その銀狼、満月に笑う 4
狩りのバリエーション、狩りエーションを増やしたいです。
ソル視点もあります。
「よっしまずは狙撃だな」
狩りが始まってすぐ、修行内容を決める。
ここでただアイテムを集めるだけでは非効率だ。『剣王』も『王弓』も上げ放題のウハウハパラダイスな場所なんだから、どのスキルの、どのような使い方を磨くか、それを決めてからやる。
今日はまず、遠距離からの狙撃にした。
相手に見つかる前に一体、また一体と倒すのだ。
「ゴッブリン君は、どっこっかな〜」
小さく歌いながら森を歩いた。
「発見! 距離60、数4!」
少し離れた位置にゴブリンが見えた。
俺は近くの木に体を隠し、弓を構える。
「大丈夫。DEXが低くてもPSがある」
ユアストの弓は、近距離ならDEXによって威力がバカみたいに変わるが、遠距離になると威力はもちろん、命中率もかなり変わる。
スキルレベル、ステータス、風。そういった様々な条件から命中率が計算されていると思う。
今の俺のDEXは440。ソルの6分の1くらいだが、大丈夫だと信じている。何故か?
「経験は裏切らない」
バシュッ!
「よし、一体」
ゴブリンが一体、ポリゴンとなった。
師匠の教えだ。
師匠は俺達に弓術を教える時、こう言った。
『経験は裏切らない。何故か? それは頭と体で覚えるからだ。経験をしていないのに出来ると言っても、そいつが本当に出来るとは限らない。
だが、経験がある者は違う。例え頭では忘れていようと、体が覚えている。
成功した経験は、頭で出来ないと思っても体はできる。逆に、失敗した経験は、頭で出来ると思っても、体はできない』
『お前達は成功と失敗、両方の経験を積むといい。それは絶対に、これからの役に立つ』
「バレる前にトンズラかるぞ〜」
矢が飛んできた方向をゴブリンが確認する前に、別の木に移る。ゴブリンを中心に、円を描くように移動する。
「次」
バシュッ!
「二体」
二体目のゴブリンがポリゴンとなった。
「なんかスマートさが暗殺者みたいだな。まぁ経験が生きているから仕方ないんだけど」
別にリアルで暗殺者になった訳ではない。
師匠に『弓の修行だ』と連れてかれた森で、同じような事をしたからだ。
その修行の時、外に出るとわかって『え? それ道場じゃなくね?』っと思い、『道場』の意味を調べようと思ったものだ。
で、家に帰ってから調べたら、『武術の練習を行う場所』って書いてあったから『まぁそれも道場か』って強引に納得した。
そしてあの日、体も心も疲れたなぁ。森での動きと弓を射るので体は疲れ、狙いを定めるのに集中するのと、驚きすぎて心も疲れた。
だってさ?森が本当に師匠の道場だったんだ。
あの人、『森を持ってる』んだ。
ビックリして陽菜と目を合わせたよ。『えぇ?』ってな。懐かしい。
「ま、あの経験が役に立つのはいい事だ。ゲームでだけど」
そんな言葉を漏らして、さらに移動する。
ええんやええんや。たまたま経験が必要な場面があって、たまたま俺が経験を積んでて、たまたまそれがゲームだっただけの事。
そしてこのゲームは──
「凝りすぎてる故に、やりやすい」
バシュッ!
空気の感じ方がリアルとほとんど同じだからな。色、音、匂い。他にも様々なところがそっくりだ。
「三体。最後、どうする?」
三体目のゴブリンもポリゴンとなって散る。
最後に残ったゴブリンは、逃げ出した。
「おぉ! 逃げる選択を持っているのは素晴らしい。俺が潰して差し上げよう」
言っていることが悪魔だ。周りにいた仲間が殺され、逃げ出したはいいものの『潰す』と言われる。
「特定部位を遠距離から狙う練習だ、許してくれ」
そう言って弓を構え、射った。狙うは右足。
バシュッ!
