ちょっと休憩したかった
友人とゲームしてたら更新遅れました。
「それでね、お母さん。ここのシーンが凄いの!」
「どれどれ?」
ユアストで気絶した俺は、ちょっとした気分転換も兼ねてログアウトした。
本音を言えば陽菜に会いたいだけだが、建前としては気分転換だ。大丈夫、これは誰にもバレない。
「陽〜菜っ!何を見てんだ?」
椅子に座っている陽菜に後ろから抱きつきつつ、陽菜がホログフィック状態で出している携帯の画面を見てみた。
「えっとね、FSの公式大会での、月斗君の映像」
「なんつーもん見てんだ。白くに濁った黒歴史なんだが?」
「いいじゃ〜ん。カッコイイんだし〜」
じゃれつつ画面を見ていると、大会実況者が俺のプレイングで大興奮している場面が流れていた。
「凄いわね!今の一瞬で4人も倒したの!?」
「そうですね」
「私、あんまりゲームの経験は無いけれど、今の動きが常人離れしていることはよく分かったわ!」
陽奈さんが大興奮だ。そんなに良いシーンだったかな?
今の俺としては、まだまだ改善点のある戦闘シーンだと思ったが......
「さ、陽菜成分も補給したし、またユアストの世界に帰るかな」
「ん〜?もう少し休憩してかないの〜?」
「あぁ。ダンジョンのボスエリアで気絶してるからな。起きるまでの時間が暇だったから、気分転換にログアウトしたんだよ」
「あれ?さっき私の成分とか「気にするな」......もう。バレバレなんだから......」
少しの間とはいえ、指輪が盗られたんだからな。ちょっとぐらい補填してもいいだろ?うん、いいよ。
陽菜は俺の頬にキスをしてから、手をギュッと握った後に離してくれた。
「後で私も行くね」
「あいよ。待ってる」
別れ際に陽菜の頭をポンポンと撫で、俺は部屋に戻ってユアストの世界へダイブした。
◇ ◆ ◇
「ん......重い」
目を開けると、お腹の上には何か重い物が乗っている感覚がするし、更には視界の半分が水色になっていた。
「おはようございます、ルナ様。少々お待ちください。直ぐにお2人を退かせますので」
「あ〜......もしかして寝てる?」
「はい」
マジか。なら起こすのも申し訳ない......が、起きてもらうか。重いわ。
「すまん。起こしてくれ」
「御意に」
声だけでイブキとやり取りをすると、直ぐにフーとシリカを起こしてくれた。
というかフー、体柔らかいな。よく俺を膝枕した状態で、体を前に倒して寝れるな。
「ぁ......あれ?寝てま......ッ!!」
「どした」
「か、かかか、顔が近いです!!」
「だろうな」
さっきまでのフーは、俺の額にフーのおでこがごっつんこする形で寝ていたからな。
そのまま顔を上げれば、必然的に近いと感じるだろう。
「......あ、お兄さん起きた......?」
「起きたぞ。クッキーでも食べるか?」
「食べる!!!」
フーの声で起きたシリカに、インベントリに保存してあるクッキーを出してあげた。
おっと、流石に地べたに座らせて食べさせるのも良くないな。椅子でも作ってあげよう。
「これに座れ。『アースコントロール』」
「ありがとうお兄さん!」
「どういたしまして。じゃ、ちょっと宝箱開けてくるわ。食べ終わったら帰るぞ」
「うん!」
ハムスターみたいに食べるシリカの頭を撫で、俺はマモンが倒れた位置に出現している宝箱の元に来た。
「ルナ様。私が開けましょうか?」
「遠慮しとく。敵が出る訳でもないからな」
「分かりました」
念の為にイブキを刀に戻し、いつでも抜刀できるようにしてから宝箱を開けた。
さぁ、どんなアイテムが入ってるのかな?
◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
『囚われの神:アンドロメダ』を入手しました。◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇
は?神だと?
「う......うぅ............貴方は......?」
宝箱の中から、鎖で縛られた女が出てきた。俺が何を言ってるか分かんねぇとおもうが、俺もよく分かんねぇ。
というか、え?なんで?これ、どういうイベント?
