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Your story 〜最弱最強のプレイヤー〜  作者: ゆずあめ
第10章 穏やかな日々
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魔王城に囚われの勇者より

初めて使うやり方で表現してみました。


田→田中正樹

山→山本守

早→早川雫

 



 ◇正樹side◇



 月斗の家に泊まりに来た俺は、手伝う事も出来ないので守や早川に現状報告をしていた。




 田『こちら、魔王城に潜入中の勇者。現在魔王とその妻がイチャついています』


 山『邪魔をしたら命は無いと思え』


 早『命惜しくば実況しろ』


 田『今魔王は妻とハンバーグ作りを交代した模様です。妻が『腕疲れた』と言っていました』


 田『あ、何かごく普通に『子供何人欲しい?』って話をし始めました。あっ、あっ、純粋な勇者には刺激が強いです!至急援護を!!!』


 山『卍x灰になれ勇者x卍』


 早『で、魔王はなんと?』


 田『女の子が2人、と。多分リルちゃんとメルちゃんじゃねぇかなぁ』


 山・早『あ〜』


 田『あ、妻が戻るようです......ッ!!!!』


 山『どうした勇者1号!』


 田『今ッ......交代する瞬間......キス......を............』


 早『勇者1号、ここに眠る』


 田『実況辞めるわ。お泊まり楽しみます』


 山『成仏してクレメンス』


 早『乙。明日の報告を楽しみにしてる』



「あ〜、俺も彼女作ろうかなぁ」



 あの2人を見ていると、恋人と過ごす生活が凄くキラキラして見える。


 特に月斗は自分のコントロールが上手く、鈴原との距離の保ち方、近付け方が綺麗だから、より楽しそうに見える。



 あんな風に、完璧に『好き』でいられる距離を維持出来るなんて、どうやっているんだろう。



「よ〜し、仕事終わり〜。風呂入れてくるわ〜」


「お、おう」



 料理が終わった月斗が、今度は風呂を入れに行った。


 流れる様に動くから、一瞬だけスルーしかけたぞ。



「ねぇ田中君」


「何だ? 鈴原」



 次は鈴原から声がかかった。俺は気を遣われているのか?



「次に月斗君が戻って来たら、なんて言うか当ててみない?」


「う〜ん......そうだなぁ。普通に『ただいま』って言うと思うが」


「そっか。私はね、『一番風呂はお前が入れ』って田中君に言うと思うよ」


「何故?......って、優しいからか」



 俺とした事が、月斗の野郎の器のデカさを見誤っていたな。



「違うよ。多分、今日も私がお風呂に突撃する事を読んでる。だから最初に田中君を入れるんだと思う」


「......」



 誰か教えてくれ。これはなんて答えればいいんだ?

『そっか〜』で済ませていい事なのか? ダメだよな?

 明らかに『ヤベェ瞬間』を起こす宣言をされた様なものだよな?


 守、早川......俺は今、魔王城に囚われている。助けてくれ。



「まぁ、当たってるかは後で聞いてみよう」


「......だな」



 俺、別に聞きたくない。逆に聞いた事で風呂に入りづらくなる。


 くっ! これが魔王城で行われる拷問か! 卑劣だ!




 そして数分が計画すると、廊下の方から足音が聞こえてきた。月斗だ。




「正樹、一番風呂はお前が入れ」


「えぇぇぇ!!!」


「やった!」


「ん? どうしたんだ2人とも」



 嘘だろ。マジで鈴原の言った事が当たった......。



「ねぇ月斗君。どうして田中君を最初に入れるの?」


「どうしてって、どうせ今日も陽菜が俺の入浴中に入る気だろう? それなら最初に正樹を入れた方が、正樹の気が楽ってもんだろ」


「......」


「あはは、バレちゃってたか〜」



 なんだコイツ。何あたかも『恋人と一緒に風呂に入る』事が前提で動いていんだ。おかしいだろ。



「なぁ月斗。普通、恋人でも一緒に風呂に入るのは嫌じゃないのか? こう、1人の時間的な、さ」



 俺は堪らず聞いた。ここでの答えが、月斗の鈴原に対する気持ちが分かる。


 すると月斗は俺の対面に座ってから、鈴原の方を見ながら答えた。



「嫌じゃない。嫌じゃない......が、正直水着は来て欲しいと思うな。裸だとほら......見えすぎるんだよ」



 なんだコイツ。邪念を一切感じないんだが。人間か?


