最終調整
深夜テンションで活動報告を書いてきました。
興味のある方は作者マイページよりご覧ください、さい、さい.....はい、サイドッチェストォ!
「せいっ! はぁぁ!! やぁ!!!」
ガン! ガギンッ! スカッ
「うわぁ!......もう1回!」
「フェイントに弱いな、フリット。俺を信じ過ぎだ」
「うるさい!」
「へいへい」
フラム帝国との戦争が始まる前日。俺は最近の日課である、フリットの鍛錬をしていた。
知識的な技術を直ぐに身に付け、行動的な技術が身に付き難いフリットに1対1の戦闘を教えている。
「ふわぁぁあ......ねむ......昼寝していい?」
「何を言っているんだ! 明日から戦争が始まるのだぞ!?」
「だからだよ。今日までは平和に居られるんだぞ? もしここで負けたら王国に明日は無いんだし、今のうちに昼寝を堪能しておこうぜ?」
「......負ける事を前提に戦うのか?」
「さぁな。帝国側の語り人が想像以上に多いのは認めるが、それで俺が負けを確信する人間だと思われているのなら、もうフリットとは遊ばないかな」
「遊びではない! 訓練だ!」
「そうか? 俺から見ればおままごとに感じるが」
「お前とはレベルの差があり過ぎるだろ!」
ツッコミ......忙しそうだな。可哀想に。
俺がボケに徹することが出来る相手って、実はそう多くないんだぞ? お前は誇っていい。俺の数少ない友達だ。
まぁ、誇る程の価値は無いと思うがな。ハッハッハ!
「あ、そうそう。最初のうちはドラゴンは出さないからな。早めに出して対策を取られても面倒だ」
「......お前」
「何だ」
「そういう事は、前もって伝えろよ」
まさか、フリットに正論パンチでノックアウトされるとは。流石に今回の話は俺が悪いし、素直に謝ろう。
「すまん。騎士長とかに伝えてくるわ。少し休憩ということで」
「了解だ」
俺はパラソル付きの椅子とテーブルを魔法で作り、適当にマンゴージュースを置いてから騎士寮へ走った。
騎士団長室へ向かう道中、すれ違った騎士から『何でここにアイツが?』みたいな顔をされたが、俺は無視して部屋の前に来た。
そして騎士長室の前で、コンコンコンと、3回ノックするとドアが開けられた。
「どうしたんだ?」
「よ、騎士長。大事な話があるんだけど──」
◇1時間後◇
「フリット〜、戻ってきたぞ〜」
「遅い! 報告だけでどれ程......えぇ?」
「騎士団と合同訓練だ。それとついでに、興味本位で遊びに来ていた語り人も連れてきた」
「「「お願いしまーす」」」
俺がぞろぞろと30人近くの人間を連れて来ると、フリットは口をポカーンと開けて固まった。
それよりコイツ、第1王子と違って大量の情報が流れてくると固まるタイプなのか。
戦場でやっちゃいけないことランキングの上位に入る、『何をすればいいのか分からなくて棒立ち』なんてされたら困るし、今日で鍛え上げねばな。
......一朝一夕で身に付くものじゃないが。
あ〜あ。まさかこんな所で新たな弱点な見つかるなんて。
「おい、起きろ」
3秒経っても固まっているフリットの頬を、手加減を加えて12回ほどビンタしてやった。
超高速ビンタだ。痛いだろうなぁ。
「お、おま、お前ぇぇ!! なんて事するんだ!」
「うるさい。それより始めるぞ。休憩は終わりだ......ほら、早くしろ」
「分かった。分かったから手を構えるな!!」
指を4本揃え、親指を直角に曲げた手の平を見せると、フリットは素早く行動に移してくれた。
「え〜と、騎士団の人達は3部隊に別れて、語り人と10対1の戦闘訓練をしてください。騎士が狙うのはノータッチワンヒット。一撃も貰わず、相手に一撃を当ててください」
