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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第11章 星塔の輝石
331/492

ピンポーン♪大星壊〜!

ぶへっ(大型連休が明けていつもの日々が辛く感じるも、やはりそこにも道があった、あってしまった人の鳴き声)




「ルナ。状況は?」


「リルと森で遊んでます。木の実がね、美味しいの」


「......敵は?」


「倒した!星屑は10個あるよ!」


「で?今何してんの?」


「リルと木の実食べてます。酸っぱくて美味しいよ?」


「......はぁ。似た者親子」



俺達が敵を3人倒した後、森を探索しながらピギーを待った。

そしてピギーが俺達と出会ったのは、たまたま森で見付けた木の実をモッシャモッシャと2人で食べている時だった。




それとさっき分かった事だが、ゲーム内時間で今日、翔達とは合流出来ないらしい。


なんでも、リンカが『もっとレベルを上げたい』と駄々を捏ねたそうな......



「じゃ、探索しましょ。まだまだこのエリアにも、敵が居るんでしょ?」


「居る。北に900メートル先に5人。東に8.3キロ先に15人。南に20キロ先に4人。西に850メートル先に8人」



俺はマップを円形ではなく線上に広げ、東西南北の直線上に居る敵の情報をピギーに渡した。


斜め方向の敵の位置は分からないので、まだまだ沢山敵は居るだろう。



「......何でそこまで分かってるのに動かないかなぁ」


「木の実が美味しいから。ねぇ?リル」


「そうですね!」



ちなみに今食べているのはレモンの様な見た目の果物だ。優しい酸味と体を包み込むような甘さのある、赤色の食べ物だ。


味としてはブドウに近い。



「まぁ、ピギーなら分かるでしょ?私が()()()()()理由」


「そりゃあね。やり合わせて、星屑が集まったところを漁夫の利でしょ?」


「そうそう。だからピギーも、食べよ?」



俺は誰もが落ちそうな声で果物を渡し、首を傾げた。

戦闘中じゃない今なら、全力でテスカを演じられる。



「うっ......アンタ、本当に女の子の真似が上手いね」



ピギーは木の実を受け取りながら、嫌そうな顔で俺に言い放ってきた。



「真似も何も、今は女の子だよ?」


「そうですよ。テスカちゃんは女の子ですよ、ぴーちゃんさん」


「はぁ......まぁ、変装するなら割り切った方が良いか。分かった。アンタはテスカね?私より身長の低い女の子」


「何故そこを強調する。成長期だぞ?」


「私も、ね......フフっ」



なんだコイツ。俺が小さくなったからって、急に身長でマウント取り始めるじゃん。


意外と面白いところあるんだな、ピギー。




「それで?どれくらい待つつもりなの?アンタの事なら、2パーティくらい潰れたら行くんでしょ?」


「いや、最後まで待つよ。オーダーは『1度も死ぬな』だからね。相手がどんなに強くても戦えるように、安全策を取るの」


「なるほど。今日は私達しか居ないし、それもアリか「と見せかけて倒しに行く」......はぁ」



敵を倒したい。ランキングのボーダーは分からないが、上はもっと沢山星屑を持っているはずだ。

それ故に俺達が1位になるには、とにかく倒しまくるしかない。


今日は俺とピギー、それとリルとメルにアルスだって居る。


上手く動けば、沢山星屑を集められるだろう。



「おいで、メル、アルス」


「ん」


「ここに」


「今から敵を倒しに行く。アルスは南に。メルは東に。リルはピギーと一緒に西に行って。北は俺......私が殺る」


「ぴーちゃんさん。細かい指示はお願いしますね?」


「いいよ。リルちゃんだけなら、私でも動かせるだろうし」




リルとピギーが作戦会議をしている間に、俺は黙ってメルに炎龍核を渡し、頭を撫でた。



「メルが倒すのは15人の語り人なの。つらくなったり、苦戦しそうなら何時でも私を呼んで」



それを聞いたメルは炎龍核を齧るの、髪が真っ赤に染まり、左目だけがルビーの様な紅い綺麗な瞳に変化した。



「大丈夫。灰に変えるのは得意だから。テスカ......ううん。パパこそ気を付けて。メルにとって、パパが1番大切だから......」



おいおいオイオイ!どうしたんだメル。随分と可愛い事を言ってくれるじゃないか。

これには流石に、俺もテンションが上がるぞ?



