銀髪の集い
新章だと思った? ねぇねぇ思った?
残念、まだ12s.....はい、すみません。舐めた事言いました。ハイ、ごめんなさい。
ええと、12章の最終話です。楽しんでください!
2月に入り、2週間が経とうとしている頃。
月がモンスターを蹂躙するドラゴン達を照らす魔境の島。
その中央付近にひっそりと建つ、大きな木造の家にて。
カーテンを全て閉められたリビングには、蝋燭の灯りが3人の銀髪を照らしていた。
「リル、メル。これから重要な話をする」
「......はい......」
「......ねむい」
「ちゃんと聞いてくれたら腕枕で寝かせてやろう」
「「聞きます! / きく!」」
「よし」
この空間は、俺達3人以外には誰にも声が聞こえない。
音魔法で周囲との音を完全にシャットアウトし、サーチによる観測を常に続けているので、目視することすら許されない。
そんな完全防音のリビングにて、俺はとある話を持ち出した。
「俺のユニーク称号、『悪魔崇拝者』について話す」
「悪魔崇拝者......まさか父様......」
「違うぞ。入手した原因も分かるから、取り敢えずこれを見てくれ」
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ユニーク称号【悪魔崇拝者】
悪魔に好かれ、悪魔を嫌った者。
悪魔に好かれ、悪魔を友とした者。
悪魔に嫌われ、悪魔を殺した者。
悪魔に嫌われ、悪魔に悪魔と言われた者。
そして悪魔に崇拝されし、悪魔を超えた者。
『悪魔に崇拝され』『悪魔を友に出来る』
『悪魔を呼び出し』『悪魔を操る』
これはたった一つの称号です。
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「「......?」」
ウィンドウを見た2人が、同じタイミングで首を傾げた。
可愛い娘達だ。腕枕は確定だな。
「これ、なんと供物を捧げることで悪魔を呼び出せます」
俺はホープダイヤモンドを5つ取り出し、机の上に置いた。
「2人とも、よ〜く見てろよ?......アホ悪魔、来い。『ベルフェゴール』」
ホープダイヤモンドの上に手をかざしてMPを2万使うと、俺の手の中から黒い手が伸び、ダイヤモンド達を粉々に砕いてしまった。
そして塵になったダイヤモンドから、銀色の髪をした、眠たげな緑色の目をした女の子が現れた。
「ね〜む〜い〜」
「「あ!!」」
床にトンっと降り立った女の子......ベルフェゴールは、のそのそと俺の膝の上に乗ってきた。
「邪魔だ」
「え〜? 呼び出しといてその態度は何なのさ〜。君には人の心が無いの〜?」
「無いな。だからこうして......お前を殺す準備をしている」
俺は行動詠唱のクロノスクラビスで、ベルフェゴールが出した黒い魔法陣を破壊した。
そして首に糸を巻き付け、いつでも首を斬り落とせる事を暗示した。
「ご、ごめんってば〜」
「じゃ、さようなら。実験的に呼び出しただけだから、もう死んでもいいぞ」
「待って! 私を殺すつもりなの? テイム......しなくていいの?」
「あぁ。じゃあな」
「ちょちょちょちょ! そこの2人、止めてよ〜! このままじゃ私、死んじゃうよ!?」
糸によってジワジワと首からポリゴンが滲み出ているルフェゴールは、2人に助けを求めた。
「まぁ、父様を攻撃しようとしたなら、死んでも問題ありませんよね」
「ん。じんめいゆうせん」
「そんな〜! うぅ......ぐすん......折角良質な供物で呼び出されたのに......ひどい......」
2人に見捨てられたベルフェゴールは、その緑の瞳からポロポロと涙を零した。
「死にたくないか?」
「うん......死にたくないよぉ......」
「じゃあ、そうだなぁ。俺の事、どう思う?」
俺がそう聞くと、マジギレしたリルとメルが、凄まじい目力で俺を睨んできた。
「「父様? / パパ?」」
「2人は静かにしてなさい。で、ベルフェゴール。お前はどう思う? 正直に言ってみろ」
2人に構わずベルフェゴールに聞くと、震えた声で呟いた。
「あ、悪魔。悪魔より、悪魔......」
よし、完璧だ。これで残りのプロセスは1つだけだ。
「じゃあ、これに応えてくれるよな?『テイム』」
「うん......」
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『怠惰の悪魔・ベルフェゴール』をテイムしました。
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テイムが完了すると、ベルフェゴールの首に緑のチョーカーが付けられた。
