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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
483/492

戦場を駆ける少女

諸事情により2日ほど更新できませんでした。

でももう大丈夫です。完結まで書く時間を確保したので! 


楽しんでくださいね!

 



「リル、体調は大丈夫か?」


「はい、父様。もう魔力も生命力も全快です!」


「それはよかった。でももう少し休んどけ」


「いえいえ、大丈夫です。バッチリですよ?」


「いやいやいや、いいから。もう少し休んでなさい」



 総合部門が始まる少し前にログインした俺は、ソルを部屋に呼ぶ前にリルと喋っていた。


 テイマー部門であれほどのダメージを負ったリルに、労いの言葉とモフモフを触らせて貰おうと思ったんだ。

 ポーション以外なんでもアリと言った総合部門に、リルが出たいのかも聞きたいしな。



「もう、父様は私のことが好きすぎです。いつか母様に刺されますよ?」


「俺のソルに向ける愛情と、リルに向ける愛情は別だからな。お前はこう......可愛がる? みたいな感じだな。あと相棒」


「相......棒......」


「あぁ。この枠はソルでも勝ち取れないポジションだぞ? 俺としては、ソルはライバルだからな。リルは唯一と言ってもいい俺の経験を知る人でもあるし、もっと自信を持て」



 アルトム森林で地獄を見た、リルとの鬼ごっこ。

『ただの遊びです』と言われ、着いて行ったらモンスターの殺戮。

 挙句の果ては、両者の技術向上という名目で始めた、ただの殺し合い。


 ここまで共に戦い、競い合った仲で、相棒と呼べなければ何を相棒と呼ぶ?



「で、どうする? 総合部門、出るか?」


「......いいえ、辞めておきます。私は父様と違い、1人で沢山の相手をするのに向いていません。ですから、その戦いは相棒である父様に託します」


「言うじゃねぇか。分かった、任せろ」


「はい! 頑張ってくださいね!」



 そうしてリルと入れ違いになる形で、ソルが俺の部屋に入ってきた。

 どうやら今回は巫女服のようだ。とても似合っている。



「よっ、かわい子ちゃん。お茶してく?」


「やぁ、イケてる君。もっと熱い事をしようよ」


「ハハ〜ン、キスとかかい?」


「ノンノン、熱いバトルさ......ルナ君、負けないからね」


「当たり前だ。お前が俺に、負ける前提で戦ったことなんか無いだろうが」


「ふふっ、確かに。それはそうかも」



 小さく笑う陽菜の頭を撫でると、タイミング良く休憩時間終了のウィンドウが出てきた。

 ここからはソルが敵となる。次に恋人として会えるのは、総合部門が終わった後だ。


 自信を持ち、緊張しないように自分の中の理想より2段階低いノルマを作り、それをこなす気持ちで行けば勝てるはずだ。



「行こう。最弱最強の力を見せ付けてやる」


「ふふっ、何それ。別にルナ君は弱くないよ?」


「いいんだよ。これはただの、自己満足だから」




 ◇◇




『さぁ、いよいよこの時がやって参りました! 本武術大会、最高にして最恐。語り人の持つ、アイテム以外で最強を競い合う、総合部門の開幕ですッ!!!!!』



 轟音の様な歓声と共に、ルール説明のウィンドウが全プレイヤーの前に出てきた。



『ルールは単純。ポーション系統の回復アイテムの使用を禁止。他はなんでもアリの戦いです! あ〜っと、心配ご無用。装備品の付与効果による回復はアリですからね! なんと言っても、消耗品ではないですからね!』



 ここまで聞いていると、俺の頭に1つの疑問が浮かんだ。



「これ、『反転の横笛』はどうなるんだ?」



 ◇━━━━━━━━━━━━━━◇

『反転の横笛』は使用可能です。

 ◇━━━━━━━━━━━━━━◇



 対応早っ! ほぼノータイムで俺の呟きに答えが返ってきたぞ!?


 でも、これで分かったことはある。それは、俺が真っ先に狙われる可能性を限りなく0に近付けられるということだ。


 少女の......テスカの姿であれば、ソル達ぐらいしか俺の存在を見抜けないからな。



「鏖殺天使パート2、いっちょやりますかね」



 弱そうな敵を狙って倒す? 漁夫の利を狙う? 誰かと徒党を組んで戦う?


 ......バカか、(みなごろし)だ。



「少女の姿で戦場を駆け回れば、それだけで相手の思考は乱せる。あぁ、俺の持つ全てを使ってでも勝つぞこんにゃろう」




 インベントリ上部に女の子用の服をセットした俺は、息を潜めながら予選開始を待った。




『これより、総合部門予選A、B、Cブロックの試合を開始します! このタイマーが0になった瞬間、予選会場へ転移されます! では、タイマースタート!!!』



 手元のウィンドウで10秒のカウントダウンが始まった。

 これは勝利へのカウントダウンなのか、はたまた死の宣告か。それは誰にも分からない。


 体は弱く、心は強く。


 幼い見た目からは想像も出来ない攻撃を繰り出すことで、この予選では圧倒できる結果を導き出せるはずだ。



「早く始まれ、早く始まれ。もう口の中が戦闘の味なんだよ」



 3......2......1......



