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ソルニウム過剰摂取

長め&お砂糖回です。(いつもの1.5倍くらいの長さです)




「ま、参り......ました」


「おいおい、これでよく『強くなりましたよ?』なんて言えたな」


「だって、師匠の方が......成長......してた......」



装備をコロコロと変える遊びを始めて10分。

王女は地面に座り込み、降参を告げた。


10分もよく耐えたと言うべきか、10分しか耐えられなかったと言うべきか、悩むZOE☆



「王女にしては頑張ったと思うぞ。それに、何と言うか......相手が悪いな!」


「それを言ったらおしまいですよ!? はぁ......師匠に勝とうと必死だったのに、こんな簡単に負けるなんて......」



王女はスカーレッ刀を納刀すると、静かに腰から外し、俺の前に置いた。



「いや立って渡せよ」


「無理ですぅ! 疲れましたぁ!! もうお家帰って寝たいんですぅう!!」



うわ、キャラ崩壊始めやがった。

着物を着た綺麗な王女が、訓練場の土に塗れて地面をバシバシと手を叩く姿は、可哀想なイメージを与えた。



「はいはい。じゃ、約束通り水晶は1つな」


「夜中に何回も掛けますもんね!」


「ほう? じゃあ残念だが、ここで砕くとするか。俺、まだ壊れた時の反応を知らないから、丁度いいんだよなぁ」


「誠に申し訳ございませんでした。我が国の宝として、命を懸けて守りたいと思います」



綺麗に正座からのお辞儀をしているが、王女の座っている場所、汚ったない土の床なんだよな。


本当に可哀想だ。一体誰がこんな事をさせてるんだ?



「ん。じゃあ刀の強化してくるわ。何か欲しい性能とかある?」


「師匠にお任せします。ただ、いざという時に私の身を守る物なので、硬く作って下さると嬉しいです」


「了解だ。後でギルドに持ってくから、お家に帰って寝るといい」


「......はい」



先程の自分の発言を思い出したのか、王女は顔を真っ赤にしながら走って帰った。


ちょっと意地悪し過ぎたかな? 心の傷になっていないといいが......刀と一緒に手紙でも書いてやるか。



手紙と言う名の反省文だが。




◇◇




「うし、完成。危うく神器になる所だったな。セーフセーフ」



城の鍛冶小屋でスカーレッ刀を強化して、銘を新たに『紅血剣:ブラッドスカーレッ刀』に変えておいた。

これは王女の『高潔』や『高貴』などの意味を掛けた名前だ。


いや〜、俺、センス良いわ〜。




◇◇




「じゃあな、王女。イタズラ電話したら速攻で叩き壊すからな」


「勿論です師匠。それに刀と魔道具、ありがとうございます」


「どういたしまして。これからはその刀で語り人を切り伏せな」


「はい! では、お元気で!」



王女にブラッドスカーレッ刀と水晶を渡し、俺はフィデムに帰った。


中々に楽しめたし、今後の大きなクエストにも役立つアイテムを渡せたので、満足だ。




これで、よりゲームの世界を楽しめるぜ。アッハッハ!




