覚悟を決めて、伝えた日
あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!
恋をした事ないのにこのシーンは難しすぎる!
ユアストのジャンルはVRゲームなのに...
あぁ、来てしまった。遂に来てしまったぞ、この日が。
「ドゥ曜日が来たドゥ」
俺のテンションはおかしかった。
「落ち着こう。朝6時からこのテンションでは夕方に倒れるぞ」
寝起きからエンジン全開だと、後々ぶっ倒れるに決まっている。
俺はとりあえず落ち着いてから、朝ごはんを作った。
「大丈夫、いつも通りだ。少し起きるのが早いだけ。他に気にする事はない」
口に出すことで再認識することってあると思うんだよね。
今日の朝ごはんは和食だ。俺の中で、朝食に和食を食べると、その日の体調が1番いい気がするのだ。
別にプラシーボ効果でもなんでもいい。俺の力にしないと。
そして40分もかからずに朝食ができた。
「ご飯、お味噌汁、鮭、卵焼きにひじきの煮物。うん、テンプレ和食だ」
絵に書いたような和食でござんす。
「いただきます」
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「ごちそうさまでした」
洗い物は先に済ませよう。......いや、先に着替えるか? でも、もし何かあったら面倒だしな。
「よし、先に洗おう」
そうして食器を洗ったら直ぐに着替える。
あと1時間くらいで陽菜が来るからな。
洗い物を済ませて着替えた。服装は昨日決めたヤツだな。本当にこの服以外に格好がつく服が無いのだ。
そして顔を洗ったり、最後の確認を終えたところで、40分ほど待つ。
ピンポーン!
「来た」
陽菜さんが来ましたわね。さぁ、プレゼントや諸々も持ちましたし、いざ、出陣じゃあ!
「は〜い」
「陽菜です。月斗君、来たよ〜」
「今出るから少々お待ちを」
用意は済んでるので直ぐに玄関まで行き、扉を開ける。
「おはよう、陽菜」
「おはよう! 月斗君!」
陽菜の服装は白のワンピースだった。めちゃくちゃ可愛いです、はい。見ているだけで心が浄化されそうだ。
俺は正直に言うぞ。覚悟は決めてるからな。
「その服、とても似合ってるな。可愛いぞ」
「あ、ありがとう! えへへ〜月斗君も、似合ってるよ! 落ち着いていてかっこいいよ!」
ぐはっ! か、可愛い。思考が掻き回される......!!
落ち着け。正直に感謝を伝えて、それから、それから......うん。頑張れ、数秒後の俺。
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ。それじゃあ、早速行くか?」
無難な選択だな。まぁ、しょうがない。
「うん! 行こう!」
陽菜はそう言って俺の右手を取った。
うは〜! ユアスト内じゃよく手を繋いでいたけど、現実で手を繋ぐと伝わる感触が全然違う。
なんだろう...... 人の温もり? のようなものを感じる。凄く心が満たされる感覚だ。
そして俺は左手で鍵を閉め、陽菜とエレベーターに向かう。
「なんか、恥ずかしいな」
誰に見られている訳でも無いが、恥ずかしい気持ちがある。ニヤついちゃいそうだ。気をつけてなきゃ。
「そ、そうだね! でも、繋いでいても......いい?」
その上目遣いは俺に特効ダメージが入るぞ。
「ダメな訳がないだろう。ずっと繋いでいよう」
勢い余ったー! やべぇ、気持ち悪いセリフが出ちまったよ! 死にそうだ。
「うん! 今日はずっと手を繋いでいようよ!」
耐えろ、俺。気合いでニヤけるのを耐えるのだ!