『ゼロ!! 試合開始です!!!!』



 カウントダウンが終わった瞬間、俺は背の高い草が生い茂る、広大な草原に転移された。


 ピィ〜〜〜♪


 小鳥の鳴き声の様な音を出して身長、性別を反転させると、俺は見事に草の中に埋もれてしまった。



「しまった、予想より草が高ぇ。シリカ」


『なになに〜? どしたのテスカちん』



 明るい口調のシリカに、南極の吹雪の如く、冷たく鋭い気持ちを声に乗せて俺は言った。



「サーチを切って集中するから、報告頼む」


『任せて』



 短く返事をしたシリカは、まるで刀全体が氷で出来ているかの様な雰囲気を纏った。

 最強のプレイヤーと、最強の神がコンビを組めば、この世界ではどれほどのパワーになるだろうか。


 まぁ、恐ろしいことこの上ない結果になるだろうな。



『右2人。70メートル』


「ん」



 シリカの報告を聞いて0.5秒程度でアルテを取り出した俺は、敢えて『必中』を切ってから矢を放った。



『当たり。でも死んでない』


「もうじき死ぬ」


『まさか......毒矢?』


「正解」



 バジリスクモドキの劇毒液をたっぷり塗ったこの矢なら、刺さった時点で相手は大ダメージを喰らう。

 ただ刺さっただけでも痛いのに、更に劇毒付きとなれば、あのプレイヤーはもう終わりだ。



『ありゃま、本当に死んじまったよ。凄いね!』


「ここが背の低い草だったら位置バレするけど、幸いなことに1.6メートルはあるからな。この作戦で行こう」


『むっ......女の子口調じゃない』


「今回は見逃してくれ。頭を使いたい」


『それならいいよ! 頑張ってね!』



 軽いなぁと思いつつも俺はクトネシリカを腰に提げ、報告を受け取り次第、相手に劇毒を塗りたくった矢を当て続けた。


 そして30分もすると、俺の存在は少しずつ死んだプレイヤー経由で広まっていった。



「かくれんぼタイムは終わりだ」


『もう終わっちゃうの〜?』


「仕方ないだろ。金髪の幼女がヤベーなんて知れ渡ってんだから、今更銀髪の男がヤベーなんて言われても問題ないんだからさ」


『お兄さんは元からヤベー奴だったけどね!』


「......反論出来ぬ」



 言うじゃないか、シリカ。今度久しぶりにお前と戦うか? この前やった時は、草原の土が抉れ放題になったから途中で辞めたが、次はどちらかが死ぬまでやるぞ?


 まぁ、今はそんなことに思考を割かないようにしよう。



「さてさて、銀髪せんせーの魔法には非常に便利なものが御座いまして。こちらをご覧下さいな」


『どれどれ〜?』


「はい、名を『ヘルバハーベスト』と言うのです」



 俺が超広範囲に渡って魔法陣を広げると、その範囲内にある草が全て、根元だけを残して刈り取られた。



「あら、隠れている芋虫を見付けましたねぇ?」


『燃やせ燃やせ〜!!』


「それも良いですが......今回はこちらを使います。【軍神】『魔力刃』......オラァ!!!!」



 青白い魔力の刃は、俺の全力の一振りによって物凄い速度で禿げた草原を駆け回った。



 ──ぎゃぁぁぁぁぁああ!!!!

 ──逃げろ、逃げろぉぉぉぉぉ!!!!!

 ──ヤバイヤバイやばいやばい......あぁぁぁぁ!!!!



「クックック......芋虫の三枚おろしの完成です」


『不味そう』


「シンプルな意見だな。俺もそう思うが」



 真っ赤なポリゴンを撒き散らして死ぬプレイヤーを眺めていると、どこからともなく大量の矢と魔法が飛んできた。



「邪魔すんな。やり返すぞ? 来い、セレナ」


『はいはい、軍神の効果が切れる前に撃って』


「分かってる。『魔力矢生成』」



 純粋な魔力で矢を作った俺は、魔法達が飛んできた方向へ向かって数百本もの魔力矢を放った。

 もし必中が無ければ、1本当たっていたら御の字だろう。


 だが、必中があれば?



「ふぃ〜、24キルゥ! 気持ちいぃ!!!」


『1人殺り損ねたけどね。大丈夫なの?』



 Bブロック予選、生存人数26人の内24人を倒した訳だが、あと1人だけ敵が残っている。

 でも大丈夫。俺には、俺達には心強い味方が居る。


 そう、ソイツこそ──




「殺れ、メル」


「ん。『滅光』」




『決まったぁぁぁぁぁぁ!!!!! いち早く総合部門、予選試合を終わらせたのは......我らがルナ選手だぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!』



「「『いぇ〜い』」」


『仲良いわね』



 総合部門に関わらず、全部門に於いて出会いたくないモンスターランキング1位(リル調べ)の業績を持つ子ども......それがメルだ。



「パパ、あとなんにんころすの?」


「いっぱいだ。総合部門は1番人数が多いからな。予選だけで200ブロックあるぞ」


「うぇ......そっか」


「露骨に嫌そうな顔すんなよ。可愛いんだからニコニコしとけ」


「ふふ......そう?」



 冷静を装いつつも口角が上がっているメルの頭を撫でた。



「あぁ。自慢の娘だ」


「うれしい。あとでママにつたえる」


「そういうところも可愛いんだよなぁ......全く」



 もし、こんな子どもが自分の家に居てみろ。24時間365日、付きっきりで構いたくなっちゃうだろ? 


 え? ならない?......え?



「次は準々決勝だ。ソルも来るはず......というか猛者しか来ないから、次はメルの出番だぞ」


「まかせて。かくせいしたメルはだれにもとめられないから」


「俺でも?」


「......とまる」



 くぅ! この可愛さ、天下一品でござるなぁ!!!


 そうして俺達は、考えうる最悪のパターンを想定しながら控え室へと転移された。



 俺の娘ズで最強の戦闘力を持つメルには、期待が膨らむばかりだな。故に何かあった時にリカバリーが出来るように、俺が頑張らなければならない。



次回『ラグナロク』お楽しみに!

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