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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
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最弱最強のプレイヤー

 


「はぁ............もう即死保護のストックねぇよ」



 激痛に体を焼かれながらも立ち上がると、戦闘中のソルにしては珍しく、驚いた顔を俺に向けた。



「ぶ、ブリーシンガメンを......外すの?」


「ん? あぁ。これがあると俺の真価が発揮出来ないんでな」



 勝手に回復されると、俺が俺たる所以のアイツが解除されてしまう。だから、多少の補正は捨ててでもブリーシンガメンを外させてもらう。


 俺の目指すべき場所であり、最高の矛盾を示すアイツ。


 そう──



「『最弱無敗』......俺がSPを振らず、最弱となる初期ステータスで戦う理由。ソルは知らないよな。この称号を」


「......名前だけは知ってるよ。昔、掲示板で見たもん。でも、皆ゴミ称号って言ってた......よ?」


「ハッ、これがゴミ称号? そんな発言をした奴が居るのか。俺がどうしてここまで勝ち続けられたのか、その理由がこの称号にあるというのに......皮肉なもんだ」



 SPさえ振らなければ、他人の何十倍という速度でスキルが育つこの称号がゴミ称号だと? 頭おかしいよ。



「どうせ『SPを振らないなんて勿体ない』とかそんな理由だろ。あ〜、バカバカしい。自制心の欠片も無い思考だ。ただ我慢するだけで、ただ己の力を磨くことに没頭出来る唯一の称号なのに......嘆かわしい」


「ルナ君?」


「はぁ。まぁいい。『最弱無敗』がどれ程強い称号か。最強のプレイヤーがこの場で示すとしよう」



 俺は布都御魂剣に雷纏を施すと、直ぐにクトネシリカを顕現させ、こちらも雷纏を発動させた。


『最弱無敗』は残りHPが3割以下の時に全ステータスが2倍になる、という効果だが、これがただの2倍と思っていたら痛い目を見る。


 この2倍は文字通り、ピンチの時に発動する効果だ。

 ピンチ......つまりは命の危険。それは極限状態とも言える、火事場の馬鹿力を発揮することを示す。


 人は本当に危なくなった時、アドレナリンと共にこの馬鹿力が出るんだ。



「究極の自己満足の為に戦おう。ハハッ!」



 未だ状況を飲み込むのに苦労しているソルに向かって、俺は布都御魂剣を使って『(らい)』を発動させ、抜刀した。


 バチィ!!!



「ぐぅぅ......! 重い!」



 HPが1。俺の状況は、誰がどう見ても死にかけの虫だ。

 いや寧ろ、死んでも尚ピクピクと動く虫と捉えている者も居るだろう。


 でもそれでいい。体が動くということは、勝利のチャンスがあるということだ。



「『イグニスアロー』『紫電涙纏』『桜器』」



 布都御魂剣を鞘へと強制的に顕現させた後、俺は直ぐに魔法による追撃とクトネシリカの再強化を行った。



「危なっ! くっ、私も!『火焔竜纏』」


「丁度いい。『清濁水纏』」



 1日に一度、チェリから貰える『神月の桜の花弁』を消費して作った刀に、俺は魔刀術の奥義を発動させた。でもこれは捨て石だ。命を繋ぐ為に捨てる刀。


 チェリ、すまん。悪い兄さんを許してくれ。



 バァァァァァァァァァン!!!!!!!!!



 轟音が身を包む程の爆発を起こした俺達は、濃い水蒸気に視界を奪われた。


 だがしかし、俺には見える。



「『サーチ』......ふんっ!」


「きゃぁぁあ!!」



 メテオラスを出すのが遅れたソルを、俺は完璧な不意打ちで、クトネシリカによる神速の一撃を腹へと叩き込んだ。


 珍しいソルの悲鳴だ。本当に珍しい。



『お兄さん、次に紫電涙纏を使えば反動喰らうかも』


「把握した。何が足りない?」


『シリカと魔刀術の相性。正直に言うと、シリカより神度剣の方が圧倒的に強いよ。魔刀術は』


「あっそ。別にいい。俺はシリカを使いたい」


『おぅふ......分かった。精一杯お兄さんの力になるね!』


「あぁ」



 ちくしょう。魔刀術以外でソルにダメージを与えられる攻撃......あるか?



