その銀狼、満月に笑う 8
改行下手。
「え?幻獣?」
目の前にいる狼の存在を理解した。
『ほう、人間は我をそう呼ぶようになったのか?』
「いや、知らん。俺、数人しか友達いないから」
『そうなのか? まぁよい。他に何か話すことはあるか? 冥土の土産に答えてやるぞ』
マジかこの狼。なら遠慮なく聞こう。
「じゃあ3つ程いいか?」
『良いぞ。申してみよ』
「1つ目は、『幻獣』と今は呼ばれているらしいが、その前はなんと呼ばれていたんだ?」
少し気になった事だ。多分、幻獣というのは語り人が出てきてから言われ始めたと思う。なら、その前は?
『ふむ。それは『神獣』だな。神の獣だ。まぁ、確かに神に近しいが、我は神ではないぞ』
「そうか。答えてくれてありがとう。では2つ目を、神はいるのか?」
これは、少し前にスパーダさんが言っていた『神の加護』というのが、実際に神がいるのかどうかで変わる。もしいなかったらスパーダさんの言っていた『神の加護』とは何か。それが気になる。
『いるぞ。神はいる。それはお前達語り人の方が知っているのでは無いか? お前達が死なぬのは、その神の加護のお陰なのだろう?』
う〜ん。分からん。多分、運営の事かな?それなら死なない、というより復活させているのが運営だから、神は運営ということになる。
っていうかこの狼、『神のお陰なのだろう?』とか、疑問形で終わらせやがって。これで答えたら、『なら3つ目......』と言ったところで『さっき答えたでは無いか』とか言って殺しに来そうだ。
「では最後に、お前、俺にテイムされないか?」
『クハハ! 我をテイムだと? 出来ると思うか? 我はお前を殺す気でいる。殺す対象と心を通わせるとでも? 面白い。我をテイムするなら我を上回って見せよ。我を越える者ならば、我はそいつに従おう』
うん。まぁ、予想してた。だってキアラが言ってたもん『友達は100%無理』って。
それと上回るって無理じゃね?上回ったら殺してしまうぞ。そんな事をしたらテイムが出来ないじゃないか。これ、99%テイムは無理だな。
まぁ、1%はある。俺は『手加減』スキルがあるからな。相手のHPを1残して攻撃することが出来る。ただ、それは『相手のHPを1になるまで削れるか』という部分で、1%にまで下がっている。
「じゃあ、やるか?」
『あぁ。2秒で殺してくれる』
――そして、戦いは始まる――
「はっ! 2秒生きたぞ!」
『お主、なぜ木魔法が使える!?』
この狼、俺を殺そうとする時に跳躍して襲いかかろうとした。
跳躍の予備動作は分かりやすい。だから戦いが始まった瞬間、蔦ちゃんで足を引っ掛けてやった。
するとどうだ、見事にすっ転んだではないか!
「秘密だよ!!」
そう言って俺は弓を射った。
バキン!
『効かぬわ!』
嘘だろ、この狼。矢を全部毛で弾きやがった。
「こっわ。ただの狼じゃねぇのか?」
煽ろう。煽って狼の思考を乱そう。
『ほう、事もあろうにお主、我を挑発するか?』
これ、効いてない体を装って本当は効いてるな?
言葉の端々が震えている。
「犬っころ、お前、バカなのか?」
『貴様ァ!』
めっちゃ効いてる。ってかやべぇ!早ぇぞこの狼!
「くっ!!」
『遅い!』
狼の牙が俺に当たる寸前でなんとか避けれた。
「お前! は! バトル! マンガの! 敵か!」
『ふん、遅い上に弱いな』
こいつ、わざと俺の攻撃を受けやがった。その上で挑発してきた。
「あーもう! 格上相手とかめんどくせぇ!」
バシュン!
ガキン!
『ほう、ようやく格上だと認めたか』
「んなもん出会った瞬間から認めてるわ!」
この狼、お喋りが好きなのか? 油断大敵だぞ?
まぁ、喋りながら撃った矢を全部毛で弾かれてるんだが。
『お主、認めよ。お主ではどう足掻いても我には勝てん』
「そうか? 俺はまだ勝てると思っているぞ」
『ほう。なぜそう思う?』
ホントにお喋りが好きなのかな。
「だってさ、俺。語り人で最弱だもん」
『そうなのか? 我にはそうは思えんぞ』
優しいな、この狼。
「俺、実はある称号持っててな? それに書いてあるんだよ。言おうか?」
『称号とな? 語り人はそのような物まであるのか? よい、申してみよ。』
うん。君は俺の中で、お喋りな狼と認定したよ。
「あぁ、それはな? 『最弱無敗』だ」
『......む? 意味が分からんな。最弱無敗とはどういう事だ?』
「簡単な理由だよ。皆が簡単に強くなれる手を使っているが、俺はそれを使っていない。だから周りより弱いんだ」
その代わり、成長はとんでもなく早いけどな。
『む? それだけでは無敗の説明は足りんぞ? お主、実は強いのか?』
「な訳ねぇだろ。言ってんじゃん、『最弱』って。最も弱いんだよ。それで無敗の理由はそのままだ。俺は負けたことがない。分かりやすく言うと、『HPが0になったことが無い』んだよ」
『そうか! 今まで無敗で生きていたのか、お主! ......だが、残念だったな。お主はここで敗北を刻む。無敗では無くなるな!』
「残念だな、お前の頭は。俺は『無敗』だぞ?それに、まだ2つ目のエリアで負けたくねぇわ!」
はぁ......これは覚悟を決めるか。
「俺は、『最弱』を捨てるぞ!!」
今までありがとうな、『最弱無敗』君。
君が俺のところに来る要因となった最弱を捨てても、無敗が欲しいんだ。
できれば、また俺のところに来てくれ。
『最弱無敗』に感謝を伝えて、俺は――
俺は、『SPを振った』
『最弱無敗』よ永遠に― なんちゃって。
別に消えませんよ?最弱無敗君は。ただ、仕事量は減ります。またルナ君がSPを溜め込めば仕事量は戻るでしょう。ま、一つだけSPに関係なしに発動するのがありますが。
次回、ガチバトルです。お楽しみに!




