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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
481/492

悪魔の魔法

久しぶりに長いわよ。楽しんでね(唐突なオネェ)

 


「やっぱりさ、俺の強みって魔法をポンポン撃てるところにあると思う」


「そうですね。いつ見ても化け物だな〜って思います」


「だよな、俺もそう思う。でも同じくらい魔法を撃たれると、どうしても拮抗してしまう」


「今みたいに、ですか?」


「そう。今みたいに」



 魔法部門の準々決勝。俺の運は、過去最高に悪かった。

 何せ、ルヴィさんが相手だからな。


 正直に言って怖い。この人の魔法、手加減スキルを覚えたせいか半端じゃないほど強くなっているんだ。

 昔から変わらず火属性の魔法を弾幕の様に撃ってくるが、その1つ1つに強弱が付けられており、簡単には打ち消せない威力となっている。


 ピギーのリア友だと言う彼女だが、多分同い年だろうか。賢いというか、思考能力が凄まじいと思える。



「ルヴィさん、残りMPどれくらい?」


「減ってません」


「あら奇遇。実は俺も減ってないんだよね」


「......アクセサリーの効果ですか?」


「それもあるけど、スキルの効果が大きいかな。ほら、前回の優勝賞品」



 どうしたもんかね。

 魔法に関しては自信のあった俺も、まさかここまで拮抗、膠着してしまうとは思っていなかった。


 運営さんよぉ、こんな時だけアクセサリーを許可するの、ダメだと思うんだ。無限に勝負が続いてしまうぞ?



「もう終わらせよう。『滅光』」


「フッ、甘いですね。『滅光』」



 マズいマズいマズ〜い! ルヴィさんも滅光持ちなんだが!? ど、どこで覚えたんやその魔法!!!


 まさか、ルヴィさんも神龍をテイムしたのか? 有り得ない。いや、有り得ないこともないんだけど......信じられない。


 でも、それならどうしてテイマー部門に出ていないんだ? 仮にマサキのメンバーの誰かがテイムしたとして、テイマー部門で俺と当たらないのはおかしい。


 だがしかし......待てよ? ハッタリの可能性を捨てるな? 俺。



「......マジで偽物か」



 ルヴィさんの滅光、よくよく見ればエフェクトが俺の物よりショボイ。威力に関しては注ぐMP次第である程度弄れるから何とも言えんが......こいつは偽物だ。



「バレましたか。でも、偽物が本物を上回らないとは限りませんよ」


「技術ってのは盗まれて洗練されていく物だ。例えそれが偽物だろうと、いつかは本物を上回る力を持つかもしれないな」



 そう、いつかは。

 俺は滅光に注ぐMPを増やして対抗しながら、上空に10段重ねのサンダーチャージを発動した。



「ハハッ」



 つい笑みが零れてしまった。



「何を笑ってるんです? まさか、それに気付いてないとでも?」


「あぁ。『サンダー』」


「消えて、『ゼロ・マジック』」



 ルヴィさんが魔法を使うと、杖の先から半透明の白い球体が現れ、俺のサンダーが触れた瞬間に雷を全て飲み込んで閉まった。


 そして黄色く染まった球体は、パチッと弾けて消えた。



 いや〜、恐ろしい。これが()()()サンダーでやられていたら、俺は泣いてたぞ。多分。



「良い物を見せてもらった、ありがと。『サンダー』」


「......へ?」



 チュドーンッ!!!!!!!!



