両親vs両親vs俺
65曲目のFCを取れた喜び
「陽菜。父さん達は昼の2時くらいに来るってよ」
「......うん」
「どうした?寝不足か?」
「うん」
大晦日の朝。父さんから連絡が入り、昼にやって来る事が予定された。
だが、何故か陽菜が寝不足だ。珍しい事もあるもんだな。
「昨日、遂に手を出されるのかと思ってドキドキしてたのに......何も無かった」
「両親が来る前に、何てことをするつもりだったんだ......」
「確かに、言われてみればそうかも」
「全くもう、可愛いなぁ。こっち来い」
俺はソファに陽菜を寝転がらせ、膝枕をしてあげた。
「父さん達が来るまで寝てな」
陽菜の綺麗な黒髪を、陽菜が落ち着けるようにゆっくりと撫でた。
「幸せでぇす......おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
陽菜の幸せに満ちた寝顔を眺めながら、俺は両親が来るのを待った。
◇◇
「お〜っす、来たぞ〜」
「母さん、降☆臨」
「お邪魔します〜。陽菜、元気〜?」
「月君久しぶり〜」
昼の2時。俺の両親と、何故か陽菜の両親が家にやってきた頃、俺は陽菜を膝枕で寝かしながら、俺も寝ていた。
「......これは」
「戦争」
「起きちゃう」
「事案ですね」
4人は携帯で寝顔写真を撮った後、静かにリビングの椅子に座った。
「第1回【ウチの子可愛い選手権】を開催致します!」
「「「いぇ〜い!」」」
「司会はわたくし、月斗の父が担当させて頂きます」
「ではまず、今、それぞれの家族の子がとても素敵なシーンで寝ている訳ですが、どうしてこうなったのか、クイズとして考えてみましょう。
題して、『どうして!?それホント〜!』」
「「「いぇ〜い!」」」
「え〜、本クイズはお手元のフリップに回答を記入して頂き、それを一斉に見せる感じで行きましょう。これには僕も書かせて頂きます」
「う〜ん、あの月斗が陽菜ちゃんに膝枕......結構悩んじゃう」
「私もです。陽菜が月斗君の膝枕で寝るなんて......昔に語っていた夢ですよ」
「月君、あの時より立派になったなぁ。うんうん」
◇◇
「では、そろそろ発表と致しましょうか。まず僕から」
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イチャついた果てに疲れたから
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「やっぱコレでしょう。年頃の男女というもの、ずっとイチャコラした果てに、疲れて寝たのでしょう」
「有力候補ね」
「おぉ......陽菜が月斗君とイチャつけるとは......!」
「陽菜も立派になったもんだぁ」
「さて、次は私ね。はい、デデン!」
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大掃除で疲れたから
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「年末だし、さっきまで大掃除をしていた説」
「なるほど。後回しにしちゃった故のアレかぁ」
「分かります分かります。大掃除、大変ですもんね......」
「やるだけ偉い。男性陣はそう評価しますよ」
「では3番手。私ですね」
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エッッのせいで寝不足だから...
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「孫案件ですよ、皆さん」
「くっ!......やはり、そういうことなのか!!」
「男になったのね......月斗」
「結婚前提......なるほど」
「この後に答えるのかぁ。僕には荷が重い」
「大丈夫ですよ太一さん。行きましょう」
「はい......では、コレです」
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陽菜が寝不足で月君が膝枕した
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「ただ単に、ウチの娘が寝不足かました説です」
「なるほど。特に男女間的な何かは無いという思考......」
「確かに、月斗なら陽菜ちゃんの事に関しては直ぐに気付きそう」
「寝不足の理由も、多分月斗君に関する妄想の果てに、でしょうね......」
おぉ凄い。太一さん正解だ。これ、俺起きても大丈夫なやつかな?
いや、面白そうだしもう少し寝たフリしておこう。
「さて、答えが出揃った訳ですが......どれが正解なのか、そもそも正解が存在するのか。そこが問題ですねぇ」
「月斗なら叩き起しても大丈夫そうだけど、これでもし、最初に月斗が寝ていて、そこに陽菜ちゃんが膝枕で寝ていたら分かんないものね」
「あ〜!その考えもありましたね!」
「考えるだけ答えが出ますね。どうしましょう」
「う〜ん、起きてから聞きましょうか。では、第1回【ウチの子可愛い選手権】は、これにて終了です。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」
4人が礼儀正しく頭を下げ、謎の選手権が終了した。
「にしても、本当にどれが答えだったんだろう」
「私の説か、太一さんの説がありそうじゃない?」
「そうなんだよなぁ。でも、父さん達は陽菜ちゃんの事を殆ど知らないし、確実に『コレ!』って言うのは無いんだよな」
「「「「う〜ん......」」」」
「太一さんの答えが正解ですよ」
「「「「うわぁ!」」」」
「んぅ......ん?」
俺が顔を上げて答えると、4人が一斉に驚き、その声で陽菜が目を覚ました。
「大丈夫だよ。もう少し寝てるか?」
「ん......いい。ちゅ〜」
陽菜さん本気?今、あなたのご両親と俺の両親が居るんだが?マジで言ってるの!?
仕方ない。後で恥ずかしさにのたうち回るといい。
「はい」
俺は陽菜の唇にそっとキスをし、寝る前の時のように髪を撫でた。
「えへへ」
「「「「......」」」」
「まぁ、ただの寝不足ですよ。そこを俺が膝枕で寝かしていたら、俺も寝ちゃっただけです。あ、挨拶してませんでしたね。お久しぶりです、陽奈さん、太一さん。あと父さん達も」
「......え?」
俺の言葉を聞いて、陽菜が顔を上げてテーブルの方を見た。するとそこには、驚いた顔で綺麗にフリーズしている4人の姿があった。
「お父さんに......お母さん?え?待って、今私......」
「大丈夫大丈夫。普段通りでいいんだよ」
「さ、流石にキスシーンは宜しくないのでは!?」
「宜しいの。ほら、膝枕続けるぞ」
俺は優しく陽菜の頭を太ももに乗せ、またゆっくりと髪を撫で始めた。
すると陽菜は膝枕の状態で俺に抱きつき、顔を隠した。
「真っ赤っかだ」
「うぅ......」
こうして、陽菜の両親と俺の両親と俺による三つ巴の戦いは、無事に俺の勝利で収められた。
ただ、その被害は甚大であった。
鋼の心
次回『後は任せた!』お楽しみに!