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金と銀のフィデム旅行 3

前回が長いということは? 今回は?.....普通です。



「おはようソル。よく眠れたか?」


「眠れた......けど、最初は全然眠れなかったんだの。でも気付いたらぐっすり!」


「そうか。それは良かった。今日は街まで歩いて、新しいフィデムを観光しよう」


「うん!」



フィデムの2人旅は2日目に入り、元帝国領の広大な草原のキャンプ地で俺達は朝を迎えた。


俺は昨日、ソルが眠れていないことに気付いたので、ソルが寝るまで頭を撫でるという、超イケメンムーブをかましたところだ。


お陰で俺は眠れていないが、警戒とモフモフが出来たということでチャラだ。



「はい、朝ご飯。そこら辺に生えている香草で炒めた白竜の肉とスープ。ゆっくり食べていいからな」


「ありがとう......うん、美味しいよ!」


「どういたしまして」



ソルのモッフモフの狐耳を撫でてから俺もスープを口に運び、長閑なひと時を楽しんだ。


スープを入れた容器.....即席で作った木の器なのだが、少し綺麗に作りすぎたかな。キャンプ感が薄れてしまった。




「「ごちそうさまでした」」



「よし、そろそろ行くか」


「うん! レッツゴー!」



そうして朝の用意を済ませた俺達は、街があるであろう南側へと歩みを進めた。

見渡す限りの大平原だが、きっと大きな街が見えてくる。






──なんて、思っていたんだ。






「......空、飛ぶぞ」


「うん......抱っこして」



2人旅生活、ゲーム内時間で3()()経ったが、俺達は未だに大草原から抜け出すことすら出来ていなかった。


流石にドラゴン肉も尽きてくるので、最後の手段である空を飛んでの移動を開始した。




「広い、広い広い広い広い! 広すぎる!!!」


「私達はどうしてこんな草原を歩いていたんだろうね。あの村から歩き始めるの、バカのする事だよ」



見渡す限りの緑の海。俺達はどうしてこんな所でサバイバル生活をしていたのだろう。資源も少ないのに、本当に馬鹿だと思う。


もう我慢しないからな、ファッ○ン大草原。



「頭がおかしくなる広さだ。ソル、ぶっ飛ぶぞ!」


「やっちゃえ!!!」


「『戦神』『ウィンドスフィア』『アクアスフィア』『イグニスアロー』『アウラ』」



俺は何個も魔法を発動させ、水蒸気爆発による超高出力の推進力を使って南へぶっ飛んだ。


今までにないスピードで進めるのだが、俺のHPが一瞬で1になってしまった。

自分の出した魔法じゃ威力が軽減されるはずだが、如何せん出力を高めすぎた。今の爆発を戦争で使おうものなら、敵味方構わず吹き飛ばしていただろうな。


爆発は危ないな。



「──見えた! 街だ!!」


「やったぁぁぁ! これで柔らかいお布団で寝れる!!!」


「もう、サバイバル嫌だ......おいちいごはん......たべたい」



キラキラと光る雫を零しながら、俺達は街のド真ん中にある噴水の傍に着地した。

周囲に居るプレイヤーに変な目で見られているが、今の俺達に構っている余裕は無い。



「取り敢えずどうする? 宿屋で寝るか?」


「そうしよう。それとリアルでもご飯食べよう。もう夜だし......私達、リアルで2日かけてゲームでサバイバルしてたからね、解放されたい」


「了解だ。宿屋は......あっちみたいだな。行こう」



俺はソルの手を取り、看板に書いてある宿屋へ向かって歩き出した。


そう、俺はこういうデートを求めていたんだ。決して、大して美味しくもない同じような料理を食べるサバイバル生活を望んでいた訳じゃない。



「ホンマにあの草原許さんからな。二度と入らんわ」


「出てる出てる。関西弁出てる」


「おっと......つい恨みが爆発してしまった」


「ふふっ、久しぶりに出ちゃったね? 私、ルナ君の関西弁も好きだな〜」


「お前も関西弁出るだろうに。最近は聞いてないけど」


「東京だと浮いちゃうかもしれないからね。頑張って抑えてるうちに、意識しないと出なくなっちゃった」



え〜、残念だなぁ。でもソルが関西弁で話し始めたら、それこそお稲荷さんを小さくした様なイメージになるのな......いや、逆にアリ?


