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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
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火花の花火

開☆催


『遂に始まりました! 第2回、武術大会の開催ですッ!!!』


「「「「「ウォォォォォアアアアア!!!!」」」」」



凄まじい人数の歓声が上がる特設エリア。

俺は出場選手として控え室に居るのだが、それでも尚、生の声が聞こえてきた。



「凄い盛り上がり方だな」


「そりゃお前、プレイヤーの数が何倍も増えてやがるからな! 逆にルナは、どうしてそんなに落ち着いてるんだ?」


「俺......人混みがマジで苦手だから」


「あぁ......なるほど」



俺とマサキが話す控え室には、『最強戦』の剣術部門に出る15人のプレイヤーが待機している。


いや、正しくは剣術部門の予選に出る5000人の内の15人が待機している。



「あの、やっぱりルナさんは予選通過余裕ですよね......」



レイジさん達が騒ぎながら進行している放送を見ていると、茶髪の女の子が俺に話しかけてきた。



「分かりませんよ。隣に居るコイツとか、犬子さんと序盤に当たれば予選敗退の可能性は高くなります。あ、別にその2人以外が弱いって訳じゃないですよ? ただ、俺が知ってる猛者がこの2人ってだけで......」


「えぇ、分かってます。今回はどれくらいの確率で通過できそうですか?」



余所行きの話し方で接していると、マサキが気持ち悪い物を見る顔を向けてきたが、俺は無視して女の子と向かい合った。



「確率なんてありません。敵が1人だろうと100人だろうと、技術でねじ伏せるだけです」


「わぁ......! 凄いです! もし当たったら、よろしくお願いします!」


「はい。よろしくお願います」



お互いに頭を下げると、女の子は先程まで座っていた椅子へと戻った。


俺、正直に言ってフレンド以外の人には話しかけられないだろうと思っていたのだが、現実は違ったな。

ずっと周りには嫌われてると思ってるし、その考えは変わらないのだが......必ずしも全員がそうではないと理解できた。


ありがとう。名も知らぬ女の子。



「ルナってよぉ、壁の作り方が上手すぎないか?」


「上手いだろ。マサキも味方に裏切られる経験を積めば、これくらいは出来るようになるぞ」


「そんな経験を積むくらいなら、下手なままでいい」



マサキはそう言いながら俺の膝の上に置いているドライフルーツを1つ取り、口に入れた。



「う、うめぇ......何だこのフルーツ......」


「ドライルビーベリー。気付いたらセレナが島で育てていてな。ウチの朝食に出るジャムにも使われているぞ」


「住みたいな。家賃幾らだ?」


「レベル500超えの敵がわんさか湧くから、それを倒してくれるなら家賃は要らないな。ちなみに、24時間ポップするぞ」


「前言撤回。ぜってぇ住まねぇ。ってかよくまだそんな島に住めるな? 逆にそこでレベル上げしてんのか?」



あの島のモンスターでレベル上げなんて、想像もしたくないな。


巨大な芋虫や蝶やムカデと戦い続けるなんぞ、虫嫌いの俺からすればただの地獄でしかない。経験値は安定して稼げると思うが、精神衛生上よろしくなさすぎる。



「レベル上げはしてない。もう、1レベル上げるのに何週間か必要になるから、ここ暫くはプレイヤースキルしか上げてない」


「それには島のモンスターを?」


「使ってないぞ。リルやメルを相手に、模擬戦と稽古が殆どだ」


「そうか」



そんな雑談をしていると、遂に出番が来た。


前回同様、俺は2ページ目にあるBブロックに。マサキは適当な所に入り、参加申請をしていた。




◇━━━━━◇

転移します。

◇━━━━━◇




「うわ、初っ端から闘技場かよ。面倒だな」



悲しいことに、遮蔽物となる土の塊が設置されただけの闘技場が今回の予選会場のようだ。


まともに戦うなら、ステラノヴァだけだと厳しいかもしれん。



『それでは! 最強戦の剣術部門、予選試合を開始します!』



大音量のブザーと共に、俺以外の99人のプレイヤーが出現した。


だが、何やら様子がおかしい。他のプレイヤーは俺を狙わずに近くに居るプレイヤーを狙い、誰も手を組もうとしないのだ。



「違う。本来あるべき試合になってるのか」



皆、俺だけを脅威と思わなくなったんだ。

大きな敵を相手にするより、目の前にいる敵を倒す思考を持てるのは、上級者の必須スキルと言えるからな。



『どうされますか?』


「待機でいいよ。逆に、ステラはこの戦場を突っ切りたいか?」


『いいえ。私の効果で回復できない以上、無駄なダメージを受けるのは馬鹿のする事です』


「そゆこった。じゃ、人が減るのを待ちますかな」



俺はステラノヴァを右手に握ったまま土の塊に凭れかかり、剣戟によって散る、火花の花火大会を観させて貰った。


誰も俺を狙おうとしない以上、待つのが得策だ。



そうして10分もする頃には、本戦出場が決定する上位5人まで人数が減っていた。




『Bブロック、試合終了です!! なんと、たった1人、誰とも戦闘せずに予選を通過しましたァァ!!!』




「だってさステラ。見てるだけで予選終わっちまった」


『それは......あなたの指輪のせいではないでしょうか......』



呆れた声で言うステラを握る右手には、あの『真・ギュゲースの指輪』を強化した、『神陰・ギュゲースの指輪』が着いている。


コイツの効果はたった1つ。



「『気配消滅』......俺のMP、ずっと空だ」



毎秒10パーセントのMPを消費して気配を完全に消すこの効果で、俺は誰からも狙われなかったんだ。



『魔法部門では使えませんが、他の部門ではかなり有効ですよね』


「あぁ。取り敢えず予選はこれでスキップしよう。俺の技術は戦闘だけじゃない。生産の技術で勝ち上がれるんだって、周りに見せつけてやる」


『うふふ、そうですね。出来ますよ、あなたなら』




MMORPGの醍醐味は戦闘だけじゃない。その世界で生きる楽しみを見付けることも楽しみ方の1つなんだ。

今回、生産メインのプレイヤーは参加していないだろうが、俺を見て参加する人が増えればいいなと思う。


皆で楽しんでこそのオンラインゲームだ。その前線を走る者として、道は開拓してやろう。

ということで第2回武術大会編の始まりです。

楽しんでくれると嬉しいです。



次回『語り合う語り人』お楽しみに!

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