なんでやリルちゃん関係ないやろ!
ひゃっ!
「陽菜さんや。今日はクリスマスイヴですな」
「そうですな」
「プレゼント......欲しかろう?」
「ッ!ま、まさか......まさか!?」
「そう。そのまさかじゃ」
晩ご飯の後、一緒にソファに座る陽菜の左手を取り、俺はポケットから『ある物』を陽菜に見えないように取り出した。
そして陽菜がギュッと目を瞑ったので、そっと左手の薬指に『ある物』を付けた。
「はい、飴ちゃん。メリークリスマスイヴ」
「......」
俺が陽菜に付けたのは、指輪の様に指に着けられる飴ちゃんだ。
輪っかの部分がプラスチックで出来ている、スーパーに売っているあの飴ちゃんだ。
「どうした?飴は嫌いだったか?」
「......」
「お〜い、陽菜さ〜ん」
「許......」
「ゆる?」
「許さない!もう決めたもんね!絶対に寝てる間に本物の指輪を付けてやるんだから!今日から震えて寝な!!!
それと、いい?これから私と寝る時は注意して。朝起きて学校に行く時、『あれ?なんか左手に嵌められてんだけど』って言っても、『あぁそれ婚約指輪』って淡白に返してやるんだから!それから一緒に幸せな生活を送るんだからね!覚悟して!!!
さぁ、分かったらさっさと私にキスしな!!!!!」
「え、えぇ?」
ものすごい剣幕でとんでもない事を言われた気がする。
だけど陽菜さん。あなたは重大なミスを犯しているぞ。
「あの......学校は明日の終業式で最後なんですが......」
「あっ」
「可愛い奴め」
呆気に取られた隙に、陽菜の唇にキスをした。
隙とキスで韻を踏み、俺のハートはビートを刻む。
うん。ちょっと何考えてるか分かんなくなってきた。
「もう。ずるいよ」
「寝てる間に指輪を付けるなら、陽菜もずるいぞ?」
「ん〜!......つ、つけないもん!」
「本当か〜?本当に寝てる間に指輪を嵌める気はないんだな〜?」
「............うん」
「迷ったか」
「迷った。でも勝手に付けて嫌がられるリスクを考えたら、付けない方が良いと思ったの」
陽菜は指輪の飴をチロチロと舐めながら、こちらを伺うような顔でそう呟いた。
「嫌がらないよ。ただ、もっとお互いを理解してからにしたいとは思ってる。大好きな陽菜を、もっともっと知りたいんだ」
「うん......分かるんだけど......分かるんだけど我慢出来なくなっちゃうの」
そう言って左手の飴を俺の口に付けてきた。そして1回だけ俺に舐めさせたかと思ったら、今度は陽菜が飴を舐めまわした。
「......ね?」
「扇情するな。フェンリルになるぞ」
「なんでやリルちゃん関係ないやろ!」
「じゃあ普通の狼になる」
フェンリルがダメなら狼だ。狼がダメなら犬にでもなってやろう。取り敢えず、その絶妙に俺の心を揺さぶる仕草を辞めてくれ。
本当に危ないから。何がとは言わんが。
「なら良し。じゃあ夜のユアスト、やろ?」
「何か意味深だが......やるか。陽菜は俺と合流するか?」
「ううん。今日は生産に回ろうと思う。リンカちゃんのお洋服とか、ピーちゃん達へのお弁当を作ろうかなって」
何だろう。陽菜は皆のママになる気なのだろうか。だとしたら少し、いや、かなり独占欲が脳を駆けるぞ。
「......そうか」
「ふふっ、可愛いなぁもう。大丈夫だよ。寂しがらなくても、私が隣に居るから......ね?」
「寂しいのは元々だ。まぁいい。行こう」
「うん!」
◇ ◆ ◇
「で、ルナは何をして星屑を荒稼ぎしたの?」
「シリウスチャレンジ。でっけぇモフモフとの勝負」
「場所は?」
「北の雪山。山頂にある神殿から行ける」
「......ねぇ。そこ、まだ情報が無いエリアなんだけど」
ユアストにログインし、リビングでヴェルテクス全員で会議中。
ランキング2位に位置している事を問い詰められ、今は天狼についての話をしている。
「知らん。まぁ、天狼は最初の戦闘で99割の人間は死ぬだろうから、他にクリア出来る奴は居ないと思う」
「ルナさん。それだと990パーセントです」
「割とマジで990パーだからな。俺も不死鳥化が無かったら2秒で死んでるし」
「「「「「え?」」」」」
「それ、勝てるのか?」
「無理だろ。お前の筋肉でも耐えられない攻撃を使うんだから、99割無理」
「マジかぁ......」
VITが2万を超えても一噛みで腕が消えるんだぞ。あんなの、ガーディ君でも持って10秒だろう。
そもそも『倒す』事を前提に作られていないクソ......ごほん。酷いモンスターだから、超高速謎解きゲー、それも驚くほど高難度なものを解かなければならないのはダメだと思う。
