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ロークス城跡に眠る扉

ッシャ!




◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

こんにちは、ルナさん。今日犬子です。

ワールドアナウンスを聞いて、僕はあなたとダンジョン攻略がしたいと思いました。

攻略対象は『傲慢』のダンジョンです。

返信待っています。

◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇



城に戻り、ソルお手製のカレーライスを食べた後。

俺はソファに座って、ソルを膝枕しながらチャットのウィンドウを表示した。



「この人から誘われるとは思わなかったな」


「むぅ。色んな人がルナ君を取りに来る」


「寂しいか?」


「うん。凄く寂しい......もっと撫でて」


「はいはい。直ぐに帰ってくるから、待っていてくれ」



へにゃんと垂れるソルの耳を撫でてあげると、ソルは尻尾を振ってから答えた。



「うん。待ってるね」


「あぁ。行ってきます」




俺は最後にソルの頭を撫で、城を出ると同時に付喪神達を全員顕現させた。




『う〜! 寒いですね〜!』


「夜だしな。それより武器状態でも気温を感じるって、中々つらいと思うんだが、皆はどうなんだ?」


『それはフー姉ちゃんだけだよ! シリカは気温を感じないようにしてるもん!』


『私も感覚は切っていますね』


『私もね。だってルナとのコミュニケーションに影響が出るかもしれないもの』


「そうなのか。フー、つらくなったら直ぐに切れよ?」


『はい。その辺りの事は弁えてます』


「なら良し」



雪が降りそうで降らない、肌を刺すような気温の中、犬子さんとの待ち合わせ場所にしたロークス城跡に来た。


何か起きたら怖いので、少しだけ顔を出して覗いてみると、犬子さんの他に3人程プレイヤーが居るのを確認した。


多分、犬子さんの所属する、ストレリチアのメンバーだろう。



「こんばんは。冷えますね」


「こんばんはルナさん! 来てくれてありがとうございます!」


「「「こんばんは〜」」」



皆で頭を下げて挨拶し、少しだけ世間話をして交流を深めた。



「そう言えばルナさん。ルナさんは幾つほど大罪のダンジョンをクリアしてるんですか?」


「4つですね。憤怒、強欲、嫉妬、色欲です」


「強欲もクリアしてるんですね。マモンの特性、厄介じゃなかったですか?」


「そうですね。でも案外簡単に倒せましたよ」


「本当ですか!?......教えて貰っても?」


「秘密ですね。それに、あの悪魔への対処法なんて、戦ったことがある人なら全員分かってるはずですからね」


「ですよね......さて、そろそろ行きましょうか!」


「はい」



何故か他のメンバーが黙って聞いているが、これが配慮なのか策略なのかは分からないな。


あ、でも一応、自己紹介は全員したんだ。



虎人族の筋肉モリモリの片手剣二刀流の男が『テイン』


禍々しい黒い杖を持った魔人の女が『カーナ』


赤く燃える、派手な弓を使っている九尾獣人の女は『ポリゴン・チュッチュ』



とても個性的なストレリチアのメンバーだ......少々個性的すぎる気もするがな。



「そういえばダンジョンはどこにあるんですか?」



神龍によって破壊された城の跡に進む皆に、最後尾から俺が尋ねた。



「この下ですよ」


「下?」



何故城の下にダンジョンがあるのか、疑問に思いつつも着いて行った。


すると過去にリルが助けに入ったであろう空間に着き、奥の方に大きな扉が見えた。



「ここです。前に城の再建を望むプレイヤーと一緒に見付けたんです」


「これが......」




城の地下。大きなパーティ会場にも見えるこの部屋の奥に、縦5メートルはありそうな、巨大な黒い扉がダンジョンの入口となっていた。




「ルナっち、ここの敵は正直に言って頭おかしいくらい強いから覚悟してね」


「あ、はい。ポリゴン・チュッチュさん」


「こーらっ! ちゃんと『チュチュ』って呼んでよね!」


「はい。チュチュチュチョキプリィ! さん」


「鳴き声にするの辞めてくれる? 泣くよ?」


「すみません、チュチュさん」



どうしてそんな名前にしたのか、俺には分からない。

いやね? 気持ちは分かるのよ? ソシャゲのユーザーネームとか、遊びたくなる気持ちは分かるよ?


