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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
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最弱と最強、表裏一体を示す

第1部、完。




『最強戦、戦闘系スキル部門の最後の試合、はっじめ〜るよ〜!! 2人とも、構えてね!』


「気の抜ける審判だなぁ、キアラさん」


「ホントそうっすよ。最後くらい、もっとしっかりして欲しいっす!」



ほら、決勝戦に出てる2人から言われてるんだぞ。もっとしっかりやってくれ、キアラさん。



『え〜......オホン。選手から苦情が来たので、気を取り直して......両者、構え!』


「そうそう、コレを求めてたんだよ。ねぇ? 茜さん」


「はいっす! この厳粛な雰囲気こそ、刀術の戦いっすからね!」



俺は対戦相手の茜さんと顔を合わせると、全く同じタイミングで鯉口を切った。


あぁ、この空気がたまんない。いつ斬るか、どう斬られるのか分からない、同じ土俵に立っている感じが最高だ。



『始めっ!!!』



「行くっすよ! 『雷纏』!」


「イブキ。待ちで」


『了』



茜さんの構える真っ黒な刀に、バチバチと荒々しく吠える雷が纏われた。

それに対し俺は、真っ白な鞘に納められた夜桜ノ舞へ静かに右手を這わせた。



「ルナさん。私は成長したっすよ......一撃で決めるって!」


「そうか。じゃあ教えてやるよ。その一撃も当たらなければ意味が無いってな」



一瞬で終わらせる気の茜さんは、目を獣の様にギラつかせ、如何に本気で決めに来ているかがよく分かる。



「来い。弘法筆を選ばず、リアルで体感させてやるよ」


「ひひっ......はい! 『(らい)』」



魔刀術で出せる最高級の光と共に、茜さんの刃は俺の目の前まで迫っている。本来なら目に見えない速度の攻撃でも、その挙動を知っていれば簡単に見切れてしまう。


そう、例え亜光速の斬撃であっても。



「......ふっ」



小さく息を吐きながら夜桜ノ舞を抜くと、その赤黒い刀身に空気が触れ、圧倒的なまでの威圧感を放ちながら茜さんの刃を弾き返した。


この空気こそ、夜桜ノ舞の真価と言える。



「ンなっ!?」


「ははっ、良い一撃だ。殺意が籠っていて素晴らしい。でもなぁ、その殺意の質が足りんよ。神をも呪い殺す素材で出来た、この刀には到底及ばない」


「なんすか......その刀。怖い......」



そうか。普段、他のプレイヤーが夜桜ノ舞を見ることは無いし、見たとしても特殊技を使った時の状態だもんな。


きっとソルですら知らないだろう、通常時の夜桜ノ舞。ここで初公開だ。



『ほっほっほ。ルナ様がお作りになられたこの体。見る者を魅力するでしょうな』


「当たり前だ。武器として、人としてかっこいいイブキが誰にも見られないなんてことは無い。攻撃力20の最弱武器でも、ここまで魅せられるんだからな」


『お褒めに預かり、心が躍る思いでございます。嗚呼、主の手に馴染むとはこのことでしょうか。不肖イブキ、高ぶって参りました』



良いねぇ、戦いを楽しもう。それこそが大会だ。それこそが対人戦だ。それこそが......ゲームだ。

あ〜、最っ高に楽しい。圧倒的なまでの戦力差をただの技術でカバーするこの感覚、最高だ。



「さぁ、茜さん。気張れよ」



俺は夜桜ノ舞を納刀しながら接近すると、茜さんの足に向けて一閃。それを弾く茜さんだが、次手に打ち込まれた蹴りには対応できずにノックバック。


再度刀を構え直したときには俺も既に納刀を終え、追撃をすべく縮地で接近。そして抜刀するかのように見せかけ、鞘での殴打。



「ぐはぁ!......なんすかこの動き......ヴフッ!」



懐に潜り込んだ瞬間に鳩尾を柄で殴り、苦しんだ瞬間に抜刀し、俺は優しく茜さんの腕に傷をつけた。



「茜さん。この刀の攻撃力は20しかありません。ですが、与えられるダメージは20ではありません」


「な......にを......」


「HPゲージの下、よ〜く見てください。そして茜さんのHPも、よ〜く確認してください」



カチッと音を立てて納刀すると、茜さんの顔色はみるみるうちに青白く染まっていった。


夜桜ノ舞の付与効果の1つ、【神ヲ呪ウ毒】。


効果内容は『毒』『猛毒』『劇毒』『絶毒』『麻痺毒』『麻痺劇毒』『木材腐食』『金属腐食』の混合した、神をも殺す毒。


この毒が注入された場合、生き延びる方法はたった1つ。



「解毒、出来きゃ死にますよ?」


「......う......そ..................」



毒の効果時間は60秒。ただの毒なら1分程度は屁でもないが、それが劇毒の混じるものだったとき......20秒も耐えられたら凄いと思うぞ、俺は。


茜さんの刀は、いつか見た『修羅』に似ているな。

あの刀なら、もしかしたら毒どころか使用者を半殺しにして解毒できそうだが......どうだろうか。


最弱に見える最強の刀で攻撃された茜さん、これからどうする?



「あき......らめ、ない」


「お〜、イブキの毒を喰らっても立つって、凄い熱意だな。そこらの幻獣より強い心を持っている」


『ですな。私の毒をもってして立つとは、神から見ても素晴らしい心の持ち主と言えます』



凄まじい情熱を持つ茜さんに、俺とイブキは手放しで褒め讃えた。


本当に素晴らしい心だ。昔の俺にその欠片でもあれば、きっと今の俺とは違う、キラキラと光る世界に入れたのだろう。


これは紛れもない、茜さんの才能であり、努力である。

俺達には褒めることしか出来ないものだ。



「でもこれは大会だ。容赦はしない」



フラフラと覚束無い足取りの茜さんの首に刃を当てようとするが──



キンッ!!!