「あぁ。俺も危なくなったら直ぐに逃げる」


「うん......」



抱きついてきたメルから頬にキスを貰い、メルを送り出した。



「あ、あっ、あっ、あぁぁ!父様がメルちゃんとキスしました!!これは由々しき事態です。直ぐに母様に報告です!」


「別に頬っぺならいいだろ。家族らしくて良いじゃないか」


「で、でも!」



メルのキスを見たリルが騒ぎ立てるが、何故そこを気にするのか。フーじゃあるまいし......



「ならリルもすればいいじゃん。それならメルと対等だろ?」


「......母様に怒られません?」


「頬っぺならセーフ。前は口にしようとしてたからアウトだったんだよ」


「では......」



そう言って恥ずかしそうにするリルから頬にキスを貰った。



「え、えへへ。欲を言えば、テスカちゃんじゃなくて父様が良かったです」


「ダンジョンから出れば姿を戻すから、その時に好きにするといい」


「分かりました。では、行ってきます」


「行ってらっしゃい」



最後に立派な狼の耳を撫で、リルを送り出した。


俺がリルと話している間、ピギーはずっと2つのウィンドウを操作していた。多分、フレンドチャットと掲示板だろう。


情報の輸入と意見の交流をしていたんじゃないかな。



「では主。我も行って参ります」


「あぁ。あと、この姿の時は『お嬢様』と呼んでくれ。その方がアルスに合うだろう」


「御意に。ではお嬢様、行って参ります」


「行ってらっしゃい」



アルスは雷となって、凄まじいスピードで南へ飛んで行った。



「では俺もやるかね。フー、シリカ、イブキ、セレナ」


『やっと出番ですか。というか珍しく本気の装備ですね』


『全力だー!!!』


『ほっほっほ、これは楽しみですな』


『遠くの敵は任せなさい。守るわ』



服も『神衣:花鳥風月』に着替え、若草色の着物に変化させ、この森のエリアで1番視認されにくい姿に変えた。


敵の居る位置が森エリアかは分からないが、森じゃなくて草原でも大丈夫なので問題はない。



「『戦神』『雷霆』『魔刀術:雷纏』」



敵にバレないよう、接敵の500メートル前まで雷霆を伸ばした。


今回は雷霆をレールに、魔刀術で加速して移動する。

カラーズと一緒に冒険した時の、あの移動法だな。



「ふぅ......『(らい)』」





バヂィィィ!!!!





