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ルシファー

悲報、ヴァイオリンを10年以上弾いているゆずあめ。遂に弦が切れる。


やったのはA線です。私、E線かG線が先に切れると思ったのに、A線が先に戦死しました。


A線に敬礼を。8年も耐えてくれてありがとう。


「あ〜あ。怯まないか〜」


『仕方ないわよ。相手が相手だけに、私じゃ力不足だわ』


「そんな事言うなよ。お前は強い。だが今回は敵が強すぎる」



アルテから放たれた雷の矢は、見事にルシファーの胸に刺さった。だが、ルシファーには全く効いていなかった。


見た目は背理の天使のイケメン兄ちゃんだが、実は筋肉モリモリのマッチョマンなのかもしれない。



『ふむ』


「逃げて!」



俺が前衛組に合流しようとしていると、ルシファーの予備動作を見た犬子(わんこ)さんが、テインさんとアルスに呼びかけていた。


アルスは雷化して軽々とルシファーの攻撃を避けたが、テインさんは回避が間に合わず、掠っていた。



「凄いな。あの爪に掠っただけでテインさん死にかけてんじゃん」


『これまでの悪魔とは格が違いますね。ルナさんも気を付けてくださいよ?』


「いつも気を付けてるよ。寧ろフー達の方こそ気を付けろよ? マモン戦みたいに、武器を奪われる可能性があるんだからよ」



これから刀で攻撃するって言うのに、その刀を奪われちゃ何も出来んからな。

まぁでも、犬子さん達が攻撃を当てても武器を奪われてないし、多分杞憂に終わるがな。



『それは『俺の傍から離れるな(キリッ』という事ですか?』


「フー......」


『フー姉ちゃん......』


『フー、あんた......』


『ほっほっほ』



『え? わ、私、何か間違った事を言いました!?』



全部間違えてるよ。今の回答、テストなら0点だぞ?

全くコイツは、どうして肝心なところでポンコツ要素を出してくるのか。


性格が良いだけに、非常に残念だ。



「犬子さん、スイッチ」


「はい!」


「『(かみなり)』」



前衛組と合流し、犬子さんが一瞬だけ引いたタイミングで俺と交代し、ルシファーの胸に刃を入れようとした。


だが、ルシファーは剣の軌道を読み、人差し指と親指で魔刀術を施した剣先を摘んで止めた。



『ぬっ? 速いな』


「強者のセリフ辞めろよ。似合いすぎてんだ......よッ!」


『フッ、面白い』



摘まれた布都御魂剣を鞘に直接顕現させ、直ぐにクトネシリカと切り替えてルシファーを突いた。


だが避けられた。ルシファーのAGIが異様に高い。



「テインさん、一旦引いて!」


「分かった!」



テインさんに声を掛け、アルスと一緒に引いたタイミングで、メルの後方支援攻撃が飛んできた。


俺達の居る床の下から、敵の足を拘束する氷の蔦が出てきた。

その蔦はルシファーの足に絡み付くと、どんどんと奴の体を氷漬けにしていく。



『ほう、龍神魔法か。我には効かぬ......ん?』



あ、コイツもしかしてメルの正体に気付いてないのでは? 語り人が使う龍神魔法より、神龍人族の使う龍神魔法の方が圧倒的に強いことをご存知ないのでは?


おやおや〜?



「はは! 情報弱者め。アルス!」


「はっ!」



今、俺がアルスに先手を譲ったのにはワケがある。

それはアルスが右手に持つ、『ジュエルブレス』が理由だ。


ジュエルブレスは魔剣術の威力を高め過ぎるが故に、周囲に及ぼす影響が半端じゃない。

その為、俺達が巻き添えを喰らわないようにする為に、アルスに先手を譲ったのだ。



『ぬぉぉぉ!!! 人間如きがぁぁ!!』



「うわ、マジで情弱じゃん」



アルスを人間だと思ってるのか? この悪魔。だとしたらアホすぎない? 一応、アルスは虎だぞ?『雷虎』って種族だぞ?


ルシファー君。君、もしかして自分で情報を得ようとせず、サタン達からしか見聞きしなかったのかな?



