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騎士団と戦った......けど?

朝起きれないゆずあめ。低気圧に潰される。





「これより、フィデム騎士団対、テスカの試合を始める! 用意!」




「始め!!!」




騎士長さんから合図が出ると、俺と戦うことになった騎士達、総勢120人の動きが一瞬で止まった。



「はい、勝ちですね。騎士長さん、俺は事前にテイムモンスターを制限しないとこうなるって言ったじゃないですか」


「な、何を言っているんだ? まだ誰も......はっ!」



ヘラヘラと騎士長さんに勝利を報告すると、騎士長さんは騎士達の身に起きた事を理解し、目を大きく開いて凝視した。


騎士達の体には目に見えない程の極細の赤い糸が巻き付けられており、その糸が全員の体を拘束していた。



「お父さ〜ん。これで良かった〜?」


「あぁ。ありがとうな、ベル」


「いいえ〜。力になれて、嬉しいよ〜」



俺のすぐ側に現れた、このベルこそが、騎士達を縛った張本人だ。


試合開始前の作戦会議で、俺はベルに念話で血魔術を使うように言っておき、試合開始と共に、全員を魔術で拘束してもらったのだ。


俺はこうなる事が分かっていたので事前に『テイムモンスター、アリでいいんですか?』と聞いたのだが......



『それもお前の力の1つだ。存分に使え』



と言ったので、渋々と言った感じで俺は了承した。



「では、俺がこのまま『首を落とせ』と言えば全員の首が落ちるのですが、どうします? ルールを見直してかは仕切り直します?」


「......すまん。宜しく頼む」


「了解。ベル、解いてくれ」


「は〜い」



ベルがフっと力を抜くと、騎士を拘束していた赤い糸は全て消え去った。


やっぱり、血魔術ってぶっ壊れ性能だと思うのだが、どうなのだろう。

吸血鬼の固有能力とカズキさんは言っていたが、大悪魔が使うと大変なことになってしまった。


これは近いうちにバランス調整が入りそうだが......今はいいや。



「じゃ。いつでもどうぞ」


「感謝する......これより! フィデム騎士団対、テスカの試合を開始する! 騎士として情けないが、テスカにはテイムモンスターの使用を禁止する!」



オーケーオーケー。付喪神の索敵は許されると思うから、苦戦する事は無いだろう。


いや待てよ? 後からルール違反とか言われても困るし、付喪神に頼るのも辞めておこうか。

うん。その方が安全だと言えるだろう。



「双方、構え!」



構えの合図と共に、俺は布都御魂剣の鯉口を切った。



「始め!!」



「先手必勝確殺戦法! 秘技、手加減『(かみなり)』!」



バチィィィィィィ!!! 



戦神を使わず、いつもより何段階も手加減した魔刀術を使い、金属製の鎧を身に纏った騎士達を一気に感電させる。



「ん〜、倒したのは9割ってところか。隊列が仇になってんなぁ、騎士さん達」



俺の攻撃によって感電した騎士が倒れ、その倒れた騎士に触れた別の人がまた感電して......金属製が原因の、悲しい連鎖反応が生まれたな。



「さてさてさ〜て? 残りの人には地獄を見てもらおう。『ネヴァンレイン』『毒霧』『痺れる蔦』ちゃん」



「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁあ!!!!」」」」」



うわぁ、地獄絵図だ。一体誰がこんな状況を作り上げたのだろうか。顔を見てみたいね。


......ん? 鏡? ナニソレ?



「勝者、テスカ!」


「対戦ありがとうございました」



デバフでジワジワとHPが減った騎士さん達は、1人残らず敗北判定を受けた。


これ、本来はどういうクエストだったんだろう。1対1を繰り返す、連戦形式だったのかな?