「オイオイ茜ェ。オレを置いて死ぬなんぞ、真白が許してもオレが許さんゾォ?」



突如、黒い髪の男が現れ、俺の刀を弾き飛ばした。



「へへっ......ラー君、来ちゃダメっすよ......」


「いいのいいの。どうせ刀術以外使えねぇ空間なんだし、全部オレの判断でやるからヨォ」



うわ〜、なんかチャラいな〜、コイツ。俺の大っ嫌いなタイプの人間だ。

他人を他人と思えない、距離感がバグってる恐ろしいタイプのチャラ男だな。もう、ほんっとに苦手。



「じゃあ......お前は死ね」



謎の男、ラー君が繰り出してきた黒い刀による突きを、俺は体を横に向けて回避した。

続く二の太刀、三の太刀も避けきったところで、右手にイブキを顕現させた。



「遅いね、ラー君。言葉は強くても体は弱いのかな?」


「テメェ!!!」


「おいおい、熱くなるなよ。この程度の煽りに乗るのか、もしかして君、相当幼稚な子なのかな? かなかな?」


「グッッッ............!!!!」



勝てる試合を邪魔しておいて、俺が何も言わないとでも思ってんのか? それに勝手に茜さんから毒を吸い出して捨ててるし、マジでキレそう。


でも大丈夫。こうなることも考えなかった訳じゃない。



「ラー君......名前から察するに、太陽神が付喪神になったのか。確か太陽神は上級神の中でもトップクラスに強いって、前にシリカが教えてくれたっけ」


「ほう? オレを知ってんのカ?」


「いや知らん。お前みたいな頭の悪そうな奴、悪いが知る気も無い」


「ああああああああぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」


「うるさいなぁ。叫べば威嚇になると思ってんのか? そんなんで上級神を名乗るとか、ちょっと笑えるわ。プププ!」



前にシリカと雑談した時に、こうも言っていたんだ。


『太陽神はみんな強いんだけど、もっと強い神も居るんだよ。それは軍神って言ってね、たった1柱しか居ない、強い神なの』



それに続けて、こう言っていた。



『まぁそれ、シリカのことなんだけど☆』


『ってお前か〜い!』


アレには思わずツッコんだ。何となくは予想していたが、本当にシリカが......アレスがそうだとは思わなかったからな。


神界で1番強いらしい、シリカ仲間にした俺って、もしかしたら相当ガチャ運が強いのかもしれない。

......そんな風に言うのは良くないな。シリカから来てくれたんだし。



「さて、2人まとめて叩き斬るか。負けても泣くなよ」


「泣くかヨッ!!!」


「泣かないっす!」



まぁね、斬ったとしてもカスダメージしか入らないから、毒で死ぬことになるんだけど。




「す〜、ふぅ............はっ」




俺は夜桜ノ舞を逆手に持ち、小さく息を吐きながらラー君の目の前に来た。すると案の定、ラー君は俺に向かって黒い刀を突こうとするので、体を捻りながら回避し、その美しい肉体へ刃を差し込んだ。



「次だ」



毒を与える武器に於いて、必要なこと。

それは『ヒットアンドアウェイ』だ。


対象に一撃与えたら一旦離れ、様子を見つつもう一撃与える......そんなループを繰り返すことで、敵を毒にして殺す。


