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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
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桜咲く道、幻影の影

ピィッ!



学校に着いた俺達は、体育館に直行して始業式が始まるまで雑談をしていた。


そして始業式が開始され、いつもの校長による短い話を聞いた。ウチの校長は話が簡潔だからな。皆から好かれている。



「──3年生は進むべき未来へと進み、皆さんの活躍を祈っています。以上です」



いや〜、今回も校長の話は苦にならなかった。


そんな感想を胸に秘めながら、俺と陽菜は一緒に3年生の教室が貼り出されている廊下へとやって来た。



「え〜っと、悲しいことに別のクラスだな」


「でも隣だね! 遠い中では1番近いよ?」


「そうだな。ってか正樹とはまた同じクラスだ。ラッキー」


「私は......雫ちゃんが居る! あと山本君も!」


「それは良かったな。お互い、寂しい思いをしなくて済む」


「うん! じゃあ、またね!」


「あぁ」



クラス分けは俺が1組に、陽菜が2組に配属されてしまった。

だが大丈夫だ。以前の俺なら机に顔を伏せる生活をするところだが、今の俺は違う。今の俺なら、陽菜を隣のクラスに迎えに行けるのだ。


そう、高校生らしい青春の一コマを送れるということだ。



「よっ、月斗。今年もよろしくな!」


「ああ、よろしくな、正樹」



ありがたやありがたや。知っている人が居るだけで気が楽になる。正樹にはもう1年、話し相手になってもらうか。



◇◇



「月斗君、帰ろ〜」


「おう。ちょっと待ってろ〜」



帰りのホームルームが終わると直ぐに陽菜が来たので、俺は急いで帰る用意を始めた。


何故か教室内からの視線が俺に集中しているが、どうしたんでしょうかねぇ。ボクニハワカリマセン。

多分、陽菜が可愛すぎるからだろう。



「じゃあな、正樹。また来週」


「うぃ〜。また来週〜」



正樹に挨拶をしてから、俺は陽菜と一緒に話しながら歩いた。


また来週と言ったのは、ウチの学校は今年も始業式が早く、授業が1週間ほど期間を開けてから始まるからだ。



「俺、やっぱり陽菜が同じクラスじゃないと生きていけんわ」


「あら〜、寂しがり屋が出てきちゃった?」


「出た出た。やっぱりさ、何かアクセサリー的な物で陽菜との繋がりが欲しいな、って思ったよ。そうすれば、体は離れていても心が近いだろ?」


「そうだね! そうだよね! あ〜、私も寂しいな〜! 私としては指輪とかオススメだよ??」


「わざとらしいなぁオイ。まぁ、指輪に関しては5月の予定だから、それまで我慢かな。1ヶ月......言うても1週間くらいか? 少しの辛抱だ」



寂しがれることが幸せなんだ。今の俺は、もう孤独じゃない。昔の様に無色の感情じゃなく、ちゃんと色がハッキリしている感覚だ。


......ようやく、ちゃんとした人間になれたかもな。



「楽しみにしてるね」


「あぁ。待っていてくれ。ちゃんと気持ちを伝えるからさ」


「うん!」



照れながらも笑って答えてくれる陽菜を見て、俺も笑顔になった。


もう、春の象徴である桜が咲き始めている。

ここには過去の俺は居ない。俺は陽菜と、2人で生きていくんだ。


俺の冬は終わった。これからは春の時代が来る。




◇ ◆ ◇




「チェリ、打ち合いしようぜ。足運びを教えてやる」


「分かった、兄さん」



陽菜との未来を考えるの良いが、今は目の前のことに注目しなければ。


そう思った俺は、早速チェリに相手をしてもらった。



「違う。2歩目の左足、つま先から順に踵を上げろ。そう」


「難しい......こう?」


「そうだ。普通に歩くより土が舞い上がらないのが分かるか?」


「うん。地面を蹴る感じがしないから、全然土が舞わないね。蹴るというより、踏むに近いのかな?」


「その意識で良い。今教えた動きを戦闘中に出来れば完璧だ。その辺は無意識に出来るようにする為に、何度も何度も戦って体に刷り込ませろ」


「分かった。少しでも兄さんに追いつきたいから、頑張るね」



健気で可愛いなぁ、チェリ。向上心を持って取り組み、分からないことは人に聞ける良い子だ。



「次は打ち合うぞ。俺は木刀使うから、チェリは刀......待て、チェリって刀を持ってないよな」


「うん。でも私の体を削れば作れるよ?」


「それなら俺が作る。材料とかで、何か要望はあるか?」


「無い。兄さんが作ってくれた物なら何でも使うよ」