今更気にしても仕方がないが、少しだけ気になってしまった。



「テスカ、お前は何者なんだ? 最初の一撃、あれはどういう攻撃をしたんだ?」


「魔刀術だけど......知らない?」


「......噂でしか聞いた事がないな。もしかして、その武器の技か?」



騎士長さんが布都御魂剣に指をさしたので、俺は鞘ごと装備から外して騎士長に見せた。



「この武器は刀と言いまして、ロークスの東にある、狐国という島国の名産品です」


「狐国は知っているぞ。ウチでも数少ない友好国だからな。だが、刀については知らなかったな......」



騎士長さんは刀を知らなかった事に後悔する様子を見せると、まじまじと布都御魂剣を観察し始めた。



「にしても美しいな。ガラスの様に透き通っているのに、鋼より何倍も硬いと思わせる、武器の威圧感......こんな物が狐国で作られているのか」


「あ、これを作ったのは俺だよ。玉鋼を打っていたはずなのに、気付いたらこんなに綺麗な刀になってたんだ」


「は、鋼?」


「そう、鋼。元は鉄と木炭で出来ているんだ、この子」



俺は懐かしい気持ちに浸りながら鞘を撫でると、俺の手からスポっと刀が消え、フーが現れた。



「テスカさん! 急に撫でるなんて卑怯です! ソルさんに言い付けますよ!? それとありがとうございます!」


「お前......はぁ」



突然降臨したフーは、顔を真っ赤に染めて俺の胸をポカポカと叩き始めた。

やることがあざといが、多分無意識にやってるんだろうなぁ、コイツ。



「て、テスカ? この者は一体......」


「さぁ? メイド服着てるし、誰かのメイドなんじゃ?」



俺が知らないフリをしてフーを戻そうとすると、フーは気持ち悪いくらい綺麗な笑顔で抱きついてきた。


そして、綺麗な赤い瞳に涙を浮かべ、上目遣いで口を開いた。



「そういう態度取るんですね。私、お家に帰ったら泣きますよ? 泣き叫びますよ? いいんですか? お買い物中にも泣いて、お掃除してる時も泣きますよ? ご近所さんから『うわ、あの子を泣かせるなんて酷い子ねぇ』って思われますよ?」


「うっざ。それならもう今後一切降臨させないわ」


「ごめんなさい! 嘘です! ずっとニコニコ笑顔で過ごしますから許してくださぃぃぃい!!」


「はぁ......」



ソルが居ないのをいいことに、グリグリと頭を押し付けてくるフー。やはりコイツと2人の空間を作るのは不味いな。

何をされるか分からない恐怖感がある。


そうして俺が頑張ってフーを引き剥がそうとしていると、第1王子が騎士を連れて俺の前まで歩いてきた。



「テスカ。お前が勝ったからお前の意見を聞こうと思うのだが、その前にそこの女は誰なんだ?」


「私はテスカさんのメイドです! 24時間365日、ずーっとお世話しているんですよ!」


「へぇ。じゃあこれからの戦闘訓練はフーにやってもらおうかな。同じ相手と戦い続けてつまらないと感じていたし、丁度いい」


「......タダのメイドです。正確に言えば、テスカさんの付喪神です」



フーはそう言ってから俺の横に移動し、第1王子に向かって頭を下げた。



「付喪神......騎士団長、お前は知っているか?」


「い、いえ」


「近衛兵は?」


「存じ上げません」


「テスカよ。よければ意見を言う前に、その付喪神について教えてくれんか?」



うっそーん。逆に何で知らないの? 仮にもクラーケンが出る海を渡った先の国なんだよね? ゲーム的に、付喪神は前提知識として......


いや違う。あのキアラさん達が作るゲームなんだし、前提知識とか云々の前に、1つの世界を作ってるんだよな?


なら、そもそも付喪神というシステムを、存在を知らない国があってもおかしくない。



くぅ! あの人達、やってくれるな。知識の差まで再現するか? 普通。



「良いねぇ......あっ、オ゛ホン。分かりました。まずは知識の共有から始めて、それから俺の考えを発表しましょうか」


「あぁ。では私は皆を呼んでくる。騎士団長、テスカを連れて先に会議室に戻ってくれ」


「はっ!」






◇◇






「つまり、テスカは戦争が始まれば手を貸すと言うことだな?」


「そうですね。ですが、完全に味方する訳ではありません。そちらが......特に、フリット王子が何もしない限りは味方します」



付喪神の解説や今後の会議をして、夕日が部屋をオレンジに染める時刻になり、遂に結論が出るというところで俺はフリット王子に釘を刺す様に告げた。



「うむ。よく言い聞かせよう」




国王がフリット王子をひと睨みすると、会議が終了した。




「テスカ。そう言えば宿はどうするんだ?」


「宿?」



城を出た俺は騎士長さんに着いて行っていると、途中で今日の宿を聞かれた。



「あぁ。決まってないならオススメの場所を紹介するが......」


「それなら大丈夫。俺の仲間が確保しているか、最悪家に帰るから」


「そうか。じゃあ何かあったら騎士団まで来てくれ」


「は〜い。ではまた」



騎士長さんとは城のすぐ側にある、騎士団の寮の前で別れ、俺はフーとイブキを降臨させて帰路についた。





「さてと、今日はどこで寝ますかな」

フー、撃沈。



次回『お魚食べたい』お楽しみに!

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