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フィデム王国の使い

某バトロワゲーの野良で「笑い声が悪魔ですね」と言われた一般柑橘類です。




「もう時間だ。行ってくる」



第1王子に許可を貰って帰ってきた俺は、2時間だけ、ソルと幸せな時間を過ごしていた。


寝る前に必ず行うモフモフタイムをキメていると、俺に科せられた制限時間が迫ってきたのだ。



「......寂しい。もう少し居れないの?」


「それは出来ない。2時間の約束だ。ここで第1王子を裏切ると、俺達が起こせる中で、最悪の状況を作ってしまうからな」



俺は膝枕をしているソルの頭を撫で、潤んだ紅い瞳を覗き込んだ。


曇りなど知らない、純粋で芯のある瞳は、ずっと俺の目を捉えていた。



「綺麗な瞳だ。大好きだぞ」



ソルが俺の首に腕を回して体を起こし、目を閉じて唇を重ねた。



「......行ってきます」


「行ってらっしゃい。私も大好きだよ」



離れたくない。いつまでもこうしていたい。



そんな思考に支配される脳に自制心を働かせて、俺は何とか宿を出ることに成功した。




◇◇




「帰ってきた。敵は?」


「おぉ、待っていたぞ。帝国兵は今のところあの5人だけだ。だが油断が出来ない故、騎士一人一人を確認しているところだ」


「そうか」



働き者の第1王子が休憩する部屋に転移した俺は、報告を聞きながら王子の反対側のソファに腰をかけた。



「近いうちに戦争が起きる。皆、ルナには期待しているぞ」


「期待すんなって言ってくれ。俺が1度に相手取れるのは20人が関の山だ。帝国が数万、数十万と数で押す気なら、俺はドラゴン達に頼るしかない」


「そのドラゴンを含め、期待しているのだ」


「腹が立つ奴らだな。ドラゴンのテイムがどれだけ大変か知らない癖によ」



俺は自分で淹れたモスベリーの紅茶を飲むと、第1王子がハッとした顔で聞いてきた。



「それだ。そのドラゴンは、どのようにしてテイムしたのだ? 実は前々から気になっていたのだ」


「そこら辺を飛んでるドラゴンなら、地上に叩き落として恐怖で支配すれば簡単にテイム出来る」


「そこら辺を飛ぶ......む? その説明では、そこら辺を飛んでいないドラゴンが居るようだが......」


「あぁ。俺が最も数多くテイムした『ラースドラゴン』は、サタンの支配するダンジョンで出てくる、強力なドラゴンだ」



この話、つい最近したような気がするが、気のせいだろうか。



「ラースドラゴンと言えば、神話上のドラゴンではないか!」


「あ〜、フリットも同じこと言ってたな。多分それだ」



第1王子の反応を見て思い出した。もしかして俺って、忘れっぽい?


まぁいいや。ドラゴンのテイムは持久戦だから、攻撃を回避し続け、相手の隙を逃さずに何時間も戦える精神力があれば、誰にもテイム出来る。


最悪、ドラゴンのHPを削らなくても、ドラゴンから驚異だと思わせればいいからな。



「支配か友情か。取れる選択肢は2つなんだ。語り人は大抵が無情な奴らだ。俺を含めて、な」


「ルナよ。お前は本当に自分が無情だと思っているのか?」


「いいや? 思いやりと愛に溢れる、この世でたった1人の特別な人間だと思ってるけど」


「......はぁ。お前は毎回毎回、斜め上から答えるのだな」


「テンプレは飽きた。自分に正直に生きたい」



第1王子に同情されるくらいなら、今から帝国に乗り込んだ方が早い。



ピロロン!



「ん、メール来た。ってかこのクッキー美味しいな」


「私の専属メイドが作った物だな。これは私の誇りでも「おうまいがー!!!!」......どうした」



クッキーを食べながらメールを見ていると、とてもマズイ、マズすぎてナマズになるくらい驚く報告が来ていた。



「第1王子。なんと、来週から戦争が始まります」


「どういう事だ? 開始の文はまだ来ておらんが......」


「端的に言うと、帝国にスパイを送っていたんだけど、そいつが情報を持ってきてくれた。大方の人数も分かったが、それよりもっと重要な情報もある。それが、帝国側に結構沢山の語り人が味方している、という事だ」


「待て、待て待て待て。情報量が多すぎる! 1つずつ報告しろ!」




それもそうですな。では、翔から貰った情報を纏めますか。




◇◇




「──と、言うことです。父上」



帝国に居るスパイ......翔やアテナ達からの情報を受け取った俺と第1王子は、早速国王とフリットに報告した。



「うむ。ご苦労である。ルナ、お前が送り込んだというスパイの人間は語り人なのだな?」


「そうですよ。ついでに帝国側にも語り人が居ますよ」


「......お前と同等の者が攻めて来るのか」


「そんな訳無いでしょう?  これでも俺は、語り人の中ではそこそこ強い部類に入るのでね。同等の人間は少ないです」



モグラ君を抱きしめながら、俺は国王に平気である旨を伝えた。


正直、マサキや犬子さんぐらいの、所謂トッププレイヤーと当たらない限りは勝てるはずだ。多分。



「上手く行けばウチの連中が背後を取れますが......失敗したらスパイがバレた上に、貴重な戦力がゴッソリ持ってかれますっ! やっべ!」



本当に慎重に行かないと、アテナ達の存在がバレるだけで王国の存亡に関わる。

頼むぞ皆。皆って言っても、ソルとリンカ以外のメンバーだが。


お前達ならなら出来る。俺は信じてるぞ。



「さ、来週からドンパチ合戦が始まることですし、住民の避難や兵士の訓練とか、そこら辺はお任せします。んじゃ」


「おいルナ!」


「帰りはしないから大丈夫だぞ。それとお前は寝ろ、働き者」



俺は第1王子に捨て台詞を吐き、モグラ君を光に戻しながら部屋を出た。

最後にチラッとフリットを見てみると、目を丸くして驚いた顔をしていた。



「あ〜、帰りてぇ。せめてベルだけでも呼んで、この寂しさを紛らわすか?......いや、可哀想だし辞めとくか」



独り言をぽロボロと零しながら、城に幾つかあるバルコニーからフラカンで飛行し、俺はフィデム王城の屋根に座りって夜明けを待つ。


そろそろクエストとして大々的に発表される頃だろう。


どれだけのプレイヤーが帝国側に着くかは分からないが、目一杯楽しませて貰おう。




◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆

グランドクエスト『大陸戦争』を予告します。

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆





「おやや? クエストの種類が変わったのか。プレイヤーが作るMMORPGって感じがして良いじゃん」




真っ黒な背景に白い文字で映し出されるウィンドウを眺めながら、俺は寝転がった。



楽しみだな〜。今までとは一風変わったイベントだ。ワクワクするぞ。

おややぁ?(ねっとり)



次回『最終調整』お楽しみに!

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