表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
413/492

フリット、イニティへ行く

ちょびっと長めです。




「よしフリット。お前はこれから、ロークスにある『イニティ』という街に行ってもらう」


「あぁ、分かった」


「うむ。だが、残念な事に俺はフィデムに残らねばならない。だから、俺の代わりとなる人物に、お前と共に行ってもらう」



フリットを弟子にして2日目。昨日は用意に時間が掛かるということで、あのまま解散したのだ。



そして今日、遠足感覚でレベリングの旅に出る。


出る......のだが、フリットと一緒に行くのは、『本物のテスカ』だ。

俺の性別と容姿を反転させた、あのテスカ。


では、何故『本物のテスカ』じゃないとダメなのか、それには理由がある。

それは1つ。『テスカのギルドカードがあるから』だ。



ギルドカードは身分証として扱えるから、何かあってもスルー出来る可能性が高いということ。

そして、フリットとそこまで身長が変わらないから、フリットと同じ目線で教えられるだろうという浅はかな考えだ。


うん、理由、1つじゃなかったわ。多分、ポンポン出てくるわ。



とまぁ、そんな理由でテスカを選んだのだ。



「じゃあ、俺はその子を呼んでくるから、帰ってきたらまた会おう」


「あ、あぁ」


「んじゃ、気を付けて。『転移』」



訓練場から宿屋へ転移した俺は、反転の横笛を吹き、見た目を金髪ロリに変化させた。



「あ、流石に着替えよ。どれにしよっかな〜」



インベントリにある数枚の服のプレビューを出し、どれが自分に似合うかを考えながら選ぶ。



「オイ、これだとマジの女の子じゃねぇか。もういい。これ着てこ。『転移』」



冷静に考えた俺は、パパっと服を選び、一瞬で着替えてから訓練場に戻った。


そしてフリットに目を合わせると、何故かフリットは、挙動不審になってしまった。



「あ、貴女が私と共に旅に出る方......ですか?」



ん? コイツ、俺に対しては一人称が『俺』なのに、他の人には『私』なんだな。

ふ〜ん。王族らしいけどなんか嫌だな。



「そうだけど」


「私はフリット・フィデムと申します」


「あっそ。確か、お父さんから説明は聞いてるよね」


「お、お父さん?」


「そ。テスカって人」


「え......テスカの子ども?」



うわぁ、自分で自分のことをお父さんって呼ぶの、キッ持ちわるいなぁ。



「そ。で、聞いたんだよね?」


「はい。ロークスにある、イニティという街へ行くと」


「うん。じゃあ早速行くね。手、出して」


「は、はい」



俺はフリットの手を掴むと、魔法の言葉を唱える。



「キラりんっ!『街へワープ』!」



全力の萌え声で唱えると、次の瞬間にはイニティに転移していた。



「じゃ、行くよ」


「......あ、あぁ」



ドン引きしてんじゃん。ちくしょう、魔法名で遊ぶのはもうやらないからな。フリット、良かったな。俺の最初で最後の萌え声だぞ。


吐き気が物凄いが、きっとMP切れだろう。うん。




◇◇




イニティに来た俺達は、早速冒険者ギルドへとやって来た。


道中、一切フリットが喋らなかったのだが、初めて見る土地に緊張しているのだろう。

イニティは語り人の故郷のような存在で、とても綺麗な街だから、是非とも楽しんでもらいたい。


フリット。お前も冒険者にならないか?




「こんにちは、レイナさん」


「あらあらこんにちは! テスカさん。今日はどうしましたか?」


「この人の登録です。あとクエストの紙を取って欲しいなって」


「その子は......ふふっ、初めまして」


「は、初めまして。私はフリット・フィデムです。この度は、テスカと旅に出ることになりまして、この地に来た所存です」



なんやコイツ。俺の前とは全く違った雰囲気で話すじゃねぇか。

あん? 一生敬語しか使えない体にしてやろうか?



「フィデムと言うと、もしや王族......?」


「はい。フィデム王国第2王子です。どうぞお見知り置きを」


「は、はい! それと申し訳ないのですが、王族となれば流石に私が対応出来ません。ですので、ギルドマスターとお話ください。ご案内します」



え〜? レイナさんが受け付け出来ないの〜?

悲しい。俺は悲しいよ。このギルドじゃ1番絡みやすい相手なのに、まさか2番目のスパーダさんに移るとは......


仕方がない。こうなることも考えなければならなかったな。



「ギルドマスター、失礼します」


「おう、何だ......ってお前」


「何?」


「いや、何でもない。レイナ、用件は?」



執務室に入った途端、スパーダさんが怪訝そうな顔で話しかけてきたが、威圧するように反応するとスパーダさんも引いてくれた。


いや〜、危ないね。バレたら社会的に死ぬもん。フゥ!



