おさらいと練習 〜リルと共に〜
遅く...なってしまいました...
陽菜が帰っていったので、俺はユアストにログインして待つとする。これから聖剣の制作に入ろう。陽菜がいないと出来ないんだよな。
フェルさんの弟子の卒業条件が『ソルと2人で作った聖剣』だからな。難しい。
まぁ、聖剣作る前にリルやフェルさんには付き合い始めたと報告しとくか。
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「おはよう、リル」
「おはようございます、父様!」
ふっふっふ、リルよ、俺は進んだぞ!
「リル......俺とソルはな、付き合い始めたよ」
「本当ですか!? おめでとうございます! 父様!」
おう......
なんかめちゃくちゃ変な気持ちだ。自分のことを『父様』と呼ぶ子に、『付き合い始めた』って報告するのは、『何かおかしい』と感じる。
「俺の頭じゃ、それくらいしか言う事ねぇな。とりあえずフェルさんの所に行くか。近いうちに王都の方に向かうぞ〜」
「はい!」
まだソルはログインしていないから、リルと2人ですな〜。
あ〜早くソルに指輪を渡したい。あの神器の性能を見て、どれだけびっくりするか楽しみだな。
「「こんにちは〜」」
「おう! 来たか!」
「はい。そろそろ聖剣に手を出します」
「お? ってことは......?」
「めちゃくちゃ察しいいですね、その通りです。付き合い始めましたよ」
「おぉ! そりゃめでたいな! 祝いとして、アクセサリー作りに使ってるヤスリ、やるよ!」
マジですか!
「ありがとうございます! とても助かります。正直、卒業したらヤスリをどうしようか悩んでました」
「なら丁度良かったぜ。これからも励んでくれ」
「はい!」
そうして俺とリルは工房に入った。
「なぁリル〜」
「はい、なんでしょう?」
「聖剣作りの練習、俺達でやってみないか?」
「練習、ですか?」
「そう。俺、魔剣しか作ったことないし、『聖』のつく奴はアクセサリーと、ソルのための弓だけだからな、作れたの」
「分かりました。では、具体的に私はどうすればいいのでしょう?」
「うむ。分からん」
マジで分からないのだ。『気持ち』が重要だというのは理解しているんだがな。
......だってソルの為に作ったやつは、どれも『聖』が付いてるからな。
「俺が気持ちを込めまくって鍛えれば、多分聖剣は出来るだろうが、それだと卒業条件を満たしてないからな。
だから、練習としてリルには隣で気持ちを込めてもらう」
「気持ち、ですか?」
「そう、気持ち」
「分かりました。父様への気持ちを込めましょう」
「ありがとうな。俺もリルへの気持ちを込めるとしよう。それとごめんな? リルへの気持ちを練習に使ってしまって」
「いいんですよ。別に剣に込めたところで、私の気持ちは変わりませんから!」
それでも申し訳ない。ギュッとしておこう。
「ありがとうございます......えへ」
凄いな。俺なら『デュフェフェ』とか言いそうだけどな。......嘘だ。
「じゃあ、早速始めるか」
「はい!」
ソルには、起きたら工房に来てもらうように言っておく。
『ソル、できれば工房まで来てくれないか?前に言ってた指輪と、聖剣について色々したい』
よし、これでオーケー。
「さぁ、まずは剣の作り方のおさらいするか。リル君、言えるかね?」
生徒と教師風にいこう。
「はい、まずはゴブリンから入手できる『錆び付いた剣』を溶かすために、『上質な薪』を2本、炉に入れて燃やします」
「うん、正解だ。やってみようか。はい、これ薪と火をつける魔道具ね」
これは実験でもある。『鍛冶』スキルを持つ俺と、『鍛冶』スキルがないリルと一緒に鍛冶をした時、正常に鍛冶ができるのかを調べる。
「分かりました」
そう答えてからリルは炉に薪をくべ、火をつけた。
「うん、問題ないな。ではどのタイミングで剣を入れるか分かるか?」
「はい。炉の火が輝く時、ですよね」
「正解だ。ちゃんと覚えてて偉いぞ〜」
リルの頭を撫でた。うーん、モフいな。
「あ、ありがとうございます。見てましたから......えへへ」
「よしよし、ゆっくり火を見守ろう」
そうして2人で見守ること15分。今、リルは俺の膝の上にいる。
「あ! 光りました!」
「なら剣を入れようか。俺が25本、リルが25本でいこう。これなら実験結果にも影響してくれるだろう」
インベントリから『錆び付いた剣』を取り出す。
この、剣を溶かす作業で成功率や品質に影響するなら、リルは戦闘と魔法、料理くらいしかスキルが使えない。
「はい、入れ終わりました!」
「ん、じゃあ俺の番だな」
今回は先にリルが入れる。理由としては、最後に俺が剣を入れることによって、『俺が溶かした』鉄として扱われるかどうかが分かるからだ。
「よし、薪を追加して鉄の音を聞こう」
「鉄の音、ですか?」
「そうだ。剣を入れ終わったら薪を追加するんだ。以前は1度、インゴットにしてから薪を追加してたけど、インゴットにする前に追加しても聞こえることが分かったからな。
それと、鉄の音は『タン! タン!』っていう感じの、何かを叩くような音だ」
「分かりました」
俺は薪を追加で炉に入れた。
......あれ? 今気づいたが、鍛冶は鍛冶でも、『神匠』の鍛冶だから、リルにも何か補正とかかかるのではないか? 知らんけど
それから15分、鉄の音は鳴らなかった。
「なるほどな。ここで鍛冶スキルが必要になるのか」
「鳴りませんでした......よね?」
「あぁ。それにほら、これを見てみろ」
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『鉄のインゴット』Rare:2 製作者:ルナ&リル
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「本来ならこのインゴットの品質は5になるはずだ。だがこれは違う。まぁ、考えられるのは『鍛冶』スキルがないリルと一緒に作ったから、だろうが、ここまで品質が変わってしまうものなんだな......」
「そう......なんですね......」
のぉぉん! リルがめちゃくちゃ落ち込んでる!