でも、流石にMMOでは名前で遊ばないだろう。



「さぁ、行くですよ!」



カーナさんがそう言うと、パーティリーダーである犬子さんが、ダンジョンに入るボタンを押してくれた。






「暗いですね」



ダンジョンの内装は、城の内装と殆ど差は無かった。

ただ、異様に暗くなっており、ランプも無ければ燭台も無い、非常に息苦しい場所に感じた。



「ふっふっふ。任せてください!『ライト』です! 更に〜?『きらきら星』です!」



カーナさんが魔法を使うと、全員の近くに幾つもの光の塊が現れ、天井付近にはキラキラと輝く星が、矢印を作って次に進むべき道を示していた。



「これで次の階層への道と、モンスターの位置が分かるのですよ!」


「凄いですね。名前は可愛いのに、効果は全然可愛くない」


「えっへん!」



魔法の作り方が上手いな。これなら、魔人の種族特性である魔法攻撃威力1.2倍、全ステータス1.3倍の効果が有効的に使えるだろう。


モンスターから逃げるにしても、戦うにしても、どちらにも有利に持って行ける。



『上手な作り方をしてますね〜。良い発想です』


『そうよね。ルナ、今度あの魔法作ってみたら?』


「ほぼ上位互換の魔法を持っているのに、か?」


『確かに、言われてみればそうね』


『まぁ、そもそも持っている魔法から違いますからね。仕方ありませんよ』



俺は今、サーチがきらきら星の上位互換と言ったが、それは間違いだな。

サーチには次の階層へ示す方法が無いから、大人数を引き連れる際、俺が先頭に立たなければならない。


その点、きらきら星なら頭上に明るい矢印で示してくれるので、大人数の時なら非常に有効なのだ。


やはり、魔法はどれも『使い所』だな。一概に使えない魔法というのは存在しない。



「お、敵だ。テイン、ルナさん。頼みます」


「了解」


「あぁ、黒いフェンリルですか。分かりました」



前方の遥か遠くから猛スピードで走って来るフェンリルを察知し、一応皆に聞こえるように言った。


俺は静かにアルテで矢を放ってから、クトネシリカと布都御魂剣の二刀流に変えた。



「おぉ、2人とも二刀流だ」


「カッコイイのです!」


「ルナっち〜! ゴリラ〜! ファイトー!」



後ろから聞こえた声が気になり、隣に居るテインさんを見てみると、こめかみをピクピクと動かしていた。


誰が見ても分かる。怒ってらっしゃる。



「直ぐに片付けて狐をシバきましょう」


「あ、はい。頑張ってください」



アテナもこんな感じなのだろうか。

そう思いながら俺は、クトネシリカに紫電涙纏を、布都御魂剣には氷塊煙纏を施した。


テインさんの動きに合わせられるよう、デバフと火力の出る構成だな。



『ガオォォォン!!!』



「行きます!」


「はい」



突っ込んだテインさんの右後ろに俺は位置取り、フェンリルが噛み付く寸前に俺は左手の剣を振るった。



「『(むすび)』」



周囲に漂う冷気が塊となり、フェンリルの顎が開かないよう、紐となって結んだ。



「ナイス!『秘伝の構え』『連斬・6連』!」



テインさんは両手の剣を重ねると、1度の攻撃で6回の斬撃をフェンリルの首に加えていた。



『ギャゥゥ!!』



喉から血のポリゴンを撒き散らすフェンリルに、冷気の塊がどんどんとフェンリルの体に巻きついていく。



「ほいっ、『神雷』」



行動詠唱にてたっぷりと雷霆を吸収したクトネシリカで、フェンリルの首を斬り落とした。



『ガ............』



断末魔を上げることも出来ずに、黒いフェンリルはポリゴンとなって散った。



「お疲れ様です」


「お、お疲れ様です......」



俺はテインさんに労いの言葉をかけてから納刀した。


そして反省する。


今の戦闘、あと5秒は早く終わらせられた。テインさんが突っ込んだ瞬間にグレイシアを使って、最初から全身を凍らせておけば余計な時間はかからなかったはずだ。


雷霆を使うのに必要な動きが小さいから、グレイシアくらいは使えたはず。


次は気を付けよう。



「2人とも凄いね。あのフェンリルを10秒くらいで倒すなんて、ビックリしすぎて足が震えてるんだけど」


「ですです! 完璧な連携だったのです!」


「ルナっちのテインに合わせる動きが完璧すぎて、正直に言って気持ち悪かった!」



3人と合流し、先程の戦闘について話していると、チュチュさんをシバくはずだったテインさんが萎れていた。


本当にこう、水分を失った木の根みたいな感じなんだ。



「どうしたの? テイン」


「俺......何も出来なかった」


「そうかい? ちゃんとダメージを与えていたじゃないか」



列を崩し、チュチュさんとカーナさんを先頭にして、犬子さんがテインの横に来て話をしていた。


勿論俺は、最後尾からサーチと聞き耳だ。



「だって、ルナさんはフェンリルの首を斬り落としたんだぞ? それに対し、俺はちょっと血を出させただけだ」


「あれは君が首を弱らせたからこそ、ルナさんも首を斬れたんだと思うけど」



うんうん、俺もそう思う──



なんて事は言わないぞ。

テインさんは明らかにフェンリルに対し、圧倒的に攻撃力が足りなかった。


大罪のダンジョンに於いて、火力不足なんて死活問題だ。



「何も出来ないと思うなら、何か出来るように動くのがプロってものでしょう。自分で考え、周りに聞き、実行に移すのがテインさんのする事だ」



パワーが足りないなら戦略で敵を倒せばいい。

戦略が立てられないなら、敵にデバフをかけて動きを鈍らせればいい。



「まぁ、これはプロですらない俺が言うことです。あなたなら、ちゃんと考えられるでしょう?」



頼むぞプロチーム。何のゲームのプロなのか知らんが、

あんた達なら出来ると思うぞ。



「さぁ、歩きながら考えましょう。俺はカーナさんとチュチュさんと前に出るので、答えを見つけたら交代してくださいね」



俺はテインさんの肩をぽんと叩いてから、最前列であるカーナさん達の列に加わった。



フェンリル程度なら俺1人で殺れる。幾らでもかかってこい。

数少ない魔人のプレイヤーのカーナさん。今後に期待。



次回『破滅の炎』お楽しみに!

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― 新着の感想 ―
[一言] ポ○モンのト○ピーですか? トギュェプリィ!!
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