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一騎当千




「ぬるいぬるいぬるいぬるいッ!!そんなんじゃシリカは倒せないよ!!!」



「......アイツ鬼かよ」


「ほっほっほ。シリカさんはそういう方ですよ、元々」


「えぇ?アレス怖ぇ」



強欲のダンジョンの第2層(仮)である、砂岩の洞窟を進むこと1時間半。俺はシリカの戦闘狂である一面に、少しばかり引いていた。



「ハリネズミの塊に突っ込んで、針を抜き取って武器にするとかさ、えげつなくない?」


「凄まじいですね」


「蜘蛛の糸、着弾する前に目で見てキャッチするとか、おかしくない?」


「素晴らしいですね」


「そして最後はアレだよ、アレ」



俺はイブキの肩をちょんちょんと叩き、指をさした。




「きゃ〜!ルナく〜ん!」


「黙れ化け狸!狐ちゃんはもっと激しいわぁ!!!」



『キュゥ......』



シリカがソルに化けた狸の首を掴み、思いっ切り地面に叩き付けて殺していた。



「もうアイツ1人で十分なんじゃないかな」


「ほっほっほ。そのような事はございませんよ。これも全て、ルナ様によるものなのですから」


「そうか?」


「はい」


「そうか」



ま、シリカが楽しそうならいいや。俺も戦ってる時は楽しくて笑顔になっちゃうし、傍から見れば俺も戦闘狂なのだろう。



さて、そろそろデスペナルティが終了する訳だが、先程運営によるアップデート情報を見ていると、『レベルによるデスペナルティ時間増加の上限設定』という項目を見付けたのだ。


これ、結果から言うと、『デスペナルティにかかる時間は最大で100分ですよ〜』と言うことだ。


これは多分、今居るダンジョンの様に『死ぬ事で進められる』ダンジョンがこれからも増える事を示唆しているのではないだろうか。知らんけど。



他にも色々な項目があった。操作のマニュアル化によって『魔刀術』の詠唱を無くしたり、逆にゴリゴリに固定モーションを使って人間を超える動きが出来たりと、中々に面白そうだった。



俺は基本的に全部手動でやりたい派の人間なので、マニュアル化による魔刀術の無詠唱化は大変助かる。




さぁ、頭をダンジョン攻略に切り替えよう。




「シリカ、お疲れさん。ここからは俺がやるよ」


「うん!久しぶりに暴れられて楽しかった!」


「それは良かった。機会があれば、これからも頼む」


「ありがとう!」



そう言ってシリカが刀に戻ったのと同時に、イブキも刀に戻ってくれた。


アンタ......配慮が上手すぎやで。凄いなぁ?




「と言っても、特段敵が強くなる訳でもないから何とも言えんな」




現れる敵が1層と同じなのだ。アダチェウスにトランスラクーン。土蜘蛛に砂のゴブリンと。代わり映えのしない戦闘だ。



「もっと強い敵が欲しい......ん?」



呟きながら敵を斬り倒していくと、俺が呟いたタイミングで足元に魔法陣が出てきた。



「『クロノスクラビス』......あれ、壊れない」



何だこの魔法陣。運営権限か?