『グギャ!』
ゴブリンの『左足』に命中した。ゴブリンが転んだ。
「あぁクソ、外した。失敗だ」
大丈夫だ。失敗した経験を積んだだけ。頭で出来ると思っても体が出来なかっただけ。
でも問題ない。体が出来るように訓練を積めばいい。そうすれば、それは後から『成功した経験』に変わる事ができる。
「よし、もう1発」
バシュッ!
起き上がろうとしているゴブリンの右足に矢が刺さった。
『ギャ!』
「よし、おっけ。後は繰り返すだけ」
そう言って俺はゴブリンに向けて弓を射った。
バシュッ!
ゴブリンの頭に命中し、ポリゴンとなって散った。
「よ〜し、次は歩きながらの射撃と特定部位の狙撃、後は剣でやるかな」
次のゴブリン戦の計画を立てた。
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ソルside
「よし、修行だ〜!」
懐かしいなぁ。昔は月斗君と一緒に、師匠の森で弓の修行をしたなぁ。あの時は疲れた。師匠が森を持ってるのを知って、的を狙うのに疲れた。
「あ、ゴブリン。五体かぁ」
一昨日も思ったけど、私とルナ君は森での射撃が得意だ。師匠の教えのせいで『体を隠して動いて、弓を射ってはまた動く』という繰り返しが出来るから。
「普通は止まって動いてを繰り返すってしんどいよね」
ドパンッ!
今回は3本だけ。2回の射撃で倒せるか、練習だ。
三体のゴブリンが爆散した。
『『グギャ!?』』
よし、完璧。一気に三体も味方がいなくなったからゴブリンが驚いてる。ふふ。
「よいしょっと」
ドパンッ!
残り二体のゴブリンも消し飛んだ。
「う〜ん強すぎるのかなぁ?ルナ君にまた『弓の音じゃない』って言われそう」
「ま、いいや。そんなに戦わない予定だし」
さ! 切り替えて行こう! このペースなら今日中に75レベルには届くかな?
まぁ、
「届かなくてもいいや」
ルナ君は今日でどれくらい強くなるのかな〜
魔法の練習とかしてるのかな?私もしようかな。
「そうだ! 魔法作ってみよ!」
ルナ君は今、物理特化だもんね。まだ出会ってはいないとはいえ『ピクシー』は物理無効だから、ルナ君は逃げるしかない。なら私が倒せるようになろう!
よし、魔法を作ろう!確か必要なのは、『魔法のスキルレベル』『魔法の発動結果』『魔法の発動速度』と『最大MP』と『魔法の名前』か。
っていうかそもそも
「聖属性ってなんなんだろう?光......ではないのかな? う〜ん分からない。ルナ君ならどう考えるんだろう」
こういう時、ルナ君はどういう考えなのかな?
後で聞いてみよ。
聖属性......ヒール? 傷を治す? クリアで状態異常を治す? なら、ライトは? う〜ん......ダメだ。敵を倒すイメージが無い。
聖属性にライトがあるなら、光属性とも捉えられるのかな?それなら............
「よし、イメージ」
思い浮かべるのは、『レーザー』
光は電磁波の1種。普通の光は周囲に光を発するけど、レーザーは真っ直ぐに発する。普通の光とは違って波長が一定。
不味い、それぐらいしか知らない。確か遷移が何とか......ダメだ、分からない。
「うわぁん! ダメだぁ! もういい! 弓でいい!」
やけくそだ。魔法は回復だけでいい。割り切ろう。
「『ピクシー』め!! 厄介なモンスターだ!」
まだ見ぬ『ピクシー』に腹を立てながら私は狩りを続行した。
ソルの射撃に耐える矢すげぇ!!最初期から買える弱い矢なのに!とんでもねぇ矢だ......
次回はルナ君も魔法を......