「ま、その辺は各自体験してくると良い。俺はリアルで24時間経たないと再チャレンジ出来ないから、マジで頑張れ〜」
そうして、リンカ達のレベリングの進捗を聞いて会議は終わった。
◇星塔・森エリアにて◇
「なぁリル。アイツらどこでレベリングしてんだろうな。普通、1日で120レベはおかしくないか?」
「さぁ?私には分かりません。ですが、リンカさん達が頑張った事は分かります。そこはちゃんと、父様も認めて上げてくださいね?」
「分かってるよ。ただなぁ......う〜ん......ま、他人は他人か。俺達は俺達で、やれる事をやろう」
「はい!」
今回からテスカを使わなくても問題ないとピギーに言われたので、今はルナ君モードで森をお散歩している。
「『サウンドカーテン』『サンダー』......お、見てみろ。何か巨大樹的なヤツがあるぞ」
ルンルン気分で敵を倒していると、森の中に1本、高さ数十メートルはありそうな巨大樹を発見した。
「ホントですね。登りますか?」
「勿論。バカとアホは高い所へ行きたがるもんだ。ヘリウムなんて比じゃないぞ」
「?」
「気にすんな。行くぞ......木だけに」
「絶好調ですね」
「城を出る前、ソルにINTが上がるジュースを貰ったんだ。だからだろうな」
「それ、母様にバカにされてません?」
「されてないされてない。0に何を掛けても0だからな。それぐらいはソルも知ってる」
「バカにされてますね。それに父様は0なんかじゃありませんよ?」
「知ってる。俺、こと戦闘に於いては賢い自信があるから」
仲良く手を繋いで歩いていると、リルが急に立ち止まった。
「......今日の父様、何か変です。毒のある果物でも拾い食いしました?」
「え、酷い。っていうか果物ならリルも食べてるじゃん。俺と半分こしてるんだし」
「確かに!......では、私が変......です?」
「いや?どちらかと言えば俺が変だな。理由は分かるか?」
「いえ」
「それはリルが可愛いからだよ(キラッ)」
「気持ち悪いです」
「ィ゛............」
精一杯おもろしろ可笑しく言ったのに、心からのドン引きを頂戴したぞ。
俺は少し悲しいよ。リルが可愛いのは本当なのに、ちょっとテンションがぶっ飛んでるからって真正面から『気持ち悪い』は悲しいよ。
「まぁ、俺のテンションがおかしいのはソルが原因だ。ちょっと俺の独占欲が出ちゃったのが発端だな」
「あぁ、やっぱり。今、お城は人が居るんですから程々にしないとダメですよ?」
「別に見られて疚しい事はしてないし。っとと......これを登るのか」
リルにちょっぴり注意を受けていると、巨大樹の根元に来た。
それと見上げると分かるが、この木は少々おかしいな点が多々ある。
まず、巨大樹から細い枝が無数に伸びていること。
これは根元近くから生えているので、おかしいと感じた。だって、普通はかなり上の方で枝分かれしてるいからな。
ファンタジー物で皆勤賞を取れそうな世界樹だって、殆どは上の方で枝分かれしている。
やはり、この巨大樹は違和感がある。
「取り敢えず......お触り」
「何かいやらしく聞こえます」
「おませさんだなぁ、リルは」
そう言って巨大樹に触れた瞬間、ウィンドウが出てきた。
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『星塔の試練・五帝座一』に挑みますか?
注意:この試練は5人でしか挑めません。
『◆』『◆』『◇』『◇』『◇』
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いつもの『はい』『いいえ』が無く、5つのマークで認証するようだ。
「よし。メル、フー、シリカ。来い」
「ん」
「遂に出番ですね」
「やっるぞ〜!!」
俺は追加で3人を呼び、巨大樹の試練......デネボラの試練に挑戦した。
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試練会場に転移します。
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さぁ、どんな敵が待ってるのかな?
◆ギルド戦・イベントPtランキング◆
1位『ストレリチア』・・・281Pt
2位『勇者マサキ(笑)と愉快な仲間たち』・・・273Pt
3位『巣』・・・250Pt
ん〜次回、『デネボラぽろぽろ』お楽しみに!