「ステラ」


『分かりました』



 あるよな。ステラの【エクリプス】、そして【練磨の煌めき】なら俺のHPを増やすことなく、相手へとダメージを上げられ、且つバフもかけられる。



「──ヤバッ!」



 遠くの方でソルの声が聞こえた。

 さぁ、そろそろこの煙も晴れる。本格的に肉弾戦と行こうじゃないか。



「セレナ。【軍神】『雷槍』『水槍』『風槍』」


『注文が多いわね。任せなさい。あなたの願いに応えてみせるわ』



 視界が完全に戻った瞬間、俺は桜器で作り出した3本の矢を一度に構え、それぞれ別々の魔弓術を発動させた。

 これは付喪神が宿った武器だからこそ出来る、異なる魔弓術のマルチショット。


 本来は一点特化する魔弓術に、多様性を持たせるテクニックだ。



 ヂュンッ!!!!!



 おかしな音を立てながら、3本の矢はソルの胴体目掛けて走って行った。

 普通では見ることが出来ない、3色の綺麗な軌道は、瞬く間にソルの胴体へと命中した。



「くっ......」


「硬いな......まぁいい。仕込みはバッチリだ」



 先程矢を放った右手の薬指からは、銀色の糸が伸びている。



「燃えろ。『糸炎』」


「マズっ! 『不死鳥化』!!」



 あら、あらあらあらあら。あらあらあらあら? やっちまったねぇ。やっちまったねぇ! ソルさんよぉ!!! それだけはやっちゃいけない事なのに、遂に使ってしまったねぇ!!!!



『うわぁ、今のルナさん、わっるい顔してますねぇ』


『ねー! 正に悪役って感じ!』


『あら、気が合うわね。私も同じことを思ってたわ』


『わ、私もです』



 うるさいなぁ。寄ってたかって俺を口撃するとは、許せんぞ? 4人ともコスプレの刑にでもしてやろうか。



「それじゃあ、チェックメイト。『不死鳥化』」


「あっ!......もしかして私、やらかした?」


「あぁ。切り札の中の切り札。最早禁忌とも言えるカードを切ったな」


「......うぅ。でもまだ負けてないもん!」


「そうだな。好きなだけ攻撃してこい。10分は無敵だからな」



 あぁ、今の俺、凄く悪い笑顔をしているはずだ。鏡で見てみたい。きっと、何も言わずに斬り裂くと思うが。



 そしてソルの不死鳥化発動から10分が経つと、俺は一気に猛攻撃を仕掛けた。


 剣による捨て身の連撃や、魔法と弓術による中距離からの弾幕攻撃。そして最後には、ただの打ち合い稽古にも思える、互角の剣戟も繰り広げた。



「......あ、俺のも切れちゃった」



 俺の背中に生えていた炎の翼が燃え尽きると、ソルはチャンスとばかりに突っ込んできた。



「『紫電』『一閃』『(らい)』」


「おいおいおい、雷属性大好きっ子か? 俺相手に雷とは、ナンセンスも良いとこだ」



 ソルの刀伝いに雷の操作権限を【雷神】で奪うと、俺はソルへと雷撃を返却した。



「......読んでた」


「ん?」



 しまった。これはマズいぞ。ソルの持つあの御札......雷を吸収してる!



「今度こそ私の勝ち。『狐式:稲荷』」



 あ〜......いや待て。諦めるな。たかが上級神がソルに宿るだけだろ? ならまだ対策はある。そう、ある。1つだけ。



「カミサマ勝負と行こうや。【闘神憑依】」



 ソルの金髪がバチバチと稲妻を纏い出すと同時に、俺の銀髪は深紅に染まった。


 ......良かった。成功した。シリカ、お稲荷さんの相手は頼んだぞ。



「ッ! シリカちゃん!?」


「あはは! ごめんね狐ちゃん......いや、稲荷ちゃん。シリカ......いや、俺は昔から稲荷ちゃんのことが気になっててねぇ。お兄さんが作ってくれたこの時間、久しぶりにアレスとして戦わせて貰うよ」



 今までに聞いたことの無い口調で喋るシリカに、きっとこの場に居る全員が驚いただろう。



『アレス。お稲荷さんのことが好きなのか?』


「そうだ。一目惚れしたんだよ」


『ふ〜ん。良い趣味してるな? 俺もお稲荷さんの姿はどストライクだから、その気持ちはよく分かるよ』


「だよな! いや〜、やっぱアンタの元に来れて良かったぜ! 強くてカッコよくて、好みも合う......付喪神として、これ以上無い幸せだぜ」



 コイツ、思いっ切り男の状態になってんのな。

 でもソルをボコボコに殴りながらこの話をするのは、俺はどうかと思う。


 俺もお前も、好きな人を思いっ切りぶん殴ってる状況だからな?



