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肉まん感覚

書いても投稿するのを忘れるお年頃



「ピギー。帰りに色欲のダンジョン攻略して行かね?」


「そんな『帰りにコンビニ寄って肉まん食べよう』みたいな感覚でダンジョン行く? 普通は行かないよ?」



コンテスト用の写真撮影が終わり、狐国に戻ってきた俺達は、どうせ帰るならダンジョンで死んで帰ろうという話になった。


場所は事前にソルから聞いているので問題ない。



「う〜わ、マジで来ちゃったよ」


「古びた鳥居ってのが、また面倒な香りを漂わせるな」


「はぁ......ちなみにココ、まだ誰も攻略出来てないよ?」


「マジか。やったなピギー。俺達一番乗りだぞ!」


「狸にならないでくれる? 普通にルナでも死ぬ難易度してるからね?」



俺が死ぬことは重々承知の上だ。だって、帰る手段にリスポーンを使おうとしてるくらいだぞ?

元々死ぬ気で挑むようなものだ。



俺は深呼吸してから鳥居に手を当て、いつものウィンドウからダンジョンに入った。




◇━━━━━━━━━━━━━━━━◇

『罪の宴・色欲の待遇』に入ります。◇━━━━━━━━━━━━━━━━◇




ダンジョンに入り、最初に感じたのは空気の気持ち悪さだ。



「何だこの空気......毒か?」


「違う違う。ここに出るサキュバスとインキュバスの出すフェロモンの匂いだよ」


「フェロモン?」


「そう。この匂いを出して、プレイヤーの位置を把握してくるんだってさ」



笑顔で言い放ったピギーの後ろには、凄まじい数のインキュバスが列をなして走ってきていた。



「1層目は私も攻略済みなんだけど、2層目がキツイんだよね〜。『ボム』『ブラスト』」


「カバー要るか?」


「要らない」


「あいよ」



涼しい顔で大量のインキュバスを燃やしていくピギーを横目に、俺は自分に向かって飛んできたサキュバスの相手をする。



『ウフフ!』


『キャハハ!!』


『あーそぼっ!』



どいつもこいつもビキニみたいな格好をしており、非常に肌の露出が多い。



「う〜ん、ソルの方が綺麗なんだよなぁ。お前らはさ、色気はあるかもしれんが、汚いんだよ。もっと上品にしてくんない?」



行動詠唱に『滅光』をセットし、人差し指を銃の様にして光を放つ。


すると、瞬く間に全てのサキュバスがポリゴンとなって散った。



「ピギー、もう一度聞く。カバー要るか?」


「欲しい」


「了解」



俺残っているインキュバス達に向かって指を構え、滅光を放った。

そして声を出せずに全てのインキュバスが散った。



「ねぇ、アンタ強すぎない?」


「消費MP、1発につき1万だけど。それでも強すぎると言うのか?」


「ねぇ、アンタバカじゃないの?」


「大丈夫だ。ちょっとした工夫のお陰で、1発2500MPにまで抑えてる」


「やっぱ強すぎるよ。ナーフ(下方修正)入らないの?」


「著しくゲームバランスを崩す訳ではないからな。それに、ナーフが入れば他のプレイヤーがやる気を無くすぞ? これは」



というか、ケリドウェンの効果についてはピギー達が1番よく知っているはずだ。

消費MPを減らして、魔法の威力を上げるという馬鹿みたいな性能を。


マナ効率化に関しては......多分、そこそこ知られ始めていると思う。

プレイヤーが所持する付喪神が増えるに連れ、1人のプレイヤーが秘匿している情報の価値はどんどんと下がっていくだろう。



「ほれ、んな事言ってたらもう階段前だ。門番は......何アレ?」



サキュバスとインキュバスしか出てこない1層を探索し終わると、2層目へ続く階段のあるエリアに着いた。


そしてそこで待っていたモンスターは、大きさが4メートルはありそうな、巨大な蠍だった。



『シャァァァァ!!!!』



「うわ、なんか飛ばしてきた」


「それ避けてね。劇毒と麻痺毒が合成されている針だから」



遭遇と同時に飛ばしてきた針が俺に刺さると、見事にピギーが言った効果が俺に付与された。



「確かに劇毒と麻痺毒だな」


「ちょっ! アンタ何喰らってんの!?」


「大丈夫......ほら、もう治ってる」


「はぁ!?」



ソルの作ってくれた花鳥風月を侮るなかれ。20秒もあれば2つの毒くらい勝手に治るのさ。



「構えろ」


「フンッ!!」


『ギシャ!!!!』



短く伝えるとピギーは直ぐに短剣を構え、蠍の尻尾による薙ぎ払いを華麗に受け流した。


俺は尻尾を振り切り、身動きが取れない状態の蠍に近付き、夜桜ノ舞で甲殻の隙間を突き刺した。



『ギチチチィィ!!』



「はっ、お前みたいな奴ってのは甲殻が硬いのがお約束だろ? 残念ながら俺には効かんな」


「流石テンプレを破壊するだけはあるね。あの毒で殺れそう?」


時間があればいけるぞ(お前が倒せ)


「はいはい。分かりましたよ」



俺の言葉に隠された意図を瞬時に掴むと、ピギーは蠍の腐り落ちた甲殻に向かって何度も切りつけた。


今更だが、ピギーって短剣を扱えるんだな。

前に刀を作ってやったが、あの子は使ってあげられているのかな?



「はぁ!!」



段々と動きが鈍くなる蠍にトドメを刺したピギー。


そしてそのトドメの役割を担ったのは、他でもないあの刀だった。



「......良かった」


『ほっほっほ。職人として嬉しそうですな』


「まぁな」



ポリゴンとなって散りながら消える蠍の前で待つピギーに向かって俺は歩く。


その途中でイブキに心情がバレたが、事実なので問題ない。



「さ、次が本番よ。2層からはデバフのオンパレードだから、ポーションが手放せなくなるの」


「あ〜、あの蠍は2層を暗示していたのか。という事は、抗毒ポーションみたいなのがあれば、楽に行けるのか?」


「確かにそんなのがあれば楽に攻略出来るけど......まさか?」


「フッフッフ......」



ピギーよ。あれだけ毒について勉強した俺に対して、その考えは舐めすぎだろ。

俺は最弱最強を目指しているんだぞ? そんな物──




「そんな物、ある訳が無い!!!!」




「ちょっとでも期待した私がバカだった」


「まぁ、蜂蜜を上手く使えば作れるとは思うぞ」


「確かに。今度試そうかな。その時はソルちゃん借りるね?」


「ダメだ。ソルは俺のだ」


「別にいいもん。勝手に借りるもん」


「お? やる気か? FSのスナイパー勝負では負けまくったが、ここ(ユアスト)では負ける気がせんぞ?」


「うっざ。ぶん殴るよ?」


「好きにしろ。完成したらレシピ教えてくれ」


「はいは〜い」




ニヒルのメンバーだからこそ出来る、強気なコミュニケーションで遊びながら、俺達は2層へと歩みを進めた。

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