あ、割とマジで運営権限っぽい。って事は強制転移させられるヤツか。




そうして足元の魔法陣は輝きを増すと、俺はだだっ広い草原に転移された。




「なるほど。予想するにスローター系だな」


『どういう事?』


「アレだよ。モンスターが波のように襲ってくるから、それを全部倒しましょうね〜ってこと」


『なるほど!分かりやすいね!』


「あぁ。俺達とは相性バッチリの系統だ」



おっと、噂をすれば何とやら。遠くの方から物凄い数のモンスターが、爆発的な土煙を上げて走ってきたぞ。



「まずは要塞建築だ。『アースコントロール』『茨よ』『グレイシア』」



俺は自信を中心に八角形の土の壁を作り、その外側に茨ちゃんによる防御柵を作り、更にグレイシアで凍らせて強化した。



「おかわりもあるぞ。『アクアスフィア』」



氷の茨ちゃんの前に無数のアクアスフィアを出し、地面をびちゃびちゃに濡らしてやった。



「俺は悪魔だからな。酷い事をするんだ。『グレイシア』」



全方位の茨ちゃんの、前方50メートルの範囲にある草と泥を全て凍らせ、ここを歩いたモンスターが茨ちゃんに熱烈なハグをするようにした。


そして壁の内側を20メートルほど下に掘り、落とし穴というか、そのまんま堀を作った。




「これで待つのみ、と」



『凄いね〜!もう要塞が出来ちゃった!』


『素晴らしい手際でしたな』


「ありがとう」



こういうのはイメージ力だからな。あとはモンスターに茨ちゃんが破壊されないことを祈って、もし壊されたら随時茨ちゃんを呼び出せば良いか。


ふぅ......頑張ろう。




ドドドドドドドドドド.........



どんどんと足音が大きくなる。全方位から詰められる、心臓がキュッと引き締まるようなこの感覚......楽しい。




ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!




「いらっしゃい。『戦神』『滅光』」



俺は空を飛び、現状で1番破壊力の高い滅光を四方に放出した。



『うわぁ』


『これは......』




「気っ持ちいいぃぃ!!!」




円が狭まるようにして迫ってきたモンスターの塊は、十時型に大きな溝を作った。



「最高だ。最高に楽しい。もっと欲しい!もっと!」


『オニイサン?アタマダイジョーブ?』


「大丈夫ならここに立ってない!あ、そうだ。魔刀術で斬り込むぞ。神雷を使うから、雷纏あげる」


『あ、うん。分かった......』



シリカに引かれている気がするが、多分気のせいだ。

今はこの、スローターミッションをクリアしよう。




「よし、本当に口出さなくても雷纏が使えてるな。じゃあ行くぞ」


『オッケー!』


「『神雷』」




雷霆をたっぷり吸った刀身は、液状の雷を滴らせながらモンスターを消滅していく。


本来、紫電涙纏の効果だけでも強力なはずなのに、そこに自分の魔法を組み込む事で更に強化した魔刀術は、最早『斬る』というより『消す』アクションとなっている。



相手が豆腐の様に切れる?──ナイナイ

自分が強すぎて困る?────ナイナイ。寧ろ微調節をミスしたら俺が即死する。


これは触れた瞬間に敵が消える。そんな威力を持っている。




そして数分程暴れると、辺りを覆っていたモンスターの塊は跡形も無く消え去り、数体のモンスターが瀕死の状態で立っているだけになった。




「いや〜、楽しかった!『イグニスアロー』」



俺は残ったモンスターを燃やしながら、改めてこのエリアを見てみた。



「雲もないし、果ても見えない。太陽も無いのに明るいし、不気味だな」


『確かに!太陽が無いね!』


『悪魔の管轄ですからな。太陽は嫌うのでしょう』


「なるほど」



よく分からん。悪魔のなら悪魔なりの、黒い太陽でも作ればいいじゃないか。

それとも何だ?自分より高い位置にある物を嫌うとか?


まぁいい。これでスローターは終わりだ。



「おっと、また魔法陣」


『忙しいね!死んじゃったり守られたり、変な所に飛ばされてすんごい数のモンスターと戦ったり......疲れない?』


「余裕だ。本番はボスの悪魔だからな。この程度で疲れてたら、攻略なんて夢よ、夢」



俺は魔法陣が輝くのを見ながら、クトネシリカに手をかけつつ転移した。





『おう、気やがったか。ったく、お前は強欲だなぁ?』


「だぁれ?」




飛ばされた先はサタンの時の同様、玉座のある広間だった。


そして俺に話しかけてきた人物は、全身に金の装飾が施された、見るからに成金の......強欲の権化の様な、中肉中背の男だった。




『俺か?俺は『マモン』。強欲の王だ』


「これはどうもご丁寧に。私はルナと申します」




俺は名前を教えてくれた悪魔に丁寧に挨拶をすると、マモンは左手を俺に差し出してきた。




『ふぅん......お前、悪魔にならないか?歓迎するぜ?』




◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇

『特殊クエスト:悪魔の招待』を開始します。◇━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇





なぁにこれぇ。

なんか聞いたことのあるセリフですが、気のせいです。



次回『真の強欲』お楽しみに!

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