すれ違いは絡み合う
体重が激減しました。体重が50kgを切ったので、流石に食事量と運動量を見直す事に。
い、生きねば.....!
「うぅ......ん......」
ソルの血液入りポーションで自害を果たした俺は、俺を追放した張本人の根城である『まいほ〜む』にてリスポーンした。
「お目覚めですか? 父様」
「あ、俺を追放した人物その2」
「リ・ル・で・す! 何ですかその呼び方は! 流石の私も怒りますよ?」
「すんまへんなぁ」
ベッドで俺に抱きついていたリルの耳を捏ねくり回し、反省の念が篭っていない謝罪を口に出した。
「なぁ、俺に帰ってくんなって言ったの、ソルか?」
「そ、そうですが......怒っています......か?」
「別に? 全然気にしてないから。うん。俺、心広いからさ。これまで人生で1度も怒ったことないし? 寧ろ怒るって何? ってレベルだから。うん。そもそも怒る意味が無いからな。うん。ただ理由が知りたかったんだ。まさかあの状態で帰れないとは思わなかったからな。そう、そうだ。俺は理由が知りたいんだ。初めてソルの方から『来るな』って言われた気がするから、怒りとかじゃなく、ただ困惑したんだ。うん。あ、別にリルが悪いって言いたいんじゃないぞ? 本当に。本当に、ただ理由が知りたい。それだけだ」
リルの頭を撫でながら、感情が一切籠っていない言葉達が俺の口から出て行った。
心の中で思っていることを言わないようにする蓋が壊れているせいで、自分の意識の奥にある気持ちまでもが口に出てしまった。
「うぅ......ごめんなさい......です」
「あっ、ちょ」
リルに掴まれた手に、涙の雨が降り注いできた。
「うぇぇぇぇん! やっばりとめでおげばよがったんですぅぅ!!!」
大号泣......やってしまった。またリルを泣かせてしまった。
「ご、ごめんリル。別にリルに怒りをぶつけたかったんじゃ──」
「わがっでまずよ! でも、でもわだじがどめでおげばぁぁぁ!!!」
落ち着け、落ち着くんだ俺。頭では浅く広く考え、行動ではリルを抱きしめないと。
「よ、よしよし。大丈夫。大丈夫だから」
「うわぁぁぁぁぁん!!!」
嫌だ。リルに嫌われたくない。
大丈夫。リルなら理解してくれる。
殆ど関係ないリルにあそこまで言うなんて、人としてどうかしてる。
違う。リルは『止めておけば』と言ったんだ。つまり、リルにも何かしら罪悪感があったんだ。
でもそれをリルにぶつけたのは俺だ。直接ソルに聞けばいいものを、俺はリルに甘えようとした。
それはそうだ。人間、怠惰に甘えるものだから。だからこそ、こうして甘えないようにする考えが生まれるんだ。
「ごめん......ごめんなリル......大丈夫だぞ」
「うぅ......」
思考が深くなるのを抑えながらリルを抱き留めていると、寝室の扉がそ〜っと開いた。
「だ、大丈夫? 凄い泣き声が聞こえたけど」
「かあざまぁぁぁ!! とうざまが怒ってまずぅ!!」
「え? ルナ君が? どういうこと?」
ソルの顔と見ずに、俺の胸で大泣きしながらリルが伝えてくれた。
困惑するソルが俺を見てきたが、俺も絶賛困惑中。
「取り敢えず......話をしよう。題して、『ドキッ! ルナ君追放されちゃった☆ でも帰ってきたらリルちゃんを泣かせちゃった件について』だな」
「え、えぇ?」
更に困惑するソルをベッドに座らせ、何故あの張り紙を出したのか。どうしてリルを泣かせたのか、そして未知のエリアに関する話し合いをした。
「だからね、えっと......その......」
「大丈夫。何を言われても受け入れるから」
張り紙の結論を話す時、ソルはずっとモジモジしながら受け答えてしていた。
何か疚しい事があったとしても、今は受け入れよう。俺は鋼の豆腐メンタルだからな。この場だけは耐えてみせる。
さぁ、張り紙を出した理由は何だ?