 コミカルな音と共に、ルヴィさんの脳天へ雷が落ちた。



『そこまで! 勝者、ルナ選手!!!!』


「いぇーい」



 これは嬉しい勝ちだね。だってルヴィさんって前回の準優勝者でもあるし、本当にこのゲームでトップクラスに強い人だから、この勝利は純粋に嬉しい。


 でも、次で負けたら全部終わりだ。



「普段は勝利と敗北を波乗りするが、今日ばかりは勝ち続けなきゃならねぇ。死ぬ気で頑張れ、俺」



 一度でも負けたら終わり。この絶望的なミッションに恐れる心と共に、スリルを感じて楽しんでいる自分も居る。


 人間とは恐ろしいものだ。一度楽しいと思うと、もう辞められなくなっちゃう。



「ハハッ、ハハハ! 楽しんじゃお〜っと」




 ◇◇




「ルナ君?」


「......なんスか」


「ストッパー外したよね?」


「いや......少しだけ......」


「少しだけ? 準決勝の人、開始2秒で消し飛んだけど? あれで少しって言うの?」


「ち、違う。確かにあの人は『これに勝ったら好きな子に告白する』とか高々に言ってたけど、俺は悪くない」


「ダメじゃん。せめて接戦で勝たないと、あの人の良い姿が見せられないじゃん!」


「......フラグ回収......させたかったんだもん」



 舞台は決勝。またもや勝ち上がったソルとぶつかった俺は、星空の様な空間を作り出すほどの量で魔法を撃ちながら、口喧嘩......もとい、説教を受けていた。


 理由は準決勝相手が可哀想ということだ。



「ソルさん、ちといいっすか?」


「ダメです」


「あの人はフラグを建てたから負けたんだ。それはいいか?」


「......まぁ」


「俺達エンターテイナーは人を楽しませてこその人間だろ?」


「エンターテイナーになった覚えは無いけどね」


「それで、目の前の人間が完璧な死亡フラグを建てたとしよう。俺は、俺達は......回収させるのが役目だと思わんか?」


「回収させるのはいいけど、せめてあの人の好きな人に、カッコイイところは見せてあげるものじゃない?」



 うむ。冷静になればなるほど、ソルの意見が真っ当に思えてくる。



「今納得したでしょ。幾ら相手がフラグを建てたとしても、ある程度待つのがルナ君のすることじゃないの?」


「スーッ......まぁ待て。確かにソルの言いたいことも分かる。相手の尊厳を踏み躙るが如く消し飛ばした俺を悪く思う気持ちは分かる」


「す、すっごい理解してる......」


「でもさ、俺も選手なんだよ。勝たなきゃ気持ちよくなれない、勝利大好き人間なんだよ!」


「だからこそ、相手に納得させる敗北もあるでしょ?」


「無い。俺は自分が負けたら『相手が強い』と思うより、『自分が弱い』と思うタイプだからな。敗因がなんであれ、負けたら上を向いて進むのが俺だ」


「決めゼリフ風に言ってるけど、それは違うと思うな〜」


「ど、どこが? ソルの意見を聞かせてくれ」



 数秒で何十、何百もの魔法を展開させながら俺とソルは意見を交わした。


 今、観戦してる人はどんな気分なのだろう。これを実況しているレイジさんやアメ......アリ......ナントカさんは大丈夫なのだろうか。


 見た目は超ド派手な戦場なのに、それを全部ぶち壊す会話をしている気がするんだ。



「やっぱり相手を想ってこその戦いだよ。ちゃんと相手に敬意を払って戦うルナ君が、私は好き」


「待て、俺が好きとかいう話は横に置け」


「置いといたら勝手に食べるよ?」


「じゃあ俺が仕舞う」


「ふふっ......隠し場所、分かるもんね」


「太るぞ?」


「いやん! 幸せ太り!?」



 おっと、このままでは議論どころではなくなってしまう。戦闘は手を緩めないのは当然として、口の方も緩めさせるのは良くないな。



「で、だよ。ソルの言う、相手に納得させる敗北って何だ? 俺は自分の気持ちの有り様だが、ソルは何だ?」


「接戦かな。私達がやってきたように、一勝一敗。引き分け、或いは残りHPの差で勝敗が決するタイムアップ......そんなバトルこそ、相手が納得する負け方、勝ち方だと思う」


