戦神の儀式
怪しいタイトルですわ!
◇ ◆ ◇
「ソル、今日はどうする? 街の散策もアリだし、ここの冒険者ギルドの依頼を見るのも手だぞ」
「正直全部やりたい。ダメかな?」
「いいぞ。じゃあ街の散策からやるか。あと朝ご飯も食べよう」
「オッケー! 行こう行こうー!」
元帝国領の街に来た俺達は、サバイバルの疲れが癒えた体で街の散策をする事にした。
街の外観は、良くも悪くも味のある木造建築が多く、冒険者ギルドや教会などの重要な建物は石材で造られており、ゲームで最初に来る街の様なイメージを抱いた。
だが、街の外に出た瞬間、そこは地獄と化すだろう。
だって──
「ゴブリンアーチャーの討伐依頼、5体で2000リテ......嘘だろ」
「ここら辺のゴブリンって、レベル250はあるよね?」
「あぁ。まともなレベリングをしてないプレイヤーだったら、2体に囲まれた瞬間この街でおはようだな」
そう。元帝国領のモンスターは、皆レベルが高い。
仮に初心者が来たとしよう。北側に広がる大平原に出た瞬間、頭に矢が刺さって終わりだ。
「流石に俺も気を付けないと危ないしなぁ......」
そんな言葉を漏らしつつ、依頼の張り紙を見ていると、背後から大きな男だと思われる足音が近付いてきた。
「お前さん、ちょいとよいかの? そう、銀髪のお前さんじゃ」
足音の主から発せられたのは、嗄れたお爺さんの声だった。
「あ、俺ですか。今退きますね」
「違うわい。お前さんに話があっての。来い来い」
「は、はぁ。分かりました」
手を招くお爺さんに誘われ、俺はソルと手を繋いで着いて行った。
そしてお爺さんが連れて来た場所は、ギルドの裏手にある教会の中だった。
「そこの金髪のお嬢さん」
「はい!」
「お前さんは、ちと離れておれ」
「はい?......分かりました」
教会の中は、所謂チャーチチェアと呼ばれる物は無く、大きな石造りの広場の中央に、背の高い女神の石像が置かれているだけだった。
「銀髪の。お主は女神像の前に立っておれ」
「......何をする気で?」
「儀式じゃ」
「何の!?」
「戦神の儀式じゃ。お前さんの持つ戦闘スキルを、戦の神に昇華させて頂く」
「待ってお爺さん。流れで着いてきたけどさ、いきなりそんな訳の分からない儀式をされたら......っておい!」
お爺さんは杖を取り出して構えると、女神像の頭上に真っ赤な魔法陣を出現させた。
魔法陣に刻まれている文字を見る限り、普通の火属性の魔法ではなく、俺の知らない文字の配列で作られている。
儀式とか何とか言ってたけど、どこで何のフラグを踏んだんだ?
「『神よ。戦の神よ。この者が持つ才と力を、更なる高みへと至らせよ』」
お爺さんがそう唱えると、女神像の表面がパキパキと砕け落ちていき、石像の中から1柱の女神が出てきた。
光のように明るい金髪に、海のように透き通った青い目の女性だ。
『頂いた魂の数、スキルのレベル、一定量の経験値を確認しました。昇華を許可します』
ん? 俺、この女神に見覚えがあるんだが、気のせいか?
いや、気のせいじゃない。この女神──
「戦神アテナ様。ありがとうございます」
だよね! 今回の戦争で戦ったよね! シリカが!
『......ふふっ、貴方と戦える時を楽しみにしています』
「なんと!? アテナ様がお喋りになられた!」
後ろでお爺さんが驚いていると、アテナは俺の頭に手を置き、俺の視界は真っ白に染められた。
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一部戦闘系スキルが昇華されました。
『剣帝』→【剣神】
『弓帝』→【弓神】
『槍帝』→【槍神】
『闘帝』→【闘神】
『刀将』→【刀神】
『操帝』→【糸神】
『戦神』→【軍神】
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わぁお、カンストしていたスキルが新しくなって、全部レベル1になっちゃった。
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
一部戦闘系スキルが消失しました。
『魔剣術』
『魔弓術』
『魔槍術』
『魔闘術』
『魔刀術』
『魔糸術』
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オイ! 俺の大事なスキルが全部消えたんだが!?
どうすんだよこれ! 俺、魔刀術使えなかったらただのクソザコプレイヤーだぞ!?
