表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
385/492

人間




『アスモデウス......ふむ。まぁ良い』




『ルシファー、オマエ、ルナヲキズツケタナ?』


『傷つける? 我は断罪したのみだ。それを今し方、貴様に止められたがの』


『トメテナイ。オレハトモダチヲ、タスケタダケダ』



2柱の悪魔の会話聴きながら、俺の動かない体のHPが回復していく。


何故アスモデウスがこの場に来たのか、どうして俺だけを助けているのか分からない。だが、そんな事よりもやるべき事がある。



「う......うぅぅぅ」



自分の体重が5倍くらいになった感覚の中、俺は必死に体を起き上がらせようとした。



『ルナ。マダネテロ』


「ダメです......ルシファーを倒さないと......」


『オレガヤル。ルナ、オマエジャカテナイ』



アスモデウスにそう言われた瞬間、スっと体が軽くなった。

いや、厳密に言うなら俺の感覚がゆっくりと消えて行っている。



「勝てない......だと?」


『ソウダ。オマエジャ、チカラガタリナイ。ルシファーヲタオスチカラガ、オマエニナイ』


「黙れ」


『......?』


「何も知らねぇ癖に何いってんだよテメェ。あぁ? 俺がいつルシファーに勝てないって言ったんだよ。誰が勝てねぇっつってんだよ。あ? 100パーセントの結果じゃねぇ癖に、人が足りねぇモンをもっともっとって要求してよぉ? 何なんだよお前。ふざけんなよ」