「「「「「はい!」」」」」
「次に、語り人のお兄さん達。あなた達は、一斉に襲いかかる大量の敵から、逃げずに戦う練習をしてください。目標はワンタッチツーヒット。肉を切らせて骨を断つを意識してください」
「「「了解!」」」
俺がパパッと騎士達に練習メニューを言い渡すと、皆は直ぐに訓練をし始めた。
途中、『ルナと戦いたかったな〜』という声が聞こえたので、後で纏めて相手してあげよう。
「おい、俺はどうするんだ?」
フリット。君には天国に見える地獄を味わって貰おう。
「お前はこれからウチの子と戦ってもらう。超絶美少女だから惚れるかもしれんが、手を出そうもんならお前の首が落ちるからな」
「は、はぁ?」
「ってな訳で、おいで、リル」
ウィンドウからリルを呼び出すと、リルは俺に抱きつこうとしながら現れた。
違う。待って、これ、抱きつくとかそんな威力じゃ──
「父様ぁ! 会いたかったです〜!!!」
「おぶぅ!......タックルは辞めてくれ......」
「えへへ〜」
フェンリルのステータスを全開にした頭突きが、俺の鳩尾にクリーンヒットした。
これ、リアルだったら30分は動けないぞ。まるでラガーマンのタックルだ。
「る、ルナ?」
「だ、大丈夫だ。それと、この子と戦ってもらう。リル、いいか?」
「ダメです。久しぶりに父様と2人っきりなんですから、ゆっくりしたいです」
「どこをどう見たら2人っきりなのから分からないが、また時間は作る。だから今はフリットの訓練に「い〜や〜」......はぁ」
ダメだ。この状況なのに甘えん坊モードに入っていやがる。
「リル。落ち着け。家に帰ったら沢山甘やかすから、今は我慢してくれ」
「んぅ......本当ですか? 約束ですよ?」
「あぁ。俺だってリルと遊びたいからな。約束だ」
可愛いなぁ、リル。一生懸命に顔をグリグリと擦り付けて、前にテレビで見た子犬みたいだ。
ハッ! まさかリルは、狼じゃなくて犬......?
「父様? 今、失礼な事を考えませんでしたか?」
「考えてないぞ。リルが可愛いって思ってたんだ」
「えへへ、ありがとうございます!」
そのニコッと笑う顔が、本当にソルにそっくり......ってそうじゃねぇよ。今は戦争前の最終調整だ。遊んでる場合か!
「ほら、立て。あそこで棒立ちになってるフリットに、混乱した時に棒立ちにならないように教えてやってくれ」
「分かりました。直ぐに終わらせるので待っていてください」
そう言ってツクヨミさんを腰に提げ、フリットに向けて歩き出したリルの肩を掴んだ。
「待たんかい。お前今、フリットに何しようとした?」
リルを見て剣を構えたフリットだったが、俺はその先の未来が脳裏に浮かんだので直ぐにリルを抱き寄せた。
そしてリルの顔を上から覗き込むと、リルは目を泳がせながら口を開いた。
「い、いえ何も? 何もしようとしてませんでしたよ?」
「それはそれでダメだよな。ったく、訓練の話し合いから始めるぞ。フリット、これからお前の弱点を全部言うから、リルに直してもらえ」
「あ、あぁ。だがその子は大丈夫なのか?......色々と」
「「あ?」」
「何でもない。話を続けてくれ」
命拾いしたな、フリット。お前は今、絶対に踏み越えてはいけないラインに乗っていたぞ。
「戦闘の引き時も教えてやる。死なない戦い方講座、耳かっぽじってよ〜く聞けよ?」
ゆずあめは筋肉も脂肪も無い、人体模型とまで言われるくらい細いですからね。サイドチェストなんて出来ません。
次回『開戦の雷鳴』お楽しみに!(カッコよく出来た!)