新たな仲間...家族?
「どうされましたか? 父様」
俺は今、頭を抱えている。
「あれ?おかしいな。俺はさっきまでフェンリルと戦っていたはずだ。それがなんだ?どうして目の前に女の子がいる? あれ? よく分からない。集中力が切れたのかな」
「と、父様!? 大丈夫ですか?」
「君は誰だ!? 俺に子供はいないぞ!?」
「私です! 『リル』です! さっきまで父様と戦っていた『フェンリル』です!」
「あぁ、俺は頭がおかしくなったようだ」
ダメだ。どう見ても目の前に女の子がいる。
狼の耳と尻尾が生えた、銀髪で、金色の瞳をした子が。
なんか似てるなぁ......俺と。
ハッ! ダメだ。思考がおかしい。なんか無意識に『この子は俺の子』っていう考えがあった。
「とりあえずソルを呼ぼう」
「誰ですか? その方は」
「ソルは俺の友達......だな。うん」
そう言ってからソルにメッセージを送る。
『緊急:なんかヤバいので池まで来てくれ』
送信っと。すると直ぐに返事が来た。はやーい!
『なんかヤバいってワールドアナウンスの事!? 今向かってる!!』
うん、そうですよ。
「すぐに来るみたいだ。一緒に待とうな」
「はい!」
そう言って俺は草地にあぐらをかいて座った。
「おいで、リル」
「はい! 父様」
そう言って俺の足の上に座った。うん、これは多分、外から見たら親子のように見えるんじゃないか?ちょっとカメラを起動してみよう。
それから、少し離れたところにカメラで撮るように設定した。
『パシャッ!』
「撮れた」
「何をとったんです? 父様」
「写真だよ。ちょっと気になってな」
そして撮れた写真を手の上に出す。
「う〜ん親子」
「そうですね。父様は父様です」
「父様ってなんだ? 俺はお前の親じゃないぞ?」
こちとら友達すら少ないやつやぞ!!
「父様は私を救って下さいました。そして、私に名前を付けてくださいました。ですから父様なのです」
「うん。なにが『ですから』だ。それに俺はお前を何から救ったのだ?それと名前は『フェンリル』から取って付けただけだ。だれでも出来る」
「父様は私を私から救って下さいました」
「リルからリルを? どういう事だ?」
「私は......いえ、『フェンリル』は、ただの狼でした。生きるために殺して食べ、自分が死なないように相手を殺す。そんな普通の狼でした。ただ少し、他の生物より強かった。ただ少し、お喋りが好きな、そんな狼です。そんなフェンリルを、ただの狼として死ぬ運命から救って下さいました。テイムされたモンスター、『家族』にして」
家族、ねぇ......テイムってそこまでなのか? ......まぁ、しゃーないな。テイムしたのは俺だし。
「やっぱりお喋りが好きなんだな」
「はい! 父様と出会えた事で、父様ともっともっとお喋りができます! リルは嬉しいです!」
あら可愛い。
「そっか。それは良かった」
それから、リルから色んな話を聞いた。狼に戻れるのか?とか。武器は使えるのか?とか。スキルは新しく覚えられるのか?とかな。
そうして話していたらソルが着いた。
「ルナ君!? 大丈夫!?」
「あぁ、ソル。大丈夫だ。こっちに来い」
「うん!」
俺はソルを呼んで、こっちに来てもらった。すると――
「えっだれ? その子」
驚いた顔でリルを見ていた。まぁ、俺もソルの立場だったら同じような反応をするだろう。
「こいつは『リル』。幻獣狼フェンリルだ」
「リルです! 父様の子です!」
違うと言ったのに......
「えっ? えっ? ちょっと......処理が追いつかない............」
「まぁ、そうだろうな。それまでゆっくりしていこう」
「え? うん」
そしてソルの処理が終わったのは5分後だった。
「え〜っとまず、どうしてここに幻獣狼のフェンリルがいるの?」
「俺がテイムしたからだな」
「えぇぇぇ!! ワールドアナウンスには『倒した』って書いてあったよ!?」
「そりゃそうだろうな。キアラとか、幻獣をテイムされると思ってなかったろうしな。用意してなかったんだろ」
「そっか......うん、分かった。じゃあ次は、なんでリルちゃんはルナ君の事を『父様』って呼んでるの?」
そこで、さっきリル話した事をソルに伝えた。
「そうだったんだね。ならリルちゃん、私の事は『母様』と呼んで?」
え?
「え?」
「どうしてですか?」
「それはね、ルナ君が父様なんて呼ばれてたら、他の語り人に怪しまれちゃうでしょう?私は普段、ルナ君と一緒に居るから、私達の子供という事にすれば、怪しまれずに済むからよ」
え?俺の見た目、10代だよ? 怪しまれるよ?