「なるほど、その考えも良いな。でも相手がどうしようもなく強い場合、それが出来るとは限らないだろ? 相手に手加減しろって言うのか?」


「ううん。その時は精一杯足掻いて、もうプライドとか諸々を捨ててもしがみついた先の敗北が、納得できると思うんだよね」


「へぇ......面白い考え方だ」



 でもまぁ、この世は勝者が正義だ。

 戦いとは綺麗なもので、争いは醜いもの。

 俺の考え方は争う者の思考であって、ソルの考え方は戦う者の考え方。



 FSでの経験が、俺とソルの考え方に違いを生んでくれたのだろう。お陰でソルの話をもっと聞きたくなった。



「ほいっ!」



 おっと、イグニスアローからアイスニードルに変えやがったな。なら俺は新手の氷属性潰しの魔法を使ってやろう。



「ほいっ、『バーニングフィールド』『アウラ』」



 リングの床で星型に炎の線が走ると、一気に火柱が上がり、ソルの生成したアイスニードルが瞬く間に蒸発していく。



「うわぁお、新技?」


「あぁ。ちなみに人が触れてもノーダメージ」


「ホント?......おぉ、凄い凄い! 熱くないよ!」


「だろ? 見た目は明らかに『私、ダメージ持ってます!』って感じだが、コイツが作用するのは魔法、延いては魔力だけだ」


「よく出来てるねぇ......フーちゃんと作ったの?」


「いや? さっき控え室で作った」


「......本当に? また控え室で作っちゃったの?」


「本当だ。また控え室で作っちゃった」



 前回はクロノスクラビスを。今回はバーニングフィールドを。

 あまり変わった生成風景ではなかったが、自在に範囲を操れるように作るのには苦労したもんだ。


 そのお陰で、決勝の相手がソルだと分からなかったからな。



「私、何かプレゼントしたいな〜」


「勝利をプレゼントしてくれてもいいんだぞ?」


「やだ。ここまで負けっぱなしだもん」



 メテオラスを一振りするだけで数十本のイグニスアローを出したソルは、もう一振りすることでアウラも発動させてきた。



「その箒チートすぎんか? ズルいだろ」


「お〜い、製作者〜?」


「俺の分は無ぇんだよ、全く。『グレイシア』」



 俺は足を一歩踏み出すと、ソルの放ったイグニスアローを下から刺すようにして氷が伸びた。


 これは数え切れないほど経験してきた弾幕戦によって生み出された、飛び道具迎撃型のグレイシアだ。

 矢、魔力矢、魔法、魔法の矢、短剣諸々、飛んできた物を突き刺すタイプの使い方だ。


 これにはメルと小一時間頭を悩まされたよ、本当に。



「私もオリジナル魔法使っちゃお。『レーザー』」


「だよな、やると思った。『アクアスフィア』」


「屈折!? じゃあ、『メーザー』!」


「賢く行こうぜ?『雷霆』『サンダー』」


「懐かしのサンダーの壁......上手いね」


「そりゃどうも。そっちも狙いが正確で素晴らしい。咄嗟にその精度を出せるのは本当に凄いよ」



 本当にソルの戦闘センスは素晴らしい。レーザーを避けられた後、直ぐに別の技で俺を殺しにかかるあの切り替え速度は、強い人でも中々出来ないプレイングだ。


 でも俺も負けてない。これでも何千時間と対人戦闘経験を積んできたプレイヤーだからな。ソルと同等以上の技術を持っているぞ。


 さぁ、そろそろ集中力が切れる。お喋りも終わりにしよう。



「思えば、これを見せるのは初めてだな」


「なに?」


「龍神魔法、『終焉開始(終わりの始まり)』」



 俺は魔法を使うと、リングの中心に真っ黒な球体が現れ、俺のMPをドクドクと吸いながらその空間を広げていった。


 そして数秒が経つ頃には、外を見ようとすれば真っ黒な壁が見えるほどの大きさとなっていた。



「......っ! これ......」


「そう、メルの......神龍の必殺技だ」


「これは抜けられたり......しませんよね。やば〜い!」



 ソルが何とかして空間に穴を開けようとするが、そんなことをしても魔法に魔力を喰われるだけだ。

 これはメルの持つ『魔食み』の能力と同じ力が備わっているからだ。



「さて、俺を止めるとしたら肉弾戦になるが......やるか?」


「私は殴るけど、ルナ君が殴ったらDVのソレだよ?」


「安心しろ、合意の上だ」


「合意の上なら何でもしていいの!?」


「拡大解釈のプロかよ。世界平和も目指せそうな思考だ」


「ふっ、私の世界はキミだけだぜっ☆」


「狭い世界だな。ど〜れ、俺が視野を広げてあげよう」


「や、やめろぉ! 井の中の蛙に大海を見せるんじゃな〜い!!!!」


「じゃ、ありがとう。『終焉終了(終わりの終わり)』」



 球体は一気に俺のMPを全て持っていくと、ソルを中心に空間を巻き込む形で小さくなり、ソルはポリゴンとなってちった。




『そ、そこまで! 魔法部門優勝は......ルナ選手だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』


「「「「「オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」」」」」




「フッ、決まった......ぜ......」



 バタリ、と俺はMP切れで倒れてしまった。

 まだ意識はあるが、体が動くまで回復するには時間がかかる状態だ。



『おっと、ではルナ選手を回復させまして......では本日のプログラムの最後である、総合部門に!!! 行く前に......1時間の休憩を挟みます。参加者の皆様は勿論、視聴者の皆さんも一度、休憩を取りましょう』



 レイジさんの手によって一瞬でMPが全快した俺は、ホテルの一室の様な場所へと飛ばされた。


 どうやらここが休憩室のようで、フレンドなら自由に呼び込めるらしい。



「んなもん知らん。ログアウトじゃ〜!」




 俺はベッドに倒れ込むと、直ぐにログアウトのボタンを押した。

バーニングと聞くと、続きをキャッチと言いたくなるのは何故でしょうか、kszkブロッコリー先輩。


ということで次回はリアル回です。癒されてください。では!

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