し、尻尾が!!
全話修正したくなってくるお年頃 (はぁと)
「なるほどな。討伐数がおおよそ100万前後ってところなのか」
「ルナ君のギルドカードが参考にならないからアレだけど、有志の人が調べるに、多分100万体討伐がラインかな」
戦神の儀式をきっかけに家へと帰った俺達は、ふかふかのベッドに寝転びながら情報を集めていた。
「父様、そこですそこ......あ〜」
「耳の付け根だな。よしよし」
俺は運営サイトに儀式についての記事が無いかを探しているのだが、それと同時にリルをモフっている。
作業と癒しを同時に味わうことで、精神不可がプラスマイナス0の状態を作っているんだ。
え? 作業効率はどうなのかって? HA☆HA☆HA☆
「むぅ、私もやってよルナ君」
「順番だ。それよりメルとベルはどうした? 2人も今日は暇だろ? ここに来ないのか?」
頬を膨らませたソルが俺の脇腹に尻尾を当ててくるが、そっと払い除けてからソルの頭をガシガシと撫でてやった。
大人なんだし、順番は守ろうな。
そして俺に耳の付け根をモフられているリルは、顔を俺の目の前まで持ってきた。
「ふっふっふ。父様。この世には『お姉ちゃん権限』という物があるのですよ。私は少し、この手を血に染めたにすぎません......」
「あぁ、ジャンケンで勝ったんだな。理解した」
「父様ぁ!」
そう、それを待っていたのだよ。その頭を俺の胸にグリグリとするのを待っていたのだ。ほれ、もう少し強めにやってもいいんだぞよ? ぞよぞよ?
「リルちゃん、昔に比べてかなりお姉ちゃん感が増したよね。ということは反抗期が来て、そのうちパパっ子からママっ子になる!?」
「なりません。いつだって私の1番は父様です。母様は2番目です」
「グハッ!......そ、即答......!」
「これは私に限らず、メルちゃんもベルちゃんも同じです。私達の父様は、どんな時でも1番なのです」
「うぅ......私もルナ君が1番だよぉ......」
可愛いぁ、2人とも。そこまで俺を褒めて、一体何が狙いだ?
ただ純粋にそう思っているから口にするほど、皆は素直なのか?
「えへへ〜」
あ、これは純粋ですわ。リルの持つ金色の眼、俺以外映してなかったわ。なんて綺麗な眼なんだ。美しい。
「さぁ、情報も揃った事だし、ソルの討伐数を稼ぎに行くか」
「え? 着いてきてくれるの?」
「当たり前だ。獲物を横取りされないように警戒役にもなるし、1人でやるよりは2人で、5人で一緒にやれば心強いだろう?」
ソルの累計モンスター討伐数は98万体なので、仮説通りならあと2万体倒せば良い訳だ。
決して少ない数字だが、20時間くらいあれば狙えないことも無いだろう。そんな時間、余程の人じゃないと、1人でやるのは苦痛だろう。
ちなみに俺は余裕で出来る。何せ、ゲームは楽しいからな! 何時間だって楽しめるぞ!
「じゃ、長い長いピクニックの、始まり始まり〜」
◇◇
「『狐式:天狐』『穿天』」
「すっげぇ......火の海じゃん」
「凄いじゃろ? でもねルナ君。私の尻尾見て?」
「ん?......ん!?」
俺達は、ニクス山にある、ステラアントの巣に来た。
そこでソルが、光を収束させた炎のレーザーを放ち、奥から続々とやって来ていたステラアントが全滅した。
そして綺麗な笑顔でソルが尻尾を見せ付けてきたのだが、俺は絶句した。
「そ、ソルの......尻尾が焦げてる......」
「ちょっと掠っちゃった! てへ」
「『てへ』じゃねぇよ! お前の綺麗な尻尾が焦げてるんだぞ!? もう世界が終わるかもしれないんだぞ!?」
「大袈裟だなぁ。大丈夫だよ。ほら、こうして......あれ?」
ソルが尻尾に回復魔法を使ったが、あの綺麗な金色の尻尾は未だ黒いままだ。
「えっと、その......ごめんね」
「はぁ。次からは気を付けてくれ。帰ったら手入れするから、早く終わらせよう」
「うん......あっ、もしかしたらリスポーンしたら戻らないかな?」
「やるならせめて、儀式をしてからにしてくれよ? 全く、自滅で尻尾が焦げるとか、メルも悲しむぞ」
「すまぬぅ」
あ〜焦った。もしソルの尻尾が無くなったら、俺はリルの尻尾で、この尻尾モフモフ欲を鎮めなければならないんだぞ?
耳の方のモフモフ欲は、ソルの耳が健在だからな。2人ともモフれる。
「リルも何か言ってあげな」
「そうですねぇ......父様のお手入れなら復活するでしょうし、落ち込まないでください、母様」
「お、落ち込んではいないけどね! ありがとうリルちゃん!」
「はい!」
あら嬉しい。そんなことをリルに言われてしまえば、俺も頑張るしかないじゃないか。
チリチリになったモフモフを、この手で復活させてやる。
◇◇
「終わったー!!! 100万体、行ったよルナ君!」
「おう、おめでとう。もっと時間かかると思ってたが、早かったな」
「おめでとうございます!」
「おめ」
「おめでと〜、尻尾のケア〜、しないとね〜」
「ありがとね! 尻尾の方、お願いするね!」
「あぁ。任せろ」
ステラアントの巣に籠り、大体5時間程か。それくらいで2万体の討伐が完了した。
途中、詠唱中に何度か攻撃されていたのを見るに、やはり数の暴力は恐ろしいな。それだけで強力な武器なる。
「さぁ、女王アリを倒して帰るぞ」
「いぇ〜い! 蟻んこ討伐タイムじゃ〜!」
「じゃ〜! です!」
「「じゃ〜」」
ボスを倒して帰ろうじゃないか。ここのボスは決して強くないし、変異体でもない限り苦戦することはないだろう。
え? フラグ? そんなことある訳ないじゃデスカー
「まぁ、予想通りだよな」
◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
ダンジョンボス『ステラクイーンアント変異体』との
戦闘を開始します。
◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
『ギチャァァ!!!』
「皆真っ黒なのにお前だけ白いなんて、アルビノか?」
「あるびの? って何ですか? 父様」
「アルビノってのは──「言ってる場合じゃないよ!」
リルの為に説明してあげようと思ったら、ソルが前線に出て刀で戦闘を始めていた。
この程度の相手ならソル1人でも勝てると思うが、万が一を考えて動かないとな。リルよ、アルビノについては後で話そう。
「ステラ......ほい、バフ。全ステ2倍だぞ。頑張れ」
「ありがとう!」
うむうむ。頑張るソルは美しい。俺は後方腕組み彼氏面して戦闘を見守ろう。
ん? 彼氏面?
「いや俺彼氏だわ。というか婚約者だわ」
「パパ?」
「何でもない。ソルなら苦戦しないだろうし、一緒に見守ってような」
「うん」
そうして俺達銀髪4人衆は、ソルの勝利を見守った。
ここだけの話、430話まで書き終わってるのでちまちまと修正していきます。
誤字脱字の嵐に呑まれる未来が見えますが、頑張れ私。
それでは時間『人間が食べる物じゃない』お楽しみに!