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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第11章 星塔の輝石
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新年早々

いや〜、暑いですねぇ(投稿時5月下旬)




「ふわぁ......あと何分?」


「あと10分だよ。もう少し耐えて」


「......今日は眠い」



大晦日の豪勢な晩ご飯が終わり、大人達が酒盛りをしている頃。


俺は陽菜の膝枕で横になっていた。



「珍しいね。いつもはこの時間も元気なのに」


「心が疲れた......やっぱ陽菜と2人っきりがいい」


「もう、そんなこと言っちゃって......襲うよ?」


「大人達の前で出来るならやってみろ」


「よし」


「おい待て。何が『よし』だ。ねぇ、待って、お願い待って!」



急に服のボタンを外し始めた陽菜を何とか抑えこみ、襲撃を阻止する事に成功した。


だが、絵面が非常に宜しくない。


今は俺が陽菜に覆いかぶさり、両手を抑えている。うん。これ、どう見ても俺が襲おうとしてる場面だよね。



「あ!月斗がおっぱじめた!」


「な訳あるかい!陽菜を止めようとしただけだ!」


「でも、こっちからは完全に陽菜ちゃんを襲ってる風にしか見えないけど」


「本当は逆なんだ。父さん、息子を信じてくれ」


「ムス......コ!?」


「もういい」



これ以上ツッコミを入れても面倒な事にしかならないと判断し、俺は父さんとの会話を終えると同時に陽菜を解放した。



「ふふっ、目、覚めた?」


「......そこまでだな。もっかい膝枕して」


「欲張りさんだね......はい」


「ありがとう」



今度は寝かけないように気を付けないと。ここで寝たら新年早々イタズラスタートをぶちかましてしまう。



「あ゛ぁ......膝枕はどうしてこんなに安心するのか」


「私パワーの成せる技だからね」


「もう陽菜パワーだけで生きていけるわ」


「要介護だね」


「あぁ。もう全部陽菜の助けで生きていきたい」


「ダメ人間まっしぐら生活、する?」


「......しない。それだと陽菜が幸せになれん」


「もう!そういう所なんだよ!?これだから月斗君は......あ〜好き。超好き!」



苦しい。陽菜の胸が俺の口を完全に塞いでいる。


酸素が、足らん。



「お〜い、そろそろ明けるぞ〜」


「新しい酒?」


「年だぞ、息子よ」


「分かってるよ」



主語の重要性がよく分かる会話である。そして口頭だからこそ伝わりにくい、『あける』という言葉。


ってそんな事考えてる場合じゃない。年が明ける。




そして時計の針が0時を指した瞬間、テレビから除夜の鐘の音が聞こえた。




「「「「「「明けましておめでとうございます」」」」」」



「今年も......これからもよろしくな、陽菜」


「うん!私の方こそ、よろしくね!」



うんうん。新年早々陽菜の笑顔を見れるとは、良いスタートでありますな。



「月斗ォ、お年玉いるか?」


「正直お金に困っとらんのですよ、父上」


「ケッ!父親より金を持っている息子なんて、日本でお前くらいだぞ!」


「まぁ、その金も殆ど使わないけど。でも?まぁちょっと?大金が?必要に?なるかもしれないし?......貰います」


「フッ、お前なら出来るさ。ほら」


「ありがとう。父さん」



大金。有名な言葉でいえば、『給料3ヶ月分』だな。

まぁ、実際は35万円くらいだから、平均給与から計算して、大体『給料1ヶ月分』だがな。


お兄さん、今収入0だからこの話には何の意味も無いけど。


何の意味も無いけど!!!