耳がペターっとして、凄く可愛いんだけど、申し訳ないな。
「大丈夫だぞ、リル。元々生産系スキルが取れないのは分かっていたんだ。だから今回は実験も兼ねている。どうか落ち込まないでくれ」
「そう......でしたね」
「大丈夫だ。『低品質だから聖剣にならない』なんて誰も言ってないだろ? ここから魔力打ちと、心を込めて鍛えれば聖剣になるはずだ」
「はい、作りましょう! 聖剣を!」
「あぁ、きっと出来る」
ふぅ。これでバットエンドは回避出来たはずだ。
「じゃあ、もう一度熱してから、剣になるように鍛造するぞ」
「はい!」
鉄を炉に入れて、溶かしてから鋳型に流す。
「ここから打っていく訳なんだが、リルは魔力打ちは出来る......か?」
「魔力打ち、ですか? 分かりません」
「えっとだな、魔力を出しながらハンマーで叩くんだが、出来ないか?」
「出来る......と思いますが、難しいですね。魔力を出すだけなら簡単に出来ますが、『出しながら叩く』というのはかなりの高難易度です」
「それって語り人でも難しいのかな?」
「はい、そのはずです。むしろ語り人の方の方が難しく感じるはずです。その理由の1つとしては、語り人は元々『魔力』を持っていませんから。今までに無かった力を使うというのは、とても難しいことですから。......父様はどうか分かりませんが」
俺はアレだね。『やったらできた』みたいなやつだな。あの時は如何にして鉄を抑え込むかを考えていたからな、失敗していたら魔力打ちは覚えていなかっただろう。
「俺はまぐれだからな。運が良かっただけだよ。多分」
「そうなんですね!」
「あぁ。それじゃあ、俺が魔力を出して抑えるから、リルが叩いてみてくれ。叩く時に気持ちを込めてくれ。そうすれば聖剣ができる......はずだ」
「分かりました! 父様への思い、剣にぶつけてみます!」
俺と戦ってるかのようなセリフだな。......どっか広いところで、リルと模擬戦するのもいいかもな。
「じゃあ、始めてくれ」
「はい!」
そう言ってから俺は鉄に魔力を込める。この時、俺も気持ちを込めないとダメだろう。
俺の込める気持ち......というか、感情は、リルと初めて会った時の感情だな。『怖いけど楽しい』『もっと話したい』という心だ。
そうして1時間ほど、俺が魔力で抑え、リルが叩いた。すると──
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『聖剣:アンバーライト』Rare:10 製作者:ルナ&リル
攻撃力:150
耐久値:800/800
付与効果『月光強化』『耐久値回復:月光』『斬撃補正:中』『刺突補正:小』
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「出来たな、聖剣」
「出来ましたね! 聖剣!」
「「やった〜!」」
見た事ない効果を持ってるけど、後で確認しよう。
そうして2人で喜んでいると、工房の扉が開いた。
「やっほ〜! 来たよ!」
「ソル! 来てくれたか!」
「うん! 聖剣を作るんだよね!」
「そうだぞ。ちょうどさっき、リルと練習していたんだ」
「母様、これです」
リルはソルに、作った聖剣を見せる。この聖剣......アンバーライトは、『アンバー』の名のつく通り、琥珀色だ。
「凄く綺麗だね! 性能は......そこそこ、なのかな? というか、どうやって作ったの?」
「ソルも高性能な武器に慣れてしまったな。それと作り方は後で教える。それとこの聖剣、面白いことに鉄から出来ているのに、琥珀みたいだろ?」
「うん! 分かった! でも、鉄から作っているのに、どうして半透明になるの?」
「厳密にはわからん。けど、予想は着くぞ。それは『魔力打ちもどき』か『込める心』の片方か、はたまた両方だろう」
「『込める心』で変わるんだね。リルちゃんはどんな心を込めたの?」
まだ予想だぞ〜
「はい、母様。私は父様と『もっと話したい』『もっと一緒にいたい』という心を込めました」
「なるほどな。そういう事か」
「ん? どうしたの?ルナ君」
「いやな、俺も込めた心の中に、『もっと話したい』という気持ちがあったんだ」
「2人で同じ気持ちを込めたから、聖剣ができたってこと?」
「予想通りならな。俺とソルで作る時は、同じ気持ちを意識しよう」
「分かった! 早速作るの?」
「あぁ。今日か明日には、弟子を卒業したいな」
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名前:ルナ Lv60
所持金: 666,140L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E)
HP:690
MP:690
STR:2,610(200SP)
INT: 610
VIT: 1,120(50SP)
DEX: 2,140(150SP)
AGI: 810(20SP)
LUC:305
CRT:43
残りSP:170
取得スキル
戦闘系
『剣王』Lv63
『王弓』Lv43
『闘術』Lv71
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
魔法
『木魔法』Lv92
生産系
『神匠鍛冶』Lv42→50
『神匠:金細工』Lv67
『裁縫』Lv83
『調薬』Lv1
『神匠:付与』Lv86→90
『木工』Lv1
『料理』Lv10
『錬金術』Lv1
その他
『テイム』Lv2
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鉄から琥珀ってグレード落t...ゲフンゲフン!
エンジンを再点火して書いていこうと思います!
大丈夫...命削れば、1日に何話か書けるはず...です...
次回は予告できそうです。...問題がなければ、ですが。
次回、『2人の聖剣』お楽しみに!
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