「えっとね......お洋服を作るために、あの張り紙を出したの。流石に、皆が下着姿で彷徨く中に、ルナ君は入りたくないでしょ? だから」
「......別に今更だろ」
「ち、違うの! 2つ間違いがあるの! まずね、まずね!」
「分かったから落ち着け」
訂正に必死になって顔を近付けるソルの肩を掴み、元の位置に戻した。
「まずね、私だけじゃないの。あの場に居たのは、私とリルちゃん、メルちゃんに、ピーちゃんやミアちゃん、リンカちゃんも居たの」
「あ〜、そういう事か。でも玄関のドアに貼るか?」
「それが2つ目の間違い。メルちゃんに『ドアに貼ってきて』って渡したんだけど、リビングのドアじゃなくて玄関のドアに貼っちゃったの」
あ〜はいはい。なるほど。なるほどね? ふ〜ん。そうか。
「それでね、リビングの方には『寝るなら寝室に転移してね』って貼ってあって、2つセットになっていたの。でもルナ君、玄関のドアで入るのを辞めたから......」
「追記も知らず、ただソルに捨てられたと勘違いした、と」
「うん......というか私がルナ君を捨てると思ったの? 私、そっちの方にビックリしちゃったんだけど」
仕方ないじゃん。まだソルの事を深く知ってる訳じゃないし、信頼しているとはいえ、過去の経験から、いつ裏切られるか分からない恐怖心が常にあるんだ。
「ごめん。多分、これからもあの雰囲気を放つ文字を見たら、捨てられたと感じると思う。癖に近いんだ。信じてる人に裏切られる恐怖を感じるのが」
俺に抱きついたまま寝てしまったリルを撫でる手が、ソルに嫌われるかもしれないイメージから震えていた。
それを見たソルは、優しく俺を抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ。例え他の子がルナ君を嫌ったとしても、私だけは大好きだから。この気持ちは5歳の時から変わらないよ」
優しいソルは、雨上がりの太陽の様な雰囲気で頭を撫でてきた。
「やっぱり私達はまだまだ子どもだね。考えるだけ考えて行動に移せなかったり、真に分かって欲しい事が口に出せない。でもね、今回のすれ違いは良い結果になったと思うんだ」
「良い結果?」
「うん。私はルナ君の新たな一面を知った。普段は中々顔に出さない分、頭で沢山の事を考えちゃのは前から知っていたけど、その中身までは知らなかったから」
「確かに......そうかもな。これからは、考え込む前にソルに相談する」
言われてみて思った。俺はあまり、何を考えているかをソルに話したことが無い。普段から色々な事を考えてから動いているが、ソルもやっぱり、知りたいのかな。
もっと、パートナーに頼った方がいいのかな。
「うんうん。もっと私を頼ってね。1人で無理するくらいなら、2人で無理しよ?」
「無理って......そんな事言うと、俺はお前を突き放してでも無理させないぞ」
「ふっふっふ。出来るものならやってみな! 私は突き放せないからルナ君にくっ付いて行くけど、ルナ君はそんな私を突き放せるのかな?」
ソルのニヤニヤとした顔が目に浮かぶ。そろそろ離してほしいと思っていたが、もう少しこのままでいたい。
「無理だな。現に今、ソルを突き放せない時点で明白だ」
「でしょ? あと、私のおっぱいに顔を埋める気分は良いかのぉ?」
「......ノーコメントで」
「っし! ルナ君、勝ち取ったなり〜!」
ソルは明るく笑いながら俺を離し、また近付いて来たかと思うと、俺の唇にキスをした。
「えへへ、勝利のキスだよ」
「ふっ......可愛いな」
俺は右手をソルの首に手を回し、強く抱きしめた。
敗北のハグだ。たっぷり受け取れ。
「おほほ〜、勝者へのプレゼントかな?」
「敗者の抵抗さ」
今の俺は、左手でリルの背中を撫で、右手でソルの頭を撫でている。
人肌とモフモフのダブルパンチを喰らいながら、この幸せな時間を堪能している。
「ところでルナ君」
「どうした?」
「リルちゃん、もう起きてるよ?」
「ん?」
ソルを離して目線を下げると、バッチリガッツリ、綺麗な金色の瞳と目が合った。
少し顔が赤い気もするが、特段変わった様子は無い。
「おはようリル」
「お、おはようございます父様。あの、何か拭くものを貰ってもいいですか?」
「どうしたんだ?」
「その......母様のヨダレが......」
リルの胸元を見てみると、確かに液体が落ちた跡があるな。
「......キスの時のヨダレ、まさかリルちゃんに落ちているとは」
「まず謝れ。ってか何ヨダレ垂らしてんだよ」
「ごめんなさいリルちゃん! これからは気を付けます!」
「大丈夫です。ここで寝た私が悪いので」
「いえ! これからは出てきたヨダレをルナ君に飲まぶぅっ!」
勢いでとんでもない事を言ってくれたソルの頭をシバき、リルには他の服に着替えるように言った。
そしてリルが着替えている最中、ソルが俺に撓垂れ掛かってきた。
「ルナくぅん、ひどいよぉ」
「ソルがアホな事言うからだろ。全く、いつからソルはエロ狐へと種族を変えたんだ?」
「か、変えてないもん! 中身の問題だもん!」
「尚更ダメじゃねぇか。いいか? あんな事、他に人が居る時に言ったらダメだからな? 自制心を強く持て」
「うぅ......はぁい」
へにゃんと垂れるソルの耳を撫で、俺達は着替えてから城へ向かった。
これから新大陸の国や王子、特産品や行き方などを洗い、先にヴェルテクスとして動いてもらおうって魂胆だ。
あの王子、思考も態度も言動も気に食わないが、何か面白そうなイベントを起こしそうだからな。
割と楽しみにしているぞ。
はぁい。ということで大罪編は終わり!.....と言いたいところです が! まだ暴食と怠惰が残っているのでね。もう少しお付き合いください。
次回はお休み回として、陽菜さんと月斗君がイチャつくそうです。タイトルは.....そうですね。
『雪の降る道』お楽しみに!
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