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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
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秘められた力

ウヴァッ!




「シリカ居るか? 何か踊るか?」


「はいは〜い! 呼んだ〜?」



 控え室にて、膝の上にリルを、左手はメルの頭の上に、右手ではチェリと指相撲を、そして背中にはベルが貼り付いている俺は、動けないので口に出してシリカを呼び出した。



「次、ガーディ君が相手だから力を貸してくれ」


「それは......本気の力を?」


「モチのロン。アクセサリーで超強化されたガーディ君相手に、俺1人じゃ力で押し切れないからな」



 真っ直ぐにシリカの目を見ながら話していると、ニクスが俺の頭へと飛んで来た。



「う〜ん、別にお兄さんならシリカを使わなくてもいいんじゃないの? ほら、イブキお兄さんも強いし」


「ダメだ。イブキは一撃を当てたら強いが、その一撃を当てるのが難しいからシリカなんだ」



 チェリとの指相撲に勝利した俺は、悔しそうに歯を食いしばっているチェリの頭を撫でた。

 とてもじゃないが、大事な話をしている雰囲気ではない。でも、この話の内容は次の勝利が懸かっている。



「分かった。死んでも文句言わないでね?」


「フッ、その時は笑い話でも変えよう。後世に残る、面白い死に方エピソードになるだろ」



 2人でニヤッと口角を上げていると、下からリルが覗き込んで聞いてきた。



「父様、死ぬのですか?」


「2割くらいの確率でな。でも安心しろ。俺は80パーセントを外したことがない」


「れんきんじゅつ......アクセサリー......かくりつ......」


「黙るんだそこのドラゴン娘。それ以上口を開けばこの世が滅びるぞ」



 自信満々に言い放った俺の言葉をぶった斬ったメルには、お仕置としてアイアンクローを喰らわせておいた。

 俺の生産をよく見るメルにとっては、俺がいかに確率が嫌いか、よく分かっていることだろう。


 全く......可愛い奴め。



「さて、そろそろ準々決勝が終わるな。というか今終わったな。ソルが無双しちゃってら〜」


「秒殺でしたね〜」


「つよ〜い」


「すご〜い」


「カッコイイ〜」


「まともな感想が無いね! この親子ども」



 だって、魔法と陰陽術で一瞬でマサキを倒しちゃってるんだもん。


 俺は陰陽術には詳しくないし、魔法に関してはメテオラスを使っていたから俺が知りすぎている魔法達だし、特に感想という感想が出てこないんだ。


 ソルよ、すまんな。語彙力の乏しい俺達を許してくれ。




「じゃあ行くとするか。我らが鉄壁の要塞、ガーディ君との勝負に」




 ◇◇




『さぁ、準決勝に勝ち進んだのは、この4人です!!』



 バンッ! と映し出されたスクリーンには、俺とガーディ君、猫フードとソルの文字が大きく出ていた。


 悲しいことに、犬子さんはガーディ君のカウンターによって散ってしまった。あれだけ強い人でも勝てない要塞、それがガーディ君だ。


 いや〜、怖い怖い。この人相手に攻撃でゴリ押しするとか、気でも狂わないとやれないわ。



『準決勝第1試合はルナ選手対ガーディ選手。第2試合は猫フード選手対ソル選手でお送りします。最早誰が勝ってもおかしくないこの戦い、篤とご覧あれ!!』


『それでは、早速第1試合を開始します。選手の方は入場してください!』



 通路の出口にあった見えない壁が消え、俺は自分のペースで歩き始めた。

 そして硬い土で出来たリングに上がると、ガーディ君も同じタイミングで入場した。



「はろ〜、ガーディ君。犬子さんは手強かった?」


「えぇ、物凄く強かったです。今更ながら、盾を専門に扱ってきて良かったと思えるほどに」


「それは凄い。次にガーディ君と戦う時の犬子さん......今回の数倍は強くなると思った方がいいよ」


「でしょうね。まぁそれよりも、対戦よろしくお願いします」


「うん、よろしく」



 ラフな口調で少し話すと、俺達は位置について合図を待った。




『両者、構え!!!』



 ガーディ君は持ち前の大盾を構え、俺はクトネシリカを抜刀した。



「え......?」


『始めっ!!!』



 俺が初めてちゃんと抜刀したことに驚いたガーディ君だが、次の瞬間、更に驚く光景を目にすることだろう。