「ルナ君?」


「はい」


「言うこと、あるよね?」


「誠に申し訳ございませんでした」


「何が申し訳ないのか、言ってごらん?」


「ただ私が遊びに行くのを伝えれば良いものを、私はソルをモフりにモフり倒し、気絶させてしまったことを反省しています。これからは許可を得てからやります」


「......はぁ。ちなみに聞きたいんだけど、あの時のDEXってどれくらい?」


「多分、15万は軽く......」


「それは耐えれないよ。もう、次からは気を付けてね? もしかしたら、リアルで私が襲っちゃうかもしれないから」


「はい。反省しています」


「宜しい」



宿屋に戻った俺は、気絶から目が覚めたソルに正座させられていた。


俺は昔から正座をしている時間が長いせいで、特段正座が苦だとは思わないのだが......形式的に要るよねって事で正座していた。



「私、多分途中で倒れてたよね?」


「そう......だな。ずっとモフモフしていたから記憶が薄いが、割と早めの段階で気を失ってたと思うぞ」


「ふ〜ん。感想は?」


「最高でした!」


「そう。ルナ君、今日のことはよく覚えていてね。私、やり返すから。ルナ君が気絶しても、モフり続けるから」



うむ。俺にモフる部位は無いのだが、どうやってモフる気なのだろうか。



「それは私の尻尾とお耳を使うんだよ。ルナ君が幸せすぎて気絶しても、ず〜っとルナ君に当て続けるの」


「......気絶すると思うのか?」


「......気絶するまでやるもん」



つまり、永遠に触られていたいと。なるほど。



「今からやるか? リアルで夕方までは時間あるし、ちょっとだけイチャつくか?」


「え、遠慮しておこっかな。多分、抜け出せない沼に足を入れる気がするから」


「もう全身浸かってるクセによく言うわ」


「まだだもん! まだ『ノー』は言えるもん!」


「ホントか〜? 俺が何か言えば、『うん!』『そうだね!』『やろう!』って言うんじゃねぇのか〜?」


「......ソンナコトナイ」



あ〜可愛い。どうしてこんなに抱きしめたくなる反応をするんだ? もう、好きすぎて強く抱きしめるあまり、肋骨がボキッと折れる未来が見えたんだが?


寧ろ折れるくらい抱きしめたいわ。うん。ソルに折られるなら許すよ、俺。



すぅ......はぁ。落ち着け。落ち着いてポチ待て。取り敢えずお座りしてから考えよう。



「膝の上、座っていい?」


「思いっ切り抱きしめるけど、それでいいなら」


「じゃあ失礼して......きゃっ」



椅子に座った俺の膝の上にソルが乗ってきたので、俺は遠慮なく脇の下から腕を入れ、ソルを抱きしめた。


事前に思いっ切り抱きしめるって言ったからな。今の俺を止められる奴なんて、この世には居ない。



今生きているこの瞬間に最大限の感謝を捧げ、俺はソルの温もりを抱き寄せた。



「あの、ガッツリお胸を触っていらっしゃいますが......」


「抱きしめた副産物だな。幸せの塊だ」


「このままだと私が幸せすぎて気絶しそうなんですが」


「遠慮なく気絶してくれ。ずっとこうしてるから」


「......前を向いてたら、ルナ君も気絶するかな?」


「さぁな。試しにやってみるか?」


「う、うん」



ソルの背中に耳を当てるとバクバクと心臓の音が聞こえていたが、このまま前向きに向かい合って座ったらどうなるのだろう。



「え、えへへ。何回かこうして座ったことがあるけど、やっぱり恥ずかしいね」


「そうだな。でも俺としては、恥ずかしいより嬉しい気持ちが勝る」


「メンタル強者め......えい!」



誰かに見られたら誤解を生みそうな体勢で座るソルが、ここぞとばかりに俺の顔へ胸を押し付けてきた。


ふむ......このまま死ねるな。よし、ここは俺の墓場だ。

死ぬ時はソルの胸に顔を埋めて死のう。そうすればきっと、どんなに悪いことしても天国に行ける。



「か、感想は、ある?」


「感慨無量」


「死んじゃやだよ?」


「......殺す気じゃないのにこんな事してるのか?」


「ふふっ、ルナ君を殺すくらいなら自分で死ぬ」


「そんな所見たくねぇなぁ......あ〜、良い匂い」



どうせ暫くは誰も帰ってこないし、今のうちに上質なソルニウムを取り込んでおこう。


説明しよう! ソルニウムとは、ソルが常に生成している元素番号334番の元素である! これは俺にしか作用せず、俺がこの元素を取り込んだ場合、俺の出せるパフォーマンスが最大で200パーセント上昇する、トンデモアイテムなのだ!


ソルニウムは主に、ソルに触れる事で吸収することができ、今のところ発見されている最大効率で回収できる行為はキスである。


特に、愛情たっぷりのキスは上質なソルニウムが多量に含まれており、お金という価値に値しない、超希少なソルニウムが吸収出来るのだ!



知らんけど。



「恥ずかしいから嗅がないで!」


「無理だ。大体さ、常にこんな良い匂いを出しておいて『嗅がないで』なんて無理に決まってんだろ? それに好きな人の匂いを嗅ぎたいとか、普通の人が思うことだと認識してるんだが......違うのか?」


「確かに嗅ぎたいかも......よし、私も嗅ごう」


「や〜め〜ろ〜」



ソルが犬の様に鼻を鳴らして匂いを嗅いできた。


これ、結構恥ずかしい。大丈夫かな? 臭わないかな?