今の状況は、そう。インフィル草原のスライムに、俺の全アクセサリーをつけた状態で、魔剣で斬るような感じだ。......もちろん俺がスライムだ。
「あぁ。今日は土曜日だし、人が多いかな?」
「どうだろうね? 行ってからのお楽しみだね!」
エレベーターが1階に着いた。
「はい」
扉の開けるボタンを押して、陽菜が出るのを待つ。
「ありがとう!」
「は〜い。じゃ、行くか」
一旦手を離していたので、今度は俺から手を繋ぐ。やべぇな、これ。めちゃくちゃ勇気がいる。世のカップルの男性は凄いな。尊敬するよ。
それからはたわいもない話をしながら公園へ歩く。
「お、着いたな」
「お〜、人は......そこそこ? 少なくも多くもないね」
「だな。ぶらぶらとお散歩でもしようか」
「うん!」
公園を一周するように歩こうかな。
そうして公園を歩きながら色々と話した。『小学生の時、こんな事あったよね〜』とか、『中学の時に教えてもらった勉強法が役に立った』とかそんな話だな。
俺は話しながら気をつけていた。陽菜の歩幅に合わせたり、他の人にあまり近くならないようにしたり、とな。これ、かなり疲れるんだな。
世の気遣いができる男性を尊敬します。
こうして時間は過ぎていき、公園を一周して、噴水前に着いた。大体の時間はお昼前くらいだな。
よし、ここで言うか。言ってからネックレスを渡すか、渡しながら言うか。......うーん。
よし、言ってから渡そうか。
「陽菜、ちょっといいか?」
「どうしたの?」
......ふぅぅぅ。落ち着かなくてもいい、呼吸を整えて、これから言う言葉を頭に浮かべよう。
うん。それを『落ち着く』って言うんだな。俺は馬鹿かな?
「陽菜。俺と陽菜は小学生、中学生と一緒にいたけど、高校は無理だと俺は思ってたんだ」
「うん」
「でも、陽菜はいてくれた。大阪から遠い、東京の同じ高校まで来てくれた」
「......うん」
「1年生の時は気づけなかったけど、2年生になって、同じ教室で話しかけられた時、本当に驚いたよ。......驚いたと同時に、とても......とても嬉しかった」
「......うん」
「それでな......その、気づいたんだよ。俺が陽菜を、どう思ってるのかを」
「..........うん」
「陽菜、好きだ。俺は陽菜の事が大好きだ。今までは友達のような感覚でいたけど、これからは俺の彼女として一緒にいて欲しい。付き合ってくれないか?」
心臓が口から飛び出そうだ。底知れぬ恐怖が頭を覆う。
「はい! 私も、ずっとずっと前から好きでした!私の彼氏になってください!」
ふへ!?
「も、ももももちろん! これからよろしくな? 陽菜」
「う、うん! よろしくね? 月斗君!」
...こ、これで告白というのはいいのだろうか。
「......あ、そうだ。陽菜にプレゼントがあるんだよ」
「プレゼント?」
「そう、はいこれ。ネックレスだ。陽菜に似合うと思って選んだよ」
そう言って俺は太陽と月のネックレスの入った箱を出した。
「開けてもいい?」
「もちろん」
そして陽菜は箱を開けた。
「わぁ! 凄く綺麗! 太陽と月ってまるで私たちみたいだね!」
「だろう? 俺もそう思ったんだ。他にもいろいろと見てみたんだが、1番良いと思ったのがそれだ」
「ありがとう! 大切にするね?」
「あぁ。そうしてくれると嬉しいよ」
「......ところで、これは月斗君が私に付けてくれない?」
まぁじぃ? ......ピクニック目的か、そこそこ人が増えてきたんだが......まぁ、陽菜の為だ、喜んで付けよう。
「いいぞ」
そう言ってから、ネックレスを付けてあげた。
うんうん。陽菜は後ろから見ても可愛いですね。
「ありがとう!」
陽菜はお礼を言いながら抱きついてきた。
し......死ぬ! それは恥ずかしくて死んでまうぞ! ええんか? ユアストなら広場送りやが、ここだとマジで心臓止まるぞ?
