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帰ってきた2人の生活





嫉妬のダンジョンで無事に死亡し、デスペナを待つのも面倒なのでログアウトした。


そしてリアルで夜が明け、今日は1月3日。三賀日の最終日の朝、俺達の両親が帰る時となった。



「じゃあね、月斗。陽菜ちゃん。元気でね」


「将来の事もしっかり考えて、な」



「勿論。父さん達も元気で」


「月斗君の事は任せてください!」



俺の事は任せたよ、陽菜。それとは逆に、陽菜の事は俺に任せて欲しい。お互いがお互いを支え合えば、より良い生活になると思う。



「月斗君。陽菜の事は任せるね」


「陽菜〜。月君をちゃんと頼るんだぞ〜」



「大丈夫!普段から頼りっぱなしだから!」


「それはダメよ。1に対して2で返す。それを2人でやるのが、夫婦ってものなんだから」



陽奈(あきな)さん。実は俺達、まだ夫婦じゃないんです。恋人関係なんですよ。



「陽菜に頼られるように頑張ります」


「あぁ。月君なら出来るさ。陽菜を頼んだよ」


「はい、太一さん」



肩をポンポンと叩かれ、太一さんに陽菜を頼まれた。


俺、頑張ります。絶対に陽菜を幸せにしてみせます。



「じゃ、また」


「はい。また来てください。楽しかったです」



最後に太一さんと悪手をして、4人は帰って行った。







「すぅ......はぁ......」


「ふふっ、お疲れ様。この3日間、1番疲れたのは月斗君かな?」


「分からん。だが......いや、あと......うん」



俺は口に出しかけた言葉を飲み込み、リビングのソファに座った。

すると陽菜もソファに座り、俺に(もた)れかかってきた。



「な〜にを言いかけたの〜?」


「秘密」


「え〜?それはいつか分かるの〜?」


「分かる。と言うより、行動として実感するんじゃないかな。きっと陽菜は喜んでくれる」



陽菜の髪を撫で、肩に手を回した。

陽菜は俺より小さい体なのに、俺より強く、暖かく感じる。


守りたいと思えると同時に、羨ましく感じる。



「もう......普通のカップルなら犬になってる所だよ?こんなの」


「普通のカップルなんぞ知らん。俺達は俺達だ。周りと違う点はあるさ」



陽菜の言いたい事を理解しながらも、絶対にその通りにはしない。


これからの人生は、やる事一つ一つにリスクが生じる。

どんなに小さな行動であろうと、それが(にち)に大きくするリスクを考えれば、その行動の真の重みに気付くだろう。


もう、子どもじゃなくなるんだ。1歩先の事を考えて動かないと。



「今日もユアストやるの?」


「やるつもりだけど......嫌か?」


「ん......もうちょっとだけ、こうしていたい」



俺に体重を預け、ぎゅ〜っと抱きつこうとしてくる陽菜を、俺は膝の上に乗せた。



「こっちの方が良いだろ?」


「うん!」



陽菜が俺の首に手を回すのかと思いきや、顔を両手で掴んで唇を重ねてきた。


4人が居る間、中々こうしてスキンシップが取れなかったもんな。

その反動が来ているのだろう。気持ちはよく分かる。



「えへへ、たっぷりキスしちゃった」


「しちゃったな。でも、これで実感が湧いてきたよな。2人の生活にさ」


「うん。毎日がハッピーな生活だよ」


「俺もそう思うよ」



今度は俺から陽菜の唇にキスをして、この瞬間の幸せを噛み締めた。



「んふふ、やっぱ月斗君からのキスが1番だぁ」



緩んだ笑顔で喜ぶ陽菜の顔を、ぷにぷにと指で触ってみた。



「可愛い奴め」



あぁ、可愛い。本当に可愛い。陽菜が居るだけで、どれだけ毎日が楽しくなっていることか。

朝起きた時、眠そうにしている表情を見るのも好きだし、お昼に元気な顔で遊んでいる陽菜が好きだし、夜に色気を出てくる陽菜も大好きだ。


今思えば、勿体ないとも言える。


小学生の時に、もっと陽菜と遊んでいたら、もっと早く俺が陽菜を好きになったんじゃないか?


中学の時に、陽菜の気持ちに気付いてあげられていたら、この幸せな時間はもっと早くから味わえたのだろうか。



そう考えてみるが、実際にそうなっていれば、今の俺は居ないだろう。



俺が陽菜と距離があったからこそFSの大会に出て優勝出来たんだし、一人暮らしを始めてから、ようやく陽菜の存在に気付いたんだ。


だからこそ、2年生になって陽菜と出会った時に、初めて『寂しくない』と思ったんだ。



人生って、幸せと不幸が山と谷の様に表される事が多いが、17歳にして、俺も気付いちゃったよ。


今の為に過去を思い返すのではなく、未来の為に今を考えた方が、もっと沢山の幸せを2人で作れるんじゃないだろうか。


その方が、もっと陽菜が笑顔で傍に居てくれるんじゃないだろうか。



『これから』を考えよう。勿論『これまで』も必要だが、それはただの経験だ。

経験は後ろから着いてくる。その経験を積んだ『自分』

という人間は、前に進まない限り何も出来ないからな。



「陽菜」


「どうしたの?」



「これからも一緒に居てくれるか?」



「はい。私は月斗君とずっとず〜っと、一緒に居ます」



あ、あれ?確認の為に聞いてみたが、何だかプロポーズみたいになってないか?

大丈夫だよね?ノーカン?ノーカンですか?えぇ!?



「ありがとう」



まぁ、何にせよ感謝の気持ちを伝えよう。『これまで』も『これから』も一緒に居てくれる陽菜に、俺の表せる最大限の気持ちを。



「──もう、月斗君の方が誘ってるよ?コレ」


「誘ってません。というか、一緒にゲームしようぜ。頭が切り替わった」


「このタイミングでゲーム脳に切り替わる!?.....分かった。やろっか!」


「あぁ。ありがとう陽菜」



俺に抱きつきっぱなしの陽菜の頭を撫で、そのまま陽菜を抱っこしながら俺の部屋に連れてきた。



「大好きだよ、月斗君」



最後にそう言ってログインする陽菜の声を聞き、俺は陽菜の手に自分の手を重ねた。



「知ってるよ」



俺は小さく返し、ユアストにログインした。

あまーーーい!この子達、あまーーーーい!!!

好き好き攻撃で相打ちしろ!(?)


ゴホン。では次回『不思議やなぁ』お楽しみに!


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