表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
最終章 最強決定戦
444/492

3人目




「おっそ。手加減してる?」


「......え?」



鞘が破壊されそうな程のパワーで斬り掛かってきた王女だが、やはりこの一撃に全てを乗せていたようだ。



「次手が無いとはお優しいですね、王女様。やはり刀を扱う時は相手と交互に打ち合う方がお好きなんですか?」



煽るように言葉を紡ぐけど、注意せねばならない。もしここで戦闘以外で煽ってしまうと、ラキハピさんの印象が落ちてしまう。


本当に、本体に気を付けろよ俺。ルナじゃないんだからな。



「貴女のその構え......なるほど」



え? もしかして中身バレた? 



「貴女、師匠の真似をしているのですね」


「ハズレです。いや、惜しいと言えば惜しいのですが、ハズレですね。構えなんて無限にあるのですから、好きにしていいでしょう?」


「はい。貴女の本当の構えを見られればそれで」



残念、これが本当の構えなんだ。


全身の力を抜いた後に、膝と思考に力を入れる。変に足に力を入れず、膝だけに意識を集中させて他は力を抜く。


この50パーセントの構えが、俺の基本スタイルだ。



「さて、では次は私の番ですか。行きますよ」



鞘に納めた状態の刀を左手に持ち、俺は左足を前に出した。


そして王女へ急接近し、左手の鞘で殴りながら右手で抜刀した。



「ッ! 速い!」


「速く見えるだけですよ。では、そろそろ準備運動も終わりましたし、やり合いましょうか。砂漠での戦闘は生ぬるかったので、ここで楽しませてください」



俺は持っていた鞘を腰に提げ、両手で刀を構えて思ったのだが、ソルに貸してもらったこの刀はかなり異常だ。


刃が淡く緑に光っているし、鍔の部分から火の粉が出ているのだ。

不思議なことに、この火の粉は熱くなく、寧ろ心を落ち着かせる温かさを備えている。



「「綺麗な刀......あっ」」



率直な感想を述べると、王女とハモってしまった。



「良い刀を貸してもらったものですね」


「ですね! ソルちゃんに感謝です。私としては、あの子がこんな刀を作ったことに驚いていますがね!」



この刀の製作者はソルだ。品質もかなり高く、58と書かれている。

更に、今までに見たことの無い⦅翡翠の(ほむら)⦆という特殊技まである。


戦闘中なので詳細は見れないが、きっと強い技だと思う。だって、あのソルが作った刀だからな。弱い訳が無い。



「さぁ、先手は王女様からどうぞ」


「......後悔しますよ?」


「それを口に出すなんて、自信家なのですね」



おっと、中身が出ちゃう所だった。

では愛弟子(笑)よ。姿とステータスが変わった師匠を倒してみなさい。



「はぁっ!」



王女はスカーレッ刀を上段に構え、素早い突きを繰り出してきた。


それに対し俺は、王女が上段に構えた瞬間に納刀し、完全に回避することを優先した。だって、1ダメージでも貰ったら俺の中では敗北だからな。


ノーダメージの完全勝利。これが今回の理想だ。



「はいはいはい、はい」


「そんな!」


「じゃ、攻守交替ね」



一連の攻撃が終わったタイミングで素早く抜刀し、俺は王女の左肩目掛けて一点に集中攻撃した。



「ぐっ......」


「Fooo!! 私の攻撃力、ひっく!!! 自分でビックリしちゃうね!」



2回ほど肩を刺せたのだが、あまりのSTRの低さに驚いてしまった。


先程の攻撃、今までとは手応えが違った。

例えるなら、冷凍した肉が硬すぎて、包丁の刃は入ったものの途中で威力が減衰したような、そんな手応えだった。



「あ〜、王女様のVITが高すぎるのか。それに私のSTRの低さが相まって、カスダメージしか入らない、と」



どういう基準でステータスを変動させているのか分からないが、プレイヤーによって王女のステータスが異なると、前にソルに聞いたことがある。


その基準がプレイヤーのレベルなら良いのだが、もし、基準そのものが無く、どっかの誰かさんが遊び半分で鍛えた結果が反映されているというのなら、王女は相当に強いはずだ。


ホント、どこの誰だよ。王女の為に冷凍したワイバーンを敷地に運んだ奴。お前のせいだぞ?



「まぁね、幾ら王女様のステータスが高かろうと、死ぬまで削れば私の勝ちだからね。さぁ、試合を続けよっか!」



こんなにも使い勝手の良いサンドバッ......ゲフンゲフン。練習相手が居るとは、低ステータスも舐めたモンじゃないな。



「あ、悪魔みたいな笑顔をするのですね......」


「そう? でもいいじゃん! ほら、小悪魔系って言うんでしょ? そんな感じでさっ!」


「それはまた違う意味かと......って危なっ!」



会話で生まれた隙に軽く斬り上げると、(すんで)の所で避けられてしまった。



「あはは、避けられちゃった......でも次は無いからね?」



戦闘中に話すなら常に相手を見ろと教えたのに、忘れたのか? 対人戦の基本は叩き込んだし、王女に友達が出来ればいいなと思って色々な話をしたのに......残念だ。


もう次は無いぞ。次は心臓を刺すからな。



「貴女は恐ろしいですね。どこぞの銀髪の男に稽古を付けて貰いましたか?」


「ううん。あの人には何も教えて貰ってないよ。いや、『何も』って言ったら語弊が生じるけど......でも、戦闘に関しては何も」


「そうですか......う〜ん」



コイツ、俺の事をこんな風に言う奴だったか? ちょっと態度を冷たくしすぎたのかな。次に来た時はもう少し柔らかく接してあげよう。



「さぁ、そろそろご飯の時間なので終わらせましょうか。先手は貰います......よっ!」



俺は左手に鞘を持ち、王女に向かってぶん投げながら猛ダッシュした。


そして一瞬だけ王女が怯んでいる内に、俺は右手の刀で斬ると思わせつつ、王女の鳩尾へと回し蹴りを喰らわせた。


こういう時は低身長が役立つ。良い事を知った。



「ぐふぅ!!」



それから、王女が大きく怯んだ隙に、俺が右手に持った刀で首を斬ろうとすると──



キンッ!!!



甲高い金属音と共に、俺の手から刀が弾き飛ばされた。



「ふふっ、私の勝......」


「ざ〜んねん♪」



俺の左手に持っている特製アイアンソードが、王女の喉を貫いた。




そして王女のHPが1になると、決闘終了のウィンドウが出た。




「はい、お疲れ様。最後、甘えたから負けたんだよ。私の武器を刀1本だと思った王女様の負け」


「うぅ......すみませんでしたぁ」



涙目で謝罪する王女を横目に、俺は決闘結果のウィンドウを開いた。



◇━━━━━━━━━━━━━━━◇

『ダメージリザルト』

ラッキーハッピー :8,500(急所)

イベリス・ロークス:1

◇━━━━━━━━━━━━━━━◇



最後の刀を弾かれた時、俺は一瞬だけ抵抗してしまった。

だからその分、王女の刀に乗せられた力が俺の抵抗力を上回り、微弱なダメージを受けてしまったんだ。


あの時、王女の力に任せるようにしておけば、この1ダメージを貰うことは無かっただろう。




「はぁ......まだまだだ。頑張らないと」




俺は物音1つしない訓練場で小さく呟き、刀をソルに返す為にその場を後にした。

何が3人目なのか、それは次回明らかに!!



次回『掲示板12』お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