硬い男
次回予告?アイツはマサキの隣で寝てるよ。
「こ〜んに〜ちは〜!『サンダー』」
「さようならです。『イグニスアロー』」
「ぐっばい。『滅光』」
『『『ぎゃぁぁぁ!!!』』』
「──ふぅ。今のパーティは中々に強かったな」
「「どこが?」」
「え?特にこう、『ぎゃぁ』の所とか?」
「父様。それはただの断末魔です。お耳、私が治療しましょうか?」
「必要ないですリル様。私めは健康体でございます」
リルは箒に乗り、俺はメルを抱っこして空を飛びながらプレイヤーを倒していた。
そして、もう数え切れない程ギルドを殲滅したのだが、得られた終末の星屑がかなり少なかった。
具体的に言えば、1ギルド倒して1つの星屑が取れたら良い方だ。
「メル。どうして自分で飛ばないんだ?一応、龍核食べたら飛べるよな?」
「うん。でも、パパにだっこされるの、すきだから」
「うわぁぁぁ......!!可愛いぃぃい......!!!!」
可愛すぎるだろメル。抱っこされるのが好きとか、もうね。俺の喜びポイントを荒稼ぎするような事を言っちゃって!そんな子は強く抱き締めちゃうぞっ!
「ンフッ」
「あ!メルちゃんが笑ってます!」
「そりゃ笑うだろう。笑顔なのは良い事だしな。あ、敵だ。南西方向距離900」
「了解です」
「んー」
そうして相手との距離が100メートルを切った辺りで、俺達は攻撃態勢に入った。
「『鼓舞の光』2人とも先攻頼む」
「はい。『イグニスアロー』『アウラ』」
「ライトニングブレ......じゃなくて『滅光』」
リルが強化イグニスアローを飛ばし、メルが謎のフェイントをかけつつも、下に居るプレイヤー目掛けて滅光を放った。
「ん?死んでないな。降りて倒し......フンッ!」
下に降りて倒そうとした所、魔法の塊が下から飛んできた。
たまたま行動詠唱にクロノスクラビスを置いていたから良いものの、今のはかなり危なかった。
「リル、メルを連れて離れろ。2人は東側を飛んで倒してくれ」
「えっ、でも父様は?」
「下を殺る。こっちの攻撃に気付いた上に反撃してきたからな。多分、犬子君クラスの強敵だ」
「......分かりました。父様、死なないでくださいね」
「え?それは無理。鼬の最後っ屁をかます気でいるから、最悪俺はお家でおはようだ。じゃ、もう行く」
「ちょっとぉぉ!!!」
俺はメルを投げ飛ばし、リルがキャッチしたのを横目に地面へ真っ逆さまに降りて行った。
あのメルの魔法を受け止めるとは、本当に人間なのか疑うレベルの反射神経をしている。
次の武術大会の為にも、経験を積んでおこう。
そして俺は、ソルから貰ったお札を右手に持ち、左手には狐のお面を取り出しながら、とある妖術を発動させた。
「念の為だ。『神隠し』」
◇◇
「マサキ。多分来たぞ」
「よしっ!ポイントガッポガポプレイヤーだぜ!」
「ほ、本当にアレがルナさんなんですか?」
「何言ってるのイリス。あんな砲撃、あの人以外に使える訳無いわ!」
「そ、それはそうかも知れないけど......う〜ん」
4人が話し合っている所に、私はそっと近付いた。
「あらあら。先程はすみません。お怪我はありませんか?」
「「「「っ!」」」」
「まぁ、そう警戒しなくとも、私は貴方方を殺したりしませんよ?」
直ぐに武器を構える4人に対し、赤子をあやす様に私は言った。右手も左手も手のひらを差し出すように見せ、武器を持っていない事を示した。
「貴女誰?さっきの、貴女の仕業なの?」
「えぇ。空を飛んでいた所、下にモンスターが居ると思いまして......実際は貴方方、語り人だったのですが」
「で、貴女は誰なの?私の知る限り、貴女の様な狐のお面を付けている人間は知らないわ」
ルヴィさんが杖を向けながら聞いてくる。
「私は『ニャンコ』と申します。しがない語り人ですが、よろしゅうに」
「「「「ニャンコ?」」」」
「えぇ、ニャンコです。ワンコでも狐でもなく、ニャンコです。そこら辺、間違えんといてな?」
京都寄りの関西弁で話しかけ、私が......俺がルナである事を悟らせないようにする。
そういえばこの狐のお面だが、ソルのお手製のお面だ。
付ければ声が中性的になり、元々決められていた見た目に見えるという代物だ。
だから、マサキ達にとって俺は、白い髪の狐獣人に見えているはずだ。
「まぁでも、私らからすれば貴女はただのポイントだわ。殺させてもらうわね」
「ふふふ......やれるものならやってみろ、ですね」
俺は静かに左手を動かし、4人にクロノスクラビスを掛けた。
「動けんッ!ガーディ!」
「おう!『ブレスフィールド』!」
「『ショックボルト』『ネヴァンレイン』『遅炎』『エクステンシオ』『蔦よ』『グレイシア』......ふふっ、余計な真似はしない方が良いですよ?」
「「「「あっ!」」」」
流石にバレたかな。だが俺からは何も言わんぞ。俺以外にも龍神魔法を使える人は居るだろうし、自然魔法もそうだ。
効果時間延長の魔法も、多分誰かが作ってるだろう。
「ほな、さいなら。『アクアスフィア』『戦神』『滅光』」
久しぶりのオケアノスの因子を活用し、『最弱無敗』と『守護者の加護』をフルに使って4人をポリゴンに変えた。
はずだった。
「──ぐっ、やっぱルナさんでしたか......」
「はて?ルナさんとは誰か存じ上げませんが、その方と私は似ておりまして?」
「ふっ、上手いですね。でも騙されませんよ。この火力はルナさんしか出せない。沢山のプ「『滅光』」
あ、話の途中なのに殺っちゃった!ごめんガーディ君!
どうしよ、フレンドチャット送るべきかな。いやでも送ったら俺がルナだとバレる......うわぁ、マジでやらかした。
ごめん、ガーディ君。
「......ほ、ほらね?」
「ゴキブリ......?」
「えっ酷い」
「キャァァァ!!『イグニスアロー』『イグニスアロー』『イグニスアロー』!!!」
「────痛い......」
マジで鉄壁だな、この人。VITに幾つSPを振ればこんなに魔法を耐えられるんだ?
あ、もしかして、何かの称号で耐えてるのかも?
「セレナ」
「あ、待ってそれはマズ──」
俺はセレナを呼び、市販されている矢をガーディ君に撃ち込むと、ガーディ君は綺麗にポリゴンとなって散った。
『ルナ?どうしたの?』
「何でもない。知り合いを倒しただけだ」
『ふ〜ん』
「ガーディ君......妙に硬い相手だった。総合部門での要注意人物だな」
俺は胸にガーディ君の強さを刻み、マサキ達が大量に落とした終末の星屑を拾った。
「フー、シリカ、アルス、イブキ。悪いけど星屑集めを手伝ってくれ」
「「は〜い!」」
「「はっ!」」
「じゃあ私も手伝お〜っと。久しぶりに使ってくれたし、お礼も込めて、ね」
「ありがとう」
俺はお面を外してからお礼を言い、6人で大量の星屑を拾った。
一応、倒されてもばら撒く星屑の量には上限がありますので、これでマサキ達が0ポイントになる事はありません。ご心配なく。
では次回『思考と嗜好の至高の射手』お楽しみに!