第1回ギルド戦 〜星塔の輝石〜
投稿したと思い込んでたバカは私です。
それと、9章『狐国編』10章『穏やかな日々』の修正やらなんやらが終わった喜びが大きいです。ぱんぱん。
◇魔境の島の別荘・寝室にて◇
「ソソルソルソル・ソソルソル!」
「んなぁ〜にぃ?」
「こ、これ。これ見ろ!」
「んぇ?」
まだ朝日が昇ってすぐの頃。運営からお知らせが届いた。
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『Your story運営チームです』
第1回ギルド戦【星塔の輝石】を開催します!
日時:12/24〜1/1
場所:ペリクロ草原
詳細▼
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「......読めない。ルナ君読んで」
詳細欄を開くと、自分で読むのが億劫になったソルがもたれかかってきた。全く、どれだけ可愛い行動を取れば気が済むんだか......
「はいはい、読みますよ。
『ギルド戦とは、ギルドメンバーがイベントポイントを稼ぎ、その総合ポイント数を競うイベントです。ポイントの稼ぎ方はイベント毎に異なる場合があります』
──というのが1つな」
「あい」
「で、次は......
『今回のイベントは【星塔の輝石】と称して、特殊ダンジョン【星塔】内にて入手出来るアイテム、【終末の星屑】を1つにつき1ポイントで換算されるイベントです。
注意:イベント終了時、【終末の星屑】は消滅します。
また、当ダンジョン内では様々なイベント限定アイテムが入手でき、それらはイベントが終了しても消滅しません』
──ここまでOK?」
「おk......」
寝そうだな。まぁ、リンカ達に呼ばれるまではイチャついても別に良いだろう。ここに居るのは睡眠中のリルとメルだけだし、今なら思う存分ソルを甘やかし、甘えられるり
「ほら、ここにおいで」
「うん......」
俺はベッドの背もたれの前で胡座をかき、その上にソルを乗せた。
「あったかいよ〜」
「もっと俺に凭れ掛かっていいぞ?」
「ん〜」
ソルは背中から全体重を俺に預け、一緒にウィンドウを見た。
「続けるぞ。
『今回のギルド戦では上位3つのギルドに称号、リテ、限定品を贈呈します。奮ってご参加ください』
だってさ。称号と金はともかく、限定品は何だろうな」
「私......ルナ君がいい」
「もう持ってるだろ?まだ足りないのか?」
「うん......もっと欲しい」
「仕方ないなぁ」
そっとソルを後ろから抱きしめ、頭を撫でてやった。寒い冬の中の大きな温もり。俺はこの温もりを手放さないように、優しく、大切に抱きしめた。
「うへへぇ、最高〜」
俺のお腹に当たる尻尾が激しく動き、耳も触る度にピコピコと反応を示した。
「俺も最高だよ」
この可愛さを、ただ享受したい。
「今回のギルド戦、2人でやれるか?」
「多分、無理?」
「だよな。まぁ頑張れるだけ頑張ろう」
「うん。いざとなったらメンバー増やせばいいからね」
「勧誘か......やった事ないな」
「知らない人、怖いもんね」
「あぁ。知ってる人でも怖いさ」
俺の言葉を受けったソルは尻尾の動きを一瞬止め、また直ぐに扇風機のように動き出した。
今の一瞬で色々と考えたのだろう。
「じゃあ、そろそろ呼ばれそうだから行ってくる」
「うん。行ってらっしゃいのチューする」
「はいよ」
ソルにゆっくりとキスをして、俺は『神衣:花鳥風月』に着替えた。
今回は浴衣テスカで行こう。装備の性能的にも花鳥風月は断トツに強いし、リンカ達を上手く誤魔化せると信じてる。
◇◇
「おはようございます。リンカさん、ミアさん」
「おはようテスカちゃん。今日は浴衣なの?」
「おはようテスカ」
「はい。とっても可愛い浴衣を貰ったので、着てみました。金髪ショートに浴衣は、似合うのでしょうか?」
ソルが用意したテスカ用浴衣を取り込んだ花鳥風月は、様々な柄の浴衣に変更できる。
今回は雪のうさぎが描かれている、紺色の浴衣だ。
「可愛いわよ。その浴衣を作った人、ハッキリ言ってセンス抜群ね。テスカちゃんにピッタリだもん」
「確かに。オーダーメイドで作ってもらったの?」
「いえ。『これあげるから、機会があったら着てね』って言われたのでオーダーメイドとは言えない......と思います」
ソルがポイポイと浴衣を作ったからな。男用も女用も女児用も、かなりの数の浴衣を取り込んでいるぞ、コイツ。
「へぇ。ま、話をダンジョンに変えよ。今日はリルが居ないし、前衛はお姉ちゃんだけで大丈夫?」
「大丈夫な訳ないでしょ?行ける所まででいいわ」
「あっ、それなら私も前衛やります」
「「出来るの?」」
「出来るかどうかじゃないです。やるんです」
殺らないと殺られるからな。インフィル草原のダンジョン程度なら大丈夫だと思うが、罪の宴クラスになるとやらなければ死ぬだけだ。
魔法も物理もヘイト管理も回復も......全部1人でやらなきゃならん。
......ソロの場合は。
「頼もしいわね。武器は何を使うの?」
「刀です。昨日の内にリルからスキルを習いました」
「本当に頼もしいわね。じゃあ前を私とテスカちゃん、後ろからミアの援護で進みましょうか」
「うん」
「はい!」
「じゃあ、リンカ探検隊、ダンジョン攻略スタート!」
絶妙にダサいな、リンカ探検隊。正直言って弱そう。
ま、ンな事はどうでもいいんす。今はギルド戦の動き出し方を考えないと。
そもそも25日に陽菜と神クソゲーをやる予定なので、ちゃんとイベントに出れるのは24日と26から元日までだ。
それから24日は終業式があるから昼からの参戦として、大体6時間が限界か。
ゲーム内で2日。どれだけやれるかな?