「ありがとう。じゃあ作ってくるから、自主練していてくれ。分からないことがあれば、俺に聞いてくれ。あと、リルかメルが暇そうなら巻き込め」


「うん! ありがとう兄さん!」



KA☆WA☆II☆


なんだろうこの気持ち。リル達を甘やかす時とは違う、フワフワした気持ちは。


......あ、もしかしたら『守る』という考えが無いから、純粋に甘やかしているのかもしれない。


俺の普段の脳内は、リル達は甘やかすと同時に守るという意識を持っているのだが、チェリの場合は、その高いステータスやスキルのせいで、守る対象と思っていないのだろう。



「可愛い妹の為に、久しぶりのガチ刀鍛冶をするとしますかな」




◇◇




「ふはは! こいつァ傑作だァ!!!」



俺の目の前に、1つの金属の塊が置いてある。

これを今から熱して叩き、伸ばしていくのだが、俺は玉鋼の状態にも関わらず、傑作と喜んだ。



◇━━━━━━━━━━━━━━━◇

『怨嗟導く鋼ノ魂』Rare:──

◇━━━━━━━━━━━━━━━◇



見てくれよこのレア度! 神器になることが確定してるんだ!



「怨嗟とか言ってるけど、多分チェリなら大丈夫......だよな?」



死体とか埋まってそうだし。

別にそうじゃなくても、あれだけ刀の扱いに自信のあるチェリなら満足に使えると思うからな。


きっと、この玉鋼は素晴らしい刀に変わるだろう。

敵を穿つ矛となり、仲間を守る盾となることを祈る。



「そろそろ打つか」



カーン! カーン! カーン!


狭い鍛冶小屋の中に、甲高い金属音が響き渡る。

熱を持たせ、火花を散らして不純物を取り除くこの工程は、鍛冶をする中で1番好きな時間だ。


キーン! キーン! パァン!!!


打っている途中で音が変わり、3回もシバいたら凄まじい炸裂音と共にドス黒い塊が散って玉鋼が光り輝く。



「......まだ」



もう少しだ。刀になるまでもう少し。



そんなことを思いながら玉鋼を打ち続け、満足のいく出来となったのは8時間後のことだった。




◇チェリside◇




「姉さん、兄さんがあれから戻って来ない」



日が暮れるまで練習していた私は、姉さんに呼ばれたので一旦家に戻った。


姉さんは兄さんが鍛冶小屋に居ると知ったら、少しだけ寂しそうにしてから納得した。



「いつもの事だから大丈夫だよ。ルナ君はねぇ、没頭する速度と質が他の人とは段違いだからね」


「......心配」


「ふふっ、良い子良い子」



私がソファで三角座りをしていると、姉さんが横から私の頭を撫でてくれた。



「ルナ君はチェリちゃんの為に頑張っているんだもんね。流石に何時間も戻らなかったら心配するもんね」


「......うん」



姉さんの膝にポフっと倒れると、そのまま頭を撫でてくれた。

暖かい姉さんの手で撫でられていると、凄く安心できる。

これは兄さんが定期的に撫でられに行く理由がよく分かる。



「信じて待つのも家族の取れる手段だけど、追いかけるのも、また家族のできること。チェリちゃん。心配なら行動に移そう。ルナ君の為に、何ができるかを考えるの」


「何が......できるか......」


「そう。私なら、ルナ君の後ろの机にご飯を置いたり、寝ちゃっていたら毛布をかけてあげたりするよ」



凄いなぁ。パッとそれだけ思い付くなんて、姉さんは兄さんと居る時間の量が違う。

私もそれだけ兄さんを見たら、何か良い案が出るのかな。



「チェリちゃん。自分の考えがダメだと思うのはいけないよ。あのルナ君から妹という枠を勝ち取ったチェリちゃんなら、分かるでしょ? ルナ君は常に、自分に自信を持っているのを」


「まぁ......うん」



でも、結構な頻度で悩んでない?



「それでも時々悩むのは、良い案が複数個あるからなの。100パーセント成功するやり方が何個もあるから、どっちを選ぶか迷っているからなんだよ」



論破されちゃった。口に出してないのに、考えていることを先に読まれ、先手を取られた。



「まぁね、どうするかはチェリちゃん次第だよ。私は応援するから、好きなようにやってみて」


「......分かった。私なりに考えてみる」


「うん。考えてみてね。私は晩ご飯を作るから、ゆっくり考えてね」


「ありがとう、姉さん」


「いいよ。可愛いライバルさん」



勝てない。兄さんのことで、この人以上に兄さんを理解している人はこの世に存在しない。


そう思わせる笑顔を見せ、姉さんはキッチンへと行った。




「何か......できることを」


テーレッテテッテッテレー! 次回!


『はじまり』



お楽しみに!

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