ナシだな。ソルには普段通りで居てもらおう。それが1番だ。




「らっしゃい。2人か?」




宿屋に着いて早速、カウンターでチェックインをする。

店主のオッチャンは俺とソルを見て、直ぐに2つの鍵を手に取った。



「はい、2人分です。でも同じ部屋でお願いします」


「あいよ。1000リテ......いや、800リテだ」



おぉ......お? それ、まけてくれているのか? ウィンドウを出さずに直接会話してるから分からないが、多分まけてくれているのだろう。



「ありがとうございます」


「おう。ごゆっくり」



鍵を受け取った俺は、ソルと一緒に廊下を歩く。

途中でソルが腕に抱きついてきたが、誰も見ていないので優しく受け入れた。



そして鍵を使って部屋に入り、俺はベッドに倒れ込んだ。



「はぁぁぁ......疲れた。取り敢えずログアウトするか」


「疲れたね。私も疲れが危ないラインに入ってるかも」


「寝ろ寝ろ、俺も寝る」



俺はソルを隣で寝かせ、次にログインする時には回復していることを祈り、ログアウトした。




◇ ◆ ◇




「あぁ......ご飯が美味しい......お魚美味しい」


「ほれほれ、お味噌汁もあるぞよ? ぞよよ」


「美味しい、美味しい......毎日飲みたい......」


「はいプロポーズ頂きましたァ!」


「無いです」


「私の言おうとしてること、先読みして答えないで!」


「ハッ、陽菜の言うことなど手に取るように分かる。次はそうだな......うん......分からん」


「分かんないか〜」



陽菜の手料理は美味しい。あんな草原で食べるサバイバルご飯より、20億倍くらい美味しい。

なんと言いますか、あっちもあっちの良さがあるのは分かるのだが、如何せん食事というのは命に関わる行動なのでね。


食べるものに困らないリアルの方が、心の余裕があるから美味しいのだろう。



「陽菜の料理はいつ食べても安心する。だから、俺専属のコックになるか?」


「う〜ん、それ私をより家政婦さんにしてくれた方がコスパ良いよ?」


「じゃあ家政婦として雇われないか? 良い値で雇うぞ」


「う〜ん、私をお嫁さんにした方が更に安く済むよ?」


「そうなのか? じゃあお嫁さんに......はまだ出来ん」


「......ダメだったかぁ」


「もう少し待とうな〜」


「は〜い」



あぶないあぶない。あと少しで流れでお嫁さんにする所だったぜ。


......なんてな。プロポーズは然るべきタイミングでするから、陽菜には気長に待っていてい欲しい。

それに、俺達はまだ、付き合い初めて1年も経っていないからな?


交際する前の付き合いは長いが、ちゃんと交際してからはまだ日が浅い......同棲しているが。


それに、もっともっと陽菜と一緒に居る時間を増やしたい......もう10年超えてるが。



あれ? 別にプロポーズしても問題ないのでは?



「いや待て、それは思考が陽菜に汚染さている。俺達はまだ高校生だ。確かに将来を考えて動かないといけない年齢だが、まだ17の人生ペーペーだ」


「月斗君?」


「そう考えるに、やはりプロポーズは20やそこらになってからすべき......か?」


「あと2年ちょっとも待つの? それだったら私の方から動くけど」


「うむ。確かに陽菜はそう言うよな。予想の範疇だ」


「目の前で言ってるからね」



ん? あれ? 全部口に出てた?



「あ、あ〜ごめん。色々と考えてた。取り敢えず、今の俺達に必要なのは時間だ。相手の心に触れる時間を増やして、互いに認め合うのが必要だ」


「もう10年もそれをやってるけど?」


「うっ......まだだ。もう少し続けようぜ?」


「ふ〜ん?」



うわ、断られそう。どうしよう、この後の逃げ道を用意していない。



「いいよ。もっともっと、私を知ってね。私ももっと、月斗君のことを知るから」


「.....ありがとう。宜しく頼む」


「こちらこそ宜しくね!」



おいなんだこの空気。プロポーズ後の空気じゃねぇのか?



いや、違うはずだ。そう、俺と陽菜の間柄なら普通の空気だ。そう、そのはずだ。




「......ふぅ。タイムリミットが近付いているな」

気が付いたら陽菜さんが暴走してるなと思う今日この頃。



次回『儀式』お楽しみに!

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