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可愛いはズルい?

途中から視点が変わります。



「あら? 噴水に出た」



暴食のダンジョンをクリアした後、魔法陣に乗って行き着いた先はロークスの噴水広場だった。



「あのダンジョン、2週目に入るにはまた大食いしなきゃ行け......いや、1口でいいのか」



近くのベンチに座り、俺の大切な武器達の鎖のマークが取れた事を確認した。


やはり、あのダンジョンは付喪神の侵入が出来ないらしい。これからは俺のメイン武器が使えない時のことを考え、サブ武器も作るべきだろうか。


いや、インベントリを圧迫するし、流石に......



「──父様!」


「ん?」



のんびりと今後に向けて考えていると、非常に聞き慣れた声が遠くから聞こえた。


そして声の方向をじっと見ていると、リルとメルが手を繋いで走ってきた。



「おかえりなさいです!」


「おかえり」


「あぁ、ただいま。今日は2人だけで出掛けてるのか?」



抱きついてきたリルを受け止め、大人しめの反応のメルには頭を撫でてあげた。



「んふ〜」



コレだよコレ! メルの撫でられた時の顔がとても好きなんだ。なんというか、ソルに似ているんだよな。目の細め方や、声の出し方が。


可愛い子達だ。全く。誰の子なのかな???



ハイ! 俺です!! 俺の子です!!!



「あ、今日はミアさんと来ています。先程変な人に絡まれてました」


「え、えぇ? 大丈夫なのか?」


「「さぁ?」」



おいおい、2人とも何故助けに......そうだった。変な奴に絡まれたら逃げろって言ったの、俺だった。



「助けに行くぞ。どこだ?」


「あっちです」




◆ミアside◆




噴水のある広場から少し離れた場所で、私は変な男達に絡まれた。



「なぁ姉ちゃん。俺達にこのゲームのコツ、教えてくれよぉ?」


「そうだよぉ。僕達弱いからさぁ、教えて欲しいなぁ〜」


「な? フレンドとかなってさぁ、一緒に遊ぼうぜぇ?」


「......はぁ。コツなんて、自分で調べたら出るじゃないですか。人に聞くだけじゃなく、自分で行動して「いいじゃ〜ん! 教えてくれよぉ!」......はぁ」



面倒臭い。折角リルちゃんとメルちゃんが暇だから一緒に遊ぼうと思ったのに、3人の男にナンパされてしまった。


リルちゃん達はハンドサインを見て逃げてくれたけど、大丈夫かな。


どうしよう。こんな時、お姉ちゃんならどうするんだろ?



「なぁ、もういいだろ? 行こうぜ?」


「あ、ちょっと!」



男の1人が、私の手を強引に掴んできた。


うわ、この男、信じられないくらいSTRが高い。私の力じゃ振り切れない!

マズイマズイマズイ! こういう時、大きな声を出すんだっけ?



「あ......あ......」



声なんて出ない! 誰よ! 大声を出して逃げろって教えたの! ゲームとはいえ、怖くて声が出せないに決まってるじゃない!


嫌だ、こんな人達と遊びたくない。怖いよ。



心の中で小さく涙を零していると、全身に神器を装備したルナさんが男達の横からヌルッと現れ、ニコニコと話しかけてきた。




「ミア〜、大丈夫か〜?」




私は声が出ないので、首を大きく横に振った。



「そうかそうか。じゃあ、お兄さん達、その子嫌がってるからさ、手を離してあげなよ」


「あ? なんだテメェ。うるせぇんだよ」


「返事になってませんよ? あ、もしかして返事も出来ない人ですか? いや〜、立派な体なのに、頭は残念ですね〜」


「......おい」



ルナさん!? 3人相手にどうして喧嘩売っちゃってるんですか!!


ダメだ、まだ動けない。どうしよう。


幾らトップの人間と言えど、流石に3人相手は厳しいだろう。周りに人が多すぎて、ルナさんの得意な大きな魔法を使えないだろうし......本当にマズイ。



「きゃ〜! もしかして、1人相手に3人で戦うの〜? ひっど〜い!」


「何言ってんだ? テメェ。先に喧嘩売ったのはおメェだろうが!」


「確かにそうですね。じゃあどうぞ。掛かってきてください」



あれ? ルナさんって多重人格? いや違うか。思考の切り替え方が0か100なのかな。異常な速度で会話が変わってる。



「行くぞ!」


「「おう!」」



3人が剣を取り出し、ルナさんに向かおうとした瞬間──



「はい、確保〜!」



ルナさんが裁縫用の糸で3人を縛っていた。私の目には、いつ糸を取り出しのか、そしてどうやって縛ったのかが見えなかった。


この人、やっぱり色々とおかしい。


リアルの方で武術が出来るのは知ってるけれど、糸を自在に動かすなんてゲーム的な動きを、ここまで綺麗に出来るものなの?