「テインさん、犬子さん、前に」


「「了解!」」




「よし、『フラカン』」



2人が前身し、俺が状況確認の為に飛んだタイミング。

そこで俺は、ルシファーが2人の攻撃から抵抗しない事に違和感を覚え、アルスとメルを光に戻した。


直感だ。走馬灯と言うか、死の気配がしたから戻した。




『魔術書グリモワール、召喚。熾天使ルシファーが命ずる。死を撒き散らせ』




ルシファーは真っ黒な本を取り出した。とても黒く、最早存在が見えにくいレベルで黒い。


その本がひとりでに開かれると、開かれたページから真っ黒な灰が大量に飛び出し、辺りに雪の様に降ってきた。



◇━━━━━━━━━━━━━━━◇

『守護者の加護』が発動しました。

『守護者の加護』が発動しました。

『守護者の加護』が発動しました。

『守護者の加護』が発動しました。

『守護者の加護』が発動しました。

『死を恐れぬ者』が発動しました。

『最弱無敗』が発動しました。

◇━━━━━━━━━━━━━━━◇



「っ!『テンペスト』!!」



上空に居た俺の視界に恐ろしいログが流れた瞬間、反射的に風属性の龍神魔法を使って灰を吹き飛ばした。


だが......



◇━━━━━━━━━━━◇

パーティーメンバー

『テイン』

『カーナ』

『ポリゴン・チュッチュ』

が死亡しました。

◇━━━━━━━━━━━◇



おいおい嘘だろ? ほぼ一瞬で吹き飛ばしたって言うのに、間に合わなかったのか?



「ルナさん、生きてますよね?」


「えぇ。というかよく死にませんでしたね、犬子さん」


「ちょったした称号の効果でね。ルナさんも?」


「はい。多分同じ称号ですよ」



あの3人が死んで、犬子さんだけが生きている時点で、犬子さんも『守護者の加護』を持ってると予想していた。


というか俺、よく直感に従って2人を戻したな。偉いぞ。




『エロイムエッサイムエロイムエッサイム。我は求め訴えたり。我が魔力を糧とし、理を断つ刃を顕現させよ』




メルを戻した事により拘束の解けたルシファーは、あの真っ黒な本......グリモワールから黒い剣を顕現させた。


ルシファーの言っていたことから察するに、多分俺の『背理の太刀』と同じ様な剣だろう。

魔法は斬れるし肉は弾け飛ぶ。バフもデバフも無視した完全な固定ダメージ。


そんな剣を、ダンジョンのボスが使うのか。



「犬子さん。あの剣と打ち合ったら死にますよ」


「そんな予感はしてます。では、どちらかがヘイトを買って立ち回ります?」


「そうしましょう。俺が前に立つので、背後から刺してください」


「分かりました」



俺は右手にステラノヴァだけを握りしめ、ルシファーの前に立った。


心做しか、負けた後の事を考える俺が居る。

ソルとリルにルシファーについて説明する俺の姿が目に浮かぶ。


でもダメだ。まだ負けると決まった訳じゃない。

だって、まだ負けてないんだから。



負けてない以上、勝機というのは絶対にあるんだ。



「すぅ......はぁ。こんな役、ニヒルじゃしょっちゅうやってたのになぁ」


『ルナ。やはり貴様は脅威だ。我々悪魔を滅ぼし、その先に何を願うのか。神にでもなる気なのか?』


「はっ、馬鹿言え。それは大分前からお断りしてんだよ。俺はただ、強くなって、ソル達と幸せに行きたいだけだ」



時間稼ぎにルシファーと会話をしていると、奴は右手の天に掲げた。



『嗚呼、傲慢な人間よ。強欲な人間よ。怠惰な人間よ。可哀想に』


『我が名はルシファー。傲慢の悪魔にして熾天使のルシファー』


『これより我は、1人の人間を断罪する。彼の者の名はルナ。憤怒、強欲、嫉妬、色欲を打ち倒して尚、罪に溺れる人間よ』


『我が主神ヘラよ。この輝きを以て討ち滅ぼします』



ルシファーの剣に凄まじい勢いで黒い光が集まる。

その光は段々と大きくなり、元々よ長さが1メートル程度だった黒い剣は、今や2メートルはありそうだ。


俺は犬子さんに合図を出し、犬子さんが全力で大回りをしながらルシファーの後ろへと走って行く。



『さらば、人間。【断罪ノ剣】』



真正面から突っ込んだ俺に対し、ルシファーは真っ直ぐに剣を振りおろす。


が、



「何っ!?」


「犬子さ」



剣は2本に分かれ、片方は俺に。もう片方は犬子さんの胸を貫き、爆散させた。



『我が名はルシファー。傲慢の悪魔なり』



薄れる意識の中でルシファーを見つめていると、俺の前に魔法陣が出てきた。


今までに見た事ない、ドス黒い魔法陣だ。




そしてその魔法陣から、巨大な何かが現れ、俺の体に触れた。




『ルナ、イキロ。オレ、トモダチ、シナセナイ』




ポリゴンとなって散る寸前の俺を助けたのは、色欲の悪魔である、アスモデウスだった。

(小声で失礼します。次回『人間』お楽しみに!)


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