あぁ違う。アスモデウスは助けてくれたんだぞ。何でそんなに言ってるんだ俺は。お門違いもいいところだぞ。



『ルナさん......?』


「何だよ」


『い、いえ何も......』



おいおい、どうして心配してくれているフーを威嚇してるんだよ。バカか俺は。



『見ろ。あれが人間だ。貴様に助けられたというのに恩も感じず、貴様を愚弄したぞ。アスモデウス。それでも貴様は我の前に立つ気なのか? その人間の為に』


『タツ。オレ、ルナガツヨイノ、シッテル。ヨワイノモ、シッテル。アンナフウニイワレタケド、ルナハヤサシイ。シッテル』


『ほう。貴様がそこまで人間に興味を示すとはな。何故その人間の為に貴様は戦うのだ? 勝てないと分かっているというのに』



『ルナ、オレヲミテモ、コワガラナカッタ。ワラッテオレトハナシテクレタ。ソレガ、ウレシカッタ』


『ソレニ、モモイロモ、スキ。ホントウハオレガコワイクセニ、オレノタメニワラッテクレタ』


『ダカラ、オレハニンゲンガスキ。オレヲミテモ、コワガラナイニンゲンガスキ』


『好き......か。色欲を司るだけはある』



2人が話し合う中、俺は必死に体を立て直した。

フラフラと揺れる足元に布都御魂剣を刺して固定し、死に物狂いでクトネシリカに紫電涙纏を使う。



「はぁ、はぁ......やっと動ける......」



戦わないと。戦わないと次は死ぬ。でもその前にアスモデウスに感謝を伝えないと。



「アスモデウス、ありがとう」


『キニスルナ。ソレヨリ、タタカウゾ』


「あぁ」



最低限の敬意を払ってアスモデウスにお礼を言い、俺達はルシファーに立ちはだかった。



『愚かな者共だ。【断罪ノ剣】』


『ヤラセナイ。【色食(イロハ)ミノウタゲ】』



ルシファーが取り出した断罪ノ剣を、アスモデウスの尻尾から出た赤い光が飲み込んだ。



「ナイスデウス。『背理の太刀』」


『ちょっ! そんな状態で使っちゃ『フー姉ちゃん黙って』アッハイ』



俺はルシファーが動けない内に急接近し、背理の太刀をいけ好かない野郎の胸にぶっ刺した。

マモンの時とは違い、弾け飛ぶ威力は無かったのだが、初めてルシファーに刃を入れる事に成功した。


今の気分は最高だ。気持ちいい。



「はは! はははは!! ほれほれほれェッ!!!」



神鍮鉄製の糸でグリモワールを取り上げ、出入口の方へとぶん投げながらルシファーの顔に回し蹴りを喰らわせた。


そしてステラノヴァを使ってバフを掛け、アルスのインベントリから強引にジュエルブレスを取り返した。



「『火焔刃』『招雷刃』」



短剣のジュエルブレスから、大剣とも取れる大きさの炎と雷で切り付け、ルシファーからは血のポリゴンが流れ出る。



「あ〜楽しい。最ッ高に気持ちいいね」


『......貴様』


「アスモデウスさん。これでも力が足りないと言いますか? 奴の生命力からして、3割を削った訳なんですが」



真っ直ぐにルシファーを見ながらアスモデウスに聞くと、アスモデウスは首を横に振って応えた。



『ツヨイ。ルナ、ルシファーヲ、タオセル』



俺の右後ろから唸る様な声が聞こえると、俺は自然と口角が上がった。



「良かった。あ、断罪ノ剣はアスモデウスさんに頼ります。後は俺が片付けますので」


『ワカッタ。ルナ、シンジル』



そうしてアスモデウスと完全な共闘状態を作り上げ、ルシファーとの戦闘が再開された。


今までにない、ボスモンスターとの共闘という異例の状態に困惑しているが、RPGではよくある事だと自分に言い聞かせて戦った。



「あ〜やべぇ。超楽しい」


『ずっと笑顔ですもんね。正直、一撃貰えば死ぬ状況で笑ってるのは結構危ないと思います』


「いいのいいの。俺、背水の陣は好きだから。この一歩間違えたら死ぬスリル......最高だ」


『変態だ......ッ!』



フーから失礼な事を言われながら、剣、刀、弓、槍、糸を駆使してルシファーに攻撃を仕掛けていく。


ルシファーの行動パターンとして、格闘と魔法、魔剣や魔槍による攻撃があるが、どれも躱したり受け流して対応している。


偶に背中に隠して断罪ノ剣を出そうとするが、そこはアスモデウスのアニキが飲み込んでくれるから安心だ。



安全ではないがな。



『......しぶとい人間だ』


「しぶとい悪魔だ。正直、MPすっからかんだから早く死んでくれ」


『我は不滅の存在だ』


「残念ながら、形あるものはいつか終わる。それはどんな世界にも共通する事だ。坊や、よく覚えときな」


『我を愚弄するか』


「最初から愚弄してんだよ。人間は傲慢だからな」



喋りながら無理やり使った蔦ちゃんやイグニスアローが片手で消されるが、ここで攻撃を辞めれば一瞬で俺は死ぬだろう。



「ふぅ......『背理の太刀』」



MPが500程度を行き来する中、俺は背理の太刀を作り出した。



『来たか。我が断罪ノ剣と同等の力』


「同等? 舐めんなよ。これはお前の厨二武器より少しだけ強ェんだよ」



勿論、断罪ノ剣の性能を知らないから何も言えないんですけどねっ☆


だが背理の太刀はルシファーに有効的なのは確実だ。

命を削る思いで振る一刀に、並の()()が勝てる訳がない。



「行くぞ〜?」



俺が構えると、ルシファーも断罪ノ剣を構えた。

アスモデウスは空気を読んで手を出さず、見守ってくれている。