「こちらの御方はフィデム王国の第2王子でいらっしゃいます。私では対応出来ないので、お願いします」


「おうおうおうおう!? 何で王族がこんな所に?」


「それは......」



チラッとレイナさんが見てくるので、頷いてから答えた。



「私が連れて来ました。お父さんに言われて、仕方なく」


「お父さん?」


「ルナさんですよ」



レイナさんが素早く答えると、スパーダさんは頭に電球が光ったようなエフェクトが似合う顔で手を叩いた。


それより問題発生だな。遂にルナが偽名を使っているとバレた。



「あぁ! やっぱり! お前、ルナにそっくりだと思ったんだよなぁ。ってかアイツ、3人も娘が居たのか」


「スパーダさん......ちゃんと登録した人は覚えてください。王子の前ですよ?」


「すまんすまん。それでお前、名前は?」


「テスカトリポカです。テスト期間とか手のひらキンカンとか言われますが、テスカです」


「そうか! 宜しくな!」


「テスカ......トリポカ」



ユーモア溢れる自己紹介をすると、ここでようやくフリットが俺の名前について気が付いた。

そう言えば名乗ってなかったもんな。上手くごまかせるといいが。


いや、この際ハッキリと『偽名でした〜! ぷぷぷ!』って言ってやろうか? その方が俺もスッキリするし、楽なんだが......


いや、まだいいや。国王までも騙してる状態だし、最悪追放されかねん。それは嫌だ。



「では、私はこれで。失礼します」



あぁ、マイフレンドレイナさん! つらいぜ。色々とバレそうな状況で頼れる人が居ないの、とてもつらいぜ。



「フリット様。紹介が遅れて申し訳ありません。私はロークスにて『剣聖』の2つ名を持つ、スパーダと申します。以後、お見知り置きを」


「あぁ。勿論だ。先程の者が紹介してくれたが、私も改めて。フィデム王国第2王子、フリット・フィデムだ」


「この度は遠路遥々、良くぞ参られました」


「いや、テスカが魔法で連れて来てくれたものでな。実は先程までフィデムに居たのだ」


「そうでしたか!」




とまぁ、世間話やギルドカードを作り──




「アイツ、偽名を使っていたのか......?」



インフィル草原にてインフィルボアとの戦闘中、遂に偽名がバレたとさ。



「戦闘中に余計なことを考えないで。うざい」


「あ、あぁ。すまない。だが」


「だがもダガーもラガーもない。静かに殺して」


「......あぁ」



横転したボアのこめかみに剣を刺し、フリットはボアをポリゴンに変えた。



「次、インフィルクロウ。呼んでくるから待ってて」


「呼んでくる?」


「そ。こうするの」



俺は手に宝石を取り出すと、神鍮鉄の糸に巻き付けて空へ投げ飛ばした。


すると──



バサッ! バサッ!



翼の羽ばたく音と共に、黒く大きなカラスが宝石に向かって突進してきた。


これはクロウの『光るものに寄ってくる』という習性を活かした狩り方だ。


序盤はインフィルクロウの爪が高く売れるので、要らなくなった宝石やガラス片なんかを使って、初心者が金稼ぎをするそうだ。


いや〜、昔の俺はそんな事に気が付かなかったよ。


皆凄いね!



「はい。殺して」


「殺してって......大きすぎないか!?」


「ドラゴンはコレの何十倍も大きい。さっさと殺る」



俺は糸を使ってフリットの方へインフィルクロウを誘導し、戦闘を開始させた。



『ガァァァ!!』


「くっ! せいっ!!」


『がァ?』


「このーーー!!!」



え〜? なんか、苦戦してらっしゃらない? まぁ、初めての空を飛ぶモンスター相手だし、仕方ないと思うけど。



「お〜い! 手助け要るか〜?」



フリットが全然攻撃を当てられないでいると、近くを通りかかったプレイヤーが声を掛けてきた。



「要りませ〜ん!」


「分かった! 気を付けろよ〜!」



ニコニコと笑いながら手を振ると、相手も笑顔で手を振って去った。

普通のプレイヤーって、あんなに優しいんだな。俺、知らなかったよ。



「フリット。遅い」


「し、仕方ないだろ! 相手は空を飛ぶんだぞ!」


「なら翼を斬ればいい。他にも自分が飛んだり、物を投げれば倒せるよね。もっと頭を使って」


「くっ......いい、やる!」



片方の翼を斬り落とそうと近付いたら、フリットがキッとこちらを睨んで拒んできた。


う〜ん、ピンチの時に仲間に頼れないのは宜しくないなぁ。



すると、予想通りの展開がフリットを待ち受けていた。



『ガァァァァァァ!!!!』



インフィルクロウが鳴いた時には、奴の十八番である急降下突進を、フリットが顔面で受け止める寸前だった。



「まずっ──」


「『(らい)』」



バチッ!



静電気の様な小さな雷の音と共に、インフィルクロウの首はへし折れた。



「間違えた。鞘だと斬れないのに」



布都御魂剣を鞘に入れたまま魔刀術を使ったせいで、インフィルクロウの首がへし折れたんだな。



『んも〜、その体じゃまともに刃を抜けないの、忘れたんですか? おっちょこちょいですね〜』


「うるさい。私だってミスはする。大体、仲間を頼ろうとしないこのクソガキが悪い。1人で出来る範囲を理解していないから、こうして死にかける」


『あらら、お説教タイムでしたか』



茶々を入れようとするフーを黙らせ、俺はフリットに仲間を頼るとは何なのかを説明した。

如何せん、フリットより少しだけ身長が低い故に締まらない説教になったが、多分フリットは理解してくれただろう。




仮にも死にかけたんだ。学ばないバカは居ないだろう。


クロウの狩り方以外にも、アルトム森林のゴブリンの狩り方や、アンバー渓谷に出る、トカゲの効率的な狩り方だってあります。


どこかで出せたらなぁ.....と思っていたり。



次回『最強の女の子』お楽しみヌィ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