「シリカ、頼んだ。【闘神憑依】」


「何ですか......それ......」



 クトネシリカが赤く煌めくと、俺は全身が焼けるような痛みと共に、凄まじい勢いでステータスが伸びていく。


 そして5秒ほどだろうか。それぐらい経つと、俺の銀色だった髪は綺麗な真紅色に。瞳も金色から真っ赤なルビーの様な色へと変わった。



「お〜、成功だね! それじゃあお兄さん、見ててね」


『はいよ。頼んだ』


「ちょっとちょっと......聞いたことも無い技ですけど!?」



 言ってないからな。これはソルも知らない、クトネシリカの特殊技。



 ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

 特殊技:【闘神憑依】

 一時的に人へ付喪神が宿ることで、その人物を強化する特殊技。人体への負荷が大きく、失敗すれば命は無いだろう。

 ・使用に成功すると、『シリカ』を憑依させる。

 ・憑依中はステータスが3倍となるが、毎秒10ダメージの負荷が掛かる。

 ・憑依中は戦闘系スキル補正が一律3倍となる。

 ◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



 毎秒ダメージはブリーシンガメンで相殺出来るので、実際は憑依に成功するか失敗するか、この部分が運ゲーなんだ。


 今の俺の状態を一言で表すなら『オートモード』だ。


 俺という肉体の操作権限をシリカに譲り、戦闘中に目で捉え、頭で思考した情報を共有する。これはオートモード以上に適した言葉は無いだろう。


 まぁ、シリカでも負けるなら俺も負けるんだがな。



『シリカ、勝率は?』


「100パーセント。お兄さんの体、凄く馴染むよ!」


『そりゃ良かった。それじゃ、任せるわ』



 シリカの意思で布都御魂剣を顕現させ、右手に握るクトネシリカを大剣へと変形させると、スっと目を瞑った。

 そして再び目を開けると、今までに見た景色の中で、一二を争うレベルで色が鮮明に見えるようになっていた。



「闘神とは、全てを『見る』者なり」



 左足を前に出すと、大剣は羽のように軽く持ち上げられた。



「闘神とは、全てを『倒す』者なり」



 姿勢を低くすると、両足に爆発しそうなほどのエネルギーが蓄積された。これは【軍神】を使った時の、ステータスが爆発的に上がった状態で感じるエネルギーだ。



「闘神とは、戦いを『楽しむ』者なり」



 地を蹴るのではなく、空気を蹴ったとすら思えるパワーで走り出すと、あまりの速度に目が追い付かず、気付いた頃にはガーディ君の目の前だった。



「殺せ、戦え、殺せ。血を飲み、肉を食らい、拳を掲げろ」



 大剣を空中に置いた瞬間、俺の体とは思えないパワーでガーディ君の盾に拳がぶつかった。


 バァン!!!!!


 強烈な破壊音が耳を刺す前に、シリカは空中の大剣を右手で拾い直していた。



「戦神、軍神......果ては闘神。人の子よ、神を畏れよ」



 もうダメだ。俺がガーディ君の立場なら、もう死を覚悟している。盾も破壊され、それを認識する前に剣を振られているこの状態で、勝利を願うことすら許されない。


 シリカの前に立っただけでも凄い。神界最強の神の力、よく味わってくれ。



 ズバンッ!!!!!



 硬い鎧を着ているにも関わらず、シリカの振るった大剣はガーディ君を真っ二つに分断した。



「......なんちゃって!」



『そこまで! 勝者、ルナ選手!!!』


「「「「「オォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」」」」」



 審判の声が聞こえると、シリカの意識はス〜っとクトネシリカへと帰って行った。



「ありがとう、シリカ。助かった」


『はいは〜い! 戦闘はこのシリカちゃんにお任せを!』


「あぁ。これからも頼りにしてるよ」



 ハッキリ言って【闘神憑依】は諸刃の剣だ。

 もし20パーセントを引けば戦う前に俺が死ぬし、80パーセントの壁を超えたら、晴れて俺達はようやく敵にダメージを与えられる。


 これだけのプロセスが生じる中、自信を持ってこの特殊技を使えるほど、俺は肝っ玉が据わっていない。




「さて、ソルは勝ってくれるかな? 楽しみだな」


次回『太陽』お楽しみに!

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