......いや、そんな事は無いけどさ。
『大丈夫ですよ。それらのスキルが1つに統合され、昇華したのです』
「あ、そうなんだ。というか昇華させるメリットあるのか? 別に俺、現状で問題無かったのだが」
『それは貴方が決めることです。向上心を持つ者であれば、これは喜ばしいことでしょう』
あ〜あ。確かにそうじゃん。俺、いつの間に向上心を落としてきたんだ?
俺らしくない。気持ち悪い感覚だ。
「ありがとう。いつか戦えることを楽しみにしてるよ」
『えぇ。では、私はこれにて......』
アテナは最後に、俺の頭を撫でてから石像へと戻って行った。
どうして皆、俺の頭を撫でようとするんだ? 最近の人、特に女性は俺の頭に何かあると思ってるのかな?
この銀髪はあげないぞ。俺の宝物だからな。
「ルナ君、大丈夫だった? 唾とか付けられてない?」
「言い方が今世紀最悪だな。だが大丈夫だ。スキルを昇華して、魔刀術とかが全部消えた」
「......この石像、壊すしかないんじゃ」
「大丈夫だって、魔刀術達も生きてるから。そう破壊衝動に駆られるな。可愛さが減ってしまうぞ?」
「うっ......それはやだ」
体をぺたぺたと触ってきたソルだったが、俺が少し言うと直ぐに落ち着きを取り戻してくれた。
「さて、お爺さん......あれ? どこに行った?」
「ホントだ。お爺さん消えてる」
「はぁ......何なんだこの突発的なイベントは。嬉しいけど困るぜよ」
「ぜよぜよ〜! そういやどうして私は出来なかったのかな。何かフラグを踏み切れてなかった、とか?」
何だろうな。アテナが言っていたことから察するに、『魂の数』『スキルレベル』『一定の経験値』という3つの要素が関わっているのだろうけど......
「それの具体的な数字が分からないんだよなぁ」
「「う〜ん」」
っていうか『魂の数』って何だよ。魂 is 何?
「まぁ、言葉の雰囲気的にキル数......ごほん。倒した敵の数とかそこらだろう。俺は神龍戦でモンスターを、戦争で人間を大量に倒したから、それが原因じゃないか?」
「そうだよねぇ。はぁ、暫くはルナ君に追い付けなさそう」
ソルは、どこか悲しそうに、どこか悔しそうな表情で拳を握り、石像を睨んだ。
「ソル、大丈夫だ。俺が手を引いてやるから安心しろ」
固く握られた手を優しく包んで、俺はソルと手を繋いだ。
これなら大丈夫。今みたいに手を繋いでいれば、片方がどこかへ行く心配は無いだろう?
「一緒に強くなるんだ。1度リル達に合流して、じっくり研究しよう。掲示板の人にも意見を聞いて、現地人にも沢山聞きに行こう」
「ルナ君......うん! ありがとう!」
綺麗な笑顔だ。俺は昔から、その笑顔が好きだった。
当時は口に出して言えないし、そもそもこの気持ちに気付いていなかったが......今なら言える。
「大好きだ。一緒に頑張ろう」
「ふふっ、好きの強さなら、私は誰にも負けないからね?......私も大好き」
俺はソルを強く抱きしめてから、そっと唇にキスをした。
まだ冬だってのに、暑く感じて仕方がないな。
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名前:ルナ
レベル:499
所持金:874,232,900L
種族:人間
職業:『ヴェルテクスギルドマスター』
称号:『騒音者』
所属ギルド:魔法士・Sランク冒険者
Pギルド:『ヴェルテクス』
所持因子:『稲荷』他6柱
所持技術:『魔力打ち』他多数
《ケリドウェンの叡智・学問》
HP:24,910
MP:24,910
STR:24,910
INT:24,910
VIT:24,910
DEX:24,910
AGI:24,910
LUC:12,450
CRT:100(上限値)
SP:1,540
『取得スキル』
戦闘系
【剣神】Lv1
【弓神】Lv1
【槍神】Lv1
【闘神】Lv1
【刀神】Lv1
【糸神】Lv1
『盾術』Lv100
『斧術』Lv100
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
【軍神】Lv0
魔法:省略
生産系:省略
その他
『テイム』Lv100
『不死鳥化』Lv100
『マナ効率化』Lv0
『植物鑑定』Lv0
『毒物鑑定』Lv0
『動物鑑定』Lv0
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甘ァい。
次回『し、尻尾が!!』お楽しみに!