そこには今俺が付けた名前、『ベル』の文字が刻まれている。
「とまぁ、こんな感じの経緯を経て、悪魔をテイム出来るようになる称号だ」
「......そういう事でしたか。てっきり、母様を捨てる様な事を言うのかと......」
「俺がソルを捨てる? そんな天地がひっくり返っても有り得ない事を言うと思ったのか?」
「だってパパ、しんけんなかおだった......」
「そりゃあ演技だからな。ふざけた顔で話して、自分すら騙せないなら演技の意味が無い」
敵を騙すなら味方から、というように、演じ切るなら自分の存在ごと変えなきゃならん。
いつもの自分とは違う意識で話すことで、上手く相手を騙すことが出来る。
これが努力を重ねた陰キャの力だ。
「さてさてベルよ。お前はどんな能力を持ってるんだ?」
俺はベルが膝の上から降ろすことを諦め、テイムモンスターのウィンドウを開いた。
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
名前:ベル
性別:メス
レベル:1
種族:大悪魔
崇拝対象:ルナ
テイム主:ルナ(∞)
HP:5,000
MP:320,000
STR:2
INT:110,000
VIT:85,000
DEX:30
AGI:2
LUC:1
CRT:1
『取得スキル』
魔法
【全属性魔法】Lv200
『空間魔法』Lv200
『血魔術』Lv200
『花魔術』Lv200
その他
『睡眠回復』Lv0
『睡眠強化』Lv0
『吸血回復』Lv0
『心臓覚醒』Lv0
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
「なぁにこれぇ」
極端すぎるステータスに、空間魔法以外見たことの無いスキル達。そして知らない種族な上に、崇拝対象が俺になっている。
「私は〜、旦那様の〜、下僕?」
「旦那様は辞めとけ。ソルがブチ切れしてお前を殺しに来るぞ?」
「じゃあ〜、何?」
何って言われても困る。呼び方なんて暴言じゃなければ何でもいいし、そこら辺は自分で決めて欲しいのだが。
「好きに呼べ。というかベル、ステータスを見るにお前、空間魔法が使えるんだよな?」
「うん〜、完璧に使えるよ〜」
有能だな。ベルが居れば好きな場所にテレポートを置けるから、単純に行動出来る範囲が広がる。
ってアレー? この子、俺がテストで使った『血魔術』とか覚えてな〜い〜?
「お前吸血鬼なのか?」
「ううん。悪魔だよ〜」
「じゃあこの血魔術とか花魔術って何だ?」
「それは〜、前に〜、吸血鬼とか〜、アルラウネを食べたから〜、覚えたの〜」
「何だそれは。敵を食ったらスキルを奪うのか?」
チートじゃん。それ、能力コピー系のチートじゃん。
それに『食べたら』って事は、お前は怠惰じゃなくて暴食の悪魔か?
「違うよ〜。私の部下だったんだけど〜、他の悪魔に迷惑かけたから〜、力を強奪してから食べたの〜。美味しかったよ〜?」
「感想は聞いてないんだがな......因みにどんな味だったんだ?」
「えっとね〜、吸血鬼は〜「父様。脱線してますよ」だってさ〜」
「はいはい」
仕方ない。今度聞いておこう。吸血鬼の見た目とか味とか、アルラウネの存在についても気になる。
きっと宵斬桜に通ずる、植物のモンスターだとは思うのだが......戦う時が楽しみだ。
「まぁ、血魔術は知ってるから他は後で聞くか。取り敢えず、もう遅いし寝るか」
俺はベルを降ろし、蝋燭の火を消した。
秘密の会議っぽい演出をありがとう。蜜蝋で作った蝋燭だから、1つ作るのにそこそこの手間が掛かったが、中々に楽しかった。
これからも秘密を演出する時に使おうか。
「早く寝よ〜」
「寝ましょうか。父様、腕枕の約束ですよ?」
「ま〜くら〜」
「はいはい」
机の上を片付けてから、俺達は寝室へ向かった。
普段使っている大きなベッドには、ソルが9本の尻尾を広げて寝ていた。
「ママのしっぽとパパのうで......どうしよう」
「俺とソルの間に来い。両方楽しめるぞ」
「ん。ありがと」
それから全員でベッドに寝転がると、左からベル、ソル、メル、俺、リルと、川の字と言うより州の字に近い形で眠った。
明日はベルの力を試して、ヴェルテクスの皆と遊ぼうかな。
新しい子が出てきましたね!
ベルちゃんはのんびりマイペースな子ですが、やる時はやる子ですので、活躍をお楽しみに!
さて、次回からは13章の『新大陸編』が始まります!
完結が近付いている事に恐怖を憶えますが、最後まで走りきりますよ!
では次回!『三女、最弱を受け継ぐ』お楽しみに!
(小声で少し。登場人物紹介は番外編にぶち込むことにしました。作者マイページから飛べると思うので、もし更新されてたら是非チェックを。では)