森の木をクトネシリカで斬りながら、アルスよりも早い速度で目的地に着いた。




「思いっ切り草原だ」



クトネシリカを納刀して周囲を見渡せば、背の低い草が生い茂る草原が広がっていた。


後ろには先程まで居た森があり、反対に北を見れば、雪山エリアが遠くにあるのが分かる。



『あの、今の音でバレてると思いますよ』


「大丈夫大丈夫。『サーチ』......アッアッアッア!」




「居た!金髪のロリ!お前ら早く来い!!」




サーチを付けた瞬間、8人のプレイヤーがこちらに向かっているのを確認し、うち1人は俺のすぐ近くまで走ってきていた。



『さぁ、今こそお兄さ......テスカちゃんの出番だよ!』


『お嬢様。頑張りましょう』


「殺るか。『魔刀術:紫電涙纏』」



布都御魂剣とクトネシリカに、滴るような雷のエフェクトを出しながら俺は2本の刃を抜いた。


今回は抜刀術じゃなく、シンプルに敵を斬る。



最速ではなく確実に。1人も生きて返さない。



『ルナさん!私の方は解除してください!それでは死にます!』


「別にいい。『不死鳥化』」



着物から炎の翼を生やし、俺は構えた。



右手のクトネシリカは刃を前に向けて下に降ろし、左手の布都御魂剣は刃を後ろ向けて構えた。



『珍しい構えね。初めて見たわ』


『私も初めてお目にかかりましたな。この構えで斬れるのでしょうか』




斬れるんですよ。これで。俺の体がイメージ通りに動けば、この1回の斬撃で8人程度なら簡単に斬れる。




「『ストレングスアップ』『テクニカルアップ』『一閃 』!!」


「『フレイムボール』『バーニングウィンド』!」


「『ストレングスダウン』『ディフェンスダウン』今だ!殺れ!!」




おやおや。デバフまで掛けてくるとは鬱陶しい。

まぁ、0.9倍程度の攻撃力では何の問題もない。この攻撃から耐えるなら、0.2倍以下まで俺の攻撃力を下げないと。


じゃあ、決めますか。




「『(かみなり)』『(らい)』」




右手で縦に切り裂いた後、極限まで人間離れした速度で時計回りに回転し、()()()()()()


細分化された雷の斬撃は称号【雷神】の効果で操り、8人の心臓に向けて飛ばした。




そうして俺が技を使った0.2秒後、8人は一斉にポリゴンとなって散った。




「はぁ......はぁ............ちょっと、休憩」




俺は4人を降臨させ、草原に寝転がった。



今の魔刀術は負担が大きすぎる。そもそも紫電涙纏で技を使うのが大変なのに、それを2つ、しかも別々の技を使った。


超高速、超強力な魔刀術の技。『(かみなり)

高速かつ、空間をも容易に斬る技。『(らい)


霹は物理、雷は魔法よりの攻撃だ。



本来の俺のINTなら、ここまでが限界だろう。

この場合の限界とは、『頭痛がしないで扱えるレベル』を表している。


だが今回、俺は【雷神】も使った。というか、霹を斬ったんだ。その動きが本当にしんどいのなんの......もうやりたくない。




「ルナさん。膝枕しましょうか?」


「いい......少しゆっくりさせて」


「チッ、まぁ傍に居るので、何かあったら言ってください」


「うん......」



何か酷い舌打ちが聞こえた気がするが、多分気のせいだろう。俺の知ってるフーは舌打ちなんてしないもん!完璧そうに見えるだけの、ポンコツメイドだもん!



「あら、この辺りの草、殆ど薬草ね。それもかなり珍しい種類の」


「ふむ。では周囲の警戒をしながら採取しましょう」


「えぇ。後でお茶にしましょ」


「分かりました」



俺の横でフーは正座し、イブキとセレナは薬草採取に行動を移した。あれ?シリカはどこに行った?