 普通は『超嬉しい! 裸が見れるぜ!』とか、『邪魔。ゆっくりしたいのにゆっくり出来ない』とか、そんな意見のはずだろ!?


 この2人、どこか頭のネジが飛んでいる気がする。そして余分なネジをそれぞれ1つずつ持っていて、それがお互いに飛んだ穴を埋めている。


 そんなイメージがするぞ。



「え〜! 水着でお風呂はなくな〜い?」


「まぁ、ないな。温水プールとか行かないし、俺にとって風呂は全裸スタイルだし......はぁ。また精神修行の始まりか......」



 疲れた顔で言うって事は、相当厳しい修行なんだろう。



「嬉しくないのか?」


「嬉しいに決まってんだろ? まぁ、嬉しいって言うより『ありがとう』って感じだがな。陽菜が心を開いているって感じがして、感謝の気持ちの方が大きい」



 オイオイオイ、マジでなんだコイツ! 良い奴すぎんか?

 ちょっと優しすぎんか!?

 いや、優しいのか? おかしいのか? もう俺には何が何だか分からん!!



「さて正樹。空いた時間に何するか」


「どうするか、ねぇ......あ、彼女の作り方教えてくんね?」



 2人を見ていたら、俺にも可愛い彼女が欲しくなった。



「すまんが分からない。俺を落としたのは陽菜だし、告白は俺からしたが......陽菜もしたしな。受け身だったんだよ」


「え〜、マジ? 鈴原からだっ......いや、この場合は違うのか」


「い〜や? 陽菜からで合ってる。俺、大阪から1人で東京に来たんだけどさ、陽菜は俺に隠れて東京に来てたんだよ」


「って事は何だ? 追いかけて来たって事か?」


「そうだな。しかも俺の家族と繋がってた。このマンションも学校も、全部陽菜に筒抜けだったぞ」


「......怖ぇ」



 怖い。それだけ準備して、フラれたらどうする気だったんだ? 鈴原は。



「なぁ陽菜。あの時、もし俺にフラれてたらどうする気だったんだ?」



 おいマジかよ。それ普通聞くか? 聞いちゃいけない事トップ5に入ると思うんだけど!?



「ん〜、OK貰えるまで何度もアタックしたかな。中学の頃には覚悟出来てたし、言ってしまえば背水の陣だったからね。進むしかなかったよ?」


「なるほどな。まぁ、あの時は友達とか陽菜しかいないから、断る選択はそもそも無いんだけどな」


「やった〜! 確定演出入ってたんだね!」


「人生ガチャは博打すぎンだろ。ギャンブラーだな、陽菜」


「ノンノン。確率100パーセントだからね。ギャンブルではないよ? それに、絶対に月斗君を落とせる自信は......まぁ無かったけど、想いは伝わると信じてたから」


「......そっか」



 この2人が喋り出すと、謎のバリアで俺の介入が防がれるんだが。

 あ〜、なんかもう、この家の壁になりたいな〜。ずっと2人の会話を聞くだけの人生送りたいな〜。




 ◇◇




「「「いただきます!」」」


 

 あれから2人の会話をずっと聞いていると、晩ご飯が出てきた。家の一部と化した俺に、どうして飯が出てくるのだろうか。謎だな。



「美味い......美味いぞぉ!」



 1口ハンバーグを口に入れると、肉の旨みが全身へ駆け巡る。まるで雷の様なハンバーグだ。



「うん、美味しいな。ありがとう陽菜」


「ふふっ、ありがとう。捏ねてくれてありがとね?」


「いいよ。これからも力や体力が要る作業は俺にやらせてくれ。陽菜が手を痛めずに済むようにしよう」


「うん!」



 いい男だ。常に相手を想っている......そんな月斗の心が伝わる言葉だ。



 あぁ、2人がこんなにも幸せそうにしていると言うのに、俺はゲームか勉強しかしていない。いや、それが学生というモノだろう。


 だが、なんだ......この空間に居ると、心が浄化されていく。


 俺も人間という生物として生きたいな。社会に生きたくない。





「「「ごちそうさまでした!」」」


「美味かったぜ! 鈴原、月斗!」


「それは良かった」


「ありがとね〜」




 さぁ、ここからは地獄の風呂タイムだ。俺が入った後に何が起きるのかを考えないように、気を引き締めて入ろう。


あと1話、あと1話だけ出していいですかね!?

あと1話で10章を終わりにしたいんです!クッ!


次回『魔王の子どもになりたい勇者より』お楽しみに!

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