『ルナ様。取り敢えず保護した方がよろしいかと』
「あ、あぁ」
俺は着ていた『悪魔の礼装・憤怒』をアンドロメダにかけて、気絶する前に入手したての『悪魔の礼装・強欲』を身に付けた。
だが、金の装飾がキラキラと光って邪魔なので、安心安全の『神衣:花鳥風月』に着替えた。
「あの、大丈夫ですか?どうして囚われていたんですか?どうして宝箱に入っていたんですか?誰にやられたんですか?」
「え、あ、え......」
『ルナ様。落ち着いてください。一度、城に連れて帰りましょう。それから彼女の話を聞くべきです』
「それもそうだわ......すみません。今の事は忘れて下さい。それと歩けますか?」
「い、いえ......それに鎖が......」
「斬りますね。フー、来い」
右手に布都御魂剣を顕現させ、イブキにアンドロメダを支えさせた。
「だ、ダメです!この鎖は「『斬』」......嘘......」
まるで豆腐を切るかの様に鎖を斬り落とした。
何かアンドロメダが言いかけていたが、特別何かがある訳でも無さそうなので布都御魂剣を納刀した。
『ルナさん?また新しい女ですか?』
「何その言い方。傷つくんだけど」
『え〜?違うんですか〜?』
「黙れ」
『......』
やっちまった。ついムキになって言い方が強い言葉を発してしまった。
でも......いや、でもじゃないな。ちょっと落ち着こう。
「ごめん」
『い、いえ......すみません』
少し気まずい雰囲気になったので布都御魂剣をインベントリに仕舞い、アンドロメダを背負った。
「シリカ!食べ終わったなら行くぞ!」
「は〜い!」
俺の右腰にクトネシリカが装備されたのを確認し、魔法陣に乗ってダンジョンを出た。
「はぁ......噴水ワープで行くか。アンドロメダさん。ちょっと揺れるけど、我慢してくださいね」
「はい」
アンドロメダは俺の首に手を回したが、ソルよりも腕が細いので、ちゃんと固定出来ているか不安になる。
だから、念の為に蔦ちゃんで固定してからフラカンで飛んだ。
「よし......『戦神』『サーキュレーション』『ウィンドブラスト』」
砂漠を飛ぶので、砂が顔に当たらないようにサーキュレーションで防御しながら、爆発する風に乗ってカリディに戻ってきた。
「お、兄ちゃん!帰りなら何か買って......大丈夫か?」
「大丈夫です。ご心配かけてすみません。次に来たら寄るので、その時によろしくお願いします」
「おうよ!気を付けてな!」
カリディの屋台のおっちゃんと短く会話をして、噴水ワープでロークスまで帰ってきた。
「歩くのも面倒だな。『転移』」
消費するMPは2人分だし、転移で帰っちゃお。
城のリビングに直接転移すると、ソファでソルがリルのブラッシングをしていた。
「あ、おかえりルナく......ん......」
「ただいま。アンドロメダさん。降ろしますね」
「はい。ありがとうございます」
蔦ちゃんを解除してからソルの隣にアンドロメダを降ろし、俺はぐーっと伸びをした。
「あ〜疲れた。これからどうしよ」
「ねぇねぇルナ君」
「なんだ?」
「この子......誰?愛人?」
気付けばソルは俺の後ろに立っており、マイハンドが粉砕されそうな握力で手を握られてしまった。
どうしてこうなった。
「一言で言えば、拾った」
「......」
「ダンジョンの宝箱に入ってた」
「......」
右手がギリギリと音を立ててHPを減らすが、冷静に答えていく。
「どこから話せば良い?」
「全部」
「じゃあ手を離せ。本人にも聞きたいことが山ほどあるんだよ」
「......ぅう」
俺がそう言うと、渋々と言った感じに手を離してくれた。
背負って帰ったのは仕方が無いし、ソルがヤキモチを妬くのも分かるが、まずは話を聞かないと何も進まない。
ソル。君はもう少し、俺を信じてくれ。
「で、アンドロメダさんは女神なのか?」
「あ、はい。一応女神......でした」
「「「でした?」」」
過去形で答えたアンドロメダに、俺とソル、更にはリルも驚いてしまった。
「はい......実は、付喪神になるのに失敗しまして......」
あ......なるほど。付喪神から降臨して実態を得るパターンではなく、実体から付喪神を得るパターンか。
分かりにくいシステムだなコンチクショウ!
乙女が故に、信じきれていないソルさん。キュート。
次回『アンドロメダは宿りたい』お楽しみに!