次元を超える技術 3
スローペースで申し訳ないです。(´;ω;`)
「あ〜、美味かった。ご馳走様」
「師匠の口にも合って良かったです。月斗君はどうだった?」
「いつも通り、最高に美味しかった。ありがとう。これからも頼むよ」
「うん! えへへ」
実家で陽菜の作ってくれたお昼ご飯を食べた俺達は、少しの間だけゆっくりしていた。
俺は隣に座っている陽菜の頭を撫で、抱きしめるようにして感謝を伝えた。
「月斗って、そんなに陽菜ちゃんにベッタリだっけ? たった3ヶ月弱で何があったの?」
いつも通りのスキンシップをしていたと思っていたが、どうやら母さん達の目にはベッタリしている様に見えるらしい。
「特に何も無い。ただ、なんて言うんだろうな......独占欲が強くなったのかもしれない。こう、『陽菜を取られたくない!』みたいな?」
「それを正直に言えるアンタ凄いわね」
「俺は好きなことは好きと言うタイプだからな、母さん。俺が陽菜を好きでいる限り、ずっと陽菜に好きって言い続けるから」
「「「「「「おぉ〜」」」」」」
おぉ〜じゃねぇよ。当然のことを言っただけでしょうが。
正直に好きな物を好きと言えないと、その好きな物が無くなる可能性だってあるんだぞ?
何だっけな......あ、そうだ。『推しは推せる時に推せ』って言葉と一緒だな。
好きは好きと口に出せ......みたいな?
「嬉しいなぁ〜、幸せだな〜」
そう感じてくれているのなら、俺も嬉しい。陽菜がずっと笑顔で過ごせるように、頑張りたくなる。
「陽菜ちゃんが幸せそうで何よりだ。父さんとしても、月斗が1人の男として成長してくれて嬉しい」
「成長させてくれたのは陽菜だよ。自分の足りないところを補ってくれるから、安心して出来ることを伸ばせる」
「月斗君......デレデレ......へへへ」
いつも感謝しているよ、陽菜。俺に足りないところは陽菜が持ってるし、その逆もある。2人でやるからこそ、出来ることもあるしな。
貰ったものは返したい主義の俺としては、貰うものが大きすぎて、どう返せばいいのか分からないくらいだ。
「じゃ、この空気の中で申し訳ないが、山に行きましょうか。2人のご両親も一緒に来てください。良い景色ですから」
「「「「是非!!」」」」
そうだよな。ただの観光客として行く分には楽しみだろうな。
地獄の鬼ごっこをする身としては、気を引き締めないと。
「月斗君、もしかして鬼ごっこやる気なの?」
「あぁ。空間把握能力と身体能力をフルに活かせるからな。あのゲームの練習には持ってこいなんだよ」
「怪我......しちゃダメだよ?」
「大丈夫大丈夫、平気平気......とは言わない。大きな怪我は受け身で防げるから、擦り傷くらいは許してくれ」
「うん。でも気を付けてね」
「分かってるよ。一緒に行こう」
心配そうに手を握ってくる陽菜に、優しい口調で話した。
山の地形を全て使った鬼ごっこ程、過酷な鬼ごっこは無いだろう。
ユアストのアルトム森林でリルとやった鬼ごっこより、リアルでやる鬼ごっこの方がかなりキツいからな。
ゲームでは怪我をしても直ぐに治るが、リアルでは治らない。
それ故に、体に向ける注意力が必要になる。
そこがゲームとリアルでの、鬼ごっこの差と言えるだろう。知らんけど。
◇◇
「どうだ月斗! 前に見た時より綺麗だろ!!!」
「そうですね。至る所で花が咲いてますし、良いですね」
「はっはっは! これが2年間、種を撒き、水を与えた結果よォ!!!」
久しぶりに来た師匠の山は、色とりどりの花が咲き誇り、見る者の目を奪う程に美しくなっていた。
過去に来た時は、春に花は咲いていたが、ここまで植物が元気ではなかった。
だが、今の山は違う。花の1輪1輪が生き生きとしていて、山が生きている様に感じるくらいだ。
「さて、意図は分かったか?」
「はい。花を踏まずに山を駆けろと言いたいんですよね」
「正解だ。皆さん、山頂まで行きますよ。着いてきてください」
そうして師匠の案内の元、山頂への軽い登山が始まった。
「この道も懐かしいね。小学生の時を思い出すよ」
「そうだな。あ、あの木は覚えてるぞ」