◇1時間後◇
「リンカさん、左です」
「了解!」
「ミアさん、ギリギリまで魔法のストックして下さい。この先の6匹の群れにぶち当てましょう」
「分かったわ」
ダンジョンに入ってから、大体20分が経った頃。何故か俺が指示を出してダンジョン攻略が進められた。
理由は分かっている。
俺が常に発動しているサーチ君でミニマップより正確に情報が伝わるからだ。
そしてその情報を元に指示を出せば、チーム行動のプロフェッショナルである2人は簡単に動いてくれる。
この2人、普段FSで指示を出す、出される事が多いから、正確に伝えたら凄まじい速さで順応してくれるんだよな。
ハッキリ言って、めちゃくちゃ楽に攻略出来る。
「ふぅ......群れは経験値良いね」
「そうね!ミア、今ので幾つ上がった?」
「2」
「私も!テスカちゃんは?」
「えっ、あ〜......0ですね。殆ど戦闘に参加していないので」
「「えぇぇぇ!!」」
嘘だ。レベル差のせいで得られる基礎経験値が1しかないんだ。そこから『最弱無敗』の効果で1540パーセント増しになるが......15程度じゃあ、まぁ無理だ。
このダンジョンでレベルを上げるなら、多分20時間は潜り続けないと1も上がらないだろう。
「でもテスカちゃん、ちゃんとゴブリン斬ってたよ?」
「確かに」
あ、バレた。でもトドメは刺してな......いや、それを言っても戦闘不参加の矛盾が生じるか。何か良い感じに有耶無耶にしないと。
「貢献度が低過ぎたんじゃないですか?ほら、ただ敵の位置教えただけですし」
「絶対に当たっている情報を伝える事が、貢献度が低いとは思えないけどなぁ。ミア、このゲームってそこまで正確に判断するの?」
「する。でも今のテスカの話だと、ちゃんと経験値は入るはず。なのに入らないって言う事は、何か裏がある」
ミアよ。妙に鋭いのは辞めておくれ。テスカちゃん維持計画に支障をきたすんだよ、その思考能力。
いや、逆にリンカが鈍すぎる可能性もあるが、こと世界に名を刻む人間が、この程度の事に気付かないとは思えない。
しかもこの2人は姉妹だ。考え方も似るだろう。
ま、バレたら謝ろう。土下寝だ土下寝。
「まぁまぁ。取り敢えず今は進みませんか?ちゃんとボスと戦うのって初めてですから、楽しみなんです!」
「「ちゃんと?」」
「......ちゃんと」
テスカ、お前何やらかしてるか分かってるのか?
ぼくわかんない。こころのままにしゃべった。
アホだ。そのせいで特大級のボロが出ちまった。普通、テスカの様な弱小プレイヤーが、まともなレベリングもせずにボスに挑むと思うか?
おもう。だってゲームだもん。
全くもってその通りだ。よし、ここはそれで乗り切ろう。
「ボスと言えば、マネーレトレントって結構強いですよね」
「そう?私としては次のボスの方が難しいと思ったけど」
「私も。アイツで2回死んでるし」
「あ〜、フォレス......トンカツ食べたいな〜」
「「ねぇ」」
待て、待つんだ。俺は一言も『フォレストウルフ』とは言っていない。フォレストンカツと言ったんだ。お肉だ。森のお肉だ。大豆の塊だ。豆腐なんだ。
「テスカちゃん、本当は王都まで行ってるでしょ?」
「レベルの話も、そこそこ強いから上がらなかったんじゃない?」
「違います」
「嘘ね。裁縫用の糸って、スキルを使っても普通は0ダメージだって情報があるんだけど」
「それは切ろうとしたからでしょう?刺すだけなら簡単にダメージ出ますよ」
「はい、これでテスカは初心者じゃない事が分かった」
「いやいやいや、それなら冒険者ランクはどう証明するんですか!まだEランクですよ!?」
「う〜ん、それを言われると否定出来ないのよねぇ。今調べた感じ、多重登録とか出来ないみたいだし、そのランクは正しい物と考えられるわね」
マズイ。いつの間にか俺の嘘を暴く会話になっている。
このままでは色々と聞かれた上に矛盾点を突き、一気に俺を仕留める気なのだろう。
さぁ、考えろ俺。彼女らを傷付けずに言いくるめろ。
「ねぇテスカちゃん。テスカちゃんの本当のレベル、教えてよ」
「い、嫌です」
「嫌と言う事は、私達よりも高いという事でしょう?別に貴女が高レベルでも、私達は貴女を嫌ったりしないわ。ただ真実が知りたいだけなのよ」
......こ、答えるべきか?隠すべきか?
「よ......」
「「よ?」」
「よんじゅうに......です」
「「42?」」
中途半端に嘘をついた。本当は442だ。だが俺は、百の位を言わずに答えた。
流石に初心者を名乗るプレイヤーが3桁レベルでは、リンカ達も白い目をするだろう。
俺は自分の行動を反省している。
最初から、リンカ達には本当の話をすべきだったのかも知れない。
「42ってあまり私達と差はないじゃない」
「142なら色々と驚いたけど、42なら......ね」
「あはは......すみません」
俺は大きな罪悪感を抱えつつ、ダンジョン攻略を進めた。
ソソルソルソル・ソソルソル!(鳴き声)
次回『テスカであってテスカでない』お楽しみに!