だが、これは実際に行うとなれば相当に難しい。

だって、コントローラーで動かす、昔ながらのコンシューマーゲームと違って、VRは全て脳内のイメージ力で出来るからだ。


だから、ヒットアンドアウェイを実際に経験していないと、そもそもどう動いたら良いのかが分からない。

悲しいよな。リアルで死ぬほど強い人を相手に、持久戦に挑もうなんて、普通は思わないもんな。


でも俺はやったんだ。経験として、俺の後ろに付いてるんだ。



「武器、肉体......ステータスは意味が無い」


「そんっ......な......」



茜さんの足にスっと夜桜ノ舞を突き刺すと、刃の先端から細い血のポリゴンが流れた。



これで終わり。俺の動きを見切れなかった、君の負け。



毒によってHPが0になった茜さんは、その体をポリゴンへと変えた。



『そこまで! なんとなんと!! 戦闘系スキル部門、その全てを優勝したのは〜!?!?!?』





『ルナ選手ですッ!!!!!!!!!!!!!!』


「「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」」」




轟音とも言える歓声が浴びせられると、俺は少しだけ肩の力を抜いた。



「ふぅ......おっと」


「大丈夫ですかな?」



少しどころか全身の力が抜けてしまったが、降臨してくれたイブキが体を支えてくれた。

こういうイケメンポイント、本当に凄いと思う。俺もソルにしてあげたい。



「ありがとうイブキ。思ったより頭を使ってたみたいだ」


「ほっほっほ。大丈夫ですぞ、次に呼ばれるまで少し休憩に致しましょう」


「そう......だな。でも次のテイマー部門の為に、皆と会っておかないと。ちゃんと触れて、一緒に喜びたい」


「......そういうところが、皆様から好かれる所以なのでしょうな」


「ん?」



何故そうなるのかは分からないが、多分褒め言葉だよな? そうじゃなくても、イブキの言うことだし褒め言葉だと信じて受け取ろう。



『あ〜、これより戦闘系スキル部門の中の、各部門ごとの優勝者へインタビューがあるんだけど......1人はつまんないから、2位の子も呼ぶね!! みんな〜、準備出来たら転移してね〜!!!』



◇━━━━━━━━━━━━━━━◇

インタビュー会場へ転移しますか?

『はい』『いいえ』

◇━━━━━━━━━━━━━━━◇



インタビューか。他のプレイヤーにボロクソに言われる気がするから受けたくないが......そうは行かんよな。



「じゃ、行ってくるわ」


「承知しました。お気を付けて」


「......気を付けないといかないの、おかしいんだがな」



インタビューで何を気を付けろってんだ。


そう思いながら『はい』のボタンを押し、俺はインタビュー会場へと転移した。

ということで、剣術、弓術、槍術、闘術、刀術、糸術、盾術の7つの部門が終わり、無事に戦闘系スキル部門は制覇しましたね!


次回はテイマー部門です。楽しんでいただけらたら嬉しいです。では!

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