「どれ?」
「アレだ」
俺は陽菜の肩を抱き寄せ、1本の大きな木を指さした。
「陽菜があの木の根っこで躓いて、俺の鳩尾に頭突きをしたのを覚えてる」
「......思い出したよ。確か、月斗君に凄く怒られた思い出がある」
「あの時は本気でキレたな。弱点を突かれると、人間は怒りを覚えるってことを知ったぞ」
「今なら、躓いても優しく受け止めてくれるよね?」
「そもそもお前、もう躓かないだろうに......まぁ、その時は受け止めてやるよ。手で」
「鳩尾じゃなくて?」
「2回くらい、頭をシバいていいならやってやるよ」
当時の俺は、よく手を出さなかったと思う。自分の反射を限界まで抑えて、小さい陽菜を怒るだけで済ませたのは本当に凄い事だと思う。
今の俺ならどうするんだろう。
多分、陽菜の怪我を確認した後に、1人で苦しんでそうだ。
「あ! あの窪みは私も覚えてるよ! あそこで月斗君、盛大に転んだの!」
「あ〜、記憶にある。しかも確か、雨が降った後で泥になってたんだっけ?」
「そうそう! それで私の服に泥を撒き散らしたの! あの時は流石の私も怒ったな〜」
「めちゃくちゃ怒られたな。雨が原因なのに、転んだ俺のせいにされたのは悲しかった」
「いやいや、あの時は『窪みがあるよ!』って言ってたよ? でも月斗君は上から走ってきて、足を踏み外して、バチャーンって転んだんだよ」
「そうだっけ? そこまでは覚えてないな」
懐かしい。陽菜が着ていた白い服が、一瞬にしてまっ茶色になったんだよな。
今思えば可愛い怒り方だったが、当時は嫌われたんじゃないかって、凄く落ち込んだ覚えがある。
「月君......よく喋りながら歩けるね......」
陽菜とわいわい喋りながら歩いていると、どんどんペースが落ちてきた太一さんが話しかけてきた。
「慣れてますからね。それより大丈夫ですか? もうすぐ山頂ですけど、一旦休みます?」
「い、いや......このまま行くよ。ただ、ちょっとペース落とすね」
「分かりました」
そうして最後尾を維持しようとすると、陽菜が俺の肩を優しく叩いてきた。
「月斗君は先に行っていいよ。鬼ごっこもあるし、先に上に行って」
「え〜......分かった。行ってくる」
「うん! 行ってらっしゃい」
太一さんの前にも関わらず、陽菜が行ってらっしゃいのキスをしてくれた。
死ぬほど恥ずかしいけど、耐えるしかない。どうせ後で陽菜も真っ赤になるんだし。
それから数分程度走ると、山頂の開けた草地に着いた。
「まさか太一さんだけが遅れるとは。陽奈さんは体力あるんですね」
「昔、登山が趣味だったから体力はあるの。あの人はインドア系だったからそこまでだけど、私はいっぱいあるよ!」
「良いですね。陽菜も体力はありますし、運動が好きですから、陽奈さんの良いところを受け継いでますよ」
それなりの頻度で陽菜と公園で遊んだりするが、毎回長時間走り回るからな。
もしかしたら色んな人に顔を覚えられているかもしれない。
「あら、もしかして夜の体力も凄かったり......?」
「そっちは未経験なので分かりませんね。そして知っていても陽奈さんには絶対に言いたくないですね」
「うふふ、ごめんね」
元気だなぁ。もし陽菜が体力モリモリだったら少し怖いな。なんと言いますか、俺が死ぬイメージが出来る。
「ではそろそろ行きますね。この山の景色、楽しんでください」
「は〜い。頑張ってね〜」
陽奈さんと話し終えた俺は、暫くストレッチをし、きちんと準備運動をしてから師匠の元へ向かった。
「よし、やるか」
「はい。では──」
「「ジャン、ケン、ポン!!!」」
気迫のある大声で俺達は右手を出した。結果は〜?
「俺が鬼だな。ほら、行け」
「終わった......」
師匠が鬼になった。つまり、俺の死が確定した。
最近は音ゲー、バトロワ、バトロワ、ソシャゲソシャゲソシャゲソシャゲと、そろそろゲームと小説の両立が難しくなってきました。
ので!
新しい端末をお迎えしました。これでソシャゲで遊びながら小説が読めるし、バトロワしながら周回が出来ます!
レッツ廃人生活♪
では、次回は鬼ごっこ編です。お楽しみに!