なんて軽く物事を考えていると、ピタッとソルの動きが止まった。

そしてゆっくりと体を離すと、俺の上に向かい合って座ったまま、俺の顔の位置まで頭を下げて目を合わせてきた。



「......他の女の匂いがした」


「あ〜、王女だな。格闘も結構したから、その時か? いやでも、そんな事で匂いが着くか?」



俺は独り言を呟きながら王女と遊んだ時を思い出していると、ソルが俺の頬っぺをムニっと掴んできた。



「宜しくない。ルナ君、これは非常に宜しくないよ。彼氏ポイントが1ポイント減るよ」


「元々の持ちポイントは?」


「1億ポイント」


「じゃあ9999万9999ポイントになったのか......逆に良いな」


「良くない! もう怒ったもんね! ルナ君の全身に私の匂いを擦り付けてやるんだから!」


「お前は動物か!」


「ルナ君の為なら、私は犬でも猫でも、猿にでもなる!!!」


「狐じゃないのか」


「じゃあ狐になる!!!」


「適当だなぁ」



ソルは激しさのあまり、椅子がギチギチと音を立てる程、その素敵な体を俺に擦り付けてきた。


俺、今凄く嫌な予感がする。直感というか、テンプレというか......何か、こう、非常に不味い事になるイメージが脳裏に浮かんだ。




すると案の定、嫌な予感は的中する。



ガチャ......



「「「「「あ」」」」」




完璧とも言えるタイミングで、俺の三人娘が帰ってきた。

リルなんか衝撃のあまり買い物袋を床に落としている。



「あ〜、2人は見ちゃダメだよ〜。さ、終わるまであっちで待と〜ね〜」



それに対してベルは、直ぐに2人の目を両手で塞ぎ、のっそのっそとフェードアウトして行った。


あぁ、言いたい。俺は今、非常に『誤解だ!』って言いたい。


でも言えない。だって、シンプルに今のソルは、他人に見せていい顔をしていないもん。誤解じゃない訳がない。



「あ〜、何だ。反省したか?」


「......私を殺して」



冷静になりすぎたソルは、全身の毛を白く染めて俺の肩に顎を置いてきた。



「楽な道に逃げれる程、甘くないシーンを見せたが」


「私としては甘かったよ? ルナ君の良い匂いを全身に纏ってるもん。お口が甘く感じるよ?」


「でも現実は?」


「甘くないね。私、3人に何を言ったら良いのかな?」


「さぁな......」



ぐったりと力なく倒れ込むソルの背中を、俺は優しく撫でてあげた。


これで分かったことだろう。過度なイチャつきにはテンプレが生じると。そしてそのテンプレの矛先は全てソルに向くのだと、理解してくれただろう。


可愛いのに可哀想だ。俺が守ってやらねば。



「よしよし。今日はもう寝て、明日じっくり考えような〜」


「うぅぅぅぅ......つらいよぉぉぉぉ............」



自業自得なんだよな。ソルが匂いの上書きなんてしようとしなければ、こんな事にはならなかったんだがな。



「よしよし、大丈夫だ。俺が傍に居るからな」


「ルナくぅぅぅん!!!」



可愛い。今日はもう、ずっとこのままの甘えん坊ソルでいい。俺がずっと甘やかしたい。

そして後で思い出した時に恥ずかしがって、更に抱きついてきて欲しい。また甘やかすから。


我ながら完璧な甘々ルートだ。少しシーンを進めよう。



「ソル、呼吸を整えて目を閉じるんだ」



俺がそう言うとソルは素直に従い、ゆっくりと呼吸を繰り返して目を閉じた。



「そう......そのままゆっくり......ゆっくり......」



5分程背中を撫でていると、ソルはそのまま眠ってしまった。


フッ、計画通り。



「よ〜し、今のうちにいっぱい撫でちゃお〜っと」



起きたら毛並みがサラッサラのツヤッツヤのモッフモフになるくらい撫でよう。

あ、撫でている途中に、リル達の誤解を解いてあげようかな。



さぁさぁ、起きた時のソルの反応、楽しみだな!

絵面がマズイ(確信)


それはそうと、ベルが案外平気そうにしているのには理由があります。

ベルの元々の名前はベルフェゴールです。

ベルフェゴールは怠惰を司る悪魔と言われ、他にも人間の結婚生活を覗き見る悪魔ともされています。


それ故にベルは、ちょっとぐらいのエチぃシーンは平気なのです。



では次回『努力で取り返せるのなら』お楽しみに!


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