「あの〜ソルさん。俺達、ガッツリ10代の見た目した10代なんですが......」
「大丈夫よ! 見た目なんて、語り人なら最初に変えれるでしょ? そこで若くした夫婦という事にすれば良いのよ!」
「あの〜その設定でいけば俺達、リアルでは夫婦だって事になるんですが......大丈夫ですか?」
「あっ!?」
ソルの顔が真っ赤になった。尻尾が爆発している。
「もう、だから言ったのに......」
多分、俺も真っ赤だろうな。そこでリルが――
「分かりました、『母様』と呼ぶようにします!」
「えっ!? ホントに? やったぁ!!」
「えぇ......良いのかよ。まぁ、ソルが良いなら俺もいいや」
もう、深く考えない。考えるだけ頭がおかしくなりそうだ。
「そういやリザルト見てねぇや」
「そうだルナ君。どれくらい倒したの?」
「さぁ? フェンリルに出会う前にピクシーと出会って3時間は逃げていたから、そこまで多くないと思うぞ」
そう言って俺はリザルト画面を出した。
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『フォレストゴブリン』×1924討伐しました。
『トレント』×103討伐しました。
『オーク』×34討伐しました。
『幻獣狼:フェンリル』を倒しました。
『錆び付いた剣』×1421入手しました。
「木材」×202入手しました。
『薪』×58入手しました。
『リンゴ』×42入手しました。
『豚肉』×150入手しました。
『上質な豚肉』×1入手しました。
『幻獣狼の爪』×2入手しました。
『幻獣狼の毛皮』×3入手しました。
『幻獣狼の牙』×2入手しました。
『幻獣狼の眼』×2入手しました。
レベルが17上がりました。170SP入手しました。
『剣王』スキルレベルが30上がりました。
『王弓』スキルレベルが42上がりました。
『木魔法』スキルレベルが71上がりました。
『テイム』スキルレベルが1上がりました。
称号『アルトム森林の殲滅者』を獲得しました。
称号『幻獣と出会いし者』を獲得しました。
称号『幻獣に勝利した者』を獲得しました。
称号『幻獣を従えし者』を獲得しました。
称号『運営の予想を覆す者』を獲得しました。
『幻獣に出会いし者』は『幻獣に勝利した者』に統合されます。
『幻獣に勝利した者』は『幻獣を従えし者』に統合されます。
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「3つ、言いたいことがある」
「どうしたの? ルナ君」
「どうされましたか? 父様」
「まず1つ、めっちゃゴブリン狩ってたわ。過去最多の数だろうな、討伐数」
「良かったね!」
「おめでとうございます」
「ありがとう。次、2つ目。フェンリルを殺していないのにフェンリルの素材が手に入った」
「えっ? どうして?」
「それは私のせいですね。テイムされた時に、父様に全てを捧げると誓ったので、その時だと思います」
えっ?全てを捧げる?
「どゆこと? 全てを捧げるって」
「はい、言葉の通りです。私の全ては父様のものです。私をどうするか、父様が決めてください」
わぁお、地雷踏んだ気がする。
「ルナ君、リルちゃんをどうするの?」
「......しゃーない。俺とソルとの子という事にして、一緒に過ごすぞ」
「はい! 父様!」
「ありがとう! ルナ君!」
はぁ......他のプレイヤー......はどうでもいいが、マサキはなんて反応するだろうな。
「じゃあ最後、変な称号貰った」
「どんな称号なの?」
「『運営の予想を覆す者』だな。効果は街に戻ったら確認しよう。それとソル、俺に『ヒール』かけてもらっていい?残りHPが300くらいしかない」
自然回復で200程回復してくれたが、全快にしておきたい。
「分かった! 『ヒール』!」
「おぉ、『ヒール』って暖かいな」
「そうなの? 初めて人に使ったよ。どんな感じ?」
「......そうだな、なんと言うか、こう、幸せに包まれる感じ?」
「う~ん、分からない。今度、自分にもかけてみるね!」
「それがいい。回復ありがとうな。それじゃあ、街に戻りますか! 今日は宿で寝て、また明日......いや、ログアウトしないとな。あっちではもう24時だな。どうする?」
「宿でログアウトしよっか。ログアウトしてる時はリルちゃんはどうなるのかな?」
「『ろぐあうと』とは、確かに語り人の方が眠られる事を指す言葉でしたね? それなら、問題ありません。私は父様の中に入ることが出来ますから、父様の中に居ることにします」
なんか凄い情報がポンポン出てきた気がするが、もうこの際気にしないことにした。
「そ、そうか。なら宿でログアウトするか」
そうして俺達は、イニティに戻り、宿屋でログアウトした。
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名前:ルナ Lv43→60
所持金: 255,050L
種族:人間
職業:『剣士』
称号:『スライムキラー』
所属ギルド:冒険者 (E)
HP:520→690
MP:520→690
STR:2,440→2,610(200SP)
INT: 440→510
VIT: 950→1,120(50SP)
DEX: 1,940→2,140(150SP)
AGI: 640→810(20SP)
LUC:220→305
CRT:34→43
残りSP:0→170
取得スキル
戦闘系
『剣王』Lv20→50
『王弓』Lv1→43
『走法』Lv0
『手加減』Lv0
魔法
『木魔法』Lv11→82
生産系
『鍛治』Lv1
『金細工』Lv1
『裁縫』Lv1
『調薬』Lv1
『付与』Lv6
『木工』Lv1
『料理』Lv6
『錬金術』Lv1
その他
『テイム』Lv1→2
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名前:リル
性別:メス
レベル:150
種族:幻獣狼人族 / 幻獣狼
HP:8,200
MP:3,000
STR:7,231
INT: 4,300
VIT: 2,400
DEX: 5,120
AGI: 5,120
LUC:760
CRT:40
取得スキル
その他
『変身』Lv0
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リルちゃんはスキルを取れます。大丈夫です。
それと、大分『木魔法』のスキルレベル上がってますね。第1段階かつ、最弱無敗君が頑張った上に幻獣との戦闘経験値のヤバさが...
次回、『困惑と混乱』...にしようと思いましたが、書いてから決めることにします。お楽しみに!




