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感情の並、有名の罪

朝に寝て昼に起きました。立派なニートになれそうです。




「ふむむん、ふむむん、ふむむむむん。なんかおかしくなかろうか?」



嫉妬のダンジョンに入って、15秒くらい歩いた先。

そこで出会ったモンスターは、常軌を逸している強さを持つ者達だった。



『来たな、人間』


『ふふ......お相手はお一人でございますか』




「な〜んでフェンリルと宵斬桜が居るんですかねぇ?」




地獄のコンビが、然も『普通ですが、何か?』と言いたげに現れたのだ。


ダンジョンの内装は海の中に作ったトンネルの様な一本道になっており、空を泳ぐ様に見える魚を見ていたらいきなりコイツらが出てきたんだ。


いやぁ、観測した瞬間に頭が真っ白になったよね。ビビるとかそういう次元の話じゃないもん。


だって幻獣だよ?仮にも君達、ボスとかよりシンプルに強い枠組みに居るんだよ?

それがこんな所で、しかも2体も出てきちゃダメでしょう。


お兄さん、頭おかしくなっちゃうよ。



「ステラ。この場合の正しい選択肢を1つ述べよ」


『え......死、ですかね......』


「残念、不正解だ。答えは......逃げるッ!!!」



俺は目にも止まらぬ速度で戦神や魔法でバフを掛け、魔刀術と同等と言ってもいいぐらいの速度で2体の間を猛ダッシュした。


あんな奴、関わっていられない。


片方だけならまだしも、あの2体がコンビを組んだら......そんなの、地獄しか生まれない。




「二ィィィゲェェェェロォォォォォォオ!!!!!」




ドップラー効果全開で道を爆走していると、俺の前に更なる敵が現れた。



『ピィィィィィィ!!!!!!』



あ、不味い。殺しても死なないフェニックス君だ。それに──



『人間......美味そうだ』



またフェンリルだよふざけんな!お前はどれだけ俺と接敵するんだよ、あぁ!?



「走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ」



俺は現実から目を離し、足元だけを見て全力疾走する。

前を見てはダメ。上を見てはダメ。後ろを見てもダメ。横は見たら死ぬ。


コケないように足元だけを見て、只々ボス部屋へ向かって走るのみ。




「こんな幻獣オールスターのダンジョンなんて聞いてねぇよ」



何なの。嫉妬のダンジョンって何なの?俺、耳にした情報では『1番簡単な大罪ダンジョンだった』とか、『初心者向けの上級ダンジョン』とか、そんな風な事しか聞いてねぇんだけど?


大体なんだよ。『初心者向け上級ダンジョン』って。矛盾しちゃってるじゃん。


いや、最弱最強を目指す俺も矛盾してるんだけどさ。



そうして長い距離を走り、どんどんと背後の幻獣が増えていくと、遂にステラが限界を迎えた。



『すみません......気絶......しそう......』


「大丈夫。ステラは寝てろ。アレは見ない方がいい。多分、フー達でもポカーンとする状況なんだから、お前には刺激が強すぎる」


『はい......すみません......』



そう言って剣の中のステラが気絶すると、いよいよ俺は思考の沼に浸かり始めた。



「『サーチ』......ははっ......35体の幻獣......ははっ」



ダメだ。感情が思考を拒否しようとする。

『もう走るのを辞めて立ち向かえ』『ここまで来たなら、自爆覚悟で楽しんじゃお?』って、表の俺が囁いてくる。


でもダメだ。新年初の敗北を、2日目にして味わいたくない。


もう少し強く生きたい。もう少し、もう少し。



「考えろ。35対1。FSのチーミングに比べたら数は少ない。このゲームの仕様を最大限に理解しろ」



実は、ユアストというこのゲーム、『普通のゲーム』にあって当然の物が無いのだ。それも、ユーザーにとっては超重要なシステムだ。

普通のゲームじゃ、『この仕様』を活かした立ち回りも存在するほど、一般的に重要視・常識化されているのだが、ユアストには無い。



それは、『無敵』時間だ。



某有名な配管工のおじさんが姫を助けるゲームには、ダメージを受けたら1秒程、敵からのダメージを受けない仕様があるのは誰もが知っている事だろう。


あの仕様を活かして、沢山の敵が居る波を、手前から数体目のモンスターでダメージを喰らい、無敵時間を使って残りのモンスターを無視して進むという戦法がある。


だが、その『無敵時間』がユアストには無い。


素早く2連撃を与えれば2回分のダメージを受けるし、2連撃の間に別の敵が攻撃してきても、その分のダメージをきっちり貰う。


言い換えれば、かなり『現実』に近い。


リアルに無敵時間など無い様に、このゲームにも無敵時間が無い。


何とも酷い話だ。現実から逃げた先に、無敵時間が無いなんて......