「月斗、大金なんて必要になるの?大学進学?」


「い、いや違う。大学行っても行かなくても働ける場所を貰ってるから、多分就職に......」


「じゃあ何で大金が?」


「母さん。察してやれよ。月斗も男なんだから」



別に今年買う訳じゃないけどね?まだ学生だし、流石にマズイ展開になるのは目に見えてるからな。



「月斗君は就職か〜。陽菜はどうするの〜?」


「う〜ん、悩んでる。私、月斗君と一緒に居たいあまり、将来の事が『月斗君のお嫁さん』以外何も考えてなかった」


「あらあら。でも、そろそろ真剣に考えないと大変になるよ?」


「うん。春までに決めるつもり」



おぉ、陽菜と陽奈さんが真剣な話をしている。

これは俺も茶々入れる事が出来んな。



「......旧暦で言えばもう春だけどな」


「つ〜き〜と〜く〜ん〜?」


「ごめんごめん」



だって、『新春』って言うじゃん?だから、別にいっかな〜程度で言っただけなんだ。それも小声で。


まさか聞こえてるとは思わなかった。



「でも、本当にどうしよう。学びたい事がある訳でないし、大学生として生きていける私のイメージが湧かないや」


「学びたい事じゃなくても、何かやりたい事とか無いか?例えば、昔に憧れた職業とか」


「......調理師?」


「なんで?」


「月斗君の栄養管理の為」


「お前俺に毒されすぎだ。陽菜自信がやりたい事は無いのか?」


「だって、ちっちゃい頃からずっと月斗君しか見てなかったしぃ〜......う〜ん」



愛が深いね。嬉しいけど心配になる。

高校卒業後、俺はレイジさんの会社で働くとして、ひなはどうするか。


どうやって陽菜が明るい道を歩めるか、それは俺には決められない。


完全に個人の問題だからな。



「最悪、俺が養ってあげるからな。深く考え込まなくてもいいと思うが、浅くは考えるなよ」


「うん。分かった」



考え込んで今を生きていけなくくらいなら、深く考え込まなくてもいいと俺は言うぞ。


ただ、『これでいっか』と浅く考える事は許さない。


今や陽菜の人生は俺の人生でもある。壊すくらいなら逃げる選択だってあるからな。




「月君のその言葉、昔の僕にかけて欲しかったよ」


「太一さんも、将来で悩んでたんですか?」


「うん。まだ陽奈とは出会う前でね。僕は成績平凡スポーツ平凡、才能平凡努力平凡という、逆にレアな人間だったんだ。だから、将来も何となくで選んで、少し後悔したよ」



太一さんが後悔とか、俺には想像出来んな。



「僕は進学せずに就職したんだけどね、そこが結構ブラックでね。適当に決めたが故に後から変えられず、鬱になってたんだ」


「......えぇ」


「それで、職場でガッツリ倒れて、救急車で運ばれて入院することになったんだ。そこで陽奈に出会って、色々と考えるようになったね。

仕事もそうだし、勉強もそう。当時の僕は陽奈に言われて、また勉強して大学に行ってから就職しようと決めたね」


「懐かしいわねぇ。あの時は確か、私も入院してたんだっけ?」


「そうだよ。陽奈は確か、交通事故で運ばれたんじゃなかったかな。だから記憶が半分無いんだよね」



「「「「えっ!?」」」」



ちょっと待って。新年早々話題がぶっ飛び過ぎではないか!?

何かもう、1周回って眠くなってきたんだけど。



「お母さん記憶無いの!?」


「あらあら、ここに来て遂にバレちゃった。お母さんね、16の頃に車にポーンされてね、そこまでの記憶を完全に失ったのよ」


「こ、言葉とかは?」


「勿論ぜ〜んぶ忘れたわ。だから、人生を1からやり直してる時にパパと出会ったのよ〜」


「知らなかった......」



衝撃エピソードだ。陽菜のご両親、かなり壮絶なエピソードを持ってらっしゃる。


太一さんは鬱になったり、陽奈さんは記憶喪失になったりと、もうそれだけで1日語り明かせそうな話題だ。



「うふふ、正直に言っちゃえば、その時の記憶も無いんだけどね!何か気付いたらパパが彼氏になってたの!」


「「えぇ......?」」


「あはは、刷り込み作戦とも言えるね。陽奈が1人で生きていけるまで手助けしつつ、1人前になったら結婚しよう

と思ってね」



「そう。ママはね、パパに人生決められてたのよ。ちょうど月斗君みたいにね」



「......何かシンパシーを感じると思えば、そういう事でしたか」


「そうなのよ!だから、月斗君の気持ちは大体分かるわ!そうね......例えば、陽菜が居ないと不安になったりしない?こう、『今まであったものが無くなる〜』みたいな感覚」



ヤベぇよ。めちゃくちゃ経験あるよ。特に高校1年の時は酷かったもん。生きる気力が失われつつあったからな。

正直、ゲームが無きゃ大阪に帰っている可能性すらあったもん。


陽奈さんもきっと、太一さんが居ない時はこんな感覚だったのだろう。



「凄く分かります。というか、陽菜が俺にそうしたのって......遺伝ですか?」


「ん〜、私は無意識だったから、多分遺伝だね」


「遺伝だと思うわよ」


「遺伝だと思う。僕の時よりスムーズに月斗君を落としていたから、陽菜は僕より上手だよ」


「えっへん!」



なんて事を極めているんだ?この親子は。

人の人生を弄るのが得意とは、傍から見ればただの危険人物っスよ。


......そのお陰で今の幸せがあると考えると、何も言えんが。



「全く。人の人生を変える為に自分の人生も使うとは......」


「仕方ないじゃん。好きになっちゃったんだもん」


「陽菜......」



可愛すぎるぜベイベー!俺、陽菜になら人生あげちゃうよ!



「まぁ、陽菜は陽菜の人生があるからね。月君に迷惑をかけない範囲で考えてね」


「うん!ありがとうお父さん!」



お義父さん、感謝やでぇ。俺の身も案じてくれるとは、流石です。




「さ、話も一段落ついたし......寝よう。大人達は自分で寝床を探して下さい。俺は陽菜と寝るんで、陽菜の部屋とリビングが空いてます。どうぞご自由に」



俺は陽菜をお姫様だっこし、4人に向かってそう告げた。



「ナチュラルに陽菜ちゃん持ってったねアンタ」


「俺の陽菜だもん。母さんにはやらん」


「いいよ。ちゃんと幸せに出来るなら、母さんが取ることは無いし」



当たり前だ。陽菜を幸せにするのは俺だからな。その権利を手放す気なんて毛頭ない。




「じゃ、おやすみ陽菜」


「おやすみ月斗君」



いつものように同じベッドでくっ付きながら、新年最初の眠りについた。




次回へ続く

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