この感覚は何だろう。主人公とライバルの一騎打ちの様な、妙なワクワク感がある。


まだ怠惰と暴食の悪魔が残っているのに、ラスボスと戦っている気分だ。



『来い。人間』



両手に2本の鶴を構えるルシファーに、俺は一直線に突っ込んだ。


本来なら確実に負ける動き出しだが、そんな簡単にやられる程俺も馬鹿じゃない。



「ふっ......フンッ!」


『甘い!』



ルシファーが右手の剣で俺を突き刺そうとするのを避け、太刀を振り上げたタイミングで左手の剣が俺に振り下ろされた。


あ〜あ。これ死んだね。お疲れ様でした。



「......な〜んちゃって」


『ッ!?』



俺は、ルシファーに向けて振り上げた剣で、ルシファーが振り下ろす断罪ノ剣を弾き飛ばした。


そしてすぐさま布都御魂剣に手を掛け──



「『斬』」



居合切りの要領でルシファーを真っ二つに斬った。



『人間に......負け............た......』



ルシファーは少しずつポリゴンへと体を変えていった。


そうして体の半分ほどがポリゴンになった頃、後ろからアスモデウスが話しかけてきた。



『ヨクヤッタ。ルナ、ガンバッタ』


「ありがとうございます」



ゴツゴツの悪魔の手に肩をやさしく叩かれ、アスモデウスがルシファーの横にしゃがみこんだ。



『ルシファー』


『なん......だ』


『オマエハ、ニンゲンカラウマレタコトヲ、リカイシテイルノカ?』


『人間......から、生ま......れた?』


『ソウダ。オレタチアクマハ、ニンゲンノオモイカラ、ウマレル。ルシファー。オマエハ、キヅイテナイノカ?』


『......あぁ』


『フンッ、『無知(ムチ)(ツミ)』、ダナ。オマエハ、ゴウマンノアクマ。ダガ、熾天使(シテンシ)ダ』


『......昔の......話だ』


『オロカナ。オマエガヒトヲ、スキニナルカラ、コンナケッカニナルンダ』


『耳が......痛い......な』



ん? どういう事だ? ルシファー君、元々は人が好きだったのか?

それに熾天使って、天使の中でも最上位の地位だよな?

それがどうして、傲慢の悪魔......もとい、背理の天使になったんだ?



『我は......人が好きだった。傲慢で、強欲で、他人に嫉妬し......色欲に溺れ、暴食に生き、憤怒に身を焦がす......怠惰な人間が......好きだった』


『故に、人になりたいと思った......そんな思いが、我を天使の(ことわり)から外した』



なるほどな。あの時のフーに近かったのか。

本来人間にはなれない者が、人間になろうとして生まれた存在。

ルシファーは天使だっただけに、聖天使と魔天使の間にある、背理の天使となったのだろう。



『フッ、ソレガオマエノ『ツミ』だ』



アスモデウスがそう言うと、ルシファーは最後の力を振り絞って【断罪ノ剣】を顕現させた。



『我を......斬れ』



アスモデウスが剣を受け取ると、俺の方へとやって来た。



『ルナ。オマエガヤレ』


「俺が?」


『ソウダ。ルシファーヲタオシタノハ、オマエダ。セキニンヲモテ』


「分かった」



アスモデウスから真っ黒な剣を受け取った瞬間、剣が光り輝き、先程までとは対極的に、真っ白な剣に変化した。


不思議な剣だなぁ。性能は......見れないのか。残念。



『頼む......人間』


「あぁ。じゃあな、ルシファー」



まだポリゴンになっていないルシファーの胸に剣を突き刺した。

すると、刺された部分から白い光が溢れ出し、ルシファーの全身がポリゴンとなって散った。



『オレモ、キエルトシヨウ。サラバダ、ルナ』


「あ、はい。ありがとうございました......え?」





アスモデウスはルシファーの死を見届けると、自分の尻尾を自分の胸に刺し、ポリゴンとなって散っていった。





◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

『傲慢の悪魔・ルシファー』を討伐しました。

『色欲の悪魔・アスモデウス』を討伐しました。


『悪魔の礼装・傲慢』×1入手しました。

『悪魔の礼装・色欲』×1入手しました。

悪魔の首飾り(カスト・トーク)×1入手しました。

悪魔の革靴(ヴォラ・レペロ)×1入手しました。


称号『半天半魔の討伐者』を獲得しました。


『半天半魔の討伐者』

・種族『人間』への進化が可能になる。

★進化済みの為、無効になります。


半身が天使、半身が悪魔の

モンスターを討伐する事で獲得。

◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇


ア、ア、アスモデウスゥゥゥ!!!! あぁ、なんて事だ.....どうして.....


まぁ、色欲の特殊クリアの演出です。ルシファー戦で共闘する代わりに、勝ったらアスモデウス自身が.....とね。



次回『銀髪さん、追放される』お楽しみに!



このお話が『良き』『ええやん』と思った方は★5評価やブックマークなどお願いします!


.....で、いいんですよね? 台本にはこう書いてますが.....あ、はい。OK? ありがとうございます。じゃあ、お先に失礼します。はい、では〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