だが、それを補うかの如く、『その他スキル』や『称号』がある。



俺の場合、有用なスキルや称号は『不死鳥化』と『守護者の加護』だろう。


不死鳥化は1,000分もの間、死ぬ事が無くなるし、守護者の加護は即死を完全に防ぐ事が出来る。



俺が今使える全ての力を使って、この地獄の波を乗り切ろう。

うん......上手いこと言ったわ。フフッ!



「倒しやすい順番を考えるか。まず簡単に死んでくれるフェンリルが1番だな。次点で宵斬桜。んでもってフェニ君と。となれば、後者の2つの足止めが必要になるが......数がバグってんだろこれ」



現在の幻獣の数は、フェンリル18体、宵斬桜9体、フェニックス8体。



「うん、無理。足止めはデリート」



Q、フェンリルを一気に相手取るにしても、総勢18体の幻獣を寄せ付けない壁を作れるか?


A、無理です。んな事やってる暇があるなら逃げろ。



だよね、思考のルナ君。うん、そうだよ!



「じゃあ、乱戦に持ち込むか?......いやダメだろ。無敵時間が無いんだぞ。一瞬でフルボッコからのお家でグッモーニンだわ」






そうして自問自答を繰り返し、10分程走り続けた頃。

ようやく答えを導き出す事が出来た。







「アルカナさん、ありがとう。あなたのお陰で勝ち目が見えた」



俺は足を止め、ステラノヴァを右手で握り、フー達全員を顕現させた。



『『『『なっ!』』』』



呼ばれた皆が一斉に驚くが、俺は最前列のフェンリル達とぶつかる寸前まで待った。

俺は初めてこの魔法を使う。出来る事と出来ない事が分からないが、やれるだけやってみる。


それと、今回は経験として活かしたいので不死鳥化は使わない。

HPが0になったら潔く死のう。それもまた一興よ。



『人間ッ!』



「じゃあな、1体目。『クロノスタシス』」



俺の頭をガブリと噛み付こうとしたフェンリルは、俺が魔法を使った瞬間にポリゴンとなって散った。


完璧だ。2体目の攻撃が当たる前に、また()()()()()()



「『クロノスタシス』......『クロノスタシス』」



魔法を使う度に1体、また1体とフェンリルが消えていく。だが、敵はフェンリルだけではない。



『はぁぁっ!!』


「ぐぅ......『クロノスタシス』」



桃色の刀を俺の腹に突き刺した宵斬桜を何とかして倒すが、そろそろ俺も限界が来ていた。



『ふっ!』

『やぁ!』

『てぇぇぇい!!』

『ピィィィィ!!!』



「不味い。『クロノ......MP切れたか」



体を槍や刀で串刺しにされながらも魔法を使うが、MPが切れてしまい、後はHPが減るのを待つだけとなった。


だがなぁ、俺は嫌がらせ大好きお兄さんなんだよ。


そう簡単に死ぬとは思うな?



「【夜桜ノ舞】」



ステラノヴァと夜桜ノ舞を入れ替え、近くに居る敵に対して、出来る限りの傷を付けてやった。




「ははっ......ははははっ!俺がタダで死ぬ訳無ぇだろうがぁ!!朽ち果てろ幻獣共ォォ!!!」




切り付けた傷から毒が入り、10体近くの幻獣達が苦しみ始めた。


だが......俺はもう助からない。また来世でお会いしましょう。




「おやすみ」




そう言って俺は、ポリゴンとなって散った。

ルナ君、死す(自ら)



次回『帰ってきた2人の生活』お楽しみに!

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