「見て〜!デッカイ狼捕まえた〜!!!」



遠くからシリカの元気な声が聞こえ、俺は少し起き上がって声の方向へ顔を向ける。


すると信じられない光景を目の当たりにした。



なんと、シリカはフェンリルであろう狼を両手で担ぎ上げ、こちらに全力ダッシュしていたのだ。



「フー......あれ、フェンリルじゃね?」


「フェンリル......ですね」




『離せ!おい!クソっ、離しやがれ!!!』


「も〜、キャンキャンうるさい狼だなぁ。黙らないと食べちゃうよ?」


『......』



シリカがフェンリルを掴む手に力を入れると、フェンリルは何も喋らなくなった。



「ねっ、この狼を今日のご飯にしない?」


『殺してやる!お前ら絶対に殺してやるからなぁ!!』



尋常じゃない殺意を振りまいてるんだけど、このフェンリル。



「フェンリルって美味しかったっけ?」


「「美味しくない」ですよ」


「じゃあいいや。シリカ、森に返してあげなさい」


「え〜!折角捕まえたのに〜!」



ダメだ。それにフェンリルなら他のプレイヤーが倒しに行くだろうし、俺達が倒すメリットが無い。


まぁ、他のプレイヤーが倒しに行く前に、そのプレイヤーを俺が倒すけど。





そんな事を考えていると、シリカの捕まえたフェンリルがプルプルと震え出した。





『俺の飼い主がここに向かってるからな。ハハッ!お前らはもう終わりだな!ハハハ!!』






「おい、なんかフェンリル壊れたぞ。何したんだシリカ」


「そうですよ。フェンリルを発狂させるなんて、シリカさんは本当に付喪神の力なんですか?」


「な、何もしてないよ!ただ前足と後ろ足を持ってるだけだもん!」



それが原因だと思うけどなぁ。




「カムイ、どうしたんだい?『ヤバいヤバい!』ってずっと言ってたけど......」




シリカがフェンリルを離そうとした瞬間、シリカの背後から何者かが現れ、フェンリルを光に変えた。



光に......つまり、今のフェンリルはテイムモンスターと言う事だ。



俺は堪らずシリカの後ろに居る人間を見てみると、少しだけ知っている人間の顔だった。



今日(こんにち)......犬子(わんこ)さん?」


「ピンポーン♪大星壊〜!でも、残念ながらこの情報は共有させないよ。『魔剣術:炎纏』」


「もう、星を壊そうとしないでください」



犬子君が俺に剣を振り下ろそうとした瞬間に俺は指を鳴らし、犬子君の動きを『クロノスクラビス』で封じた。



「ッ!?......この魔法......まさか」



やべ。バレるのは面倒だ。



「君、もしかしてル「『滅光』」




犬子君が俺の正体を暴く前に、龍神魔法で消した。




戦神の効果が切れていたが、咄嗟にフーを刀にして装備したのが大きかったな。多分、布都御魂剣を装備しないと倒せなかっただろう。



「お兄さん......今のマズくない?」


『不味いですよね。あの人、相当強い語り人のようですし......』


「さぁな。ま、犬子君クラスが1人ならまだ大丈夫だ」


『という事は、2人以上なら......』


「ちょっと俺1人じゃ厳しい。頭を使わないと勝てないだろう」




勝てないとは言わない。だが、負けないとも言えない。

彼は現在、ユアストで前線を走るプレイヤーのはずだ。

俺の知らないモンスターを山ほど倒し、俺より強い武器を持っている可能性だってある。


これは少し、厄介な事になりそうだ。




「じゃ、ちょっと寝るわ。フー、膝貸して」


「やった〜!ささ、こちらへ!」


「呑気だな〜。シリカ、ちょっと罪悪感あったのに......」



俺がフーの膝に頭を乗せると、シリカはちょっぴり悲しそうな顔で呟いた。



「気にするな。これはギルド戦だ。シリカがやった事はギルドマスターである俺がやった事とも言える。だから、気にするな」


「う、うん。でも」


「でもじゃない。俺がギルドを作り、クトネシリカを作った以上、シリカの責任は俺にもある。気にするだけ無駄だ。シリカは明るく笑ってろ」



ウチの明るい存在が暗くなると、ギルド全体が暗くなる可能性がある。それ故に、シリカは常に元気で明るく居て欲しい。



「うん!お兄さん大好き!」


「ぶへっ......重い」



幼女のお腹に思いっ切りダイブするとは、シリカは鬼だな。




「敵が来たら教えてくれ。じゃ、おやすみ」




俺は隠しパラメータの疲労度が限界近い事を察し、瞼を閉じて意識を手放した。


ケリドウェンの効果を持ってなくても、犬子君をワンパンするのはキツイでしょうね。

流石ルナ君。運が良い.....



次回『メイドさんは心配性』お楽しみに!

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