才能の力か、努力の成果なのか、まだ分からない。



「そしてミアも確保、と」



そう言ってルナさんが私に近付こうとした瞬間、男の1人が動き出した。



「ダメ!」



私が大声を出した瞬間、男の右腕が金色の糸で斬り落とされ、ポリゴンになった。



「ぐぁぁぁぁ!!!!」


「うるさいなぁ。たかが腕1本だろ? そんなに喚くなよ」



いや喚くよ。泣き叫ぶよ。焦るし怖いし、動けなくなるよ?


この人くらいでしょ、腕無くなっても平然としているの。



「それよりミアさんや。大丈夫ですかい?」


「は、はい。怖かったですが......」


「俺が?」


「い、いえ! 確かにルナさんも怖いですが、あの3人の方が怖かったです」


「よしよし、次の戦闘訓練、本気でやるわ」



ダメダメダメ! それはダメ! 2秒も耐えられないからそれ!



「待って! 嘘です! 全然怖くないです!」


「残念。俺はねちっこい人間だからな。その程度で前言撤回はしないんですわぁ」



ルナさんがニヤニヤと笑いながら私をからかっていると、ルナさんの横からリルちゃんが出てきた。



「父様、そんな事をすれば母様に嫌われますよ?」


「前言撤回だ。ミア、次も手加減してやる」


「ほっ......」



流石リルちゃん。ルナさんの弱点を熟知している。

というか凄いなぁ。ソルさんに嫌われると言われただけで、あそこまで下に出るものなのかな。


それだけソルさんが愛されてるんだろうなぁ。羨ましい。



「さて、お兄さん達? 1万程度のSTRでその糸から出れると思うなよ? それ、散れ散れ。次にウチのギルメンに手を出そうもんなら、ソイツの腕みたいになるって覚えとけよ〜」



そうしてルナさんは糸を解くと、男達は走って逃げて行った。




と思いきや、3人の内の1人が猛ダッシュで帰ってきた。




「死ねぇぇぇ!!!」



「危ない!!!」



赤い剣を真っ直ぐに持って突撃した男は、ルナさんの背中に思いっきり刺した。


ルナさんの血が混じった赤い剣先が、ルナさんのお腹から突き出ていた。



「あらら、刺されちゃった。HPは......よし、満タンだ」



え? 満タン? 嘘でしょ?



「リル、メル、見てくれ。作品名『通り魔に合ったルナ君』だ」


「ふふっ、母様が高い値で買いそうですね」


「うん。ママならかうね。それで、パパにみつからないとこにかざる」


「だよな。そうだ、今度ソルの人形でも作ってみるか。裁縫スキルの練習に良さそうだ」



いや......え? あの、え、はい? この人、どうして剣が刺さってるのに平然として......というかテンション上がってるの?



「いや〜、お兄さん。良いSTRしてるね。フル装備の俺に剣を貫通させるって、凄いよ。褒めてあげよう」



呆然と立ち尽くす男に、ルナさんは頭を撫でていた。



「でも残念ながら殺せていない。俺はただ痛いだけで、お兄さんは剣を刺して気持ちよくなっただけ。これでは不公平だろう?」



するとルナさんは悪魔の様な顔で言い放った。



「はい、正当防衛パンチ。『戦神』『アクアスフィア』」



ルナさんが水を飲み込んだと思ったら、直後に凄まじい風圧を伴ったパンチを、男の顔面に喰らわせた。


男は直線上にぶっ飛び、家の壁に当たる前にポリゴンとなって散っていった。



「全くもう。ウチのギルドは美男美女しか居ないんだから.....ナンパも逆ナンも、これから増えるだろうな」



男を殴り飛ばしたルナさんは、右手を水で洗い、ちゃんと乾かしてからリルちゃんの手を握った。



「じゃあ俺は帰るけどお前らはどうすんだ?」


「私はミアさん次第です」


「わたしも」



3人が私の顔を見てくるけど、答えづらい。だって、凄く沢山の人に見られてるんだもん。


でも、今日はリルちゃん達と遊びたい。ルナさん、許して!



「リルちゃん達と遊びたいです」


「そうか。なら気を付けてな。行ってらっしゃい」


「行ってきます! 父様」


「いてきま」


「おう」



2人の頭を撫でてから、ルナさんは立ち去ってしまった。




「はぁ......遊ぶ前なのに疲れちゃった」


ミアさんのハンドサイン以前に、昔からルナ君が逃げるように教育してました。



では次回『可愛い彼女』お楽しみに!




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