「ひ、ひひひ陽菜?」
「えへへ〜」
おっふ。......しょうがない。死んでもいいからここは受け止めよう。
「......似合ってるよ、陽菜」
そう言ってから俺からも抱きしめた。
「......ありがとう。ずっと、こうされたかったの。昔、私が月斗君を抱きしめてから、月斗君が私を抱きしめてくれるのはいつなのか、ずっと待ってたの」
......昔、抱きしめられたのって......あれか、初めて陽菜と会った時の、道場でのやつか。
「それは長らく待たせたな。これからはいつでもするぞ」
「......うん!」
そうして離れ、手を繋いで話す。
「じゃあそろそろご飯とか食べに行くか?」
「そうだね! ......あ、そうだ! 月斗君の部屋のキッチンで一緒に作らない?」
うちかぁ。ま、問題ないな。掃除はきちんとしてるし、部屋に入られても問題ない。
「いいぞ。それじゃあ食材買いに行くか」
「うん!」
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「「ただいま」」
食材を買い、家に帰ってきた。
「じゃあオムライスを作るか」
「そうだね! オムライスと、コーンスープを作ろう!」
そうして手を洗い、キッチンに来た。
「じゃあまず、お米炊くか。早炊きで炊くから、大体30分ぐらいだな。その間にコーンスープを作ろう」
「おっけ〜。大体20〜30分くらいで出来るから、丁度いいね」
という訳で俺はお米を研ぎ、炊飯器に入れてお米を炊く。1人から2人に増えたところで、かかる時間は殆ど変わらない。
「ほい、お米はおっけーだ」
「うん! こっちも沸騰させないように温めるだけだよ〜」
......なんかこういうの、いいな。
1人暮らしだから、誰かと料理を作るのは初めてだが、これは中々に楽しいな。
「いいな。これからも2人で料理がしたいな」
「えっ!? 本当に? 私もしたい! すっごく楽しいもん!」
「だよな〜。2人で作ってると、なんというか、心が安らぐんだよなぁ。陽菜が暇な時にうちに来るか?俺が陽菜の部屋に入るのは、なんか申し訳ないし」
「ふふっ、うん、またこうやって料理を作りに来るよ!」
「そうか、なら次回を楽しみにしていよう」
そうして話しながら昼ごはんを作っていく。
「「できた!」」
「いい感じだな。オムライスにコーンスープは、ザ、昼ごはんという感じだ」
「そうだね!」
ではでは食べますか。
「「いただきます!」」
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「「ごちそうさまでした!」」
「美味しかった。陽菜と作って、陽菜と食べるのは楽しかった」
「私もだよ! 月斗君、料理は下手って言ってたけど、そんなこと無かったよ!」
「そうか? まぁ、これからは陽菜に教えて貰いながら頑張ろうかな」
「うん! いっぱい教えるよ!」
それから食器を持っていき、洗いながら話す。
「今日はこれからどうする? ユアストで聖剣作るか?」
「そうだね! そうしよっか。リルちゃんにも報告しないとね!」
「そ、そうだな〜」
リルは俺と陽菜が......ソルが付き合ったと知ったらどんな反応をするだろうか。
「それじゃあ家まで送ろうか?」
「ううん。外も明るいし、大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね?」
「心配するに決まってんだろう。......彼氏なんだし」
「え、えへへ〜。ありがとう!」
「こちらこそありがとう。改めてよろしくな? 陽菜」
「うん! 私の方こそよろしくね! 月斗君!」
最後にハグをして、陽菜は帰った。
「見送る時って......虚無感が凄いな」
好きな人と一緒にいたいと言う気持ちを、よく理解した。
「さぁ、これから聖剣作りだな。王都を目指して頑張るか」
武術大会はいつ行われるのだろうか。ソルと一緒に出てみたいものだ。
大変でした。今までで1番時間がかかったお話です。
これから毎日2本投稿しないと、年内に100話は難しそうですね。頑張りたいです。
さてさて次回から聖剣作りですね!
ようやく月斗君と陽菜さんがくっついたので、聖剣の話が進められます...
こっから一気に進められる...はずです!
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