「ハハッ、ハハハハ!! 楽しいなぁ!!!」


「楽しく......ない」


「あ〜、そっちは憑依じゃねぇもんな。一時的な降臨だっけか? 勿体ねぇ。まぁ、俺は特別だからな。ハハ!!」



 怖い怖い。でもアレスは、自分が周りと違うことを『イレギュラー』ではなく、『スペシャル』と捉えられる性格なんだな。


 これは素直に尊敬出来る。俺はいつも、自分をはみ出し者だと思ってるから。



「っとと、もう時間だ。お兄さん、あとは任せたぞ」


『あいよ。ブリーシンガメン、着けてやれなくてすまなかった』


「いいさ。心置き無く俺の想いを伝えたからな。今度神界に行く時が楽しみだ」



 明るい奴だなぁ。この辺りはシリカと全く同じか。



「......残りHP、1。頭の回る男だ」



 俺は自分のバフの項目に『最弱無敗』と『死を恐れぬ者』があるのを確認し、大きく怯んでいたソルの元へと走った。



「最後だ。打ち合いで終わろう」


「......いいの?」


「あぁ。3手で終わらせてやる」


「ふふっ、乗った」



 立ち上がったソルを鑑定してみると、ソルのHPは残り2で止まっている。

 つまり、どちらかが先に当てた方の勝ち。簡単なルールだ。



『ルナさん、本当にいいんですか?』


「もちろん。お互いに積み上げてきた成果を見せるには、これが1番だからな」


『でも、もし負けたら......』


「負けると思ってんのか? もっと俺を信じてくれよ」


『............不安です。でも、応援します』


「任せろ」



 ソルはアマテラスを、俺は布都御魂剣を抜刀すると、お互いに道場でやった稽古の様に、礼をしてから刀を構えた。



「はぁ!」



 ソルの掛け声と共に放たれた突きを左側に体を逸らして避けると、刀を水平に半回転させて切り払いへと繋げてきた。


 俺はその切り払いをしゃがんで避けると、今度はソルの右足で蹴りを繰り出してきた。



「貰った」


「しまっ──」



 俺は布都御魂剣を縦に構えると、ソルの足は刃を真っ直ぐに蹴り飛ばし、HPを0にした。



「うぅ......自滅かぁ。我ながら情けない敗北......」


「フッ、今のは連撃に執着したのが敗因だな。これからは相手を一撃で倒せる状況でも、ちゃんと落ち着いて倒すことを意識しよう」


「うん。それじゃあ......優勝、おめでとう」



 そう言い残し、ソルはポリゴンとなって散った。

 そしてこの瞬間、俺の目的は達成された。




『試合......終了。総合部門......いえ、全プレイヤーの中で最強のプレイヤーに輝いたのは────』




『ルナ選手だぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!』




「「「「「ウオォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」




 鼓膜が3度は破れそうな歓声に包まれた俺は、布都御魂剣を納刀し、右手を握り、天へ掲げた。


 すると再度、轟音の歓声が会場に鳴り響いた。



「やった......やったぁ!」


『おめでとうございますぅ! うぐ......えっぐ、私、私ぃ......!!!』


『おめでとー! あれだけ暴れさせてもらったし、ちゃんと勝ってくれたし、シリカも満足!!! ありがとう!』


『おめでとう。ルナは本当に強いわ。私の誇りよ』


『おめでとうございます! 最後にも使って頂けて、本当に嬉しかったです!!!』


「ありがとう皆。それとイブキ......使ってやれなくてすまん」


『ふぉっふぉ。よいのですよ。あの状況では仕方がありません。ですが、次回は私も使ってくださると嬉しいですな』


「約束しよう。次はイブキで、夜桜ノ舞で最強の座を維持しよう」



 俺は付喪神の宿る全ての武器を装備すると、目の前にウィンドウが出てきた。



 ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

 優勝者インタビューの為に、こちらへ転移します!

 ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



 許可を取るとかじゃなくて、最早宣言なんだな。まぁいいけどさ。



 そうして飛ばされた先でレイジさん達運営陣と、アイドルのアメ......アカ......アタ......ナントカさんに祝いの言葉を貰うと、レイジさんがこんな事を聞いてきた。



「ルナさん、今回の優勝者用ユニーク称号なんですけど、効果はこちらが設定されたもので、名前を自由に決めれるんですよ」


「はい」


「それで、もし決まっていたら、発表して頂いてもいいですか?」



 この人......分かっててやってるな? 全く。





「では、称号の名前は『最弱最強のプレイヤー』で」

か、改稿がァ.....終わらないィ!(アホな作者の魂の叫び)


では次回、『増えた友達』お楽しみに!

(まだ数話続きます!)

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