません」
「いいんですよ。言ってしまえば試作品ですしね。愛剣が無事なので、問題ないです」
いや、問題なくはないな。でもまぁ、形あるものいつかは壊れるものだ。......神器でもない限り。
「そうだ! カレンさん、『刀術』スキルを教えてくれませんか? 俺、刀を使いたいんですよ」
「もちろんです。ご家族にも、お教えしますよ」
「「ありがとうございます!」」
気持ちを切り替えて行こう。
「戦闘中、習得出来なかったんですよ。ですので、よろしくお願いします」
「はい!」
という感じで、『刀神』の二つ名を持つ、冒険者ギルドのサブマスター、カレンさんとの模擬戦(?)は終わった。
ようやく3章の半分が終わった感じです。...多分。
戦闘シーンの描き方が手探り状態でして、すごく難しいです。型が決まってたり、遠距離戦なら書けるんですけどね...くっ!
では、次回、『可哀想なエリアボス』です!お楽しみに!
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