クリスマスはゲームに限る
クリスマスのお話はこれで終わるますですビスマス。
あ、短めです。
◇12月25日・23時頃◇
「先輩......奴の動きが読めません」
「後輩。奴は右手のハサミを持ち上げると地中に足を伸ばし、それで攻撃するんだ」
「先輩......尻尾はどう対処すれば......」
「後輩。尻尾はどう対処すればいい?」
「え?」
「え?」
「先輩、分からないんですか?」
「分かってたら倒してるからな。あの動きの研究の為に、今日、後輩とプロガンをやっているんだ」
風呂上がり、またまた陽菜と一緒にプロガンをやっていた。
今は俺が唯一勝てないボス。『堕天使蠍・変異個体』と戦っている。
コイツは、巨大な足が20本、蠍の象徴である針が2本生えている化け物蠍だ。
「月斗氏......これは無理だと思うんす」
「陽菜氏。これが"楽しいクソゲー"なんだ。分かったか?」
「分からされたよ」
俺達が苦戦しているのはルシコのとあるコンボ。『ハサミ持ち上げ足元ズドーン』攻撃に対処出来ないでいる。
これはわかりやすい予備動作がある癖に、足を下から突き上げてくる攻撃の予兆が全く無いのだ。
「地面がボコボコって表現してくれたら分かるのになぁ......」
「まぁ、タイミングもランダムだしな。RTA走者が1人も居ない辺り、マジでルシコは最強のモンスターなんだろう」
「へぇ〜、ちなみにこれ、倒して強化出来る武器は?」
「今陽菜が使っているスナイパーライフルとレールガン」
「ェッ......」
陽菜のお気に入りであるスナイパーライフル、『ピカ・ソネック』の最終強化素材にルシコの甲殻が必要なのだ。
普通にストーリーをやる分には最終強化をしなくても良いのだが、このゲームは最終強化した武器を全て揃える事で見れる特殊エンディングがある。
普通のストーリーのエンディングより、何倍も凝っている映像になっていると言われているので、是非この目で見たい。
「やらねば......!」
「使命感に駆られてゲームするのはオススメしないな。第1の感情に『楽しむ』を持ってこないと、やってるうちに泣きたくなるぞ」
「な、泣かないもん!私はやれば出来る子ICDなの!」
「I can do itか?ならitの『i』は何処へ?」
「愛は月斗君に捧げてるから......」
「なるほど」
上手いことを言うじゃないか。俺の完敗だよ。
「じゃあ、寝るまでやるか」
「うん!頑張るぞ〜!」
そしてそこからは、ただの地獄が待っていた。
◇12月26日・0時◇
「あ、ごめん死んだ」
「待ってそのビームはやめっ」
「足、こんにちは」
「尻尾......はいさようなら」
「うわぁ。久しぶりにハサミ貰ったわ」
「あちょっ後ろから尻尾は......あひん」
「コイツ硬すぎんだろ。何で俺の槍弾を弾くかなぁ」
「弱点しか効かなっ死んだ」
「足元注意ですぞ、お嬢様」
「パワーを上げてくださいお兄様」
「ぐっ......プレイヤーにダイレクトアタックとは......貴様、敵か!?」
「本当は私の方がお姉ちゃんなので味方以上敵未満です」
「あら〜、お姉様でござったか」
「ぐふっ......プレイヤーにダイレクトアタックだとぅ!?」
◇深夜1時◇
「よし、足切れた。あと10本」
「こっちも尻尾2本とも落としてる。私も足狙うね」
「いや、陽菜は頭の弱点を狙ってくれ。足は俺がプロだから」
「OK任せた」
◇深夜2時◇
「おっとぉ?これはイけるフラグなのでは?足16本落としたら、もう勝ち確だろ」
「そのフラグだけは建てないで......!お願い......!」
「あ〜これは貰いましたわ。ウチらの勝ちですわ陽菜さん」
「ダメダメダメダメそれは絶対にやらかす............あああああああああ!!!」
「陽菜すぁん......対戦ありがとうございました」
「月斗君が余計なフラグをバンバン建てるからだよぉ!私までそのフラグ刺さってるから!!!! 」
◇深夜3時◇
「つらい......私が撃った瞬間に顔を隠すのは酷い......」
「弾速的に、あと0.1から0.2秒早く撃てば刺さってたな」
「おぉぉ唸れ私の反射神経!うぅぅぅぅぅぅ......」
「お前が唸ってどうすんだ」
◇午前4時◇
「あ......あ、あ、その攻撃はアカンてぇぇ......」
「俺、ここに来てゾーン入ったわ。ルシコの動きが読めてきた」
「えぇ......もう頭回んない」
◇午前5時◇
「もう、ダメ......わたし......の......ねむ......け......」
「起きろ陽菜!ここで寝たら死ぬぞ!」
「私の分まで......生き......て............」
「陽菜ぁぁぁ!!!」
◇朝6時◇
「すぅ......すぅ......」
「あと少し。あと1割......あっ」
◇朝7時◇
「すぅ......いす......わり」
「太陽うぜぇ。俺の目を刺すんじゃねぇよ。陽菜が起きるだろうが馬鹿野郎。言ってること支離滅裂だぞ馬鹿野郎」
◇朝8時◇
「......勝った......勝ったぞ......俺は遂に、成し遂げたんだ......!」
12月26日、朝8時42分。俺は遂にルシコこと、『堕天使蠍・変異個体』の討伐に成功した。
総プレイ時間は983時間。陽菜とやり始めてから、大体10時間くらいだろうか。何とかラスボスであるルシコを倒せた。
『ギチヂ......カミ......サマ......』
最後にハサミを持ち上げながら倒れるルシコを見て、ミッション成功のリザルトが流れた瞬間に俺の意識がプツッと切れた。
◇◇
「んぁ......寝てた」
「ふふっ、おはよ。それとお疲れ様」
極限まで集中して意識が途切れた後、俺はソファに座る陽菜の膝枕で起きた。
今の時間は......分からないな。
「......俺、頑張った」
「うん。頑張ったね」
陽菜の暖かい手が俺の頭を包み込んでくる。
「陽菜が落ちても俺......頑張った」
「あの画面を見れば分かるよ」
「だから......」
「だから?」
「寝る。おやすみ」
「えぇぇぇ!!起きないの!?」
陽菜の驚く声を最後に、俺は陽菜の太ももに抱きつきながら、再度意識をマリアナ海溝へ投げ入れた。
「仕方ないか。じゃあ私はユアストやろ〜っと。ごめんね月斗君。ベッドへ運ばせてもらうよ」
陽菜は俺をお姫様抱っこで運び、ベッドに寝かせてくれた。
「クリスマスのゲーム、楽しかったよ。ありがとう」
部屋を出る前にそっと唇にキスをして、陽菜はユアストの世界へ旅立った。
陽菜さん力持ちだ.....憧れる。
次回から本格的なギルド戦に入りますので、バチバチしますよ〜!
では、次回もよろしくお願いします!